いろいろと面倒!だからこそ、“生きている感じ”がする
ビデオゲームの進化の歴史って、ある意味「ゲームから余計なストレスを取り除いてきた歴史」でもあると思うんですよ。
不慮の進捗喪失事故を防ぐためにセーブをオートにしましょうとか、ボス戦の試行回数を増やしやすいようにリスポーン地点をボス部屋の近くにしましょうとか、退屈なレベル上げを強要しないためにレベルデザインを調整しましょうとか。
本作はそのあたりのストレスフリー化傾向からは割と逆行していると感じました。
ですがそれは中世ヨーロッパという決してイージーではない世界への没入感を生んでいると思います。“生きている感じ” がするんですよね。
そして、プレイしていくうちにこれらのストレスはある程度克服できるように作られています。つまり、こうしたストレス要素は、ゲームを楽しむために設けられた「愛すべき面倒くささ」だと思うのです。
確かにこれは近年の “とにかくストレスフリーな作り” とは相反するものですが、私はやっていくうちにかなりしっくりきたというか、「このシビアさがウリですからね……」くらいの気持ちになってきました。
この「愛すべき面倒くささ」に向き合わずして「『キングダムカム・デリバランス』のレビューをした!」とは言えないと思いますので、順番に書いていきます。
①満腹度、活力(眠気)を気にするのが大変
これらのパラメーターはゲーム内時間の進行に従ってオートで減少していきます。減少しすぎるとうっかり死亡してしまうリスクが高まるため注意が必要。
食べ物にも「鮮度」があり、やがては腐るのでその管理も必要です。この時代にカロリーメイトがあればな〜。
睡眠も寝床の快適性によって回復度合いが変わります。確かに現代でも漫画喫茶で寝ると体バキバキになるもんな。
食事や睡眠に関しては、少しゲームを進めたところで獲得できるスキルやより素早い移動手段(馬)を入手するとだいぶ楽になる印象です。
②主人公の能力値は「ないないづくし」から始まる
主人公は最初ほとんどのステータスが「0」に近いです。戦闘能力にいたっては初期状態だと近所のおっさんにケンカで負けるレベル。
ちなみに読み書きも最初はできないので(口頭での会話はできる)、必要があれば高貴な身分の人に習う必要があります。「片田舎のガキなんてなんにもできないだろ」と言わんばかりの、「ないないづくし」の初期ステなのです。
③世界は主人公にやさしくない
金策の仕方(それも大体ダーティな方法)がなんとなくわかるまでは金欠がちで、まともな武器ひとつ購入することが難しいです。そのくせ野山を歩いているとあやしい輩にバッタリ出くわして襲われ、貧困な武装では太刀打ちできずにゲームオーバーになることも。
そのへんに落ちているものを拾って食べたり売ったりしようにも、多くの場合は窃盗扱いになってしまいます。あと、他人の家に勝手に入ると普通に怒られたり衛兵を呼ばれたり。
いままでゲームで感覚がマヒしてたけど「たしかにそりゃそうだわ」って感じで、シビアな世界だと思いました。
「ゲーム上のタスク表示に沿っていればいいや」の気持ちで勝手に部隊を離れて単独行動した結果、隊長に「なんで報連相しないで出かけるんだよ!!死ね!!(意訳)」と怒られました。まったく同じ失敗を前職でやったことがあります。シビア〜。
④セーブの機会が限られている
ワンミスでポロっと命を落としかねないゲームでありながら、なんとセーブがこまめにできません(セーブファイル自体は30個以上作れて、それらのロードはいつでもできる)。
セーブをするにはクエストに一区切りがついたタイミングか、有料の消費アイテム「救生酒のシュナップス」を使う必要があります。そのアイテムがけっこう高価でパンの数十倍の値段。
不意のゲームオーバーの後の戻し作業の所要時間は長くても10~20分程度ではありますが、それでもゲームオーバー時はデカい声が出ます。たしかに不便なんだけど「人生って本来はセーブできないんだよな……」と考えさせられました。
やればやるほど世界に立ち向かう力がつく!
