突然ですが、日常のふとした瞬間に妄想にふけった経験はおありでしょうか?
例えば車などの乗り物に乗っている最中に、窓の外を忍者が並走している様子を脳内で描いたり、学校で授業を受けている最中に突如として乱入したテロリストを撃退するまでの大がかりな妄想など、誰もが一度は経験をしたことがあるのではないでしょうか?
そんな数多の妄想と共に日常生活を過ごしている我々に対し、ピッタリな作品が長い年月を経て現代に蘇ることとなりました!
それこそが今回紹介する『デッドライジング デラックスリマスター』(以下、DRDR)です。
舞台となるのは大型のショッピングモール。
そして突如押し寄せる大量のゾンビたちと阿鼻叫喚に包まれる人間たちの中で、自分だったらどのようにして生き残ろうとするのか?
本作では我々が何度も妄想を繰り返してきたであろう状況を、主人公であるフリージャーナリストの「フランク・ウェスト」を通して存分に満喫することができます。
ジャーナリストらしくスクープを優先するも良し!
人間らしく生存者との協力や救出を優先するも良し!
欲望の赴くままにゾンビをちぎっては投げるも良し!
三日間という限られた時間の中で、アナタならこの”地獄″をどのように過ごしますか?
ちなみに本作の開発は『バイオハザード』などでお馴染みのカプコンとなっているのですが、『バイオハザード4 RE』や、『ストリートファイター6』などの最新のタイトルにも使用されている「RE ENGINE」が本作でも採用されています。
新しく生まれ変わったのは映像や音響面だけではなく、システムや操作性の面でも利便性が向上し、非常に遊びやすく生まれ変わっています。
正にデラックスリマスターというタイトルに偽りなしの豪華さ、面白さとなっておりますので、本稿ではそのあたりをかいつまんでご紹介させていただければと思います。
それではよろしくお願いいたします!
冒頭から破天荒すぎる男「フランク・ウェスト」
改めて、本作の舞台となるのはアメリカのコロラド州にある平凡な田舎町ウィラメッテ。
人口は5万3594人で特産物は一切なし。自慢できるものはせいぜいショッピングモールくらいなものだということが物語の冒頭では語られます。
この情報を聞く限りでは派手なスクープが転がっている気配などなさそうな土地ですが、主人公であるフリーのジャーナリスト「フランク・ウェスト」(以下、フランク)は、ウィラメッテが現在は軍の手によって完全に封鎖されており、情報統制が敷かれていることを独自の情報網から入手します。
本作の物語はヘリコプターに乗り込んだフランクが無理やり軍の包囲網を突破し、上空から町の様子を撮影して回るところから始まります。
いきなり軍隊を相手に破天荒な立ち回りすぎるだろ。
町の各地で暴動が巻き起こっている様子を目にして驚く二人。
この時点では、フランクたちはゾンビによるバイオハザードが発生していることまでは知らないため、あくまでも人間の手による事件が勃発しているものだと考えています。
上空から町中で起こる暴動の様子を写真に収めていたフランクでしたが、軍のヘリコプターに見つかってしまったため、近くにあったショッピングモールのヘリポートに急遽フランクだけ飛び移ることに。
「3日後に大スクープで有名になる名前だ」
筆者がデッドライジングシリーズをプレイするのは今回が初めてなのですが、この台詞で一気にフランク……いや、フランク″さん″のことが好きになりました。
ちなみに本作は全編フルボイスで日本語音声での吹き替えにも対応しているので、過去に本作をやり込んだぜ!という方でも、より新鮮な気持ちで新しくなったデッドライジングを楽しむことができます。
ショッピングモールに降り立ったフランクは、無事に生き延びていた個性豊かな生存者たちと早速顔を合わせることになります。
本作に登場するゾンビは知性が低いため、幸いにも室内は安全な状態となっていました。
とある事件が起こり、″奴ら″がショッピングモール内になだれ込んでくるまでは……。
このとある事件というのがなかなかの衝撃映像となっておりまして、筆者は思わず「なんてことをしてくれたんだ!!」と声に出して突っ込んでしまいました。
とある事件の全貌については是非ともご自身でプレイをしていただき、その衝撃″インパクト″を全身で受け止めてほしいと思います。
3日間を自由に生き抜く。生存者を救出するのか?それともジャーナリズムを極めるのか?全ての選択はプレイヤー次第
さて、事前に想定していた以上の大事件に巻き込まれてしまったフランクでしたが、迎えのヘリが来るまでの3日間はショッピングモールに留まるほかありません。
しかし、逆に言えばこの3日間は何をするのもプレイヤーの自由。これが本作の魅力のひとつとなっています。
ショッピングモールの屋上に降り立ってすぐに表示されてるチュートリアルでも、指定の時刻にヘリポートにいなければフランクが建物に取り残されるという内容が記載されています。
今回遊ばせていただいた先行プレイでは「2日目の午前10:59分まで」という縛りが設けられていたために、実際にフランクが取り残されるのかどうかは筆者には定かではありません。
もしもフランクが取り残されてしまった際はどのような結末を迎えることになるのか、本稿を執筆している最中もずっと気になっています。
ちなみに自由度が高いといっても本筋に関わるストーリーがしっかりと用意されていることや、発生するイベントには時間制限が設けられていることもあり、プレイヤーは常に目まぐるしくショッピングモール内を駆け回ることになります。
まずは本作のメインストーリーを追いかけることになる「CASE FILE(ケースファイル)」。
こちらではウィラメッテで巻き起こった事件の謎を解明するため、フランクが生存者たちと協力しながら物語の核心に迫っていく様子が描かれます。
序盤から物語に深く関わってくるキャラクターとなるジェシー(画像1枚目)とブラッド(画像2枚目)。
二人はDHS(国土安全保障省)に所属しており、とある人物を探している最中だったようです。
フランクの撮った写真の中にたまたま目当ての人物が写り込んでいたことがきっかけとなり、まずはその人物を探すところからメインストーリーが進行していくことになります。
これは筆者によるただの感想なのですが、カプコンさんのホラーゲームに登場する金髪美女ってとてつもなく魅力を感じませんか……?
