「命を懸けた一撃」という、中学生ごころがゾワゾワしちゃうような、アニメや漫画なんかではよく聞くワードがある。言葉としてはすごくワクワクするんだけど、当然ながら実際にその選択肢にお目にかかる機会というのは、あんまりない。
でも『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』(以下、ハンドレッドライン)では、戦闘でそういう選択肢を選ぶことができるらしい。ということが、9月27日(金)に行われた同作に関するメディア向けのクローズセッションで発表された。
『ハンドレッドライン』はToo Kyo Gamesが開発、アニプレックスがパブリッシングを務める新作タイトルで、現在2025年4月24日のリリースを目指して開発が進められている。
セッションでは最終防衛学園での冒頭シーンや、シミュレーションパートの様子などが新たに公開されており、そのほかにも登壇したToo Kyo Gamesの小高和剛氏や、アニプレックスの稲生舜太郎氏から、物語に関しての言及などもあった。本稿では、同セッションの模様をダイジェストでお届けする。
取材・文/恵那
編集/りつこ
共に学園を防衛する仲間たちの情報が明らかに
『ハンドレッドライン』は「東京団地」と呼ばれる場所で暮らす主人公・澄野拓海が、ある日突然化け物に襲われたことでそれまでの日常を失い、「最終防衛学園」を正体不明の敵から守る「特別防衛隊」として戦うという”極限×絶望”のアドベンチャーゲームだ。
『ダンガンロンパ』の小高和剛氏、『極限脱出』の打越鋼太郎氏が組んで制作が勧められていることでも話題になり、これまでの作品とは異なるシミュレーションゲーム的な戦闘要素が入っていることも注目されている。
セッションは物語冒頭、主人公の澄野拓海が「我駆力刀」(がくりょくとう)を使って変身し、怪物と戦うシーンからスタート。そして、戦いの舞台となる「最終防衛学園」に集められた学生たちが会話するゲーム内の実機プレイ映像、シミュレーションパートの詳細が分かる戦闘の様子などが順次公開されていった。
幼馴染のカルアを救うために「我駆力刀」を使った拓海は、その後見知らぬ場所で目を覚ます。いや、小高和剛氏の作品を遊んできたプレイヤー的には、どこかで見たことがある感じかもしれませんが……。
学園で目を覚ますと、そこからがゲームの1日目。ここから100日間にわたる物語が幕を開けることになり、キャラクターたちの自己紹介パートに入っていく。教室内の会話は3D背景に2Dキャラクターが表示される形式になっている。
実際のゲーム画面を見ていて驚かされたのは、表情差分が非常に多いことだ。なんとも面白いくらいに表情がころころと変わっていく。
解説を務めた小高氏によれば、なんと1キャラにつきなんと100程度、キャラによっては100を超える差分すらあるという。表情選びにはかなりこだわったということで、キャラクターの魅力に沿った演出となるよう心を砕いたそうだ。
ほかにも生徒の姿はあるものの、突然連れてこられた彼らは混乱していたり戦いを恐れたりしており、すぐに戦いに加わってくれるわけではないようだ。戦闘に参加してくれるメンバーは、物語が進んでいくことで少しずつ増えていくという。
ただ、以下に画像で引いた厄師寺猛丸、飴宮怠美、雫原比留子といった生徒たちは、主人公と一緒に最初から戦ってくれるメンバーとなる。彼らも主人公と同じく「我駆力刀」の力で変身するのだが、変身後はそれぞれに全く異なる武器を所持しており、それによって戦闘での性能も大きく変わってくる。
戦闘は爽快感重視で難易度は抑えめ。ただしキャラの「死」が大きな力になる展開も
『ハンドレッドライン』にはシミュレーションゲーム的な戦闘要素が含まれているが、そのシステムを構築したのが『戦場のヴァルキュリア』や『メギド72』などを手掛けるメディア・ビジョンとなっている。シミュレーションなど、戦闘システムの評価が高いスタジオだ。
シミュレーションパートはタワーディフェンスのような防衛戦要素が入っており、学園内への敵の侵入を防ぐことが目的となる。
先述した通り各キャラはそれぞれ武器が違い、攻撃や移動の範囲も異なる。
それも分かりやすい「武器」だけではなく、例えば厄師寺猛丸なら、なんと「バイク」が武器で、周囲の全マスに攻撃し、その後アーマー効果を獲得するという効果を持っている。敵陣に特攻してそのままタンク役を張れるという、なんとも見た目に相応しい性能だ。
基本的に大群で押し寄せる雑魚たちをいかに効率的に処理していくか、という点が求められるゲーム性になっているようで、各キャラたちの攻撃範囲は基本的に広め。一方で、雫原比留子などは1マスのみしか攻撃できない代わりに攻撃力が非常に高くなっているなど、得意分野に合わせた運用も必要になってくるだろう。
各キャラの行動回数は全体で共有するAPによって決まり、APが残っていれば同じキャラが複数回攻撃することもできる。ただし1回行動すると「疲労」状態となって移動力が大きく落ちるため、単騎でずっと攻撃し続けるというのも難しいバランスになっている。
