電ファミニコゲーマーを代表するロングインタビュー連載企画「ゲームの企画書」の書籍化企画の第3弾『ゲームの企画書(3) 「ゲームする」という行為の本質』が、角川新書から5月10日に発売された。全296ページ、価格は税別900円。カドカワストアで購入可能なほか、AmazonではKindle版も販売されている。
名作と呼ばれるゲームはどのように誕生したのか。さまざまなゲームクリエイターの目線や考え方を通しながら「ヒットする企画(ゲーム)とは何か」を聞いていくのが、この電ファミ名物のインタビュー企画「ゲームの企画書」だ。時代を超えて共通する普遍性、ゲームに込められた創意工夫、どのようなものに影響を受けて次世代に影響を与える架け橋となったのかを聞き、日本のビデオゲーム史を探訪し、ビデオゲームの面白さの本質に迫っていく。
本書の目次は以下の通り。
第1章 『ワニワニパニック』から会長までのぼりつめた男(石川祝男×相木伸一郎×小山順一朗)
第2章 『パワプロ』『みんゴル』スポーツゲームの本質(谷渕弘×豊原浩司×小林康秀×村守将志)
第3章 日本ファルコム たった50人の人気ゲーム会社(加藤正幸×近藤季洋×佐藤辰男)
第1章はバンダイナムコ前会長・石川祝男氏のインタビューをお送りする。インタビューには、バンダイナムコアミューズメント執行役員の相木伸一郎氏と、同社クリエイティブフェローの小山順一朗氏も同席している。石川氏は70年代のナムコに入社し、エレメカの営業に携わる。その後『ワニワニパニック』を企画・制作し、大ヒットを記録。『アイドルマスター』ではエグゼクティブ・プロデューサーを務め、2006年にはバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)の代表取締役社長に就任した、まさに歴史の生き字引といえる人物だ。
インタビューでは『ワニワニパニック』がすでにAI的な機能を備えてることや、社内で反対されていた『太鼓の達人』の制作を決断するなどが語られる。そして、なぜ石川氏はナムコとバンダイと統合を推し進めたのか、どのような社会改革を推し進めたのか、現在のバンダイナムコホールディングスが生まれた一端が明らかになるはずだ。
第2章では、KONAMIの「実況パワフルプロ野球」シリーズを制作した谷渕弘氏、豊原浩司氏、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「みんなのGOLF」チーム・小林康秀氏、村守将志氏の両氏を迎え、「スポーツゲーム」というジャンルを考察し、さらにはそこから「ゲームする」という行為の本質に迫る座談会だ。
実際のスポーツとビデオゲームのスポーツだと、何が違うのか。そもそもスポーツゲームのクリエイターたちはスポーツをやっているのか。今回はこれまでの「ゲームの企画書」と趣向を変えて、こういった漠然とした問いに対して、実際のクリエイターの人たちとスポーツゲームとは何かを考えていく。この座談会を読めばスポーツゲームはスポーツごとに極めてさじ加減が重要なジャンルで、繊細で考え抜かれたゲームであることが見えてくるはずだ。
第3章では、日本ファルコムの創業者であり現会長の加藤正幸氏、さらに2007年に32歳の若さで社長に就任した近藤季洋氏の両名にインタビューをお届けする。聞き手には『コンプティーク』初代編集長で、元カドカワ取締役相談役の佐藤辰男氏を招聘する。日本ファルコムはどのように創業されたのか。加藤会長がApple IIに衝撃を受け、Apple Computerの販売代理店を経て、ゲームソフト代理店から、ゲーム制作の道へ。そして日本ファルコムの存在か増すにつれ、今度は近藤社長が日本ファルコムに憧れ、入社する経緯が語られる。
プラットフォームが次々と移り変わる激動のゲーム業界のなか、必ずしも時流に乗るわけではない逆張りの発想と、「無い金は使わない」という手堅い加藤会長の経営を受け継ぎつつ、それを新解釈し、「日本ファルコムらしさ」を追求した近藤社長。これを読めば創業から現在までに到る日本ファルコムの軌跡がわかるはずだ。
本書はWebに掲載されたものを、本として後世に残し、気になるところはペンでラインでも引きながら、じっくり読んでもらいたいという想いが込められている。これからの時代の〈体験〉や〈サービス〉を考える際の必読書として、すでに発売済みである第1巻『ゲームの企画書(1) どんな子供でも遊べなければならない』、第2巻『ゲームの企画書(2) 小説にも映画にも不可能な体験』とともに、ぜひ全国の書店やオンライン書店で手にとって欲しい。
ライター/福山幸司