半導体の設計開発を行うQualcommは、現地時間12月3日より「Qualcomm SnapdragonTech Summit 2019」を開催。3日目となる12月5日、世界初という5G対応XRプラットフォーム「Qualcomm Snapdragon XR2 5G Platform」(以下、XR2プラットフォーム)を発表した。
カンファレンスの中で『ポケモンGO』のNianticのCTOフィル・ケスリン氏が登壇し、同社がQualcommとの複数年にわたる協力体制に入ったことを伝えた。今後は二社が協力し、ARグラスのリファレンスハードウェア、ソフトウェア、クラウドコンポーネントの設計を行うという。
今回発表したXR2プラットフォームは、Qualcommが2018年に発表した「XR1プラットフォーム」をさらに推し進めたSoC【※】だ。AIと高速、大容量、低遅延、多接続を実現する通信規格5Gを統合し、ユーザーに比類無い拡張現実体験を提供するという。
※SoC:
System-on-a-Chip、チップ上に処理装置やほかの様々な機能を集積したもの。
XR2プラットフォームはXR1プラットフォームと比較すると、カメラを7台同時に使用したモーショントラッキングが特徴だ。XRで重要な使用者の動きを正確に認識する。また、60fps、8K 360°ビデオをサポート。5Gの大容量・低遅延な通信でコンテンツにリアルタイムでアクセスできる。これらの機能はAIによるアシスタントで時間とともに向上し、大幅な省電力化も可能だとされている。
NianticはXR2プラットフォームを利用し、『ポケモン GO』や『ハリー・ポッター:魔法同盟』でも利用されるテクノロジー、「Niantic リアルワールド プラットフォーム」を展開する。没入感の深いユーザー・エクスペリエンスを実現するAR開発技術、そして世界中のプレイヤーが同時にAR体験を共有できる統合型クラウドサービスなど、Nianticの核となる技術を提供するという。
また、Nianticが11月に発表した「Niantic Creator Program」と「Niantic Beyond Reality Fund」はXR2プラットフォームにも適用される。これらは世界中の才能溢れる開発者に同社の持つ技術を用いて支援するプログラムだ。QualcommとNianticが協力して生まれるアーキテクチャに関しても、Niantic Creator Programを通じて技術者に共有される。
NianticはかねてよりARのゴールはARグラスであると語っていた。Qualcommとの協力体制により、同社の考えるARのゴールを目指すことになりそうだ。
XR2プラットフォームが一般消費者の手に届くのはいつ頃だろうか。海外メディアVenture BeatはQualcommの副社長でXRを統括するヒューゴ・スワート氏にインタビューを行っている。スワート氏によると、一般消費者の手に届くのはOEMやキャリアの計画によるが、同社のリファレンスデザインによる試作品は2020年内に完成するだろうとしている。消費者に届くのはその後となるだろう。
ライター/古嶋誉幸