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コンテンツ産業の人材育成と市場開拓を担う「VIPO」が行うインディーゲーム支援。gamescom2022への出展やピッチイベントの開催も

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NPO法人IGDA日本は、6月20日にゲーム産業と政府との関係に焦点を当てたセミナー「知らなかったでは済まされない、日本・世界のゲーム産業政策の現況と活用法」を東京・新宿にある東京国際工科専門職大学で開催した。

今回のイベントでは、アジアのゲーム産業の状況紹介やスウェーデンのインキュベーションプログラムの事例紹介、インディーゲーム開発者支援策、戦争状態にある国で行われているゲーム開発など、幅広いテーマでセッションが行われている。

こちらの記事では、映像産業振興機構の内島靖人氏によるセッション「VIPOのインディーゲーム開発者支援策とJLOX+事業ご紹介」の模様をレポートする。なお、また、別記事ではそれ以外のセッションについてもレポートしているので、合わせてチェックしてほしい。

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▲映像産業振興機構 内島靖人氏

取材・文/高島おしゃむ


コナミやスクエニも会員の「VIPO」とは?

内島氏が所属する特定非営利活動法人映像産業振興機構(Visual Industry Promotion Organization)は、英語の頭文字を取って通称VIPO(ヴィーポ)と呼ばれている。

設立は2004年で、経団連のエンターテインメント・コンテンツ産業部会の発案で生まれた団体だ。その目的は、日本のコンテンツ産業を国際競争力のあるものにし、日本経済の活性化に寄与することである。

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VIPOには映像系の会員の割合が多いほか、ゲーム業界も含まれている。例として、カプコンやコーエーテクモゲームズ、コナミデジタルエンタテインメント、スクウェア・エニックス・ホールディングス、トーセ、ドリコム、コンピューターエンターテインメント協会などが挙げられる。

また、監事理事には辻本春弘氏、理事には辻本憲三氏や早川英樹氏など、監事理事4名中1名、理事29名中2名がゲーム業界から選ばれている

VIPOの主な事業は、人材育成と市場開拓だ。主に省庁や自治体からの受託事業をメインにしており、自主事業として行っている割合は少ない。

映像系の事業の割合も多く、特に人材育成はすべて映像系のものだ。ゲームに関しては、市場開拓のJLOX+という補助金事業の中で、一部補助金やビジネスマッチングを行っている。

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INDIE Live Expoなどと共同で「gamescom2022」ジャパンパビリオンへの出展など、インディーゲームを支援。ピッチイベントの開催や現地企業の訪問も実施

VIPOが本格的にインディーゲームの支援を始めたのは2022年からだ。2018年頃からインディーゲーム業界との付き合いがあったとのことで、2022年にはINDIE Live Expoなどと共同で「gamescom2022」のジャパンパビリオンに出展。こちらには、一般公募した14作品とスポンサー企業の16作品の展示と紹介を行った。

また、昨年はVIPOの完全自主事業として「VIPO Indie Game Pitch Showcase」を実施している。こちらは「BitSummit」のビジネスデーに実施されたもので、5つのデベロッパーがピッチ(短時間のプレゼンテーション・提案)を実施。その名の4組は、なんと英語でピッチを行っている。

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ルーディムスと共同で開催したのが、スウェーデン・ゲームビジネス・テクニカルツアーだ。参加企業はサイバーエージェント、コトブキソリューション、アニプレックスの3社で、ストックホルムとジェブデで現地の企業を訪問したほか、「Sweeden Game Conference」にも参加している。

このツアーの中でも、内島自身が印象に残っているのが「Sweden Game Pitch」だったという。20組が参加するこのコーナーではひと組当たり5分でピッチが行われており、資料のレベルも高かったとのこと。会場内にオーディエンスがたくさん居たほか、生配信も実施されていた。

これは、スウェーデン国内ではマーケットが小さいことから「外から仕事を取ってくる」という意識が高いことも影響しているそうだ。さらにスウェーデンは英語教育のレベルが高く、ネイティブレベルで英語を話すことができる人が多いという点も強みとなっているようだ。

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また、昨年開催された「Indie Developers Conference 2023」に、ブロンズスポンサーとして協賛を実施している。VIPOではクリエイターの支援もしていきたいと考えており、こうした協賛も積極的に行っていく予定だ。

「台北ゲームショウ2024」の現地ではパブリッシャー向けのピッチイベントがあり、そこにVIPOとして『Death the Guitar』『ジオラマナイト』が参加し、今年度も「gamescom」のジャパンブースに出展。20作品の応募の中から、外部の有識者により『Wizardry外伝 五つの試練』『ほりほりドリル』『CUBEN』の3作品が選ばれている。

今後の展望としては、ピッチイベントの定着化とジャパンブースのジャパンパビリオン化、ジャパンパビリオンの複数回出展などを行いたいと考えていると語った。

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法人限定ながら、インディーゲーム開発者向けにふたつの補助金メニューを用意。「海外渡航や出展・参加、会場・施工、事業運営、広告宣伝、ローカライズなどに関する費用」と幅広い補助金、プロトタイプ制作用の補助金も

最後に紹介されたのが、JLOX+として実施している補助金の紹介だ。

インディーゲーム開発者への補助金には、ふたつのメニューがある。ひとつは、海外向けローカライゼーション&プロモーション支援で、もうひとつが国内映像企画開発を行う事業(プリプロダクション支援)だ。このふたつは応募は法人限定かつ、補助率は1/2。つまり、現状は個人が応募することはできない

海外向けローカライゼーション&プロモーション支援として補助金の対象となるのは、海外渡航や出展・参加、会場・施工、事業運営、広告宣伝、ローカライズなどに関する費用だ。

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補助金には上限が決められており、1案件につき最大2000万円の助成を受けることができる。なお、複数案件応募することも可能だが、1社当たりの上限は総額4000万円となっている。

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▲こちらは補助金の申請事例。大手ゲーム会社以外にも、ローカライズやプロモーションで補助金の申請が行われている。

もうひとつの国内映像企画開発を行う事業(プリプロダクション支援)は、ゲームのプロトタイプを作るための補助金だ。こちらは、あくまでも本制作を行うための資金調達やパートナー獲得のためのVerticalslice版を作るための費用を支援するものである。

対象となるのは企画開発に関する費用で、渡航費のみの応募はできない。また、社内人件費についても費用に含まれるが、健保等級単価で算出されるものに限られている。補助金の上限額が1案件につき1000万円、1社あたりの上限額は2000万円となっている。

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応募の受付期間は全部で4回。第3回は6月8日からすでに開始しており、締め切りは7月12日で、その次は7月13日から8月23日まで。あわせて事業期間も定められており、こちらは2025年1月31日までとなっている。

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このプロトタイプ作成のための補助金の存在は、あまりゲーム業界で知られていないということもあり、活用事例もほぼ無い状態とのこと。そのなかでも存在する活用事例が、E-ONEが申請した『ムゲンノキリコ(仮称)』のプロトタイプ開発である。

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こうした補助金に関する説明会や個別相談会も実施されている。説明会についてはすでに終了しているものの、ホームページから説明動画が見られるようになっている。また、個別相談会についても、サイトの問い合わせから質問することもできるようになっているそうだ。さらに、7月19日に開催される「BitSummit」ビジネスデーでは出張個別相談会も実施される。

最後に内島氏から、今後の展望として「申請要件の緩和の検討」、「ゲーム業界団体やゲームイベントとの連携」、「補助金の周囲や活用の促進も行っていく」という3つのポイントが紹介され、セッションは締めくくられた。

ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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