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オンボロ車をツギハギして不穏すぎる異世界を駆け抜ける『Pacific Drive』は、いつの間にか車が大好きになっているとんでもないローグライクドライブゲームだった

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見知らぬ土地を訪れるロードムービーのような穏やかさと、車で爆走するアクション映画のような高揚感が同時に味わえるお得なゲーム。それが『Pacific Drive』です。

舞台は、危険で不可思議なことばかりが身に振りかかってくる立ち入り禁止区域。一台の自動車を相棒に繰り広げられる冒険の物語はスリリングでありながらも、どこか牧歌的です。これらの相反する2つの要素が上手く混じりあった本作には、プレイを進めていけばいくほど抜け出せなくなってしまう、底無しの魅力がありました。

今回は、本作を実際に遊んでみて感じたところを、プレイした勢いそのままに書き連ねていければと思います。

『Pacific Drive』レビュー:オンボロ車をツギハギして不穏すぎる異世界を駆け抜けるローグライクドライブゲーム_001

文/DuckHead

※この記事は『Pacific Drive』の魅力をもっと知ってもらいたいKepler Interactiveさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


シンプルで分かりやすいゲームシステム

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『Pacific Drive』のゲームの流れは非常にシンプル。

車で各地を探索して素材を集めて拠点に持ち帰り、それらの資材を使って車の部品や道具を作って車や拠点の設備を強化して探索エリアを広げ、新たなエリアで素材を集めて再び拠点に戻って設備開発をする……この繰り返しです。

こういった感じでゲームの主要素を抜き出していくと、「旅をしながらゆったりと各地を巡るほのぼのゲーム」という印象を受ける方がいらっしゃるかもしれませんが、『Pacific Drive』の主軸として据えられているのはサバイバル。主人公が足を踏み入れ、探索をすることとなる場所はとんでもない危険に満ちあふれた場所なのです。

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そもそもの物語の始まりは、主人公が立入禁止のオリンピック半島に足を踏み入れたところから。どういった経緯で主人公がオリンピック半島を訪れたのかは不明ですが、この地は過去に秘密裏に新技術の研究が行われていて、その後に周囲から隔離された危険地帯。この隔離エリアの中を車で突き進んでいた主人公は、突如として発生した謎の光に吸い込まれ、危険と謎だらけのエリアに閉じ込められてしまうのです。

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つまり、プレイヤーの目的は、閉鎖されたオリンピック半島から脱出して現実世界へと戻ること。

脱出すると一口に言っても、主人公が旅するオリンピック半島には明確な異世界感が無い場所も多く、現実世界とはあまり大きく変わりがないようにも感じられ、しばらく車を走らせていると、「ここは本当に危険な場所で脱出不可能なのか……?」という気持ちにもなってきます。

そんな気持ちにすらさせられるこの場所が現世と大きく違っているのは、空間が非常に不安定で、周囲の環境が大きく変わっていくということ。車でその場所を訪れる度に、建物の種類や量が変わっているのはもちろん、エリア探索のスタート地点ですら変わっているなんてこともありますし、エリア探索をしている間にも、突然地面が隆起したり天候が大きく変化したりもします。

ゲーム好きの方に向けて言うならば、要は『Pacific Drive』は『不思議のダンジョン』シリーズなどで知られるゲームジャンル、ローグライクの要素が強いゲームということですね。

普段と変わらぬように見える風景の中に散りばめられたローグライクという異世界感。日常の中に紛れ込んだ非日常感が、ゲームの世界観を盛り上げる良いアクセントとなっているように思います。

愛車と共に歩む旅路

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そして、主人公のサバイバル生活のお供となる相棒がこちらの車。お世辞にも綺麗とは言えない、オンボロ車です。

このエリアに先に足を踏み入れて脱出できなくなってしまった先人たちによれば、これは “レムナント” と呼ばれるもので、この地に迷い込んだ人間の前に時折姿を現し、レムナントと行動を共にした人間はレムナントに取り入れられ、いずれ正気を失ってしまう……とのこと。

過去には、ケトルのレムナントに取り入れられて完全に正気を失ってしまった人もいたんだとか。

……『Portal』のコンパニオンキューブみたいなことなんですかね?

