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序盤のハードルが高いことでお馴染みの宇宙探索アドベンチャーゲーム『Outer Wilds』を遊んでみたら、おもしろすぎて腰を抜かした話。「点と点がつながる瞬間」の衝撃は唯一無二の体験だった

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“繰り返す22分” のタイムループに囚われた世界が舞台のオープンワールドゲーム『Outer Wilds』ほど、「だれひとりとして同じ体験をしていないゲーム」があるでしょうか。

いやいや、移動制限のないオープンワールドゲームなら人によって体験が異なるのは当たり前では?

それはそう。そうなのですが、筆者がここで言っている “体験” は目的に到達するまでの順序や手段を指しているわけではありません。「ひらめき」や「点と点がつながる瞬間」といったプレイヤーの脳内で起こる “気づきの体験” が唯一無二であり、そこに大きな価値を感じました。

これがどういうことか、もう少し詳しく説明させてください。本作は、新米宇宙飛行士のプレイヤーがさまざまな惑星に残された遺跡などから情報を集め、「自分が置かれている状況」を探るゲームです。というのも、プレイヤーは “繰り返す22分” のタイムループに囚われていました。

なぜループしているのか。なぜ22分なのか。この宇宙でいったいなにが起きているのか。

これらに関する情報を集めるためにプレイヤーは22分という限られた時間のなかでさまざまな惑星を巡り、徹底的に調べます。しかしながらそこで得られる情報はとんでもなく断片的で、知らない人たちが知らない話をしているものばかり。さらに時間経過とともに環境が変化するため、同じ惑星でも訪れる時間帯が異なれば得られる情報も異なります。

しかも、プレイヤーは基本的に「見て回ること」しかできません。プレイヤーの行動が惑星に干渉することはほぼないので、22分のあいだに得た断片的な情報をひたすら整理していきます。

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知らない人たちが小難しい話ばかりしている

またプレイヤーが操縦する探査艇の操作方法が独特で、どうにか離陸できてたとしても着陸でほぼ失敗してしまいます(筆者比)。宇宙空間でのふわふわとした動きと一人称視点に、コツをつかむまで時間がかかりました。

そういった特徴から、本作は序盤のハードルが高いゲームとしても知られています。

しかしながら探索を続けていると雪だるま式におもしろくなり、「よくわからない」から「おもしろい」への振り幅が大きすぎて筆者は腰を抜かしました。一定の情報を得ると、コップから水が溢れるように「もしかしてあれもできるのでは?」「あの話ってこういうことなのでは?」という “ひらめきの嵐” が訪れます。

その衝撃がハンパない!

序盤で右も左もわからない状態だったからこそ気がついたときの感動が大きいのですが、いかんせんそこに到達するまでの道があまりにも険しすぎる。そこで本稿では、序盤の乗り越え方とネタバレにならない範囲で本作の魅力をお伝えできればと思います。

文/柳本マリエ


『Outer Wilds』のハードルその1:固有名詞が英字表記で目が滑る問題

『Outer Wilds』攻略。序盤の乗り越え方とネタバレにならない範囲で本作の魅力を紹介_002

本作を起動後、筆者が最初に直面した問題は「村人たちとの会話や調べた文書の内容がまったく頭に入ってこないこと」でした。なぜなら多くの固有名詞が英字表記のため目が滑ってしまうからです。たとえば、拠点となる村で集めた情報をざっと並べてみただけでも下記。

プレイヤーはHerrthianと呼ばれる種族で、宇宙プログラム「OUTER WILDS VENTURES」に所属している新米宇宙飛行士。このプログラムはHornfels、Slate、Feldspar、Gossanの4名によって創立された。現在、砂時計の双子星にはChert、脆い空洞にはRiebeck、巨人の大海にはGabbroが滞在している。

Herrthian……!? よ、読めない!!!

