株式会社かごめかんぱにーとシナリオ工房 月光が共同制作した、痛快青春マーダーミステリー『DT7 -誰が童貞を捨てたのか?-』(以下、DT7)。そのプロモーション公演が、10月26日に開催された。
この『DT7』は、足立区のとある共学私立高校を舞台に、「映像研究部」に所属する7人の男子高校生のなかで、“誰が童貞を捨てたのか”を探り合うという、まさに青春まっただ中だったあの頃を思い出す体験ができるような作品だ。
「マダミス」の多くは、一度遊んでしまうと二度と同じ作品は遊ぶことができないという特徴がある。一回でも体験すると犯人がわかってしまうため、その後のプレイにも影響するからだ。同一作品でのリピーターが生まれにくい性質上、本作がより知られるためにはSNSなどで話題になり拡散されることが重要。今回行われたプロモーション公演は、本作をアピールするために行われたものだ。
・作品名
『DT7 -誰が童貞を捨てたのか?-』・ジャンル
痛快青春マーダーミステリー・権利表記
©︎DT7・スタッフ
原案:シナリオ工房 月光
脚本:熊谷純
イラスト:pako
プロデューサー:重馬 敬(シナリオ工房 月光)、比嘉 勇二(かごめかんぱにー)
プロデュース・制作:かごめかんぱにー
マーダーミステリー制作協力:Studio OZON、しもさん、佐賀屋火花、RootA、久保よしや
参加者は、本公演の場所も提供しているノイジークローク マネージャーの陣内優希氏とゲームクリエイターのイシイジロウ氏、弊誌編集長の平信一、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』や『コードギアス』などの脚本家で知られる大河内一楼氏、エレファンテの木尾寿久氏、鉄道系ASMR ボイスドラマレーベル「最ハテ」代表の篠原幹人氏、グッドスマイルカンパニーの佐藤允紀氏の7名。特別な公演ということもあり、ほかでは見られないような豪華な面々が集合した。
こちらの記事ではなるべくネタバレを含まないよう注意しつつ、本イベントの模様および本作の魅力をレポートする。
※本記事には、作品の一部ネタバレを含みます。
異色のマダミス『DT7』はどのように生まれたのか?
プロモーション公演の模様をお伝えする前に、この『DT7』がどのように誕生したのかご紹介しておこう。
シナリオ工房 月光の重馬氏によると、2020年の春に本作の原作者の1人であるシナリオライター熊谷純氏が書いた企画メモがすべての始まりであったとのこと。熊谷氏の初期アイディアであるキャラクターや設定、ストーリーはそのままマダミス『DT7』に残されている。初期の段階で、当時遊んでいたどのマダミスと比べても、「童貞を捨てたのは誰か」を探すという設定は異端なもので、これは面白くなるという確信が重馬氏にはあった。
また、熊谷氏がシナリオを担当した『スカーレットライダーゼクス』や『バンドやろうぜ!』などで繰り広げられていた、「男の子たちがわちゃわちゃ(ちょっとおバカで時に少し下品なことも)楽しそうに大騒ぎする」という雰囲気、そしてそれをマダミスに落とし込んだ作品であれば、女性にも楽しんでもらうことができると考えたのだ。
その初期案をイラストレーターのpako氏に渡したところ、キービジュアルにもなっている男子高校生たちがギュッと詰められたキュートなイラストがいきなり送られてきたとのこと。このイラストのインパクトも相まって「ぜったい面白いよね!」、「ちゃんと作ろう!」とプロジェクトが動き出したものの、コロナ禍が直撃。
制作は一時中断してしまったものの、2022年5月よりプロジェクトが再開。「株式会社かごめかんぱにー」に、マダミス発のIPを創出したいとプレゼンしたところ、意気投合し共同制作することが決定し、さらに漫画家のさぎやまれん氏に依頼して冒頭部分を漫画化。そしてStudio OZON 代表の久保氏に出会い、とうとう「マダミス」として完成した。
原作者でメインシナリオライターを担当した熊谷純氏のコメント:
おバカな男子高校生ほど人生を楽しんでいる者はいない。……たぶん。だってDTかどうかってだけで白熱舌戦できるなんてある意味すごくない? かつて男子高校生だった人も、そうじゃなかった人も、このゲームでサイコーにおバカな時間を楽しんでほしいです!