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それはそれとして、相棒たる車の車内の様子がこんな感じ。いやー、このダッシュボードの感じは良いですね。素晴らしいですね。『ナイトライダー』のナイト2000や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンのようなメカニカルな車に心奪われがちな者としては、ただ見ているだけでも自然と心が踊ってしまいます。

この内装の中でも特に良いのが、助手席に取り付けられたレーダー。これは、エリア内にある舗装された道や建物の位置といった大事な情報が多く記録されている、探索をする際には必要不可欠な旅のお供。レトロフューチャーとでも言いましょうか、ハイテクな雰囲気の機械なのに古く錆びている感じがたまらないんですよね。

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さて、このメカメカしい愛車を運転して、プレイヤーは素材を集めたり謎を解いたりするための旅に出るわけなんですが、この地では現実世界では考えられないような不可思議な現象ばかりが発生します。なんと、車を拠点から前に進めたが最後、後戻りをするということができません。

同じエリア内であれば、これまでに前進してきた道をバックで引き返したとしても何も怒られはしないんですが、そこから1m次のエリアに車を進めてしまったらもうオシマイ。この旅路の間にそのエリアに戻ってくることは不可能になってしまいます。

となると、一度旅立ったら後戻りできないこの場所で拠点に帰るためにはどうすればいいのかが気になるところですが、その唯一の方法というのが、“アンカー” と呼ばれるエネルギー体を回収して、“ゲートウェイ” と呼ばれる脱出口を開くこと。

エリア内の各所に置かれているアンカーを回収し、車の助手席に置かれた機械にセットすることでエネルギーを蓄積することができ、これがエリアごとに設定された値を越えると、ゲートウェイを開く権利がプレイヤーに与えられます。

まだまだ奥に進んで探索を続けたい時にはゲートウェイを開く必要はありませんが、今回はもうここまでかなと思ったら、助手席のレーダーを使って、いくつかあるゲートウェイ候補ポイントの中から1つの場所を選んで、景気よくゲートウェイを解放してしまいましょう。

そして、ゲートウェイを開いた後に考えることは、ただ一つ。

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とにかく車を走らせる!それだけ!

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開かれたゲートウェイは、その中心から天空へ向かって極太の光が伸びており、遠くからでも容易に目視で確認することができるんですが、ゲートを開いた時点で、主人公の近辺は非常に不安定な状態となり、巨大な嵐が発生。この嵐はとてつもない猛スピードでエリア全域を巻き込んでいき、これに呑まれてしまうと、人体も車もぶっ壊されてしまいます。

この嵐に巻き込まれる場合に限った話ではありませんが、主人公の体力がなくなってしまうと、探索は失敗。そうなってしまった場合、理由は全く分かりませんが、愛車が主人公を守って拠点にまで連れ戻してくれます。

ただ、こういったローグライクゲームの常として、探索が失敗した場合、それまでにゲットしていた素材は失われてしまいます。これまでにかけた労力を全て水の泡にしないためにも、何がなんでも生きてゲートウェイの光の中にその身を飛び込ませなくてはならないのです。

この時に感じられる焦りの凄まじさは往年の名作『ワリオランド アドバンス』さながら。『ワリオランド アドバンス』とは違ってステージ脱出までの制限時間が具体的な数値として画面上に表示されることはありませんが、周囲の様子が瞬く間に変わっていくのですからたまりません。上の画像にもある通り、最終的には周囲が赤色に包まれて、車も主人公もダメージを受け続け、最終的に待ち構えているのは「探索失敗」というバッドエンド。コントローラーを握りしめる手にも汗が滲みます。

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そして、主人公の体力が尽きる前にゲートウェイに辿り着ければ、車ごとまとめて拠点へワープ。無事に旅を終えた主人公は、集めた素材と共に無事に帰還することができ、束の間の休息の時が訪れます。

帰る間際に車を飛ばしに飛ばすハラハラ感と、無事に帰りつくことができたときの安堵感。脳内に汁が溢れていくこの感覚は、東京ディズニーランドにあるアトラクション『スター・ツアーズ』かのよう。伝わらなかったら……ごめんなさい。

ちなみに、いくつか候補地があるゲートウェイですが、今いる場所から近すぎる場合、そこにゲートウェイを開くことはできません。この一心不乱に車を爆走させる過程は、ほぼ毎回必ず発生することになるのです。

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こんな感じなので、探索を終えて拠点に帰ってくるときは、主人公も愛車もプレイヤーもボロボロになっていることがほとんど。主人公は拠点に置かれている救急箱を開けば体力が全回復しますし、プレイヤーはちょっと休めば体力が回復するので楽なものですが、愛車に関しては、そう簡単な話では済まされません。

