人生の壊れる音がする。
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』が、ついに始まる。
正直興奮しすぎて、プレイ前からだいぶおかしくなっていたと思う。
ゲームを立ち上げた後、オープニングムービーを見ながらむせてたし、「未来が、待っている……」あたりでもう感極まって呼吸困難になっていた。
オープニングムービーなんか1か月以上前に公開されてるのに!
明けない夜は決してないが、眠らない限りは夜が続く。人生で大事なことはだいたいこのシリーズが教えてくれた……。「シヴィライゼーション」最新作が、2025年2月11日、ついにリリースされる。
本誌では正式リリースに先駆け、2Kよりゲームコードを提供してもらい本作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』を一部プレイさせていただくという僥倖に恵まれた。
同作の大きな特徴は、ゲーム全体を“古代・探検の時代・近代”という3つの時代区分に分け、言ってみれば3つのシナリオのキャンペーンのような形式をとっていることだ。加えて時代が移り変わるごとに、操作する文明の名前や特徴すら全く違うものに変化してしまう。
これまでとは大きく異なるプレイ感をもたらしそうなシステムだが、実はこれ「文明の一番おいしいところ」を常に食べ続けられるようにしてくれるものだった、というのが筆者の所感だ。
くわえて、『シヴィライゼーション』シリーズならではの中毒性は相変わらずなので安心してほしい。
実際、筆者が本作のプレイを始めたところ、ふと窓の外に目をやると「まだ夜」だと思っていたのに、気が付いたらまた“夜”になっていた。原稿の締め切りも過ぎていた。ふしぎなこともあるものだ。
なお、今回レポートさせていただいたのはゲーム全体のうち、古代から探検の時代の終わりまでの内容となる。そうした都合上、難易度などについては不十分な情報しか提供できないところもあるが、ご容赦いただければ幸いである。
なお、電ファミYouTubeチャンネルでは先行プレイ映像も掲載しているので合わせてご覧いただきたい。
移り変わる時代に合わせて形を変え、ずっと“時代の主人公”で遊べるように
いまさらながら改めて説明しておくと、本作は4Xストラテジーゲーム「シヴィライゼーション」シリーズの最新作。同ジャンルのゲームとしては、間違いなく世界でもっとも有名なタイトルのひとつだ。
プレイヤーは史実に存在したいずれかの文明を操作し、太古の時代から近代まで激動の時の流れの中を生き抜き、科学や文化、制覇など、複数ある勝利条件のいずれかを達成することを目指す。
ゲームの大まかな流れについては、前作である『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』をプレイしたことのある方ならさほど苦労せずに掴めるだろう。ゲームは都市を中心に展開され、開拓者によって都市を増やす……あるいは軍事力で奪うことで勢力を拡大していく。
各文明はそれぞれ異なる特殊な能力や建造物、強力なユニット(兵士)などを持っており、各々の強みをうまく生かしながら発展を目指していく、というのが本シリーズの醍醐味だ。
ただ、さきほど少し述べた通り、本作ではゲーム全体が“古代・探検の時代・近代”という3つの時代区分に分かれている。前作で言えば、概ね太古〜古典あたりが「古代」、中世〜ルネサンスあたりが「探検の時代」、産業時代以降が「近代」といったイメージだろうか。
時代が移り変わると、たとえば「ローマ」として始めた文明が「スペイン」や「モンゴル」「インカ」など、名前も特徴も全く異なる文明に変化してしまう。そうなると、少し前までは使用できたはずのセオリーが、次の時代では使えなくなっているのだ。
ところで同シリーズの過去作をプレイしたことのある方なら、このゲームに登場する文明は、史実がそうであったように、「強いタイミング」というのが異なっていたことをご存じだろう。
