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ループ × サイケデリック × メトロイドヴァニアな怪作『Ultros』は気持ち悪いほど気持ちがいい。『ホットライン・マイアミ』を手掛けたEl Huervo氏によるビビッド&サイケなアートが非常に魅力的

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気持ち悪いほど気持ちがいい。

それが、『Ultros』をプレイしたときに抱いた、率直な感想でした。

SFを題材としたこのゲームには、その世界観のデザインに独特で奇抜な色使いや感性がこれでもかというほど盛り込まれており、なんとも言葉では表現しにくい気持ち悪さで画面が覆いつくされているのです。

これはテレビゲームに限った話ではありませんが、何かしらの方向性に向かって全力で突き進んで突き詰めている作品というものは、ただそれだけでも人々の目に魅力的に映るもの。本作もまた、そういった領域に果敢に挑んでいるということが強く感じられるゲームであり、独自の輝きを強く放つ作品となっています。

今回は、そんな本作の魅力についてお話ししていければと思います。

文/DuckHead

※この記事は『Ultros』の魅力をもっと知ってもらいたいKepler Interactiveさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


突き抜けたデザインセンスで構築されたサイケデリックな世界

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さて、『Ultros』をプレイすると嫌でも目に入ってくるのが、その世界観の独特さでしょう。この点については、実際にプレイをしなくとも、画像を数枚見るだけですぐにお分かりいただけることかとは思います。

本作をプレイすることで眼前に広がる光景はかなりビビットに富んでおり、サイケデリックかつ不気味。SFというジャンルにおいて、こういった色使いの作品は珍しいように思います。

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この名状しがたい気持ちの悪さはゲーム全体に広く横たわっているんですが、不思議と仄暗い感触や嫌な感じは全くありません。それどころか、どこか人を惹きつけてやまないような魅力、ある種の心地よさすら生まれているほど。これは、気持ち悪さと共に場を掌握しているサイケデリックさのおかげもあるのかもしれません。

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独特な色彩感覚と、突き抜けた奇抜さのデザインセンス。

これらの要素が不快感というところにまでは到達せずにギリギリのバランスでゲームの世界観として成立している様を見るにつけ、「このゲームのデザインを手掛けた人物はただ者ではない」という気持ちを抱いていたのですが、なんでも本作のデザインは、難易度の高さと独特な雰囲気から人気を博すバイオレンスアクションゲーム『ホットライン・マイアミ』で知られる鬼才、El Huervo氏によるものとのこと。

あー、なるほど……。これは納得感しかないですね……。この情報を得たことで、『Ultros』の目指しているところが一気にクリアになったような気さえしてきました。

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『ホットライン・マイアミ』(PS4)
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『ホットライン・マイアミ』(PS4)

ちなみに、『ホットライン・マイアミ』のゲーム画面はこんな感じ。動物を模したマスクをかぶって殺戮を繰り返す主人公、一撃でド派手に血をまき散らして死んでいく敵、複雑に絡み合う時系列……こちらもまた中々に強烈な個性を持つ世界観で不可思議な物語が繰り広げられていく作品です。

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そんな『ホットライン・マイアミ』を手掛けたEl Huervo氏のデザインセンスは、『Ultros』の世界観だけでなく登場キャラクターたちにも活かされており、ゲーム中に登場するボス敵なども、かなりパンチの効いた面構えをしています。

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敵味方含めて様々な見た目のキャラクターが登場する中でも、特に主人公のデザインは素晴らしいと思います。

ブレードにバイザー、機械化された身体……。こういった要素が好きな人にはたまらないデザインなのではないでしょうか。
ちなみに、この画像を見ただけでは分かりにくいかもしれませんが、『Ultros』の主人公は女性です。『メトロイド』シリーズの主人公であるサムスと似たような雰囲気を感じますね。どっちも好きです。

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余談になりますが、本作に登場する中で私が個人的に一番好きなキャラクターは、何かと主人公に協力してくれるガードナー。表情や喋り方、その全てに愛くるしさがあるのでたまりません。あまりにもキュート過ぎる。

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さて、その世界観やキャラクターのデザインに何かと気持ち悪さが付きまとう『Ultros』ですが、それらの要素とは対照的に、純粋に美しさを感じられる場所や演出もしっかりと存在しています。

そういった場面に出会った時の澄み渡った清らかな気持ちといったら、これまでのゲーム体験ではあまり味わったことのない種類のモノでした。ここまでに歩んできた道のりの異質さ、気持ち悪さを振り返ることで、目の前に広がる美しさがより一層輝いて見えるのです。

事実、あの時大きな感動を私の中に巻き起こした、美しすぎる木の画像を見ながらキーボードを叩いているわけですが、「あれ……?メッチャ綺麗でテンション上がってたのに、これくらいの感じだったっけ……?」と、キツネにつままれたような気分になっています。あの時感じた気持ちは、ゲームを実際にプレイしている時でなければ味わえないものなのかもしれません。