主人公の操る車は、ドア、パネル、タイヤといったパーツに細かく分けられていて、それぞれに耐久値が設定されています。この耐久値が低くなっている部品については、修理をしてあげる必要があります。

そして、この修理をする時に忘れてはならないのが、愛車を修理する道具自身も、探索中に集めた素材で作らなければいけないということ。つまり、探索に失敗していたり、探索先で素材を十分に集められておらずに修理道具を作ったりすることができない場合、修理のしようがないのです。

もっと言ってしまえば、そもそも修理ではどうしようもないくらいに破損していて、パーツとしての寿命が尽きてしまっているということもあります。

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こうなってくると、パーツ自体を交換してしまうより他に道はありません。

修理目的に限らず、車の装甲のアップグレードという意味でもパーツ交換は探索における重要事項。無論、これらの交換パーツを作る時にも素材が必要不可欠ですから、車の損傷具合と手持ちの資材を見比べて、新しくパーツを作るべきなのか、ひとまずパーツを修理してこの場を切り抜けるべきなのかを考えなければなりません。この次の探索に向けて計画を立てている時間こそが、『Pacific Drive』の楽しい一時だったりもします。

修理にパーツ交換と手がかかる愛車ですが、その分、愛着もわいてくるというもの。不思議なもので、この車と出会ったばかりのころは、何の変哲もないただのオンボロ車にしか見えていなかったのですが、気が付けば時間の許す限り一緒に旅を続けていたいと思うようになっていました。これもまた、奇妙なことばかりが起きるこのエリア特有の現象なのかもしれません。

……いよいよ、我が愛車からコンパニオンキューブ感が出てきたような気がします。このエリアから脱出するために、じっくりと素材を集めて奥地へ車を進めていく孤独な戦い。愛車に名前なんかつけだしてしまった日にはもう、人間性に限界が訪れているのではないでしょうか。

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ちなみに、持ち帰った資材やアンカーのエネルギーを使えば、車のパーツだけでなく、より高性能な車のパーツを作るために必要な設計図や、拠点となるガレージや車の機能を拡張させるアイテムを作ることも可能。

コツコツと集めた資材を使って車と拠点をパワーアップし、コツコツと奥地への探索を進めていく。この少しずつ進んでいくゲーム性が本作の魅力であると言えます。

危険ばかりのゾーン探索

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さて、愛車を走らせて探索をするエリアは、プレイヤーが好きなように決めることができます。素材を集めるために旅に出ても良し、メインストーリーを進めるために指定されたエリアを目指すも良し、目的もなくただ車を走らせても良し。

どの選択肢を取るにせよ、大事なのは行き先がどういう状態になっているかということ。『Pacific Drive』がローグライクであることは先ほどもお話した通りですが、周囲の環境はそのジャンル名に恥じぬ変わりっぷりを見せ、ドライブをする度に異なる展開が待ち受けています

そこで大事になってくるのが、車を走らせる前にルートプランナーを起動して見るルートマップ。ここには、各エリアにある資材・建物・乗り捨てられた車の量やゾーンの不安定さといった情報を確認することができます。

これを見ることで、「安定してる今が攻略のチャンスだな」とか「余りにも危なすぎるから今回は控えよう」とか、「素材を集めるためには危険を冒してでも行くしかないか……」といった感じで、今後のプランを組み立てることができます。

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そして、計画を立てて意気揚々と走り出したプレイヤーを待ち受けるのは、危険しかないスリルドライブ。サバイバルゲームの名もまた伊達ではありません。ルートマップを見ながらウッキウキで組み立てた夢のドライブ計画が、突如として発生した不測の事態で脆くも崩れ去ってしまうというのが、この世界の日常なのです。

まず、見た目的にも分かりやすいところで言うと、周囲が緑色に包まれた場所は激ヤバです。素材を集めるためには車を降りて車を降りて自分の足と手を使って探索をする必要があるんですが、この状態の場所で車外に出ると、体力が次第に削られていってしまいます。車内にいればある程度体力減少を抑えられはしますが、車は時間経過とともに損傷が激しくなっていきますし、車の保護が限界に達すると主人公にもダメージが入ってしまいます。

