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サバイバルアドベンチャーゲーム『南極計画』は、過酷な旅路と、人間の愚かさと、生命のぬくもりが押し寄せる、すげぇSFだった。荒廃した世界で寒さに震え、ペンギンと身を寄せ合い、気付く。「生命って、あったかい」

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一生懸命つくった拠点も、次のステージには持ち越せない。「計画性のなさ」が悲劇を生む。だが、それも学びだ

サバイバルアドベンチャーゲーム『南極計画』先行プレイレビュー・評価・感想:放射線の嵐が襲う南極で「ペンギンを抱きしめて」耐え凌ぐ_016

本作最大の痛みを伴うポイントは、せっかく資源を費やした拠点を捨てて、先に進まなければいけないところにある。

もちろん、設置した施設は回収することができない。本作がステージクリア式で、先に進んでしまうと前のステージへ引き返すことができないのは既にお伝えした通りだ。つまり、無駄な拠点を作ることは、資源を無為にし、将来的に自分の首を絞めることになる。

「拠点を使い捨てる」

これは、筆者が今までプレイしてきたサバイバルクラフトゲームでは体験したことがなかった。新天地に向かうためにバイバイすることはあっても、それは資源が豊富に得られるとか、拠点が手狭になったとか、圧倒的な生活向上が先にあるキラキラした門出だった。

しかし、本作では捨てる前提なので、どこまで充実させていいのかも常に見極めなければいけない。テントの他にも、アイテムの在処を示してくれるレーダーなど有用な施設が複数存在しているが、そのすべてが置き去りになる。

おまけに、テントなどのもろい施設は吹雪で壊れてしまう。この厳しい旅のなかでは、ものに愛着を抱いている暇すらない。

そして、テントの素材となるエネルギーコアのようなものは他にも重要そうな局面で要求される希少品でもある。

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未知が眠る扉を開けるために使うか、後に暖を取るために残すかここでも迷わされる。

これまでお伝えしてきた通り、リソース管理はシンプルだ。そして、アクションは求められないので操作の難しさで困ることはない。それなのに、とにかく迷う。自分の状況、探索の程度、天気など、常に計画の修正を求められるため判断がブレる。

常に人間を試され続ける。だから、厳しい。難しいというより、過酷だ。
結局のところ、本作においては常に、「計画性のなさ」こそが自分を死に追いやるのだ。自分の愚かさには立ち向かわなくてはならないが、八つ当たりしたくもなる。周りを見れば南極も世界もメチャクチャになっているし、主人公もたったひとりで過酷な運命を負わされている。

おかしいだろ。子どもが独りでこんな旅。

きっとこの世界の大人たちも、筆者のように愚かで、ろくに計画性を持っていなかったにちがいない。とばっちりはいつも弱いものにいく。

世の不条理を嘆いても仕方がない。とにかく生きて、前に進む。それを積み重ねて、南極点にたどり着くしかないのだ。筆者のひどいプレイで、主人公は何度となく息絶えた。酷いというなら、筆者のプレイこそ残酷だろう。だが、その学びを糧に、筆者は進む。次こそは、主人公とともに南極点へたどり着くために。

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冷たく、厳しく、辛い旅路。だからこそ、めぐりあった「仲間」のありがたみが身に染みる。「生命って、あったかいんだ」

ひたすらに寒く、静かな世界を歩くからだろうか。本作を遊んでいると、意識はどんどん内省的になっていく。孤独を感じ、寂しさはつのる。だからこそ、旅のさなかに巡り合う仲間たちのありがたさはひとしおだ。

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本作では数多くの動物たちと「友達」になることができる。彼らは単純にかわいいだけでなく、南極を生き抜く上でも不可欠な存在だ。わかりやすいところで言えば、オオカミは騎乗することで、スムーズな移動手段となってくれる。そして、ペンギンの子どもをだっこするのも、ガチの攻略になる。

