Hiro師匠からビデオメッセージ
217:
さまざまなゲームを生み出している中さんなんですが、中さんもよく知っている方から、今日は特別にコメントVTRを頂いております! こちらをご覧ください!
加藤:
どうぞ!
――中さんとの思い出を今回はうかがいたいと思っています。最初に出会ったのは?
Hiro師匠:
たぶん寮が一緒だったんですよ。会社に入る前に、みんな寮に来るじゃないですか。なので、寮で会ったのが最初じゃないかなと思います。入社日の数日前に入った気がします。全国から来た奴らがそこに集まって……。
217:
出会いからなんですね。馴れ初めみたいな(笑)。
――部屋とかは、中さんとは。
Hiro師匠:
えっとね、隣でした。
中:
たぶん初めてですよ、俺のこと喋ってんの(笑)。
Hiro師匠:
何年いたんだろう。4、5年いたんじゃないかな。安かったのと、まかないが出て。寮のおばちゃんがいたんですよ。なので、朝食と晩飯が出るっていう。
――寮での中さんはどんな感じでしたか?
Hiro師匠:
その飯を一切食ってなかったですね。
217:
食べなかったんですか?
中:
いや、食ってたって(笑)。
Hiro師匠:
「まずい」とか言ってましたね(笑)。だったような気がする。ちなみに、先輩は後輩ひとりひとりについて研修するっていう雰囲気ではなかったんですよね。で、俺も中も、元々学生時代に趣味でプログラムを作っていたんで、2人ともプログラム知っているから2人で組んで作ってよ、って言われたのが最初ですね。研修みたいな感じで。たぶんSC-3000とかの時代だったと思います。「女の子向けのゲームを作って」という指示みたいなのだけはありましたね。
――それで作られたのが、有名な……。
Hiro師匠:
『ガールズガーデン』【※1】ですね。本当に2人しかいなかったんですよ。企画もいないし、デザインもなかったので。それで、女の子用のゲームなので、女の子が主人公のゲームにしましょうと。そして、男の子がいて……という風に、だんだんと世界観ができていって。2人で話して、どんどん作って行った感じですかね。それで、その頃、中が『魔法のプリンセス ミンキーモモ』【※2】にハマってて。※1 ガールズガーデン
1984年発売の横スクロールアクションゲーム。※2 魔法のプリンセス ミンキーモモ
1982年と1991年に一話完結型のテレビアニメシリーズとして放送された魔法少女アニメ。葦プロダクション製作。総監督は湯山邦彦、原案・構成は首藤剛志。
コノミ:
『ミンキーモモ』!
Hiro師匠:
あれをキャラにしたいと。俺が描いたんですよ。
――そうなんですか。
Hiro師匠:
はい。デジタイザーってやつで。元々趣味で2人ともゲーム作ってるじゃないですか。
――はい。
Hiro師匠:
それで、会社に行って、もっと環境が整ったところでゲームを作れるわけですよ。もう、楽しくて仕方ない感じ。オールマシン語で、アセンブラで作るじゃないですか。業務用なので。俺はそれまでオールマシン語を経験したことがなかったので、けっこう試行錯誤しながら。ただ、中はそこらへんをけっこうオールマシン語でやってた気がするんです。彼は理解していたので、とにかく仕事は早かったですね。『ガールズガーデン』を作っているときに、主人公の女の子がクマに当たって倒れちゃうと、ハートが出て復活するじゃないですか。そのハートが動くルーチンは、中が作ったんですけど、最初それを見たら、どうも短長だと。「ハートだったら、こうやって、こう回ろうよ」と言ったら、次の日にそうなってたんです。
一同:
おぉー!
