「一番怖いものは?」「ゲーム開発以外の趣味は?」名作ホラーゲーム開発者たちによる、興味深すぎる質疑応答
──ここからは質疑応答に移らせていただきます。
来場者:
ホラーゲームを作るにあたって、限界や、越えてはいけない線を設けていましたか。
レイナル氏:
私は2014年に、ちょっと変わったゲームを作り、賛否両論の評価をもらいました。
このゲームは、連続殺人犯と子供たちをテーマにしたゲームです。
制作は「ゲームでさらに怖いものは何だろう」という自問から始まりました。そして私には子供がいたので、子供にまつわる恐怖をテーマにしたら心底怖いホラーゲームになりうると思い至ったのです。
作り始めた頃は「これは本当に恐ろしいものになるぞ」と笑っていました。でも、資料を調べていくうちに「このゲームを作るのはやめようか」と話すようになりました。
現実の方が、私たちの想像よりはるかに恐ろしかったからです。
ゾンビは現実の枠の外にいるので、ゲーム的な楽しさが表現できました。でも、現実にある恐ろしいテーマでゲームを作ると、そこに楽しさを見出そうとするほどに、自分たちでブレーキをかけることになったんです。リアルに表現するなんて到底できなかったので、ドット絵的な表現になりました。
このように、限界はあります。現実にある重いテーマを語るために、本を書くことならできるでしょう。でもゲームで人を楽しませることはできません。現実に存在することを思い起こさせてしまうからです。それが、私が持っている線引きです。
柴田氏:
ホラーゲームは、不快感をコントロールして、それが解消されることを楽しむ、特殊なジャンルだと思います。
そこで心霊的なものを作っていると、「見えない世界」の方にどんどん近づいていっている感覚があります。ある地点を越えたら、帰ってこられない感じがするんです。心霊ホラーを作っている方なら、たぶん同じ感覚をお持ちだと思います。
「見えない世界」は、確かに近づけば近づくほど、いろんなアイデアや貴重な経験を得ることができます。でも、帰ってこられなくなる「グレーゾーン」のような場所もあるんです。
もしこの中に心霊ホラーを作ってそこに踏み込んでしまった方がいたら、私に連絡していただければ脱出方法をアドバイスできると思います(笑)。
外山氏:
難しい質問ですね。
作ること自体に制限はないけど、それを世に出すとなると様々な制約を受けざるを得ない。これは当然のことです。
ただ、そういう社会的な制限の中で、逆にアイデアが出てくることもあると思います。そういう意味では、私自身に強いこだわりはないですね。
河野氏:
ホラーの表現で言うと、グロテスクな人体破損で怖がらせるのには、僕の中でリミットをつけています。
たとえば、映画のグロテスクな表現は意図的に作り物だとわかるようにしていますよね。
でもゲームだと、CGで本当にリアルにできてしまう。だから、自分から線引きするのが必要だと思っています。
来場者:
レイナルさんにお聞きします。『アローン・イン・ザ・ダーク』はクトゥルフ神話の要素が多分に含まれていますが、ラヴクラフトにハマったきっかけは何だったのでしょうか。
レイナル氏:
先ほども言いましたが、想像力を大いに使って恐怖を演出する作家としてのラヴクラフトにインスパイアされています。

シナリオライターのユベールもラヴクラフトをよく知っており、彼の文体もラヴクラフトとよく合っていたので、『アローン・イン・ザ・ダーク』はラヴクラフト風の作品になりました。
私自身は、小説も読んでいましたが、若い頃にTRPGでたくさん遊んでいました。クトゥルフ神話RPGはルールが複雑で苦手でしたが、それでも愛着があったんです。
それはクトゥルフ神話が、読むことによってその狂気を自分で想像する世界だったからです。
ゲームを作るときにも、ラヴクラフトを知っている人にとって、クトゥルフ神話がゲームに欠けていた想像力の層を補ってくれると考えていました。
来場者:
皆さんは、ゲームの開発以外に、どのような趣味を持っていますか?
レイナル氏:
ものを作ることです。おもちゃを作ったり、電子工作、木工、プログラミングもやります。言うなれば「創作の大食い」です。何かの締め切りが近いときに、つい別のものを作り始めてしまうこともしばしばです。
あるいは、遊びではないものを遊べるものに変えることも趣味と言えるかもしれません。
柴田氏:
ゲームクリエイターとしての仕事に直結するかもしれませんが、ドキュメンタリーのビデオや本を見るようにしています。とくに日本の古いお祭や伝統についてのドキュメンタリーが多いですね。
今はもう失われていても、祭の中だけの独自のルールや世界が、細かく定められている。それが面白いと思っています。
河野氏:
僕も仕事に関係することですが、日本のミステリースポットや民俗学的な場所を、自分で歩き回っています。
最近だと、「まいまいず井戸」を見に行きました。伊藤潤二先生の『うずまき』という漫画で見たのとそっくりな光景が広がっているので、オススメです。

