7月18日から三日間にわたってインディーゲームの祭典「BitSummit」が開催されている。BitSummitは多くのインディーゲームで溢れかえる素晴らしいイベントだが、今回はそのなかでもインディーゲームファンにとっての注目作を紹介しよう。
それが、『HOTEL BARCELONA(ホテル・バルセロナ)』だ。
ホラー映画にインスパイアされたアートスタイルや、骨太な戦闘を楽しめるアクション性によって、かねてからインディー愛好家に注目されている作品である。
また本作は、グラスホッパー・マニファクチュアを率いる須田剛一氏と、『レッドシーズプロファイル』などで知られるゲームクリエイターのSWERY(スエリー)氏のコラボレーションという、インディーゲームとしては異例とも言える豪華な座組によって生まれている。両氏のファンにとっては、聞いただけでも期待感が高まるだろう。
そんな本作をBitSummitでプレイできたので、緻密なアクションやレベルデザインによる強烈な中毒性にフォーカスしたプレイレポートをお届けしよう。
爽快アクションで敵を次々と倒せ……ない! ムズい!!
本作はサイドビュー形式でステージを攻略するアクションゲームである。操作方法はシンプルで、攻撃・ジャンプ・銃撃・ガードなどのアクションのほか、ボタンを連打するだけで自動でコンボをつないでくれる。アクションゲーム初心者でも爽快なアクション操作を楽しめるだろう。
一方で、攻撃ボタンを押すときに入力している上下左右の方向によって、異なる攻撃を打ち分けられる。空中での攻撃時は違ったアクションも用意されており、上級者にとっても手応えがありそうだ。
さらに、本作のアクションをアツくさせているのが、攻撃を行えば行うほど上昇していく“返り血ゲージ”のシステムである。このゲージを維持するためには、間髪入れずに敵を倒し続ける必要があり、かなり“攻め重視”なゲームデザインだ。
これらの点だけを見れば爽快なゲームのように見えるのだが……、
ムズい!!!!!!!
恥ずかしながら筆者は、今回の試遊ではステージ1のボスすら倒せなかった。
これは筆者がアクションゲームが下手というわけでは断じてない。たぶん。
開発者自らが「難しくてすみません(笑)」と言っていたほどだし。
数々の救済措置によりアクションゲームが苦手な人でも楽しめる
しかし、本作はただ単に難しいわけではない。
さまざまな救済措置が用意されており、それによってアクションゲームが苦手な人でも楽しめるように設計されているのだ。
救済措置のひとつめは「スラッシャーファントム」の存在である。
プレイヤーがやられてコンティニューを行うと、その直前にプレイヤーが辿ったアクションを再現するゴーストが生成される。そしてこのゴーストは、敵への攻撃判定を持っているのだ。
つまり、「コンティニューのたびにプレイヤーが一人増える」ようなものだ。死ねば死ぬほど、かつての自分が仲間となる、非常にユニークなシステムである。
次に、スキルツリーの存在である。
本作ではゲームオーバーになっても獲得経験値が引き継がれる。そしてコンティニューのタイミングで、スキルツリーに経験値を注ぎ込みプレイヤーを強化できるのだ。
ツリー内にはステータス上昇やコンボパーツの獲得など、さまざまな種類があり、これらを活用すれば「誰でも必ずクリアできる」ように調整されているそうだ。プレイヤーのアクションの腕前によって変わってくるだろうが、これらのスキルツリーをある程度まで育成したうえで、初めてクリアできるバランスとなっているようだ。
……つまり、筆者がステージ1のボスを倒せなかったのは、アクションが下手だったのではなく、スキルを全然獲得していなかったからなのだ!(と信じたい)
最後に紹介する救済措置は、「ちょっとしたローグライト要素」だ。
本作ではボスの部屋までにたどり着くまでにいくつかの部屋を経由する必要があるが、そのルートはプレイヤーが選べる。
ルート次第では、敵が弱い部屋を選択し続けてボスまでノーダメで進んだり、強化したいボーナスを獲得できる部屋を選んだりできるのだ。
ざっくり言うと、本作のプレイヤーは「死ねば死ぬほど強くなる」仕様となっている。
最初はあまりの高難度に心をへし折られるかもしれないが、そこでめげずに挑戦し続ければ、攻略の糸口はきっと見つかる。
そうした末に難敵を倒す快感を知ってしまったら、本作にどっぷりハマってしまいそうだ。
本作では「あと少し」を続けることによって、じわじわとクリアに近づいてゆく。
コツコツと続けるのが好きな人なら、たとえアクションゲームが苦手な人でも挑戦する価値があるだろう。
アクションの難しさと成長性、この二面性によって高い中毒性を生み出しているのが『HOTEL BARCELONA(ホテル・バルセロナ)』である。
発売が楽しみな一作だ。