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絵心ゼロでもがんばって絵を描いたら、AIがやたら具体的に褒めてくれた。う、うれしい…!“描写の中に独自の解釈が見え。視覚的魅力がある”だって!…とか喜んでばかりもいられない、AIと絵師をめぐる物語を描くメッセージ性の詰まった作品『愛よさらば』をプレイしてきた

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私たちの想像よりはるかに速いスピードで進化していく「AI」の世界。自動生成AIの問題やAI美少女「Ani」の登場など、現代の私たちの周りにはセンセーショナルなAIにまつわるニュースが日夜飛び交っている。

そんな急速な発展を遂げているAIだが、ゲーム業界にもAIを取り入れた作品が近年多く生まれているのをご存じだろうか。『ドキドキAI尋問ゲーム』『THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』などのAIとインタラクションする遊びを持ったゲームたちは、そうした「AIゲー」とも呼ぶべき作品の少なからぬ例である。

現状においては、まだAIを活用した作品は「実験的作品」が多い。こうした一連の作品がもたらすプレイ体験の革新性、斬新さを鑑みれば、いずれ「AIゲー」がジャンルとして定義されるのもそう遠い話ではないかもしれない。

今回は、そんなAIを活用した「新たな遊び」を提案するタイトルを一つ紹介したい。

チームUZZの手がけるお絵描きアドベンチャーゲーム、『愛よさらば』だ。

「AI」とイラストをかけ合わせたアドベンチャーゲームという、これまで見たことも聞いたこともない斬新な作品である。

『愛よさらば』レビュー・評価・感想:AIがやたら具体的に褒めてくれる。うれしい…!アートとAIをめぐる物語を描く作品_001

7月18日から三日間にわたって開催されるインディーゲームの祭典「BitSummit the 13th Summer of Yokai」にも出展されている本作。その魅力は、筆者も早速会場に向かい、この「恐らく人類初」のゲームを体験してみることにしてみた。

『愛よさらば』レビュー・評価・感想:AIがやたら具体的に褒めてくれる。うれしい…!アートとAIをめぐる物語を描く作品_002

文・取材/植田亮平
編集/anymo


AIがプレイヤーの絵に感想を述べてくれる。しかも具体的

このゲームの最大の特徴は何と言っても、「AIがプレイヤーの描いた絵に対して反応をくれる」という点だ。具体的には、AIがプレイヤーに対して「絵ゴコロ」を感じ取ってくれたり、「絵の感想」を述べてくれたりする。

こういった説明をすると多くの方は『絵心教室』的な風景を想像されるだろうが、やはりそこはAI、これまでの「お絵描きゲーとは一線を画す体験」を味わうことができる。それについて詳しく説明しよう。

『愛よさらば』レビュー・評価・感想:AIがやたら具体的に褒めてくれる。うれしい…!アートとAIをめぐる物語を描く作品_003

まず、このゲームはプレイヤーに対して「絵の描き方」についての具体的な指示を一切出さない。「これこれこういうモノを描け」というお題は与えてくれるものの、下絵を用意したり、なぞるべき線を用意したりという配慮は一切行わない。
プレイヤーが自由な状態で、キャンバス上に好きな線を引くことを良しとしている。

『愛よさらば』レビュー・評価・感想:AIがやたら具体的に褒めてくれる。うれしい…!アートとAIをめぐる物語を描く作品_004

「絵の上達をまったく志向していない」という点で、本作はこれまでのお絵描きゲーと異なっているというわけだ。

また、AIは独自のアルゴリズムに従ってプレイヤーの絵を判断するわけだが、この精度がかなり高い。犬を描けば犬と、人間の手を描けば手と、しっかり判断してくれる。

しかも、絵の描かれ方についても感想をくれる。例えば「造形がしっかりしているな」とか「シンプルだけど特徴を捉えている」とかいうふうに、なるべくプレイヤーの絵の特徴に触れた上で適切な感想をくれるのである。

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これは予想だが、AIを使うことによって、お絵描きゲーあるあるの一つとなっている「全く別のものを描いてるけどプログラム的には正解」という(ともすれば)笑えるハプニングの発生も随分抑えられているのではないだろうか。

正直言って、この精度の高さには非常に驚いた。絵心の全くない私が言うのだから間違いない

『愛よさらば』レビュー・評価・感想:AIがやたら具体的に褒めてくれる。うれしい…!アートとAIをめぐる物語を描く作品_006

しかも本作のAI、かなりの褒め上手。採点こそするもののプレイヤーの絵を上から目線で批判するようなことはしない。
褒めて伸ばすを体現したその器量の大きさは、誰しも持っていた純粋な絵を描く喜びを再びプレイヤーに教えてくれる。

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本質はストーリー性重視のアドベンチャーゲーム

そして、本作はお絵描き採点ツールではなく、ナラティブを含んだアドベンチャーゲームである。

このことをしっかりお伝えするために、本作の全体的なゲームプレイを紹介しよう。

本作の目的は、ゲームに登場する「絵師」キャラクターたちの物語を追体験することにある。キャラクターにはロボットや職人など様々な描き手が用意されており、それぞれのキャラクターに応じて異なるストーリーとミッションが用意されている。

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例えば、今回の試遊で私が選んだロボットでは、プレイヤーは「絵を生産する工場で働く」というかなり考えさせられる状況から物語が始まる。(AIが絵を量産し続ける昨今においてかなりタイムリーなテーマだ)

そこでは、何度も何度も同じ絵を生み出し続けるロボットの悲哀や、そもそも絵を工場で生産するという構造が私たちから奪うものについての興味深い問いかけがなされる。

そして物語が進めばより「描く」ということについての深いテーマを持ったストーリーが展開されていくわけだが、あまりネタバレしてもしょうがないので紹介はこの辺に留めておく。

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いずれにせよ、本作が単なる「AIを応用したゲーム」以上の、メッセージ性を持った作品であることが上記の説明からお分かりいただけるかと思う。

そもそもタイトルからして『愛(AI)よさらば』である。

試遊の時点で既にかなり高い完成度を誇っている『愛よさらば』だが、なんと、実は本作は現在クラウドファンディングの資金集め真っ只中とのことらしい。

これからどのような展開を見せるのか、間違いなく見逃せない作品だ。

ライター
大阪在住のゲーマー。ゲームに限らずアニメ、映画など気になったものは何でも取り込む雑食系。オープンワールドのゲームやウォーキングシミュレーターなどが大好き。最近はオンラインゲーム『League of Legends』にドハマりしているが、プレイの腕はイマイチ。
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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