子ペンギンをぎゅっとするだけでも、体感温度はなんと20度も上昇する。これは生半可な数字ではなく、テントよりも圧倒的に強い。しかも、テントなどのあたたかさを提供してくれる施設は素材をガッツリ消費するが、ペンギンを抱っこするのは“タダ”だ。もちろん相乗効果が生まれるので、テントでペンギンを抱きしめると、めちゃくちゃあったけえ。

「生命って、あったかいんだ」。そんな言葉が漏れる。本当に雪の中にいるみたいだ。

子ペンギンを抱いていると走れなくなるというトレードオフは存在しているが、死を圧倒的に遠ざけられるというメリットはあまりにも大きい。もちろん、探索に時間がかかると危険な天気に何度も襲われることがあるので、ずっと抱っこしているわけにはいかない。ここでもしっかりと自分の判断が試される。

そんな動物たちは、ただの癒し要素で終わらなそうな不穏な気配もある。最初のステージで出会える子猫は、長らく親とはぐれているらしいことがわかる。彼らも、この厳しい世界の中で何かしらの問題を抱えているのだ。

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もっと言えば、子ペンギンに至ってはムービーの内容から察するに、群れから忌み子として捨て去られた様子がうかがえる。つらい。普通に、つらい以外の感想がない。群れからはぐれ、行き倒れになっているペンギンに、主人公は出会うのだ。

一方の主人公も「子ども」である。子どもたちが寄り添って、死ばかりが目に入る氷の世界を進んでいく。

ここから先は少しだけストアページなどで紹介されている世界設定に踏み込んだ話をする。何も知りたくない人はサクッとプレイを始めるか読み飛ばしてほしい。

本作の物語は、ゲーム中では段階的にしか明かされない。入手できる文章や状況から世界全体が荒廃しているということが序盤でも読み取れるが、プレイしていくうちに判明する実態は、本当に非道だ。

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致死的なウィルスの蔓延、食糧危機や異常気象、終わることのない戦争によって“地球”が荒廃し人類は滅亡の危機に瀕している。そんななか、南極から豊富な資源の存在を示唆する謎の信号が発信され、主人公であるひとりの「子ども」が極度に汚染された南極へと送り込まれる。

受け取り方は人によると思うが、「人類ひどすぎね?」と筆者は思っている。南極なのに頻繁に雨が降るのはオカシイなと思っていたのだ。完全自動操縦のボートでたった独り「子ども」が南極に送り込まれるのはヘンだなと思っていたのだ。

本当に託されたのは望みなのだろうか? という疑問をどうしても抱いてしまう。動物たちの状況と、否応なく物語の真相をリンクさせて考えたくなってしまう。

その一方で、南極に残された人間の痕跡からは、悲惨な争いだけでなく、希望に満ちていたはずの時代の営みの様子も窺うこともできる。過去の記憶を、ホログラムとして再生できる。多数の家屋や基地がある。かつては、我々の時代の南極とはいい意味で異なったフロンティアだったのかもしれない。

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もちろん、ホログラムには凄惨な争いの記録も残されている。生きている人間を見かけることはない。残っているのは凍り付いた人間の死体と、廃墟と、兵器ばかり。南極はひどいことになった。その結果だけが今ここにある。

真実はどこにあるのか、突き止めたくなる欲求は否応なく高まるが、しかし進む度に喪失の痛みもともなう。それでも、主人公には仲間がいる。かわいい。彼らもただかわいいだけではないし、そもそも彼らは本当に動物? とか、あんまり深読みを始めるとはかどりすぎて止まらなくなる。

とにかく、この世界は謎ばかりで、信用できない部分がたくさんある。

ただ、すてきな動物がたくさんいるのだけは事実だ。心臓は、まだ動いている。

一見すると、ミニマルな要素を巧みに仕上げたサバイバルクラフトゲーム。だがその正体は「この先どうなる?」が気になりすぎる“すげぇSF”、それが『南極計画』

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実際にプレイをしてみての筆者のファーストインプレッションは「ちょっと遊び口の違ったサバイバルクラフトゲームとして仕上がっているな」というものだった。