このように英字表記が多いと、どうしても目が滑ってしまいます。ちなみに上記「Herrthian」の読みは「ハーシアン」とのこと。

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解決策(?)として、この英字表記問題についてはいったん読み流してしまいましょう。もちろん全容を把握するためには「だれが」「なにをした」など詳細に理解することに越したことはないですが、筆者としては少なくとも序盤の数時間で気にする必要はないと思っています。

というより、だれだって内容が頭に入ってこないはず。なぜなら、そもそも手に入る情報が断片的なのですべてが日本語表記だったとしてもチンプンカンプンだからです。冒頭にも書いたとおり、得られる情報は知らない人たちが知らない話をしているものばかりで、いずれにせよ難解。

そのためたとえ目が滑っても「なんか深刻な話をしているな」「揉めてるな」くらいの認識で進めてしまいましょう。いきなり理解しようとせず、気軽に読み流すことをおすすめします。会話や文書がわからなければわからないほど、気づきを得たときの感動も大きいですから。

また、見たものや得た情報については探査艇内にある「航行記録」にざっくり記録されるため、あとからおさらいすることもできます。序盤で重要なことは「私って理解力がないのかも……」と自分を責めないこと。み~んなわからないから大丈夫です。

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見たものや得た情報について自動で更新される航行記録が便利

『Outer Wilds』のハードルその2:探査艇の操作方法がやたら難しい問題

つぎに直面した問題は、プレイヤーが惑星を移動するために乗る探査艇の操作が独特すぎて「ことごとく着陸に失敗してしまうこと」でした。じつはこのゲーム、離陸も着陸もすべて自分で行わなければなりません。

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プレイヤーが操作する探査艇

でも安心してください。操縦方法さえ理解すれば狙ったところにふわっと着陸できるようになりました。操縦のコツは人それぞれあるかと思いますが、ここでは筆者のやり方を紹介いたします。

まずは離陸について。離陸はさほど難しくはありません。しかしながら離陸してすぐに進行方向を変えてしまうと木や崖などにぶつかって探査艇が壊れてしまうため注意が必要です。飛び立つ前の事故はなるべく避けたいところ。

そこで筆者は、離陸後そのまま空が暗くなるまで(宇宙に突入するまで)垂直に上昇してから目的地を目指すようにしています。

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このくらい暗くなるまで上昇すると事故が少なくなる

ところが問題は着陸です。目的の惑星には「ロックオン」さえすれば近くまで自動操縦で行けるのですが、着陸は自分で行わなければなりません。おそらく多くの人が「着陸」ではなく「墜落」してしまうのではないかと思います。少なくとも筆者は、コツをつかむまで墜落していました。

その “コツ” は「下降と静止を繰り返す」です。

文字にすると「当たり前じゃん」と思うのですが、最初はそれができません。「着陸モード」にするとコックピットに探査艇の真下の画面が出るので、それを見ながら下降 → 静止 → 降下 → 静止と繰り返すことで筆者は着陸ができるようになりました。

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「着陸モード」にすると真下の画面が見える

本作は無重力空間を移動することが多いため「静止する」ことがとても重要です。慣性でふわふわと流されてしまうため、「こまめに止まること」を忘れずに。

『Outer Wilds』のハードルその2.5:速度同調という概念がよくわからない問題

先ほど「こまめに止まることが重要」と書きましたが、本作は「速度同調」という概念を理解すると、無重力空間を移動するにあたってとても役に立つので説明させてください。

たとえば、時速5キロで動いている対象に時速100キロで近づいたら衝突してしまいます。しかしこのとき自分も時速5キロになれば対象との相対速度がゼロになるため衝突することはありません。このように対象の速度と同じ速さに合わせてくれる機能を速度同調といいます。

説明がややこしいこともあり『Outer Wilds』経験者のあいだでは「要するにブレーキ」と説明することが多く、筆者もブレーキしたいタイミングで使っているためこの理解で問題ないでしょう。速度同調を使う具体的なタイミングとしては下記などでした。

・自分の動くスピードが速くてこのままだと衝突する
・慣性でふわふわ流されちゃうけどここで止まりたい

速度同調を使って狙った場所で止まれるようになると、無重力空間でも小回りが効くため動きやすくなります。この概念を知っておくだけで探索がぐっとしやすくなるので、どうか「速度同調」だけでも覚えてもらえたら幸いです。

