4月1日は『Dの食卓』が発売された日だ。
『Dの食卓』は、株式会社ワープが開発を担当し、三栄書房より1995年4月1日に発売された3DO用アドベンチャーゲーム。のちにセガサターン、プレイステーションに移植されており、現在はSteamでも配信されている。

本作のディレクターを務めたのは、1990年代に強烈な個性と才能でゲーム業界に一石を投じ続けた飯野賢治氏。ゲームファンは周知かと思うが、飯野氏は2013年2月20日に心不全で亡くなられている。享年42歳。早すぎる死を惜しむ声は現在まであふれている。


氏の功績・人となりについては、ぜひこちらの動画をご覧いただきたい。
話を『Dの食卓』に戻そう。父親の凶行を止めるべく、殺人事件が起こった病院を訪れた主人公のローラ・ハリス。だが、病院に着いたローラは異世界に広がる館に囚われてしまう。プレイヤーはローラを操作し、2時間という時間制限の中で館の謎を解き明かして脱出を目指す。

本作で特筆すべきは、没入感の高さだ。ゲームらしいインターフェイスやテキストによる描写、説明が徹底的に排除されており、プレイヤーはまるで本当に自分が館を探索しているような感覚に包まれる。

何も説明がないからこその不安。そして、2時間という時間制限がもたらす緊張感。館の謎をみずからの手で解明していく中で、主人公ローラとの一体感が生まれ、プレイヤーは不穏な世界にのめり込んでいく。

また、どこか無機質な映像は作風と見事に調和しており、グラフィック技術が進化した現代においても違和感を感じることはない。家庭用ゲーム機がカセットから大容量のCD媒体に移行する過渡期に現れた『Dの食卓』。その独自の魅力は、時代を経ても色褪せることはない。
余談だが、本作のスタッフロールはロックサウンドが流れる中、制作陣の写真が名前とともに映し出されるというもので、初見時には衝撃を受けた人が多かった。「ゲーム制作者が名前と顔を前面に出す」。いまでこそ当たり前の風潮だが当時はとても珍しいことで、そこに風穴をあけたことは飯野氏の功績のひとつと言えるだろう。

ちなみに、 主人公の「ローラ」という名前は、のちに飯野氏が手がけた『エネミー・ゼロ』、『Dの食卓2』にも受け継がれており、本作と合わせて「ローラ三部作」と呼ばれている。