実はテレビアニメと深い縁があるゲームの特典ゲーム『この素晴らしい世界に祝福を! Attack of the Destroyer』
そして、おまけの3本目として紹介するのが『この素晴らしい世界に祝福を! Attack of the Destroyer』(以下、Attack of the Destroyer)だ。これはテレビアニメ版のBlu-ray&DVDに同梱された特典ゲームではない。ゲームに同梱された特典ゲームだ。
具体的には2017年9月、初の家庭用ゲーム機向けの新作ゲームとして発売された『この素晴らしい世界に祝福を! この欲深いゲームに審判を!』(以下、欲深いゲームに審判を!)の特典ゲームとして同梱された。供給形態はダウンロード専用で、『欲深いゲームに審判を!』に付属するプロダクトコードを入力することでプレイ可能になる。また、PS4版のダウンロード版であれば、セットで本作が無料で付いてくる。
ジャンルは1期のRPG、2期のアクションゲームからさらに打って変わって縦スクロールのシューティングゲームとなる。ストーリーに関しては、テレビアニメ1期のシチュエーションの設定に留められていて、本編において詳しく語られることはない。
遊び方としては、カズマたちを始めとするキャラクターを操作し、襲い来る敵をショット攻撃などで迎え撃ちながら、ステージ最後に現れるボスの撃破を目指す。
シューティングゲームとしては定番の作りだが、陸地を進んでいくスタイルになっており、その関係で行く手を阻む障害物、移動速度を遅くする&攻撃を封じる池などが登場する。
また、障害物は破壊することが可能。爆弾岩の爆破、サポートキャラクター(後述)のスキル使用のいずれかを実施すると壊れ、その場所が進行できるようになる。
さらにステージ中には、ウィズが経営する魔道具店が出現。敵を倒した際などに手に入るお金を支払うことで、ステータスアップを図るアイテムを購入できる。全体的なゲームデザインとしては、RPG由来の要素をブレンドしたものになっている感じだ。
最大の見所はキャラクターたち。本作ではカズマのほかにアクア、めぐみん、ダクネスの3名に加え、ゆんゆん、クリスの2名が操作可能。そして、それぞれの個性付けが非常に尖っていて、シューティングゲームとしても珍しい遊び応えを提供するのである。
特に面白いのがダクネス。元々の設定にちなんで、剣による近接攻撃で戦うスタイルで、「シューティングゲームとは……?」との大いなる疑問を抱かせる存在になっている。
また、初期設定では原作小説やテレビアニメ版とは違って攻撃が命中するのだが、オプションに用意された「PONKOTSU(ポンコツ)」を選ぶことにより、原作小説とテレビアニメ版同様、攻撃が一切命中しない状態にできる。しかも、この設定でもちゃんとゲームクリアが可能という、驚愕のバランス調整が図られている。
「そんなバカな!?」と思うかもしれないが、本作はプレイヤーとして選択しなかったキャラクターがサポートキャラクターとして各ステージ内に登場。そのまま仲間にすることで、それぞれが持つ「スキル」が使用可能になるのだ。
なので、ポンコツ設定であっても、攻撃系スキルの持ち主をサポートにしていれば、クリアの可能性が残るようになっている。
言うまでもなく、難易度は通常プレイ時よりも格段に上昇するが、その異様な戦闘スタイルと、それを踏まえた立ち回りはシューティングゲームに手慣れたプレイヤーすら困惑必至。前代未聞のドM体験を味わえるキャラクターになっている。
ダクネスに限らず、めぐみんも使い魔の「ちょむすけ」を攻撃時に操作し、当人は非攻撃時にしか動かせないという非常に尖った調整がされている。逆にカズマは個性付けが弱いが、その分、普通のシューティングゲームとして遊べる強みを持つ。
そして、キャラクターの性能が尖っている分、周回プレイでの変化も激しく、1回クリアしただけでは終わらない底の深さがある。ステージ総数も6つで、クリアに要するのも15~20分ほどと、周回プレイが苦になりにくい規模で、やり込みの楽しさを引き立てている。
「『このすば』でシューティングゲーム……?」と、第一印象では怪訝な目で見てしまいやすい。しかし、ジャンルの醍醐味はきちんと押さえているのに加え、尖りすぎたキャラクター性能によって、他のシューティングゲームにはない独自性と、ステージ攻略の楽しさを演出している。とりわけ怪訝な印象を持ったままプレイすれば、その意外な完成度の高さに3倍の衝撃を受けるはずである。
なので、本作は『このすば』を知らない人にこそ遊んでみていただきたい。しかも、この特典ゲームに関しては2024年現在もプレイ可能。『欲深いゲームに審判を!』を購入すれば、必ず手に入る。初回限定生産版の特典ではなく、PS4向けの通常版(ダウンロード版)の特典として、2024年現在の今なお展開され続けているのだ。
特にシューティングゲーム好きならぜひ、プレイいただきたい。誇張抜きに良作と言ってもいい代物だ。制作を『チェルシーさんは7の魔神をブッ殺さねばならない。』、『GUNDEMONIUMS』(ガンデモニウムス)などを代表作とする「PlatineDispositif」(プラチネ ディスポジティフ)が担当しているという情報だけでも、ジャンル好きならその出来栄えを察せるだろう。
なお、プラットフォームはPS4とPS Vita。PS4版は、最新のPS5との互換に対応していることから、そちらでも普通にプレイ可能である。
しかし、なぜゲームの特典ゲームをピックアップしたのか?実は『欲深いゲームに審判を!』自体がテレビアニメ2期の最終話で、初めて発表された作品だったのだ。
