開発「Dead Thread Games」のホラーゲーム『We Went Back』がSteamにて4月3日にリリースされた。無料でプレイできる、クリアまで30分ほどの小規模なものとなっているが、「タイムループ」を題材にした特徴的な作風が魅力となっている。
『We Went Back』は、誰もいない廃棄された宇宙ステーションで目覚めるところから始まる。すぐ先にあるドアはロックされており、解除のためのパスワードを求められる。ゲームの目的はこのパスワードを見つけ出し、何者かが潜むステーションを脱出することだ。
宇宙ステーションには乗組員たちが運動や娯楽を楽しむはずだったレクリエーションルームや、さまざまな動植物の実験を行う設備が入っている。宇宙ステーションの通路はぐるりと円を描くように伸び、終端は扉で仕切られており一方通行だ。プレイヤーは通路を進み、出口のパスワードのヒントを探して歩き回ることになる。
最初に見つかるのはポラロイドカメラ。このアイテムがクリアへと導いてくれる重要なアイテムとなる。カメラを取って施設を見て回りながら通路の終わりにある扉を開くと、自分が目覚めた人工冬眠ポッドのある場所へと戻ってくる。
しかし、同じ場所に戻ってきているはずなのに違和感を感じるはずだ。本作は「タイムループ」を題材としており、目的を果たして扉をくぐったときにステーション内の時間が変化する。時間が変われば、同じ場所であるはずの宇宙ステーションも姿を変えていく。脱出のヒントはこの違和感の中に潜んでいる。
Dead Thread Gamesはインディゲーム開発会社としては大規模で、16人のスタッフが在籍している。そのためか、プレイ時間30分の無料ゲームとして終えるのはもったいないと思えるほど、宇宙ステーションの内装が凝っていて細かい。アイテムを探すことがゲームプレイの大部分を占めるため、ポスターやガラスに刻まれた文字、誰かが生活をしていたことが伺える雑多の物品などを見て回るだけでも楽しい。
オブジェクトの数が多くエフェクトも豪華なので、その分ゲームは少し重めだ。最新のPCでないと遊べないほどの重さではないが、ある程度のPCスペックが必要だ。
その一方でゲームシステムの秘密が露見するのは早めだ。少しプレイするとステーションに潜む者が襲ってくるトリガーが見えてくるだろう。恐ろしいといえば恐ろしいが、彼の造形も賛否が分かれそうだ。むしろ本当に恐ろしいのは、良く作り込まれたステーションの閉塞感自体にある。
ステーションの作り込みはループ前後の変化にも現れている。ステーション全体の造形だけでなくポスターの文字など細部も変わるため、Steam掲示板ではそれらの記述からそこで何があったのかの議論も生まれている。ゲームをプレイして生じる疑問すべてに明確な答えが用意されてるとは考えにくいが、そういった考察を許容する世界を持っていることも間違いない。
『We Went Back』は30分ほどで終わる小規模作品ながら、細部には考察しがいのある要素が見え隠れする、嚙めば嚙むほど味が出る作品に仕上がっている。クリア後も何度かプレイし直して、ループごとの違いを見つけ出す楽しみも持っている。
少し高めのPCスペックが必要だがゲーム自体は無料なので、空いた時間にちょっとプレイしてみると、いつの間にかこの世界観にのめり込んでいるかもしれない。
ライター/古嶋誉幸