バイオハザード4のアシュリーや5のジル、そしてデメントのフィオナなどにも負けず劣らず、本作のヒロインであるジェシーのデザインは魅力的に感じました。
続いては本作のサイドストーリーおよびサブクエスト的な立ち位置となる「SCOOP CUE(スクープキュー)」について。
こちらは主にCASE(メインストーリー)の進行や、他の生存者たちから情報を入手することで発生します。
生存者たちは全員が友好的なわけではなく、こちらに対して課題を出してくる者や、有無を言わさずにこちらに危害を加えてくる者など様々です。
特に画像1枚目に写っている囚人たちの姿は、本作をプレイしたことがある方は強く印象に残っているのではないでしょうか?
今回プレイさせていただいた中で筆者がお気に入りだったスクープキューはこちら。
書店に避難している二人組の日本人を救助しに行くというイベントなのですが、日本語会話本を持っていないと意思の疎通ができないという芸の細かさと、カタコトな日本語で意思の疎通を図ろうとするフランクの姿が可愛くて癒されました。
ちなみに日本語吹き替えでプレイしていても、この時だけは律儀にカタコトの日本語で喋ってくれます。
そして忘れてはいけないのが本作におけるジャーナリストとしての要素です。
フランクは常にカメラを持ち歩いており、どんな場所でも自由に写真撮影を行うことができます。
写真撮影を行うことでPPと呼ばれる経験値が蓄積されていき、一定数を取得することでフランクがレベルアップします。
レベルに応じて対ゾンビ用の新たな技を習得したり、体力や攻撃力の上昇、所持できるアイテムの数が増加したりなど、本作を進めていくにあたって有用な恩恵を得ることができます。
※ゾンビを倒すことでもPPは蓄積されていきます
ちなみに今回のプレイでは体験することができなかったのですが、本作は周回プレイを前提にバランス調整がなされているようなので、気軽に強くてニューゲームができるという点においても本作のレベルは大切な要素になっているのかな?と思いました。
特にゲームに慣れていない序盤では、ショッピングモール内の地理を把握していないことや、物量で押し寄せてくるゾンビ相手に苦戦を強いられてしまい、ジリ貧になってしまうことが何度かありました。
「こんなに高難易度なゲームを引継ぎ禁止で遊んでくれだなんて、もしかしてカプコンさんってドSなの……?」なんて考えが一瞬だけ頭をよぎったこともあります。ええ、ほんの一瞬だけですけどね。
しかし、ゲームをプレイし続けることで徐々に地形を把握したり、どこに行ったら強力な武器が拾えるのかということを当然ながらプレイヤーは学習していくわけです。
いつしか「このルートで移動していけば途中で飯(回復アイテム)が食えるから……」なんてことを自然に考え始めている自分が居て、いつの間にか本作特有の面白さにどっぷりとハマっていることに気が付きました。
本作はアクションゲームなので比較するジャンルとしては全くの別物となってしまいますが、周回プレイを前提とされている作りや、プレイヤーの経験が蓄積され次回のプレイへと反映されていく様子は、ローグライクのようなプレイヤー自身の成長を肌で感じることができるジャンルと共通した面白さをはらんでいると感じました。
手に取れるものほぼ全てが武器になる。ショッピングモールらしいユニークなアイテムの数々のおかげで、アイテムを探し歩いているだけでも楽しい
本作ではそこら中に落ちているものや、無人となってしまったお店の中にあるものを拾うことで武器として扱うことができます。
舞台がショッピングモールなだけあって店舗の種類も豊富で、フードコートやスーパーなら食料品(回復アイテム)が中心となっていたり、ホームセンターなら斧やハンマーを入手できたりと、ロケーションに沿った武器やアイテムを獲得することができる作りとなっています。
他にもCDショップや宝石店、おもちゃ屋さんなど様々なジャンルのお店が展開されているので、お店を見かけたらとりあえず寄り道してみるのも良いでしょう。
では、ここからは本作に登場するユニークなアイテムの数々を少しだけご紹介させていただきます。
まずは倉庫などでよく見かける「マネキン」です。
使っていると胴体と四肢がバラバラになってしまうものの、バラバラになった状態でも拾うことで武器として使用することができるため、お世話になったプレイヤーも多いのではないでしょうか?