さらにテレビアニメ2期の放映終了後、テレビアニメ1期が日曜日の午前帯に再放送されるという出来事があった。
だが、リアルタイムでテレビアニメ1期を視聴した人は、その報せを耳にした時に大きな懸念を抱いたかと思われる。
「9話を午前帯に放送するというのか!?」と。
詳しくは「Amazonプライム・ビデオ」などで配信中のテレビアニメ1期9話を直接ご覧になっていただければ分かるが、なんというか……その……「すんごいこと」になっていたのだ。すんごいことに。
結果的に9話は午前帯の再放送ではカットされ、代わりにカズマ役の福島潤さんとめぐみん役の高橋李依さんがパーソナリティを務める「このすばラジオ」の出張版が放送。そこで本作、『Attack of the Destroyer』を体験する一幕があったのだ。ちなみにその場限りのゲストとして、16連射でお馴染みの高橋名人も登場した。
そんなこともあって、割とテレビアニメ版との縁が深い特典ゲームなのである。
上がり続ける特典ゲームを遊ぶハードル。そして、まだまだ『このすば』にはチャレンジして欲しいジャンルがある
以上、2作+1作をピックアップしたが、他にも『この素晴らしい世界に祝福を!~この駄女神に教育を!~』(以下、この駄女神に教育を!)、『この素晴らしい世界に祝福を! カズマの飛び出せ大冒険!』(以下、カズマの飛び出せ大冒険!)という特典ゲームが存在する。
また2024年現在、『このすば』のゲームは家庭用ゲーム機およびスマートフォンでの展開が主流になっており、特典ゲームで見られたインディーゲーム風の新作はご無沙汰となってしまっている。
さらにテレビアニメ1期が放送されたのは8年前、テレビアニメ2期が放送されたのは7年前。いずれのBlu-ray&DVD限定版1巻(および以降の巻)も新品の流通は大幅に減り、同梱された『in the life』と『復活のベルディア』共々、遊ぶハードルが大幅に上がってしまっている。『Attack of the Destroyer』と『この駄女神に教育を!』、『カズマの飛び出せ大冒険!』が辛うじて、遊べる機会を残している作品である。【※】
※『この駄女神に教育を!』は、2020年発売のパワーアップ版『この素晴らしい世界に祝福を!~希望の迷宮と集いし冒険者たち~Plus』には含まれていないことに要注意。
今回の記事を書いたのは、単純に作品が存在した証を残したいのとは別に、遊ぶためのハードルをどうにか下げられないものかという思いを伝えたいこともある。
なぜかと言えば、『このすば』と同じ異世界転生(転移)を題材にした小説(&テレビアニメ)作品のインディーゲーム風の新作が、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」で販売中だからである。
作品名を出すと『オーバーロード』と『盾の勇者の成り上がり』の2作。いずれも『このすば』とは『異世界かるてっと』のほか、『このファン』でも絡んだことのある作品だ。
中でも『オーバーロード』は『DUNGEON OF NAZARICK』、『OVERLORD: ESCAPE FROM NAZARICK』の2作も展開されている。
また『異世界かるてっと』も『ツクールシリーズ 異世界かるてっと 冒険!あくしょんげ~む』というアクションゲームがSteamで販売されている。
異世界転生(転移)を題材にした作品ではないが、『このすば』と同じ角川スニーカー文庫のライトノベルで、テレビアニメ化もされた『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』も、『Slow living with Princess』という、インディーゲーム風の新作がSteamで販売中だ。
こうしたケースを踏まえると、このすばの特典ゲーム……とりわけ『in the life』と『復活のベルディア』も再展開されていいのでは、と考えてしまうのである。
前述したように、2作はBlu-ray&DVD限定版を買った人しか遊べない特典に留めておくにはもったいないほど、システム面の個性とゲームとしての完成度が際立っていた。それだけに、なんらかの祝福があればと願いたくなるのである。
それにアクションにシューティング、アドベンチャー、育成ゲームという異色のジャンルに挑んだ過去から、今後も『このすば』には新しいジャンルへの挑戦をし続けて欲しいとの願いもある。
元々、『このすば』自体がRPGをモチーフにした世界を舞台にした作品という下地もあってか、ゲームとの相性が抜群に良く、作品的にも突出した個性を出しやすい強みがある。それは『in the life』や3DダンジョンRPGの2作、『このファン』が如実に体現している。
筆者として、今後『このすば』が挑んでみて欲しいと思うジャンルはシミュレーションRPG(SRPG)だ。元々、テレビアニメ1期のベルディアとの戦い、テレビアニメ2期のハンス、劇場版『紅伝説』のシルビアとの戦い、そしてテレビアニメ3期のクーロンズ・ヒュドラの戦いで見られたが、カズマは指揮官としての素質が高い。
そして、パーティ3人に関しては、それぞれ強みが際立って分かりやすいからこそ、集団戦を基本とするSRPGとは、圧倒的な親和性を発揮するのではと考えるのだ。
果たして将来、そのようなゲームが出てくるのかは未知数だが……RPGのほか、アクションとシューティングでも見事、形にした実績があるだけに、強く期待したい。
だが、まずは、遊ぶためのハードルが高まる一方の特典ゲームが何かしら救済されることだ。そんな訳で、本稿の締めもこの一言をもってまとめることにしよう。
この素晴らしい特典ゲームたちに祝福を!