テクニカル アーティストのNils Bakker氏は5月23日、広大な現実世界の再現マップを飛び回るゲームのプロトタイプを制作し、そのデモ映像を公開した。
本作は約一週間で制作され、Googleが提供する「Photorealistic 3D Tiles」、ChatGPT、そしてUE5が使用されているという。
このたび公開されたプロトタイプのデモ映像は三人称視点で紙飛行機の旅を描くものとなっている。手紙に目的地をテキストで入力するとワープゾーンが出現し、テキストにならったロケーションの上空に瞬時に移動する。入力テキストはやや抽象的でも受け付けており、「オランダの中心」「ヨーロッパで一番強いサッカークラブ」といったキーワードから具体的なロケーションへ導かれている。
映し出された景色はGoogle Mapと同様の再現性を担保しており、正に実空間をかなりの再現性で描写した空間を、本作のプレイヤーは自由に飛行できるている。ドイツのノイシュヴァンシュタイン城、ローマ、ニューヨーク、グランドキャニオンなどが登場し、いずれも多少のゆがみやテクスチャの粗さを携えているものの、実空間を経由して出力された空間である情報量や説得力を感じさせる仕上がりと言えよう。
各ロケーションの上空に到達すると画面に観光地を紹介するテキストが表示されているが、この仕様もChatGPTによって実現しているという。
本プロトタイプの最大のみどころは、地球上のさまざまなロケーションを再現し、自由に飛び回れる点だ。これはGoogle Maps Platformと提携するCesiumが5月11日にリリースした「Photorealistic 3D Tiles」を活用し実現している。
「Photorealistic 3D Tiles」はGoogleが持つ3D地理空間データを、素早くコンテンツ内で描画できる技術・マップタイルだ。地図座標を指定すると周辺の地形や建物の3Dデータを取得でき、発表時点で49か国、2500以上の都市のデータをUnreal EngineやUnityなどで利用できる。
ちなみに、さきほど3DCGモデルの粗や歪みがあると述べたが、これはGoogleが持つ3D地理空間データ自体が持つ要素となっている。
49か国、2500以上の都市の上空を瞬時に描き、飛び回ることを可能とする本作がわずか1週間で制作されたことは驚きだが、これはUnreal Engine 5.1の処理能力と「Photorealistic 3D Tiles」、Chat GPTによって実現したことが伺える。プロトタイプはプレイアブルな状態で提供されていないが、本作がわずかな制作期間で作られたことは、この度使用された技術が流通し、新たな作品が生まれる未来へ期待を高めてくれるだろう。
本作で使用された技術や、アンリアルエンジンのノード型プログラミング機能・ブループリントのスクリーンショットと解説が開発者により公開されている。興味がある読者はぜひ本作の舞台裏もチェックしよう。