『Outer Wilds』のハードルその3:広すぎる宇宙でどこに行くべきかわからない問題

最後に、『Outer Wilds』最大のハードルでありながら最大の魅力について説明させてください。本作は「どこに行くべきか」「なにをするべきか」などのヒントはほどんどありません。

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しかし最初からすべてのルートが存在していて、「それをどのように見つけていくのか」がプレイヤーに委ねられています。筆者の体験としては「最初は見えなかったものがどんどん見えてくる」という感覚でした。その “見えてくるもの” は、なにかフラグを立てることで出現するものなどではなく、最初からずっとそこに存在しています。ずっと見えているのに筆者が気づかなかっただけ。

……といってもこの説明ではあまりに抽象的なのでもう少しだけ補足させてください。

多くを語ってしまうとネタバレになってしまうため説明が難しいところですが、筆者はとある惑星のとある場所で長いこと足止めを食らっていました。その場所から先に進めなさそうだけど、航行記録によると、調査していない場所が残っているとのこと。

本作は実時間の22分でループしてしまうため、ウロウロしているだけで時間切れとなってしまうことも多々あります。しかしそれでも何度も同じ場所を訪れ、周りをよ~~~く見てみたところ「ずっと視界に入っていたのにまったく気づかなかったルート」を発見することができました。

おもしろいのは、最初からそのルートが視界に入っていたこと。しかしそれを「ルート」として認識することができず足止めを食らっていたのです。バッチリ目に入っているのに認識できなかったショックと、自力でそれを見つけられたうれしさで腰を抜かしました。

念のため言っておくと「じつは透明の床があった」などではありません。そういう理不尽なトリックではなく、事前知識として持っていた情報を現場で対応できていなかったという「己の問題」なんです。

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拠点となる村の博物館で得られる情報はけっこう大事

冒頭でも触れたとおり、プレイヤーの脳内で起こる “気づきの体験” が本作の醍醐味であり、最大の魅力だと筆者は感じました。探索を進めることで最初はチンプンカンプンだった「知らない人が小難しい話をしている内容」も少しずつ把握できるようになります。

難解な物語ではあるので筆者もすべてを完璧に理解しているとは言い切れませんが、それでも筆者は本作で味わえる “体験” に強く胸を打たれました。この体験をひとりでも多くの方に味わってもらいたいと思い、この記事を書いています。

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正直なところ筆者は途中で「もう攻略(ネタバレ)を見てしまおう」と何度も思いました。しかしいざ検索してみると、「ネタバレになるから詳細は書けない」というものばかりが出てきます。

リテラシー高すぎ! と思いつつも、いまとなってはそれはとてもありがたい配慮でした。当たり前ですが、「自分で見つける体験」は答えを見てしまっては体験できません。

この記事も「詳しくは書けないけど遊んでほしい」くらいのことしか書けませんでした。序盤のハードルは高い、操作も難しい、詳しくは書けない、と魅力が伝わりづらいかもしれませんが、それでも書きたくなってしまうほど魅力の詰まったゲームです。

「ストーリーに感動した」「アクションが楽しかった」というゲームは数あれど、“体験” そのものがこんなにもおもしろかったゲームは筆者のなかではあまりなく、これまで味わったことのない余韻に浸っております。しかしゲームの性質上、結末を知ってしまうと同じ体験を味わうことができません。

すると、クリア済みの人は下記のような行動をする傾向が見られます。

・家族や友人など、やたらと人に勧める
・プレイ中の人の新鮮な感想や考察を探し回る

このように、いわゆる “ロス” に陥ってしまった人たちは界隈で「アウターワイルズゾンビ」と呼ばれ、ネットの海を徘徊しています。筆者もそのひとり。プレイヤーを増やして新鮮な感想や考察を得るためにアウターワイルズゾンビと化してこの記事を書いているというわけです。

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『Outer Wilds』は2019年に発売され、2024年10月24日にはNintendo SwitchとPS5向けのパッケージ版も発売されました。

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この記事を読んで少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ思い切って宇宙に飛び立ってみてください。そしてその感想や考察をSNSなどで発信していただけないでしょうか。

アウターワイルズゾンビより

編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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