「ゲームの68%が暴力を描いている」と米連邦委員会が報告、映画は90%に。教育への悪影響については結論出さず

 今年はじめにアメリカ政府内に設置された「学校の安全に関する連邦委員会」(Federal Commission on School Safety)は18日、銃乱射事件への対応策について、ドナルド・トランプ大統領への最終報告書を発表した。

 180ページにわたる報告書には、学校職員を武装することや、退役軍人を警備員として雇用することなどが、主な提案として盛り込まれている。その中の事前防止に関する部分にて、暴力を扱うエンターテイメントと適正年齢のレイティングについて論じられており、ビデオゲームや映画の大半が何らかの形で暴力を題材にしているという調査結果が示された。

(Photo by Getty Images)

 学校の安全に関する連邦委員会は、2018年2月にフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で発生した銃乱射事件を受けて設立されたもの。退学処分にされた元生徒によって引き起こされた今回の事件では、生徒や教職員を含む17名の生命が犠牲になった。直後、銃規制を求める大規模な抗議運動に発展したことから、アメリカ政府はベツィー・デヴォス教育長官の指揮のもと、同委員会を発足した。

 委員会の調査によると、子どもが身近に体験しているエンターテイメントの中で、暴力を題材にした作品の割合がもっとも多かったのは映画で90パーセント。続いて、ビデオゲームが68パーセント、テレビ番組が60パーセント、ミュージックビデオが15パーセントの順で暴力表現の割合が高かった。

 こうした娯楽媒体が若者による暴力事件の直接的な引き金になるという証拠はないが、定期的に暴力像にさらされた子供は社会的に孤立しやすく、より攻撃的な振る舞いをみせる傾向にあると、一部の学者は主張している。ミシガン大学で心理学を研究するローウェル・フースマン教授は、子どもたちが暴力に触れることで発達段階にある精神に暴力行為を誘発し得る素因を形成してしまうと、委員会に説明している。それが何らかの外的要因によって刺激されることによって、攻撃的な振る舞いへと転じるのだという。

 一方で、メディアによる仮想暴力に触れることは、実際の暴力行為の予兆にはなり得ないとする主張も報告された。一部の研究では、暴力を題材にしたエンターテイメントは逆に攻撃的な振る舞いを減少させることに役立つとの結論を出している。ステッソン大学のクリストファー・ファーガソン心理学教授は、ビデオゲームと暴力行為を結びつけようとする主張はほとんどのケースにおいて再現性がなく、銃乱射事件の後にエンターテイメントの悪影響が議論されること自体が、その他の要因から世間の関心を逸らすための手段に過ぎないと、委員会に対して主張している。

(画像はESRB公式サイトより)

 これら賛否の意見を踏まえた上で、報告書は創作側の自主規制と保護者の判断基準を促すレイティングシステムの重要性についてまとめている。北米を管轄するエンターテインメントソフトウェアレイティング委員会(ESRB)が2016年に実施した調査によると、86パーセントの保護者はレイティングの存在を認識しており、うち73パーセントは子どもにゲームを買い与える前にESRBによる審査基準を確認しているという。

 今回の報告書は、暴力をテーマに取り上げるエンターテイメントが子どもの教育に与える影響についての結論は出していない。その上で、州や自治体の教育機関に対して、子どもたちがインターネットを介して潜在的に不適切なコンテンツにアクセスできない環境の構築を推奨している。また、そうしたアクセス権の管理には、学校や自治体の責任者が保護者と密接に連携することが必要不可欠であると結論付けた。

 加えて、自主規制を促す団体については、より明瞭なレイティングシステムの構築と効果的な販売規制の強化につとめ、コンテンツへのアクセスが適正年齢の消費者のみに制限されるように、ポリシーの見直しを図るべきであると述べている。

文/Ritsuko Kawai

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著者
Ritsuko Kawai
ライター・ジャーナリスト。カナダで青春時代を過ごし、現地の大学で応用数学を専攻。帰国後は塾講師やホステスなど様々な職業を経て、ゲームメディアの編集者を経験。その後、独立して業界やジャンルを問わずフリーランスとして活動。趣味は料理とPCゲーム。ストラテジーゲームとコーヒーが大好き。
 
Twitter: @alice2501
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