一般の雑魚よりも強力な敵のネームドキャラを倒すことでAPが1点回復するというボーナスもあり、どのような順番で敵を倒していくのかは戦略の重要な要素になりそうだ。
また、各キャラが攻撃することで「ボルテージ」というゲージがたまっていき、これが100%以上あれば、特定の能力を強化する強力なバフや、必殺技が使用できるようになる。
さらに、小高氏によれば本作は「命を投げ出しながら戦うゲーム」であるとのこと。戦闘中にキャラクターが倒れると、ボルテージが上がるなど、ゲーム上でさまざまな有利効果が発動するため、キャラの死というのはバトルの中では決して無駄なものとは言えない。
加えてキャラのHPが一定量を下回ると「決死」コマンドが使用可能になり、命と引き換えに必殺技を撃てるようにもなるのだという。これを使うと当然そのキャラは死亡するが、前述した通りゲーム中では決して「死ぬ」ことが無駄にならないため、時には効率よくキャラを死なせる采配も必要なのかもしれない。
ただし、死んだキャラについても復活はできるようになっているらしい。詳細についてはまだ明かせないとのことだが、かなり気になるポイントだ。
なかなか奥が深そうな戦闘システムだが、小高氏は『ハンドレッドライン』はあくまでストーリードリブンなゲームだとも語っている。
そもそも本作を作るにあたっても、シミュレーションを作ることを念頭に置いていたわけではないそうだ。戦争をテーマとした物語を描くために、物語上の必要によってシミュレーションというゲーム形態が決まったのだという。
そのため難易度については抑えめで、爽快感を重視したつくりになっているとのこと。また、ゲームオーバーになってしまった際は強力な効果を得て再開できるようになっているなど、シミュレーション系の作品が苦手なプレイヤーでもきちんとクリアできるような工夫も施されているらしい。
主人公の選択によって、キャラの生死を含めて物語は大きく変化
本作がマルチエンディングであることはSteamのストアページなどでは以前からひっそりと記されていたのだが、今回の発表で、それがよりはっきりと明言されることとなった。特に注目度が高いと思われるのが、登場キャラクターたちの生死だ。
小高氏によれば、主人公の選択によって「生き残る人もいれば死ぬ人もいる」らしい。『ダンガンロンパ』では「死ぬ順番が変わったら面白いのに」とか、「ルートによって生き残らせる方法があったらいいのに」といった声もあったらしく、同作では物語やトリックの都合でどうしてもできなかった部分に、今作では改めてトライしているとのこと。
またこれには、『ハンドレッドライン』のシナリオを共同執筆している打越鋼太郎氏の影響もあったという。稲生舜太郎氏によれば、マルチエンディングを得意とする打越氏が小高氏と組んだことで、これまで出来ていなかったことに取り組めたという面もあるらしい。
複数のエンディングを見るための周回プレイのしやすさという点にも気が配られているということで、本作ではチャプタージャンプなど、遊びやすくするための機能を準備しているようだ。
100日間の物語を描く本作が、さらにマルチエンディングまで搭載しているとあって、シナリオについてはかなりのボリュームになっていることが想像される。発表会の終わりに質疑応答の場でその点を問われた小高氏は、「いい意味なのかな」と笑いながらも「引いちゃうくらいある」とコメント。プレイにあたっては、覚悟を持って挑んだほうがいいかもしれない。
最後になるが、今回の発表会で登壇したお二人からのコメントを掲載させていただく。
小高和剛氏
本作は僕たちTookyo Gamesの初めての自社IPで、いつも以上に気合を入れて作った作品です。気合が入りすぎて大変なゲームになっちゃってます。
あんまり言いすぎるとお客さんに引かれてしまいそうなんですが、遊んでみたら「とんでもないことになってるな」というのは分かってもらえるかと思っています。昨今のゲームではコンプライアンス的なことも厳しくなったりしているんですが、このゲームでは結構攻めた表現であったり、刺激的な表現もしています。自分としては満足していて、プレイしてくれた人たちをぶん殴れるような、そういう作品であったらなと思っています。
稲生舜太郎氏
小高さんのお話に合ったように、本作は気合が入っている、全てをかけたこれまでの集大成的な作品であることは、間近で見てきてすごく実感しています。
これまで小高さんたちのゲームをパブリッシングしてきたのはスパイクチュンソフトさんでしたが、それが「アニプレックスになって丸くなったね」と言われないような、エッジの効いた素晴らしい作品を提供したいと思っています。みなさん期待を持って、待っていていただけたらと思います。
『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』の対応プラットフォームはNintendo Switch、PC(Steam)で、2025年4月24日に発売される予定だ。