前作『シヴ6』から少し例を出すと、「アメリカ」なら、その強みを最も発揮できるのは、時代が近代に入ってからだった。そもそも史実では近代まで影も形もなかった国なので、当たり前と言えば当たり前なのだが……。
一方で、史実では文明の曙の時代に勃興し、そして滅んでしまった「シュメール」は太古の時代から強かった。こちらも史実では大昔にしかいなかったので、そうした時代しか活躍させようがないとも言えるだろう。
要は、どの文明にも史実に基づく「旬」があるのだ。
もちろん時代を超えて生かせる能力などもあるが、軍事ユニットなどにはどうしても“賞味期限”があり、その文明の「いちばんおいしいところ」というのは長くない。サムライでは戦車や航空機に太刀打ちできないのだ。
だが本作は時代が変わるごとに、文明自体が変化する。その文明もすべて各時代ごとに紐づいており、たとえば「ローマ」や「エジプト」が存在するのは古代だけだし、「インカ」や「モンゴル」は探検の時代にしかない。
逆に言えば、必ずその文明が一番おいしい時代で遊べるようになっているのだ。各時代で選択できる文明は、その時代の“主人公”たちしかいない。
文明がどのように変化するかは、文明ごとに決まっているものもあれば(たとえば「漢」文明なら「明」や「モンゴル」に変化する可能性がある)、「多くの交易路を結ぶ」「山沿いの都市を多く建てる」といった、ゲーム中の行動で解禁されるものもある。
プレイヤーは各時代の終了時に、条件を満たしている文明の中から次の時代に使用したいものを選ぶことになる。このためゲームの展開は過去シリーズと比較してもより複雑になっており、リプレイ性も非常に高い。文明リレーの最適なルートを探すのも面白そうだ。
古い時代のレガシーを引き継ぎつつ新しい時代を作り続ける
文明の移り替わりというシステムは、史実がそうであったように、文明、あるいは国家というものが、非常に歴史的に多層な成り立ちを持っていることを再現したものでもある。
たとえばイギリスは元々ケルト系の住人が住んでいた土地にローマ人、サクソン人、デーン人などが相次いでやってきて、最後はノルマン人による征服王朝によって現代へとつながっている。そしてそのいずれの歴史もが、現代のイギリスに繋がるレガシーなのだ。
本作のシステムも、そうした文明の多層的な面を強く意識したつくりになっている。3つに分けられた時代区分ごとに、文明は半ば独立したものでありつつ、一方で前の時代からのレガシーも引き継いでいる。
たとえばテクノロジーや社会制度などの進歩を示すツリーは独立しているものの一例だ。本作ではこうしたツリーは各時代ごとに独立しており、前の時代で技術的に差がついてしまっていたとしても、新しい時代では新しいツリーでのやり直しになる。
また社会制度には文明固有のツリーなども完全に別のツリーとして用意されている。強力な文明固有の効果を、ほかの技術に先だって優先的に取得することも容易だ。前の時代で多少出遅れた場合でも、後から巻き返すこともできるだろう。
一方で受け継がれるものもある。各時代でプレイヤーは「文化、軍事、科学、経済」の4つの目標が与えられるのだが、そこで達成したマイルストーンに応じて、次の時代にボーナスをもらうことができる。
文化的な時代を送れば、次の時代にも文化に影響が、軍事的な覇権を求める動きをしていれば、次の時代でも軍事的に有利な効果がもたらされる。
建てた都市もしっかり引き継がれる。ただし、出力が大きく下がってしまうことは憶えておく必要がある。
というのも、本作では都市の周りにさまざまな出力を持った建造物が建てられるのだが、そこには「時代固有の建造物」というものがしばしば含まれるからだ。そうした建物は、時代が切り替わると出力が大きく落ち込んでしまう。
そこで、本作ではそうした過去の遺物の上から、新しい建物を改築することができるようになっている。特定の社会制度などを利用すれば、改築には特別なボーナスも発生する。
有効な都市範囲は基本的に前作と同じく、「最大で都市から3マスまで」となっているため、限られたタイルを有効に使って高い出力を維持するためには、こうした古い時代のレガシーを新たに塗り替えていくことも必要になっている。