さて、こうした数々の「愛すべき面倒くささ」の原因ですが、これは第一に主人公ヘンリーのステータスが片田舎のなにもできないガキレベルだからなのでは!?と思いました。
というか、あまりにも戦闘で負けまくるのでインターネットで「『キングダムカム・デリバランス 戦闘 勝てない なぜ』」で調べたら「能力上げないと厳しいよ〜」と書いてあったのでした。
戦闘に関するステータスが高ければクエスト攻略中の交戦でうっかりゲームオーバーになることが少なくなります。そして悪者を叩き切って遺品を売ってお金を稼げたら、食料や装備やセーブなど諸々の問題も解決するのです。
その能力の上げ方なんですけど、例えば剣でたくさん戦えば剣のスキルがレベルアップして攻撃力が上がる仕組み。剣や戦闘スキル以外にも、起こした行動に応じた能力が成長します。
私は最初、「ステータスが劣っていてもプレイヤーの腕前次第で戦闘はどうにかなるはず!」と思っていたのですが、どうにもなりません。そこらへんの盗賊にケンカをふっかけては返り討ちにあうのを1時間くらいやっておりました。
これ、いままでソウルシリーズみたいな「死にゲー」をいっぱいやったがゆえの「驕り」がてきめんに出ちゃってたと思います。敵わないものは敵わない、これが現実……。
本作は全体的に現実ベースで物事を判断した方がいいことが多い気がする。でも、やればやったぶんだけスクスクと成長できるのは夢のあることだと思います。その点は「ファンタジー」かも。
戦闘の訓練をしてくれる先生的なNPCと1時間くらい木剣でしばきあったらステータスがかなり伸びて、さきほどつまづいた盗賊も倒すことができました。
この剣の先生、最初からずっと高圧的な態度だったのに、実戦形式の真剣勝負でこっちが勝ったとたん敬語になっちゃったのが悲しかった。やめてよ、また前みたいに「報連相しないでどっか行くなよ!!死ね!!(意訳)」って叱ってちょうだいよ……。
史実ベースなので知識があると「よりよい」
本作はかつて実際に存在した国や人をベースとした物語なので、そのへんの知識があったほうがいいのかどうか心配な方もいると思います。私は心配でした。
なぜなら私は高校時代は文系だったので世界史を履修してはいたものの、大学受験直前で先生に「基礎がぜんぜんできていない」と言われてしまったレベルだからです。
ところがいまは本当によい時代になったもので、YouTubeでそれっぽい動画を何個か見るだけでだいぶ舞台設定の導入ができました。
・神聖ローマ帝国という掴みづらい枠組みを説明してくれている動画
・カール4世(ゲーム内だとチャールズ4世呼び)あたりの歴史をまとめている動画
・中世ヨーロッパ史をざっくり1本にまとめてくれている動画
・フス戦争周辺の歴史をまとめている動画
具体的な動画名は伏せますが、上記などがよかったです。そもそも本作に関する歴史を知りたい人向けに作られた動画もありました。ファンに愛されている……!
もちろん世界史の知識は必須ではなく、まったく知らなくてもゲームの進行上は問題ありません。ゲーム内にも用語集はあるのでそれを都度見るのもいいと思います。
ただ、予備知識があるとこういうシーンで「あっ(ニチャ……)」となれるので、知っているとよりよいねって感じでした。
というわけで『キングダムカム・デリバランス』のインプレッションでした。ゲームオーバーからの戻し作業込みの20時間弱プレイだとまだまだ超序盤、という感じだったので……さらに遊びたい作品です!
ざっくりこんな人に向いているゲームだと思いました。
・骨太なゲーム体験を求めている人
・ゲーム内でヤンチャしたい人
・15世紀神聖ローマ帝国あたりの歴史が好きな人
『キングダムカム・デリバランス』は各種ストアで割と割引になったりもしているので、気軽に始めやすいかと思います。そして2月に発売される『キングダムカム・デリバランス Ⅱ』の情報を見ると……
主人公ヘンリーの姿が!!
精悍な顔立ちになってる!!!
『1』から腰を据えてプレイしてみてもよし、『2』からとりあえず入ってみるもよし。それもまたプレイヤー次第ということで、ぜひ自由に本作を遊んでみてください!
最後までお読みくださりありがとうございました!