こんな場所、できることなら通り抜けたくない……んですが、ただその辺をうろついて資材を探していただけなのに、何の前触れもなく発生した嵐に巻き込まれ、気が付いた時には周囲が緑一色になっているなんてこともあります。

この嵐が発生しやすいかどうかについても、先ほどのエリア情報を見れば確認することが可能。改めて『Pacific Drive』は、情報の把握と綿密な行動計画が大切なゲームであると言えるでしょう。

また、愛車はこんな感じの見るからに危険な場所だけでなく、舗装された道路から外れたオフロードで岩や木にぶつかることでも傷ついていきます。本音を言えば、舗装された走りやすい安全な道だけを走って優雅なサバイバルライフを堪能したいところではあるんですが、ドライブを続けていると、どうしても悪路を走らざるを得ない局面に度々遭遇することとなります。

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そのオフロードを走らざるを得ない場面の最たる例が、探索を終えて拠点に帰還するべくゲートウェイに向かって車を走らせている時。多くの場合、舗装された道を進むなどという遠回りをしていてはとても間に合いません。源平の一ノ谷の戦いのように、チーズ転がし祭りのように、もうほぼ崖なんじゃないかと思ってしまうような山の急斜面の道を車でアクセルベタ踏みのまま爆走しなければならないのです。

車の正面、フロントガラスからプレイヤーが見渡せる範囲は限られていて、ひとたび目の前が崖になってしまうと、その先がどうなっているのかは分かりません。かと言って、車から降りて先を確認している暇はない。一か八か崖に向かって飛び出した結果、その下で男梅のように鎮座した巨大岩石に激突し、ゾーンに巻き込まれることなく車がボロッボロになってしまったりもします。時間をかけた探索の最後の最後でこういった大事故が起こってしまうと、マジで軽いパニック状態に陥りますね。焦りは何も生まないということは重々承知しているんですが。

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ツーリスト

そして、『Pacific Drive』においてプレイヤーを待ち受ける脅威は周囲の環境だけではなく、このゲームにも、ちゃんと敵キャラクターが登場します。これらの敵は “アノマリー” と呼ばれる存在で、例えば上の画像の道路上におびただしい数設置されたアノマリーの名は “ツーリスト” 。現代彫刻家のような佇まいをしていて、こちらに向かって走ってきたりすることはないツーリストですが、主人公が刺激を加えると思いっきり爆発します。

もし、そんなツーリストを車で轢いてしまったら……。その後ドライバーが迎える結末は語らずともお分かりいただけるでしょう。

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その他のアノマリーの中で、私が絶対に許せないのが上の画像のコイツです。名前すらも呼びたくないレベルで嫌いです。コイツは、西部劇とかでよく見る回転する枯草、タンブルウィードのようにエリア内を移動しているアノマリーで、車を見つけると飛びついてきて、愛車をでたらめに操縦してしまうのです。

コイツが取りついたことで、安全な場所に駐車していたはずの愛車が移動し、路上を動き回る回転ノコギリにメッタ切りにされていたのを見た時は、思わず叫んでしまいました。比較的温厚な性格の私ですが、この時ばかりは、はらわたが煮えくり返るかと思いましたね……。路上を動き回る回転ノコギリって何だよ。

さて、こういった不届き者たちが各所に存在していることでダメージを受けてしまうことが多い愛車ですが、特にヤバいのがタイヤが壊れてしまった時。

言うまでもないことかもしれませんが、1つのタイヤが損傷しただけでも、車を先に進めることがかなり難しくなり、ドえらいことになります。そこから更に損傷の向こう側、修理の施しようがない破損状態になってしまっていたとしたらもう絶望。残りのタイヤで無理矢理車を引きずってドライブを続けなければなりません。

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……しかし、そんなタイヤの破損よりも恐ろしいアクシデントが、この『Pacific Drive』には存在しています。

そんなとんでもない緊急事態が発生した瞬間を押さえたのが、上の画像。残念ながらこの写真からは一切伝わってきませんが、これは車が何の前触れもなく急停車した直後であり、私はメチャクチャ焦ってテンパりまくっています。

愛車の急停車だけでも中々に嫌な状況ですが、更に私を焦らせたのが、この異常事態がエリア踏破直前に発生したということ。画面上に見えている青い光はエリア踏破の印であり、このライトの先へ車を進めると、次のエリアへ移動することができるのです。