Hiro師匠:
おぉ、スゲー! と(笑)。「楽しいことはすぐに実現しよう」というのが頭の中にあって。アイデアを言うと、けっこうすぐに反応して、面白いことは取り入れてくれる。しかも早くて。あのハートも、結局どう動かしたかは解析しなかったけど、テーブルなのか、計算なのか。
中:
計算ですね。
Hiro師匠:
作り終わって、もう発売されますよってときには、別のプロジェクトに入っているので。もうその頃は別々になってました。
――別のチームに。
Hiro師匠:
『ガールズガーデン』しか一緒に仕事はしてないはずですね。けっこう中は我が強いので、「なんでそれができないの?」的なことで周囲と揉めたりとか(笑)。……これは言っていいのかな。
――応これはサプライズで、生放送でいきなり流す予定なので。
Hiro師匠:
なるほど。……辞めるやつが多かったです(笑)!
――(笑)
Hiro師匠:
メガドライブの初代『ソニック』。あれを遊んだときは「おぉ、中すげぇ!」って思いましたね。あのデキはすごくよかったですね。メガドラで初めて自宅で全部クリアしたゲームです、面白くて。『3』までは全部遊びましたね。
中:
お、やった!
Hiro師匠:
「ソニック」って、「マリオ」とか、今までにあるゲームではなくて、「ソニック」じゃないですか。それはすごく新しいジャンルのような気がして。すごいなと。セガのクリエイターって、だんだん役職が上がっていくと辞めちゃうので、心配していたら辞めちゃいましたね。
一同:
(笑)
Hiro師匠:
みんな部長とかになってしまうと、クリエイターって、人をまとめるのが基本的に下手なんですよ。下手じゃないとクリエイターになれないので(笑)。それなのにそういう地位についてしまうと、やっぱり崩壊してしまいますね。もったいない。だから、金だけ渡してあげて、好きなことやらせた方が伸びて、いい使い方ができると思うんですけど。そこはちょっと経営的には失敗なんじゃないかと思いますが。
……いいのかな、ここでこんな話しちゃって(笑)。
――(笑)。
Hiro師匠:
社長をやっているらしいじゃないですか。外の仕事も俺は受けられるので、仕事ください(笑)。お待ちしております。
一同:
(笑)
Hiro師匠:
30何年ぶりに一緒に仕事できるかもしれない。はい、よろしくでーす。
加藤:
なんと、Hiro師匠から、中さんにメッセージをいただきましたが、「仕事ください(笑)」。
中:
すごくやってみたいですよね。ただ、ボクの方が「セガさん仕事ください」って感じですね(笑)。
加藤:
一緒にやればちょうどいいですね(笑)。
中:
仕事絶賛募集中なので。セガさんじゃなくても、加藤さんでも、どこの会社でもいいので(笑)。
加藤:
Hiro師匠って、同期ですよね?
中:
そうですね。
加藤:
『ガールズガーデン』のお話とかしてくださいましたが。ハートがぐるぐるーっと動くやつとか。言った次の日にはできていた、と。
中:
いや、次の日だったかは覚えてないんですけど、ちょっと苦労した覚えはあります。
加藤:
あの当時のゲームだと見たことないってレベルな気がするんですよ。
中:
うーん。どうですかね? すいません、恥ずかしい(笑)。『ガールズガーデン』は色々恥ずかしい。
加藤:
あ、そうなんですか?
中:
まぁ、でも宮内も──あ、昔“宮内”だったんですけど(Hiro師匠=川口博史氏の旧姓)──すごく楽しんで作っていたゲームなので、すごく思い出もあります。ほとんどあいつと2人で。途中でデザイナーの人がアフリカかどっかに行くとかでいなくなったりして。途中からドット絵も宮内と2人で打ってたりとか。
中さんがセガに入社したのは、ある先生の一言がきっかけ?
加藤:
中さんは高校を卒業してセガさんに入られているんですよね。
中:
ええ。ボクは頭悪かったんで。
加藤:
絶対悪くないと思います!