素早く進む内政が、序盤からゲームにダイナミックな変化をもたらす
それぞれの時代で異なる文明をプレイできるというシステムと、その時代区分による複層的な発展は、3つの時代を重ねることで、より複雑でリプレイ性の高い展開をみせてくれるものだ。
一方で、なんとこのゲーム、単独の一時代だけを切り取ってみてもかなり実の詰まったシステムになっている。一番最初の「古代」から、ゲーム展開が非常にダイナミックなのだ。言い換えると、序盤のうちからできることがかなり多い。
というのも、行動のベースになる元手、つまり新たな都市であったり生産力であったりが、非常に得られやすいからだ。実は本作は、序盤から面白いくらいに内政が進む。
よほどひどい立地でなければ、都市の人口など面白いように増えていくのだ。そのため軍事ユニットであれ遺産であれ、さまざまなものがなんでも非常に作りやすい。
理由の一つには、先ほども上げた「時代固有の建造物」の存在もある。こうした建造物は時代が移ろうと出力が下がる代わりに、その時代の中では高い効果を発揮する。後の時代に引き継げない代わりに、高い出力が与えられているわけだ。
また、開拓者自体のコストがそもそも非常に安いことや、前作まで土地の改良に必要だった「労働者」などが不要になっていることも大きいだろう。タイル出力も、早い段階から技術や社会制度の取得で伸びやすい。
都市のしくみも重要なポイントだ。実は今作、首都以外の都市は、最初は「都市」ではなく「町」として扱われるのだ。「町」はゴールドを支払うことで「都市」に変更できる。
「町」では生産力(ハンマー)を使った生産活動が一切行えない代わりに、生産力がすべて同額のゴールド収入に替えられる。加えて、余剰食糧をその町の人口成長ではなく、他の都市などに回すこともできる。
出力が伸びない立地の町を、他の都市を伸ばす養分にすることで、都市に関わる作業を省力化しつつ、文明全体の出力アップに繋げやすくなっているというわけだ。
他方で、都市や町の保持数に制限がかかるようになり、許容値を超えると文明全体の幸福度に大幅なデバフがかかってしまうため、単純な多都市戦略というのは難しい。
「町」のままでもゴールドによる建造物の購入はできるが、「都市」化しなくては建てられないものも多いため、どの「町」を「都市」に替えるのかという判断は悩みどころだ。
軍事面でも、「司令官」ユニットによる移動の簡略化は大きなポイントだろう。「司令官」は都市で生産できるユニットで、複数の軍事ユニットを自身のいるタイルにスタックさせ、かつその状態で高速移動ができるというユニットだ。
機動力のない攻囲ユニットなどもまとめて移動させられるため、距離の離れた都市などでもスムーズに攻撃できる。なお、前作までは各軍事ユニットごとに可能だった昇進(レベルアップ)は、本作では「司令官」のみ可能となっている。
さて、いまさらの説明になってしまったが、本作には4つの勝利条件があるが、そのうちの3つは基本的に「近代」でのみ達成できるものだ。
「制覇」、つまり軍事的にすべての都市を掌握する勝利条件は他の時代でも達成できるが、それ以外の「科学」「文化」「経済」の勝利については、ゲーム終盤までプレイしなければ達成できない。
今回は「探検の時代」までの内容についてのレポートとなっているため、そうした最終的な勝利条件を含めた、ゲーム終盤戦などについてはまだ説明できていない。ただ、おおまかなゲームの流れやシステム部分については、筆者の理解の及ぶ限りでご説明してきた。
本文中でも述べたが、本作は多層的に折り重なった文明・歴史というものが意識されたタイトルになっており、独自のシステムは純粋なゲーム性のみならず、ロールプレイ的にも面白い設定になりそうだ。
4Xストラテジージャンルにおける巨人の最新作だけに、熱意をもって注視しているという方も多いだろうが、そうした方々が本作の手触りを知る一助となれれば幸いだ。
いずれ機会があれば、最終盤まで含めたレポートなど書かせていただければと思うので、興味があればぜひまた読んでいただきたい。