そんな希望の光を目の前にしての相棒の急停車。それまでのプレイでも散々色々なやらかしをしてきましたが、こんなにも唐突に愛車が動かなくなってしまったパターンは初めてでした。浅い知識の中で必死に考えを巡らせ、思考の届く範囲で車の各所や周囲を調べてみるも、異常らしきものはありません。

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とてつもない不安感と焦燥感の中、最終的に判明した急停車の原因は……ガス欠。

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そして男は旅に出た。愛車を残して旅に出た。ガソリン求めて旅に出た……。

……完全にやらかしました。普段であれば、道中にある廃車からガソリンを拝借して補給していたんですが、何故かこの時は何も考えずにのほほんとドライブを楽しんでしまいました。まさか、よりによってこのタイミングでガソリンが尽きるとはな!

いやー、周囲に車やガソリンタンクがあればいいんですけどね。どこにもないこともあるんですよね。廃車やガソリン道路を歩いて夜道を彷徨うも、一切の収穫無し。よりにもよってこの後に外せない用事が控えていたということもあり、泣く泣く探索を諦め、探索の失敗を選択。ボロボロになった愛車と共に拠点へ戻るという、考えうる中で最悪のバッドエンドを迎えることとなりました。

この時の徒労感は、そりゃあもう物凄かったですね……。『Pacific Drive』、何かにつけて感情が大きく揺さぶられるゲームです。

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ということで、ドライブに出かける前には絶対にガソリンを補給しましょう!初歩中の初歩ですが、だからこそ忘れてはいけない、大切な教訓です。

このガソリン残量のほかにも、バッテリーが充電されているかどうかとか、ゾーン嵐が来ていないかどうかとか、車がどのくらい損傷しているかとか、車の停車位置が敵に攻撃されない場所かどうかとか、もし不意に攻撃されてしまったとしても大惨事にはならない場所だろうかとか、ドライブ中に注意すべきことは無数にあり、「やることが……やることが多い……!!」というセリフが自然と口をついて出てしまうのも、やむを得ないでしょう。

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そして、何よりも恐ろしいのが、色々なところに注意を払い続けて慎重にドライブをしていたのに、1つだけ発生したちょっとした些細なミスで全てが崩れ去ってしまうことが普通にあるという事実。

純粋に私がヘタクソなだけなのかもしれませんが、このゲームは死にながら、探索に失敗しながら生き残るために大切なことを覚える「死にゲー」の要素もかなり含まれているように思います。

こういったゲーム性とプレイヤー性能ですから、ゲームを始めたばかりのころはミスが大量発生し「キッツイわ……このゲーム……」なんてことを考えながら遊んでいたのですが、遊び続けている内にじわじわとこの世界の面白さに引き込まれていき、没入感が加速度的に上昇。

ゲームを進めていくことで、最初は何が何だか分からなかった謎だらけのこの世界に対する知識が増え、攻めてもいいところと退いた方がいいところの線引きが見えてくるようになり、ゲームがより楽しくスムーズに進んでいくようになりました。

改めて、「人間とは新たな環境であったとしても慣れて順応していく生き物なんだな」と。サバイバルの本質はそういったところにあるのかもしれません。

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さて、『Pacific Drive』は、ロードムービーの冒頭のようなゆったりとした穏やかな雰囲気で進められるところもありつつ、カーアクション映画さながらの激しさも併せ持つ、独自路線のサバイバルローグライクゲームでした。

この穏やかさと激しさは非常にメリハリがあり、それぞれの要素がゲームをプレイする上での良いアクセントとなっていて、強い中毒性を生み出しています。本作を遊ぶことで味わえる、次第に世界の中に吞み込まれていき没入していく感覚は、非常に楽しいものでした。是非、一度プレイしてみてはいかがでしょうか。
 
……私はもうしばらくの間、愛車パシフィック号と共に旅を続けていきたいと思います。

『Pacific Drive』は2024年2月22日より発売中。対応プラットフォームはPC(Steam、Epic Games Store)、PS5。価格はPS5版が4,180円(税込)、Steam/Epic Games Store版が3,400円(税込)となっています。

ライター
レトロゲームから最新ゲームまで、面白そうだと感じた家庭用ゲームを後先考えず手当たり次第に買い漁る男。500を越えてから、積み上げたゲームを数えるのは止めました。 ディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画などにも広く浅く手を伸ばし、動画投稿者としても蠢いています。
Twitter:@DuckheadW

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