特に、簡略化されたリソース管理でここまでヒリつける工夫がなされている点は興味深い。何度も大敗を喫したが、素材の配置などは固定されているため次は上手くやれる。それでも、欲張ってとんでもないロストをする……。

本作のプレイではとにかく悩まされる。迷わされる。何かを捨てながら進まなくてはいけないというルールが、常に心にひっかかる。仲間の動物たちのふれあいは「ほっとする瞬間」をくれるが、南極点にたどり付かない限り、死の恐怖から逃れることはできない。いくら拠点を整えたところでエネルギーは少しずつであろうと着実に減少するし、とにかく入手できる素材が有限なのだから終わりが決まっている。

天気も含めて先を見通せるからこそ、自分の誤った判断だけが行く先を曇らせる。わかっていても危ない橋を渡ってしまうことがある。人間性を常に問われている気がして、居心地の悪さを感じてしまう。

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この世界では筆者のように「欲張りで完璧主義」なタイプのゲーマーにとってはバッチリ厳しかった。今のところ、ヒーローにはなれていない。……となぜかゲームを通してメタ認知をすることになってしまった。これが正解とは限らないが、もし初見でクリアしたいなら、南極に対しては謙虚でいるべきかもしれない。

そして、わからんだらけの背景設定には常に背中を押されることになる。

謎を解き明かしたいし、クリアして早く安心したい。何度手ひどいロストを経験しても、またプレイする原動力が尽きることはない。

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世界を荒廃させ、あげく「子ども」に全てを託した人類が簡単に救われるとは考えにくい。それくらい、この世界の厳しさは信頼できる。いや、でもせめて主人公と動物たちにとってはハッピーエンドであってほしい……。

筆者は間違いなく、本作が「すげぇSF」だと感じた。それは、ゲームの舞台が未来だからじゃない。持ち運びの3Dプリンターでさまざまなアイテムをクラフトできる超技術があるからじゃない。

ゲーマーをここまで世界観に引き込み、セリフもろくにないなかで主人公へと感情移入させ、まるで本当に極寒の世界に放り出されたかのような寂しさと、この世界に残された生命のぬくもりを切実に感じさせてくれたからだ。
この世界の謎を解き明かしたいという、「科学的好奇心」のようなものを身のうちに滾らせてくれたからだ。

このゲームは、すげぇよ。すげぇSFだよ。


以上、『南極計画』をプレイして、筆者が感じた作品の魅力を紹介させてもらった。過酷な世界を進む主人公の旅路に待ち受けるもの、“南極点”で待ち受けるものはなんなのか。

正直なところ、筆者もまだその答えを知らない。道中で死に過ぎて、まだたどり着けていない。

ただ、どんな結末になろうとも、納得させられる何かが存在しているという予感がある。難しくないのに、自らの愚かしさによって行き詰まる設計はきっと意図されたものなのだろうと思っている。というわけで、どんな結末も受け入れられる覚悟はなんとかできている。

『南極計画』はPC(Steam)にて1月29日より発売中だ。暖かいビジュアルと、冷たい舞台に暗い影。遊びやすさの裏にあるものを、ぜひ読者の皆さんも体感してほしい。この世界に揺さぶられてみてほしい。新鮮な体験であることは間違いない。

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ライター
ストア派とシカゴ学派の観点から人生をゲームとして生きている。ライターとしてはクラス選択したばかり。esportsは嗜む程度で、ほとんど追う専・観る専。好きなゲームジャンルは、ハクスラ・放置ゲー・宇宙ゲー・工業ゲー。特に、『Factorio』には無上の喜びを感じ、クリアまでに1000時間かかるMODを完遂することが夢。趣味は漫画を読むことと、書籍とゲームを積むこと。3度の飯ほど『弐瓶勉』作品が好き。
Twitter:@abaranche
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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