ループするメトロイドヴァニア

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マップ

さて、ここまでは『Ultros』の世界観についてお話してきましたので、続いては肝心のゲームシステムについて触れていきましょう。

本作のゲームジャンルは、メトロイドヴァニア。『メトロイド』シリーズや『悪魔城ドラキュラ(英題:キャッスルヴァニア)』シリーズに代表される、いわゆる探索型アクションゲームで、上の画像のようなマップが特徴的です。

このマップでは探索済みのエリアが表示されていて、まだ探索していない場所がどこにあるのか、これまでに探索したエリアのつながりはどうなっているのかが一目で分かるようになっています。
どこへ行けばいいのか分からなくなってしまった時に、このマップを眺めて行けそうな場所を探し出す時間も楽しく、これこそがメトロイドヴァニアの醍醐味のひとつだと私は思っています。

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それはそれとして、『Ultros』を起動し、ゲームプレイをスタートさせると、主人公がよく分からない不思議な空間で目覚めるところから物語が始まります。

うーん、ゲーム開始数十秒のこの時点で既にとんでもなくサイケデリック

そして、この場所が一体どこなのか、主人公は何者なのか、主人公は何故この場所に倒れていたのか、主人公の目的は何なのか……。気になることは山積みですが、こういった基本的な情報については特に何も語られぬまま、物語は進行していきます。

道中、印象的な演出があったりキャラクターたちとの会話があったりはするものの、彼らの発言は抽象的だったり詳細な説明を省いていたりで、掴みどころはありません。
そういった中でも、どうやら「シャーマン」と呼ばれる存在を殺せばいいらしいということがなんとなく分かり、目的達成のためにこの地のどこかにいるシャーマンを探して周囲を探索していくこととなります。

……ちなみにですが、シャーマンが一体何者なのか、何ゆえ主人公がシャーマンを殺さなければならないのかも、この時点ではよく分かりません。

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さて、シャーマンたちの探索の最中には、主人公に様々なスキルを習得させていくことが可能となっています。その内容は、HPの最大値の増加や攻撃力の増加といった基礎ステータスの向上に始まり、攻撃のコンボ数を増やすスキルや攻撃時に相手に毒を与えるスキルなど、多種多様。割と序盤の段階から、結構強力なスキルを身につけていくことができたりします。

これらのスキルは、いわゆる “スキルツリー” の形で管理されていて、習得したスキルに隣接したスキルが次に習得可能となっていくのですが、この獲得方法がまた独特なものとなっていて、結構強烈です。

そんなインパクト抜群なスキル習得方法というのが、敵を食すこと。

主人公によって倒された敵は肉片を落とすのですが、これをムシャムシャと食べることで主人公は栄養を蓄えられ、この栄養素の値が必要量まで蓄積されると、それに応じたスキルの獲得が可能となるのです。

ちなみに、敵の肉を食べると、栄養を得ると同時に主人公のHPを回復させることができるんですが、実はこれが貴重な回復手段のひとつだったりもします。

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色々な技を使って敵を倒すと、バラエティ満点!の文言が

また、これらのお肉は、主人公がどのようにその敵を倒したかによって品質が変化し、獲得できる栄養値と回復できるHP量が大きく変わります。
 
ゲームを優位に進めるために重要な、肉片のクオリティ。それを向上させるための方法は、バリエーション豊かに様々な技を使って敵を倒すこと。これが本作の面白いところのひとつで、ボタン連打のワンパターン攻撃では敵の身体が大きく傷ついてしまい、切り落とされる部位も粗悪なものとなってしまうのです。
このシステムの存在により、敵との戦闘ではいろいろな技を使おうという意識が自然と生まれ、ボタン連打に帰結しない戦闘を楽しめるようになっています。

ちなみに、『Ultros』で主人公が栄養を獲得する方法は敵を食べることだけではなく、植物の実を食べることでも、栄養の獲得と体力の回復をすることができます。
主人公は雑食性。これで、謎だらけの彼女のプロフィール帳に新たな文言を追加することができましたね。

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そんなくだらないことを考えている内に、主人公は “抽出機” と呼ばれるアイテムをゲット。これは、メトロイドヴァニアでは非常に重要な、探索可能範囲が大きく広がる二段ジャンプ使えるようになるアイテムです。この最序盤の段階で入手できるのは珍しい感じがしますが、アクションにも幅が出て探索範囲も大幅に広がるので嬉しいですね。 

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 そして、探索を進めていくと、巨大かつ強大なボスが主人公の前に立ちふさがります。やはり目を引くのは、そのデザインセンス。一度見たら二度と忘れられないんじゃないかと思ってしまうくらいの気持ち悪さと不気味さ。底なしの強烈なインパクトがそこにはあります。

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何とかボスを退け、更に探索を進めたその先には、SF映画などでよく見かける、モンスターが培養されている感じのやつにつながれ眠るシャーマンの姿が。

シャーマンを殺さなければならない。そう聞かされていたので、一体全体どれほど強い敵なのだろうと身構えていましたが、実際に対面したシャーマンは意外なことに完全に無抵抗。培養器のガラスを突き破ってこちらに襲い掛かってくるということもなく、こちらの攻撃を数発当てるだけで、いとも簡単に倒すことができました。話によると、シャーマンはこの1人だけではなく複数いるとのこと。まだまだ道半ばといったところでしょう。

