Appleは、同社のダウンロード販売プラットフォームApp Storeの手数料を中小企業向けに優遇する「App Store Small Business Program」を発表した。
これまでApp Storeでゲームやアプリなどを販売すると、売り上げの30%がプラットフォーム利用の手数料として徴収されていた。このプログラムは、年間の収益が100万ドル(約1億円)に満たないデベロッパーを対象に、手数料が15%に引き下げる内容となっている。
本プログラムは2021年1月1日(金)より開始予定。詳細は2020年12月初旬に発表されるが、2020年の利益が100万ドルに満たなかったデベロッパー、あるいはこれからApp Storeを通じてアプリを配信しようとするデベロッパーは、2021年1月1日(金)から手数料が15%に引き下げられる。以降は前年の利益に応じて手数料が15%か30%に変化する仕組みだ。
2008年にApp Storeがオープンしてから変わらなかった30%の手数料だが、ついに小規模デベロッパーに向けての優遇策が打ち出された。Appleは「App Storeを通じてデジタルグッズ&サービスを販売する大多数のデベロッパが恩恵をうける」としており、かなりのデベロッパーが恩恵を受けることになるだろう。
ニューヨークタイムズはこの発表にあわせ、市場調査会社Sensor Towerの調査結果を報告している。それによると、Appleに手数料を払う98%のデベロッパーがこのプログラムの恩恵を受けると試算されているという。
一方で、この98%のデベロッパーが生み出すApp Storeへの利益は、全体のわずか5%に満たないという。これは逆に言えば、2%のデベロッパーがストア全体の95%以上の利益を生んでいる計算となる。
Epic Gamesのバトルロイヤルゲーム『Fortnite』がApp StoreとGoogle Playから削除。同社はAppleへの訴訟を決定
この優遇策が発表される以前から、AppleはEpic Gamesとの『フォートナイト』の手数料を巡る法廷闘争を続けている。Epic Games Storeは30%の利益配分を業界に対する搾取として訴えてきたが、今回公表された手数料15%はEpic Games Storeの手数料12%に匹敵する安さだ。
しかし、Epic GamesのCEOティム・スウィーニー氏は今回発表されたプログラムに対しても「不十分だ」と主張している。ニューヨークタイムズによると、氏はこのプログラムを「開発者同士を分断させる目的」と断じ、アプリ内購入の手数料30%を批判する人々を排除し、人々は相変わらず“アップル税”で不等に値上げされた商品を買うだろうと語っている。
また、海外メディアTechCrunchに対し、氏はEpic Gamesの行動を現実に起きた公民権闘争と比べて「私たち全員が戦わなければならない義務だ」と主張。
この発言に関しては、のちにほかのTwitterユーザーから「10億ドル規模の企業がストアに支払う手数料を巡る争いと、黒人が平等な人間として扱われるための戦いを比較するのはあまりにも間違っている」という批判を受け、氏は自身のTwitterアカウントで公民権運動と比較したことを訂正している(参考ツイート)。
海外メディアGamasutraによると、Epic GamesとAppleの次回の法廷での論争は2021年5月に設定されている。また、Epic GamesはAppleオーストラリアに対し、同国の消費者法に違反するとして訴訟を準備していると、海外メディアPC Gamerなどが報じている。
ライター/古嶋誉幸