ポーランドに拠点を置くCD Projekt REDは10月17日(月)、同社が展開するデジタルカードゲーム(以下、DCGと表記)『グウェント』の最新パッチとして、今後ゲームへ施されるすべての変更をユーザーの投票に委ねる「バランス審議会」を導入した。
本作の対応プラットフォームはPC(Steam、GOG.COM)、iOS/Androidで、基本プレイ無料(一部アイテム課金あり)となっている。
『グウェント』はポーランドの小説家アンドレイ・サプコフスキ氏が執筆した『ウィッチャー』シリーズの世界観を下敷きとした作品である。本作はもともとゲーム『ウィッチャー3 ワイルドハント』内に登場するミニゲームだったが、高い戦略性や作中の登場人物がカードとして描かれる設定などで人気を集め、2018年に独立したDCGとしてリリースされた。
本作をプレイするに際して、各プレイヤーは25枚以上のカードで構成されたデッキを構築し、全3ラウンドを戦って2ラウンドの取得を目指す。作中に登場するカードにはそれぞれ構築コストや戦力値などが設定されており、各ラウンドではカードを並べて構成されたプレイヤーの軍勢同士が戦力値を競い、勝者を決する。
今回実装されたバランス審議会では、今後原則的には月に1度(2023年11月のみ2度)投票を実施し、ゲーム内に用意された各項目「構築コスト増加」「構築コスト減少」「戦力値増加」「戦力値減少」が望ましいそれぞれのカードについて調整をおこなう。
実装に先駆けて公開されたFAQによれば、本作のプレイヤーがバランス評議会に参加するためには、ゲーム内でレベル上限60に到達し「プレスティージ1」を達成することと、プロランクに在籍するか現シーズンのランクモードで25勝を挙げることのふたつの条件を達成する必要があるため、新規アカウントを作成して投票結果を操作することは難しくなっているとのこと。
具体的な調整対象の選別方法として、バランス評議会のメンバーはそれぞれの項目について最大3枚まで投票が可能となっており、また複数の項目に対して同じカードを投票することもできる。各プレイヤーの投票結果は集計され、各項目について最低得票数50を超えた上位15位までのカードがバランス調整を受ける。
くわえて、各カードは集めた得票のうち最大の項目のみが調整対象となるほか、カードの構築コストや戦力値の数値には下限が設定されており、ゲームのバランスが短時間で極端に変わってしまうことを避ける工夫がなされている。なお、それぞれの数値には下限はあっても上限はないため、何年もの時間を費やすことで戦力値を100や200まで上昇させることも構造的には可能だ。
とはいえ、かつて『マジック:ザ・ギャザリング』の主席デザイナーであるマーク・ローズウォーター氏が“20の教訓”の第19番として「受け手は問題を見つけるのは上手いが解決するのは下手である」と語ったように、ゲームバランスの不備を発見することに長けた者がかならずしもバランス調整でも同じほどの才覚を発揮できるわけではない。
本作に導入されたバランス審議会も、一定のプレイ回数や現行ランクでの勝利経験を条件とするなどハードルを設けてはいるものの、投票者たちの偏りやネット上での扇動などを受け、投票結果が歪になってしまう可能性は存在する。
それでも、今回CD Projekt REDが実施した異例の試みは非常に興味深く、またDCGジャンル全体の未来を占う意味でも重要な挑戦ではないだろうか。ユーザーによるバランス調整がユーザーのゲーム体験にとってポジティブな要素たり得るなら、DCGを維持・運営するための必須コストから「バランス調整」が取り払われることとなり、よりゲームを継続させやすくなるからだ。
DCGにおいて類を見ない挑戦「バランス審議会」やその調整の行く末に興味のある方は、本作をダウンロードし、評議会への参加を目指してゲームプレイに励んでみてもいいかもしれない。