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そして、その後もサイケデリックなカットインや演出に導かれるままゲームを進めていくと、画面には「また新たなるサイクルが始まる」との文言が現れ、主人公はゲーム開始時に目覚めたあの場所で、再び目を覚まします。見覚えのある場所で流れるのは、これまた見覚えのあるムービー。

そう、『Ultros』では、ループが重要な要素となっているのです。

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本作の目的は、ループを繰り返す中で謎だらけの物語の真実に迫り、主人公の物語を結末まで導くこと。

世界がループして新たなサイクルが始まると、ゲームスタート時に時間が巻き戻されているため、前のサイクルで習得したスキルもリセットされており、探索の中で再び獲得しなければなりません。無論、主人公に二段ジャンプをもたらしてくれた抽出機も没収されています。

基本的にはループを越えることができないスキルたちですが、過去のループで習得したことのあるスキルは次の習得に必要な栄養素が少なくなるため、より獲得しやすくなります

つまり、サイクルの中で可能な限りスキルを獲得することにもメリットがあるということで、「どうせループしたらスキル没収されるしな……」と思わずにスキルを習得していくことができるのです。

また、探索の最中に “記憶菌糸体” というアイテムを見つけられれば、これをひとつ消費することで、ひとつのスキルの記憶を定着させることができ、そのスキルを獲得した状態でループを越えられるようにもなります。スキルツリーにおける要所となるスキルや獲得に大量の栄養素を必要とするスキルに使うのが良いんじゃないかなという気がします。

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抽出機

さて、メトロイドヴァニアというゲームジャンルの魅力のひとつとして、主人公が新たな能力を獲得することで探索範囲が広がっていくというものがあります。
探索する中で見つけた、どう頑張ってもその先に行くことができない場所に、新たな能力のおかげで足を踏み入れられるようになる。この快感はメトロイドヴァニアの醍醐味の1つと言えるでしょう。

多くのメトロイドヴァニアの場合、この探索要素の拡大はスキルが増えていくことで実現されていくのですが、先ほどからお話していますように、『Ultros』のスキルは、世界がループするとリセットされてしまいます。

そこで本作において探索スキルの拡大を担うのが、入手すると主人公が二段ジャンプできるようになる抽出機。抽出機には複数種類あり、主人公の行く手を阻む植物を切り落とすことができたり、空中をある程度飛行できたり、地面を掘り起こすことができたりと、れぞれに固有の能力を持ちます

ループを越えた後に入手する抽出機は、何故かこれまでにゲットしてきた抽出機たちの能力を持った状態。どうしてループを越えて引き継がれるものと引き継がれないものがあるのか。その理由こそ不透明ですが、とにもかくにも抽出機のそれぞれの能力を切り替えて、探索可能な範囲が次々に広がっていく過程を楽しむことができます。

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そして、この世界がループすると、マップ内に変化が起きていることもあります。
例えば、前のループで植えていた植物が大きく育ち、その葉が足場となることで前のループでは行けなかった場所に行けるようになったり、逆に、前のループでは通れていたはずの場所が通れなくなっていたりするのです。

メトロイドヴァニアにループという要素を加えることで、メトロイドヴァニアが持つ面白さに更に一工夫を加えようという心意気が感じられますね。

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さて、話の順番は前後してしまいますが、上方向に伸びる植物や、下へ下へと茎を伸ばしていく植物、地に這うようにして伸びていく植物などといった様々な種類があり、ゲーム内の様々なエリアで育てることのできる植物たちもまた、『Ultros』攻略の鍵を握る重要な要素のひとつ。

先程少しだけお話しした、土を掘り進める能力を持つ抽出機を使えば、既に植えた植物の種を掘り起こして別の場所に植えなおすことができたり、植物をすぐに成長させる肥料を掘り起こしたりすることもできるため、どこにどの植物を植えて育てるのかということも大切。本作には謎解きの要素も含まれているのです。

謎解きの要素というと、ゲームのタイトル画面からは、各サイクルのスタートに戻ってゲームプレイをやり直すことも可能となっています。
……このことが意味するところは言うだけ野暮というものでしょう。その先は、是非プレイをして確かめてみてください。

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さて、簡単にではありますが、ここまで『Ultros』の持つ魅力についてお話してきました。SF、ループ、サイケデリック……。目を引くような要素たちから成り立つ本作ですが、これらの要素の中にひとつでもビビッとくるものがあれば、このビビットな世界に一歩足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

『Ultros』は2024年2月13日(火)より発売中。対応プラットフォームはPC(Steam、Epic Games Store)、PS5、PS4。価格は通常版が3,520円、デラックス版が4,950円となっています。

ライター
レトロゲームから最新ゲームまで、面白そうだと感じた家庭用ゲームを後先考えず手当たり次第に買い漁る男。500を越えてから、積み上げたゲームを数えるのは止めました。 ディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画などにも広く浅く手を伸ばし、動画投稿者としても蠢いています。
Twitter:@DuckheadW

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