ゲーム開発者のアダム・パイプ氏が、19人のゲーム開発者と協力して開発した新作ホラーゲーム『C.H.A.I.N.』をリリースした。価格は無料。英語のみで日本語ローカライズは無し。ゲームにはある程度英文が出てくるので、辞書を引いた方がストーリーを楽しめるだろう。
パイプ氏は、誰もいないマルチプレイFPSのサーバーで起きる恐怖を描く『NO PLAYERS ONLINE』、『メイドインワリオ』を邪悪にしたようなミニゲーム集『SPOOK WARE』など、独創的なホラーゲームを作る事で知られている。
『C.H.A.I.N.』は前述の通りパイプ氏ひとりの作品ではなく、氏を入れて20人のゲーム開発者が参加した作品だ。一見すると、ひとつのお題に対してさまざまな開発者がゲームを作る、いわゆる「ゲームジャム」タイプの作品にも見えるが、前述の通り本作は“ゲームのリレー小説”としか表現できない方法で制作されている。
方法はこうだ。最初の作者がゲームを作ったら、次の作者にゲームを渡す。ゲームを渡された作者はそのゲームのストーリーや結末を受け、物語が連結するようにゲームを作る。これを繰り返すことで、20人の作者による大きなひとつの物語を作り出す。
なお、ゲーム開発中はほかの作者とコミュニケーションを取ることは一切禁じられている。ホラーゲームというより不可思議なゲームと呼べる作品が多いが、「これってどういう意味なの?」と作者にストーリーの解釈を聞くことはできないようだ。
ゲームをプレイした作者が感じたものがそのまま作品となる。そのため、薄暗い洞窟を松明を持って歩く最初の作品『Torch』(松明)から、物語はドンドン奇妙な方向へと向かっていく。
すべての作品は初代PlayStation風のグラフィックという緩やかな繫がりはあるものの、各ゲームはジャンルも表現方法も大きく違う。スタンダードな一人称視点ホラーもあれば、2DグラフィックのRPG風の作品もあり、果ては生首が跳びまわるフライトシミュレーションのような作品まで個性豊かだ。
それらはその前の作品のストーリーを継いでいるだけでなく、ゲームプレイにも関連性を持たせていることもある。
各作品のラストは、基本的にどうなるかまったく分からない次の作品につなげることが求められているため、作者ごとにゲームの終わらせ方を比較してみるのもおもしろいかもしれない。
ゲームを最初からプレイすることを前提に物語は進んでいくが、多くの開発者が参加しているためか、すべてのゲームは個別に遊ぶこともできる。クリアできない場合はそのゲームを飛ばしたり、興味のある製作者のものだけ遊んだり、結末が気になるなら最後のゲームだけを遊ぶこともできる。すべてはプレイヤー次第だ。
とはいえ、ストーリーやゲームプレイの変遷を見て回るのは楽しい。基本的には最初の作品から1本ずつプレイしていくのが本作をもっとも楽しめるプレイ法だろう。
ゲームのランチャーには制作者についての情報も記されているので、気に入った作品があればその作者の別の作品を探したりすることもできる。
本格的なホラーは少ないので、本作をホラーゲームとして期待すると肩すかしを食らうかもしれない。しかし、コミュニケーションを取らないまま、できあがった作品だけで会話する開発者たちの作品群としてみると、興味深いゲームであることは間違いない。
おもしろい方法で作られた不思議なホラーゲームの連作『C.H.A.I.N.』。変わったゲームに興味があれば、一度プレイしてみて欲しい。