3月13日は『魂斗羅 Dual Spirits(デュアルスピリッツ)』が発売された日だ。
『魂斗羅 Dual Spirits』は、1987年にアーケード用タイトルとして誕生したアクションシューティングゲーム『魂斗羅(コントラ)』の一作。シリーズとしては、2004年発売の『NEO CONTRA(ネオコントラ)』(PlayStation 2)以来、約3年半ぶりの新作として、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」向けに発売された。『魂斗羅』シリーズの生誕20周年を記念した作品でもある。
ストーリーは1992年発売のシリーズ第3作『魂斗羅スピリッツ』(スーパーファミコン)の2年後が舞台。復興途上の地球に襲来したエイリアン「ブラックバイパー」にビル・ライザーを始めとする「魂斗羅チーム」が立ち向かうというものである。
この設定から海外では『Contra 4』と、『魂斗羅スピリッツ』(海外版:Contra III: The Alien Wars)の続編であることを明確にした名で発売されている。ちなみに海外版(北米版)は2007年11月13日に発売。日本語版は約3ヶ月ほど遅れての発売となった。
内容も『魂斗羅スピリッツ』のほか、初期の『魂斗羅』シリーズに準じた横スクロールのステージクリア型アクションシューティングゲームになっている。
システム、アクション面でも『魂斗羅スピリッツ』で初採用された武器の2丁持ち、壁や天井をつかんでの移動が継続採用されている。反面、ストック可能な全体攻撃武器「ボム」、周辺に弾丸を照射する「乱れ撃ち」は廃止(※前者はドロップアイテムとして「スマートボム」が登場)。初期装備「ノーマルガン」も連射速度が下げられ、初代『魂斗羅』とその続編『スーパー魂斗羅 エイリアンの逆襲』(以下、スーパー魂斗羅)と同程度の性能に戻された。武器に関しても、同じ種類のものを2つ続けて取るとパワーアップする、アーケード版『スーパー魂斗羅』にあった要素が採用されている。
新要素もあり、象徴的なものでニンテンドーDSの2画面をフル活かした”ぶち抜き構造”のステージがある。上下の画面が常時連結しており、敵もそれに準じた攻撃や現れ方をしてくるのだ。そのため、どのステージでも2画面の状況を見極めつつ対応していく形で、プレイヤーの(肉体的な)視野の広さが試される。
また、上画面への移動を瞬時に行う新しい装備として「グラップリングフック」が登場。特定のポイントに目がけて射出すると、その場へとプレイヤーが移動してくれる。ただし、射出できるのは上方向固定で、斜め方向は非対応。頭上にいる敵を攻撃する武器としての使い道もない。完全な移動専用の装備で、潔く割り切った設計になっている。
ゲームモードも本編「アーケードモード」のほかに「チャレンジモード」を収録。40もの小さなミッションに挑む腕試し的なモードで、難易度を問わず「アーケードモード」のクリアでプレイ可能になる。このミッションを一定数クリアすると新しいプレイアブルキャラクター、海外ファミコン(NES)版の『魂斗羅(Contra)』、『SUPER魂斗羅(Super C)』といったボーナスコンテンツが解禁。NES版の2作は実際に遊ぶことも可能だ。
他にAボタンで装備中の武器を捨てることが可能になったり、初代『魂斗羅』にあった疑似3Dのステージ(フロントビューステージ)が真の3Dステージとして再登場するといった多数の見所がある。
全体的に「原点回帰」のコンセプトを強く感じさせられる作品で、初代『魂斗羅』や『スーパー魂斗羅』を正統進化させた、これぞ”ラン&ガン”なアクションシューティングゲームに仕上がっている。相応に難易度も高く、一番簡単な「イージー」では途中のステージでゲームが終了。その先のステージおよびラスボスに挑みたければ「ノーマル」以上での挑戦を余儀なくされる。しかも全難易度、ゲームオーバー後のコンティニューは有限【※】のため、エンディングを目指すならば文字通りの「熱き斗魂」が欠かせない。
※イージーで5回、ノーマルで4回、ハードで3回となっている。
おかげで大変硬派な手触りだが、コツをつかめば力押しが効く柔軟性を持ったゲームバランス、2画面ぶち抜き構造ならではのダイナミックな演出、そして芸術的なドット絵で描かれたグラフィックと、完成度は高い。ジェイク・カウフマン氏【※】作曲による音楽も名曲揃いに加え、効果音にいたっては機械系の敵に弾丸を撃ち込むと、ファミコン版『魂斗羅』および『SUPER魂斗羅』と同じ命中音が鳴るファンサービスも仕込まれている。
※ジェイク・カウフマン(Jake Kaufman):virt名義でも活動するアメリカのゲーム音楽作曲家。代表作に『シャンティ』シリーズ、『ショベルナイト』など。大の『魂斗羅』ファンとしても知られる。
ファンサービスはそれに限らず、他にも前述した真の3Dステージ、懐かしのボス、難易度「ハード」で遊ぶと聴ける楽曲「密林の戦い」など盛りだくさん。その凝り様には開発スタッフの『魂斗羅』に対する重すぎる愛を実感すること請け合いである。
そんな本作を開発したのは、アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くWayForward Technologies(ウェイフォワード・テクノロジーズ)。
同社は本作を手がけて以降、『魂斗羅』シリーズからは遠ざかっていたが、2024年3月12日発売の『魂斗羅 オペレーション ガルガ』(PlayStation 5|4、Xbox Series X|S、Xbox One、Nintendo Switch、PC)で15年ぶりにKONAMIとのタッグを結成。ゲームプレイ全般に現代的なアップデートを施した初代『魂斗羅』のリメイク作を送り出した。
『魂斗羅 オペレーション ガルガ』は全プラットフォームで無料の体験版も配信中。体験版をクリアすると、製品版で「魂斗羅コイン300枚」と「オルタナティブサウンド/WayForward Mix(魂斗羅 Dual Spirits)」をゲットできるようになる。
残念ながら、『魂斗羅 Dual Spirits』はニンテンドーDSのハード特性をフルに活用した作りの都合、今後の現行ハードへの復刻は見通せない。本稿執筆時点では中古市場の価格も高騰していて、オリジナル版をプレイするハードルも非常に高くなってしまっている。
しかしながら、『魂斗羅 オペレーションガルガ』を通して、評価された音楽やウェイフォワード・テクノロジーズの『魂斗羅』への愛の重さは十分に体験できる。興味があれば、ぜひお試しいただきたいところだ。