「誰が童貞を捨てたのか」を真剣に議論。ユニークな7名の童貞卒業容疑者にも注目
マダミス『DT7』は、どちらかというと初心者向けに作られたマダミスとのこと。今回も、プレイヤーとして参加した7名のうち大河内氏と篠原氏、佐藤氏の3名は、マダミス自体が初めての体験とのことだったが、必要に合わせてその都度GM(ゲームマスター)がプレイヤーのサポートしながらゲームを進行していたため、まったく問題なく楽しめている印象を受けた。
登場する人物は高2の男子高校生ということで、今回の参加者は全員男性。「DT(童貞)」というキーワードを元にストーリーが展開されていくということもあり、少々気恥ずかしさもあるのだが、そこがこのマダミス『DT7』の特徴であり魅力となっている。もちろん男性だけではなく女性も参加できるが、ある程度センシティブな話題(下ネタ)に対する耐性は必要かもしれない。逆に、女性だけで男子高校生になりきってプレイするというのも面白いだろう。
実際にゲームをスタートする前に、それぞれがどのキャラクターを演じるか決めていくことになる。ここで見たのが、キャラクターたちの紹介映像である。
映像を見た後で参加者たちが次々とキャラクターを選んでいった結果、下記のように配役が決定した。
●まっちゃん(担当:陣内優希氏)
筋トレにハマリ、そのうちマッチョになるといわれたことから付いたあだ名。筋トレはすでに辞めている。●ぺーやん(担当:イシイジロウ氏)
コンビニのバイトで間違えて焼きそばを大量発注し、仕方がなく買い取って学校で配ったことから付けられたあだ名。●サドル(担当:平信一氏)
しょっちゅう自転車のサドルを盗まれることから付けられたあだ名。●博士(担当:大河内一楼氏)
見た目から出会って4秒で決められたあだ名。●半そで(担当:木尾寿久氏)
中学のスキー旅行で、母親が間違えて半そでの服しか用意していなかったことから付けられたあだ名。●野球部(担当:篠原幹人氏)
坊主頭から付けられたあだ名。ちなみに野球部には所属していない。●ガッキー(担当:佐藤允紀氏)
女優のガッキーが好きそうということから付けられたあだ名。
それぞれ選んだキャラクターごとに、自分が担当するキャラクターの背景情報が書かれた「ハンドアウト」とプレイヤー同士で台詞を読み上げていく「読み合わせ台本」が渡される。「ハンドアウト」はその人物がどんな人で何を考えており、何が好きかといったことが記載されている。雑談フェーズで話すときの指針なども書かれているので、これを参考にゲームを進めていく。
マダミス『DT7』ではGMの指示に沿って、この「ハンドアウト」を“STOP”と書かれた場所まで読んでいき、その後「読み合わせ台本」に書かれた台詞をキャラクターになりきって話していく。たとえば、最初に行うのがキャラクターたちの自己紹介といった感じだ。
ゲームの大まかな流れとしては雑談フェーズ→台本の読み合わせ→プレイヤー同士の会議といったような流れになっており、ゲームの最後には誰が“童貞を捨てた”のか、プレイヤーによる投票を行っていく。投票結果によって、どのようなエンディングとなるか注目してほしい。また、ゲーム全体としての勝利条件が用意されているほか、キャラクターひとりひとりにも個別の勝利条件が用意されている。
自由な会話が可能な雑談パートでは、「DT」ならではの青臭い会話が続々と飛び出す
この『DT7』では、台本を読み上げていくという場面もあるが、それとは別にキャラクターになりきって自由に発言が行える「雑談フェーズ」というものが用意されている。ここでの発言は自由なこともあってか、「DT」ならではの青臭い会話が続々と飛び出していった。
今回のプロモーション公演では、特に会話の主導権を握っていたのが木尾寿久氏演じる半そでと、イシイジロウ氏演じるサドルであった。そのふたりを軸に、様々な会話が展開されていったこともあり、全員が徐々に作品の世界観に入り込んでいったような印象を受けた。
雑談を含めた議論では自由にウソをつくこともできる。しかし、突拍子もないことを話してしまうと自分の首を絞めてしまうこともあるので、うまい塩梅で自らの勝利条件に導いていく必要がある。
「DT会議」で “卒業性”を探し出せ
このマダミス『DT7』で大きな見せ場となるのが、誰が童貞を捨てたのかその人物を探し出す「DT会議」だ。それぞれが会話をすることで情報を集め、推理と論理を駆使して童貞のフリをしている者を探る。
この「DT会議」では、会話を盛り上げるためにいくつかのスパイスが用意されていた。その中のひとつが、3種類の<議論カード>だ。こちらはレベルDT(白色)、ナイトメア(マゼンタ)、アブノーマル(黒)の順に難易度の高い内容が書かれており、それを元に議論を展開していくことになる。
一例を挙げると「女性に着てもらう服はどんなのが良いですか?理由もつけてその思いをぶちまけてください」といった感じである。今回の話題はどんな内容だったか。次の写真でイシイジロウ氏による身振り手振りから想像出来た読者は既に“卒業性”ではないだろうか。
また、途中から<議論カード>に変わってトランプのハートとスペードのカードを用い2つのテイストに分かれた複数の質問が用意され答えていくトークパートもある。ハートは甘めの質問、スペードは辛めの質問となっており、ひとりずつ選んで回答をしていくのだ。質問内容は果たして“卒業性”探しに関する内容なのか?といったよくわからないものも含まれており、このパートも大きく盛り上がりを見せた。
数々のパートで議論が交わされ、ゲームの最後に行われたプレイヤーの投票により、エレファンテ 木尾氏による<半そで>が童貞を捨てた者“卒業性”に選ばれた。
この選択がこの物語でどのような結末を迎えたかは、ぜひプレイして体験していただきたい。
ゲームの最後はエンディングパートとなる。プレイヤー7人全員で拳を突き出して何やら絆を深めるといったシーンも。
ということで、マダミス『DT7』の、プロモーション公演の内容についてご紹介してきた。プレイ想定時間は3時間ほど。男子高校生の他愛のない日常というには濃厚な内容となっている本作。こちらで紹介したお題の一部からもその様子はうかがえたのではないだろうか。
本公演で特に印象的だったのが、参加者たちが徐々にそのキャラクターになりきってプレイしていたことだ。ゲームが始まった当初はマーダーミステリーに不慣れな参加者もいたこともあり、台本の読み上げもふくめてすこし固い雰囲気だったものの、本作自体のもつユーモラスな雰囲気から徐々に笑いが増え、最後は大盛り上がりとなった。
また、参加者や誰がどのキャラクターを選択するか次第で、全く異なる体験ができそうな作品でもあると感じた。一作品につき、一回しかプレイできない【マーダーミステリー】。
先述した無料のプロローグ漫画を読んでプレイしたいキャラクターを決めて参加するもよし。イラストから受けた印象でキャラクターを選ぶもよし。まずは本作が気になった方は、公演日や公演店舗を公式サイトにてチェックしてほしい。