来場者:
皆さんは最近のゲームやインディーゲームを遊びますか? もしお気に入りやおすすめがあれば教えてください。
レイナル氏:
私自身は、実はあまりゲームで遊ぶ方ではありません。遊ぶより、作る方が好きなんです。
でもたまに遊んだりするゲームは、たいていインディーゲームです。予算が小さいほど創造性は大きくなる、そこでこそ最高の掘り出し物が見つかると思っているからです。
だから私のおすすめは、ただ好奇心を持って、たくさん試して、何があるのかを遊んでみることです。
それは、子供たちに伝えていくべきことでもあります。残念なことに最近の子供たちは、いろんなゲームを発見したいと思わず、適当なゲームにのめり込むことも多いそうです。今のインディーシーンにはまだとんでもない名作が眠っているはずなので、それを掘り起こしに行きましょう。
河野氏:
ちょっとタイトルが出てきませんが、巨大生物が跋扈する海底を探索するゲームが気になりました。
柴田氏:
私は、打ち込む単語がだんだん不穏になっていくタイピングゲームが気になりました。どちらかというと「そのアイデアで自分だったらどうするか」と考えるのが楽しいですね。

外山氏:
ホラーゲームのいいところは、新しい切り口とパッションがあれば、出来は荒くてもいいというところです。だからホラーと若いクリエイターの相性はいいと思っています。
最近やったものだと『No Players Online』はよかったですね。僕はちょっとメタな作風が好きなので、あのバカバカしくも説得力のある、悪夢のような雰囲気を出せるセンスが気に入りました。

来場者:
最後に、皆さんにとって一番怖いものは何ですか。
レイナル氏:
それはもちろん「現実」です。現実はホラーゲームで作れるどんなものよりもはるかに恐ろしい。
ゴア表現も、所詮ゲームの作り物です。気持ち悪いものも恐ろしい雰囲気も作れますが、一部の人間がやってのけることに比べたら何でもありません。
外山氏:
人間の最大の脅威の中には、やっぱり「死」があると思います。
それは、誰も体験したことがない。そして、知りたくないはずなのに知りたくなる。その意味で人類最大のテーマであるとも思っています。
柴田氏:
私は幽霊を実際に見たことがあるので、その怖さがあって、こういう心霊ホラーを作っているんですけども。その怖さの先に、その場所がなんだか懐かしいというか、居心地が良くなる瞬間が出てくるんです。怖い世界なんだけど、どちらかというと、実はすぐそばにあって、もうそこに帰れる、という感覚がどこかにある。
そういった空間をちゃんと作ってあげると、そこは中間的な場所になると思うんです。死に近づこうとしている人がなんとなく死を諦めたり、逆に、今まったく死とは関係ないと思っている人が死について考えたりするような場所です。そういうところが怖いし、表現していきたいところです。
河野氏:
僕はピンポイントで怖いシチュエーションベスト2を紹介したいと思います。
一番怖いのは、高層ビルのオフィスで窓の外を見たときに、落ちてきた飛び降り自殺者と目が合った瞬間です。
二番目に怖いのは、スキューバダイビングをしているときに、巨大なアコヤ貝に足を挟まれて抜けなくなり、そのまま酸素ボンベの残量がどんどん減っていく状況です。
この2つがなぜ怖いのかを考えて汎用化していくと、いろんなことができるんじゃないかと思っています。(了)