中:
いえいえ、本当に悪かったんですよ。
加藤:
悪いわけないですもん(笑)。
中:
高校を卒業する前ぐらいですよね。先生に呼ばれて、「中、お前の頭だと大学行けないから働け」と。それで、「わかりました、ボク勉強嫌いなので働きます!」って言って。
加藤:
そこの理由は違う気がするんですけど、先生がそういったおかげで、『ソニック』も含めて、色々な偉大なゲームが生まれたかもしれないですよね。
中:
うーん……。まぁそうかな(笑)。
NRK:
先生のおかげですね。
中:
若干ありますね。その先生の判断が。それで大学も行かず、高卒のまま。
加藤:
でも中さんは高校時代からゲームを作っていたわけじゃないですか。
中:
作っていたというか……。ボクは当時、大阪駅の近くにある、いま「日本マイコン販売」っていう会社があって。──いまもあるんだと思うんですけど、どちらかというとオフィスソフトとかを。
加藤:
あー。
中:
当時「弥生会計」【※】とかそういうのを作っていたと思います。いま「弥生会計」は別会社になっているかもしれないんですけど。そういうのをやっていた会社で、ゲームも作っていたんですよ。それで、ボクの師匠となる、西岡和哉さんっていう人がいらっしゃって。その人が、当時アスキーって雑誌で、ワンキーゲームっていう連載をずっと持っていて。
※弥生会計
2014年時点でパッケージ型会計ソフトにおいて国内シェア68%、顧客数125万社を有する法人向け会計ソフト。
加藤:
月刊アスキー。
中:
はい。それで、その人にプログラムを色々教えてもらったんです。で、その人が日本マイコン販売で働かれていて、知り合いだったので、アルバイトで高校生のときに呼んでもらって。その西岡さんが作ったゲームの、移植をずっとやっていたんですよ。
加藤:
高校生で移植を。
中:
西岡さんがPC-8800とかで作ったものを、ボクがPC-8001mkII とか、PC-9800とか、X1 とか、パソピアとか、FM-7とか、FM-8とか……。
加藤:
いっぱいありましたからね。
中:
東芝さんとか、富士通さんとか、シャープさんとか、みんな違うメーカーさんで、全部違ったんですよ。ある程度BASICで書かれていて、描画部分とかがマシン語とかで書かれていたんですけど、それを全部の機種にボクが対応させて、一回に十何機種分を出す仕事を。それをアルバイトでやってたんです。
加藤:
高校生ですよ? それで頭悪いわけないですよ(笑)。
プログラムって簡単!?
中:
でも、実はすごい簡単なんですよ?
217:
ほんとですか?
加藤:
絶対簡単じゃないですよ(笑)。
中:
実際、プログラムって簡単なんですよ?
加藤:
それが簡単だって言える人が天才なんですよ。
中:
だって、プログラムって足し算とか引き算しかしないんですもん。
加藤:
その単純な計算すらも、217は怪しいんですよ(笑)。
中:
あとは、掛け算をちょっとするかもしれませんけど。まぁ、サインコサインとか、ルートとか……。ボクらのころはサインとかルートも、自分でプログラムで作らないといけなかったんですけど、いまの人たちは、そういったものが当然のように用意されているから、もっと簡単じゃないですか。すごい簡単ですよ。
217:
ほんとですかぁ? 絶対根気ですよね。
コノミ:
根気、根気。
加藤:
ボクみたいな文系人間は、そこが全然(笑)。
中:
でもだって、英語って覚えることがたくさんあるじゃないですか。
加藤:
そう言われれば、イチバン数学が覚えることは少なかったですからね。
中:
うんうん。そうですそうです。結局、代入するだけなんですよ。AをBにしてとか、BとCを足して。みたいなことしか、ゲームを作るときはしないので。
あとは、絵があったら、絵をここからここに動かすってだけじゃないですか。それで、あたり判定があったら、あたって死んだ、とか。
加藤:
それもプログラムで。
中:
そうです。なので、結局、ここでこの範囲に入ってますか? ということを見るだけなんで。実はそんなに難しいことはしてないんですよ。
加藤:
そう言われちゃうとそうなのかな、って思っちゃいますけど、みんながみんな簡単には作れてないですよね?