アクションゲームではお馴染みとなる「日本刀」の姿も。
斬撃の効果音が非常に気持ちよく、威力も高い。そして何よりもフランクさんに“似合う”。
ちなみに本作では分離欠損表現が発生(※頭部を除く)するように変更されているため、存分にその切れ味を体感することができます。
一見すると隠し武器かのようなまばゆい光を放つこちらの武器は「おもちゃの剣」です。
振り回すことで特殊なSEが鳴り響き、フランクとプレイヤーは童心に返ることができます。
生でも良し!焼いても良し!みんな大好きな「サーモン」でさえ、非常事態では貴重な武器となります。
決して食べ物で遊んでいるわけではないので、これはセーフ……になるのでしょうか?
そして武器だけではなく、中には持っているだけで効果を発揮するアイテムも用意されています。
それがこちら(上記画像)の「強化本」と呼ばれるアイテムです。
持っている間はアイテム欄を一つ圧迫してしまうものの壊れることはなく、持っているだけでパッシブスキルのような効果を得ることができるので、上手く活用した際は非常に頼もしい存在となっています。
拾った際に得られる効果も様々なものが用意されており、画像一枚目のような撮影の手助けをしてくれるものや、二枚目のようにアイテムの耐久力を上昇させてくれるものなどがあります。
また、一部の強化本は複数所持することで効果が加算されていくため、手持ちのアイテムと合わせることで思わぬシナジーを発揮することも……?
ゾンビよりヤベー奴、揃ってます。ボスとしてフランクの前に立ちはだかるのは「サイコパス」と呼ばれる様々な狂人たち
本作には「サイコパス」と呼ばれる個性豊かなボスキャラクターが数多く登場します。
極限状態まで追い詰められて心が壊れてしまったのか、あるいは……。
メインストーリーやサブストーリーを進行していく中で、フランクは幾度となく彼らと対峙することになるのですが、中には探索中にいきなりイベントが発生【※】し、突如としてボス戦に突入する突発性のサイコパスも存在しているので探索中も気が抜けません……!
※サブイベントの中にはスクープキューとして表示されないものも存在しているため、急にイベント発生フラグを踏んでしまいボス戦に突入してしまうこともあります
しかし、彼らもただ襲い掛かってきているわけではありません。
中には悲しいバックボーンを背負っている人物も存在しており、それこそが本作のサイコパスと呼ばれるボスキャラクターたちの魅力にも繋がっていると感じました。
例えばサイコパスの一人である「クリフ」は、鉈を武器に襲い掛かってくる戦争経験者の老人です。
その身体能力の高さからは一切の衰えを感じさせず、店内にあるダクトなどを利用しながらあの手この手でフランクのことを排除しようと目論みます。
しかし争いの日々から解放され、家族と幸せな余生を過ごしていたはずの彼もまた、今回の事件の被害者だったのです。
こちらはメインストーリーで対峙することになる、スーパーマーケットの店長「スティーブン」。
怪我した仲間を助けるため、薬を入手しようと店内に足を踏み入れたフランクに対し襲い掛かってきます。
彼は今回のプレイで出会ったサイコパスの中では最も強く印象が残っており、同時に初めて恐怖を覚えたキャラクターでした。
とにかく顔面がうるさい(迫力がある)こともそうなのですが、特筆すべきは怪我人を助けるために薬を譲ってほしいと交渉するフランクとのやり取りでしょう。
彼はこちらの言葉を理解しているような素振りを見せるにも関わらず、恐ろしいことにその後の会話は一切噛み合いません。
そんな彼の様子に対し、筆者はどこかリアリティのある恐怖を感じました。
やっぱり化け物よりも人間の方が怖いのでは……?
オリジナル版の発売当初より、その斬新すぎるデザインやユニークなゲーム性が各所で話題となっていた『デッドライジング』でしたが、長年の時を経て新たに“デラックスリマスター”として復活した本作でも、当時の良さが一切損なわれることはないまま様々な要素がパワーアップしていると感じました。
それは直感的に感じ取ることができる映像や音響面のみならず、「銃を構えながらの移動」や「アイテムの耐久性の可視化」など、システム面や操作性の部分にも細かい配慮がなされたことで更に遊びやすく生まれ変わったからと言えるでしょう。
本稿でも触れましたが、本作は周回プレイが前提となる難易度の調整がされているので、ゲームに慣れてくるまでは何度か苦戦してしまうことも予想されます。
しかし、前述した操作面の再調整に加えてオートセーブ機能なども実装されたことで、オリジナル版と比較するとトライ&エラーを繰り返しやすくなっており、より様々なプレイヤーが親しみやすくなっていると感じました。
当時から本作のことを愛してやまないプレイヤーはもちろんのこと、初めてデッドライジングシリーズに触れてみようと思っているプレイヤーも満足できる一作となっているので、是非とも貴方だけの3日間を満喫していただければ幸いです。