RTA【※】走者のストーン氏は10月2日(金)、ビック東海(現・TOKAIコミュニケーションズ)より1988年に発売されたファミリーコンピュータ用アクションゲーム『突然!マッチョマン』(英題:Amagon)のRTA世界記録を樹立した際の様子を編集した動画を、ニコニコ動画とYouTube上にて公開した。本記録は9月14日に達成されたものだ。
ゲームのタイムアタックの記録を集積する海外サイト「speedrun.com」の情報によれば、執筆時点でストーン氏が樹立した19分20秒の世界記録は破られていない。なお、氏は8月に開催されたオンラインイベント「RTA in Japan Online 2020」でも、アクションシューティングゲーム『メタルスラッグX』のRTAを披露している。
【※】RTA:”Real Time Attack”の頭文字を取った略称で、海外では「Speedrun(スピードラン)」と呼ばれる。ゲーム全編あるいは指定した目標がクリアされるまでの速度を競うゲームの遊び方で、人間のプレイヤーが実機やエミュレーターなどで実際にゲームをプレイし、その実時間を競う。
『突然!マッチョマン』は、新薬「マッチョマックス・ペレー」を開発した科学者「ジャクソン」が「トロッポ島」からの脱出を目指す横スクロール画面のアクションゲームである。無線での注文を受けたジャクソンは、受け取り場所に指定された「トロッポ島」へ飛行機で向かう途中に何者かから攻撃を受け、島の砂浜への不時着を余儀なくされる。島には自然ではありえない姿をもつ生物たちが生息しており、ジャクソンは脱出の糸口を探るため、銃をたずさえて島中を冒険することになる。
本作は「マッチョマックス・ペレー」をパワーアップアイテムとして服用し、特定の条件を満たすとアメリカン・コミックスに登場しそうな「マッチョマン」へ変身できるゲームシステムが最大の特徴だ。通常時のジャクソンは弾数や射程に制限のある銃しか使用できないが、変身中は銃の8倍の威力をもつ「マッチョアッパー」や、16倍の威力と貫通能力を持つ「マッチョレスビーム」を使用できるようになる。
また、マッチョマンの変身条件にはスコアも含まれており、5000点につきひとつ分、最大7万点(14個分)の追加体力を獲得できる。追加体力はどんな敵の攻撃でもひとつしか減らない代わりに、減った追加体力の数だけ5000点を失うことになる。また、変身中に穴や水へ落ちると一括でスコアを失うほか、先述の「マッチョレスビーム」も体力との引き換えで繰り出せる技となっている。
さらに特殊なのはアイテム周りの仕様だ。『突然!マッチョマン』では敵を倒した際にスコアアイテムや「マッチョマックス・ペレー」、補充用の銃の弾薬を入手できるが、ストーン氏によればドロップするアイテムの種類は「ジャクソンと敵との距離や敵の撃破数」で変化するという。くわえて、変身中は「マッチョレスビーム」以外の技でアイテムをドロップしなくなる。
上記の仕様から、本作では前半のステージでいかにスコアアイテムを効率よく稼ぎ、高い耐久力をもつ敵が多く出現する終盤のステージで「マッチョマン」状態を維持できるかが重要となってくる。ここまでの説明は通常のゲームプレイにも役立つ知識かもしれないが、もちろんRTA特有の「速くクリアするための技術」も存在する。
たとえば、本作は全6ステージをそれぞれ前半と後半のシーンに分けた12の面が存在するが、ストーン氏は1-1面、1-2面、そして4-1面の行動パターンを固定化することで攻略の速度を安定化させている。また、3-1面の敵が落ちてくる滝を速く抜けるため、先駆者たちとは異なる攻略チャートを採用して対応している。
このほか、固定画面となるボス部屋のスクロールを利用して中ボスを消滅させるバグ技や、キャラクターを外側へ押し出そうとする物体の性質を利用した技「コーナーブースト(角押し)」を使用した加速、敵の行動に合わせた「マッチョアッパー」の迎撃など、さまざまなテクニックが動画中で披露されている。
なお、聴いているうちに癖になるBGMは、ジャレコより発売されたアーケードシューティングゲーム『ザ・ロードオブキング』(1989)の音楽を手がけた横山清氏と、セガサターン用のサイバーパンクRPG『サイバードール』(1996)で石井吉幸氏とともに作曲を担当した安藤童太氏によるものだ。
動画は敵の名前や性能などの情報を表示するウィンドウや、ニコニコ動画でのRTA界隈ならではの小ネタが配置された“biim兄貴リスペクト”の形式となっている。もし興味があれば、ぜひ『突然!マッチョマン』を入手して、RTAに挑戦する素敵な筋肉ライフを送ってみてほしい。
ライター/ヨシムネ