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ホラゲにゲームデザインの常識は通用しない!? Jホラーゲームの第一人者『零』×『SIREN』開発者が語り合うホラーの摩訶不思議(柴田誠×外山圭一郎)【ゲームの企画書第八回】

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『零』の第一作目はエモーションエンジンから生まれた

――というところで、今度は柴田さんの「零」についても、お聞かせください。

柴田氏:
 いや、いや、もう外山さんのに比べれば、実に普通のゲームですよ。

――確かに、ヘンな言い方ですが、外山さんの『サイレントヒル』や『SIREN』と比較して、ゲームとしての“当たり前”の部分をしっかりと設計されている印象はあります(笑)。一作目の『零』のリリース時期としては2001年ですから、『バイオハザード』から5年後、『サイレントヒル』から2年後ですね。ハードウェアもPS2でした。

柴田氏:
 PS2が出て、「エモーションエンジン」【※】が出てきた頃に、CGの表現力が一段上がると思ったんですね。これまでCGムービーでしか表現できなかった画質の絵の中を、実際に歩き回れるようになったんです。
 そのときに、幽霊をCGで再現するのを思いつきました。今ならば、幽霊のような「曖昧な」ものを、もっと上手く描けるのではないかと思ったんです。

※エモーションエンジン
ソニー・コンピュータエンタテインメント (SCE)と東芝によって開発され、主にPS2向けに設計・使用されたRISCマイクロプロセッサ。

――まさに『サイレントヒル』で柴田さんが気づいた、CGだから可能な「曖昧な」表現の魅力が、ますます描けるぞ、と。

柴田氏:
 ええ。ですから、『サイレントヒル』の存在は、最初の『零』の企画にとって本当に一つの支えだったんですよ。あと、もう一つは、心霊体験のときの幽霊の「気配」の再現をしてみたかったんですね。

――……?

柴田氏:
 心霊体験が起こる直前って、幽霊の気配を示す特殊な音が聞こえるんですよ。それを再現すれば、霊感がない人でも心霊スポットに行った時の心霊体験ができるじゃないですか。これは一定の需要があるはずだし、新しいホラーゲームになるはずだと……。

――あの、すいません。サラッと心霊体験のお話をされてるのですが(笑)、柴田さんは心霊体験をされるのでしょうか……?

柴田氏:
 あ、そうです。原体験としては僕が実家で見ていた幽霊の話があって、これは長いんですけど……(笑)。

外山氏:
 何よ、その「話していい?」みたいなノリは(笑)。まあ、柴田さんの心霊体験はよく聞くけども。

ホラゲにゲームデザインの常識は通用しない!? Jホラーゲームの第一人者『零』×『SIREN』開発者が語り合うホラーの摩訶不思議(柴田誠×外山圭一郎)【ゲームの企画書第八回】_015

柴田氏:
 いや、僕にはそれしかないんですよ。
 だって、外山さんのような「ホラーに愛されている」側の人間じゃなくて、単なる「ホラーを愛する」側の人間なんですから(笑)。そんな僕がホラーゲームの製作者として他の方と差別化できそうな特色は、せいぜい霊が見えることくらいかな……みたいな。

一同:
 (爆笑)

――では、もはやゲームと関係あるのか分かりませんが……夏ですしぜひ……ってことで。(※ この収録は8月の真夏日和に行われました)

柴田氏:
 では話すと、僕が幽霊を一番最初に見たのは、小学校に入る前なんですよ。当時は幽霊なんて知らなかったけど、ある晩、夜中に起きると顔がグチャグチャな人が、柱の前に立っていたんですね。しかも、それが半透明でぼんやり青白く光っていて……微妙にモーフィングしているっぽいんです。

――モーフィングする幽霊ですか(笑)。

柴田氏:
 とりあえず、当時の僕は怖いから死んだふりをしていたんですが、後に小学校の図書館で幽霊の本を見て、あれが幽霊なのかと思いました。それが最初の記憶ですね。

 ところが、その後も見るんですよ。
 僕の自宅の近くに神社があったのですが、夜中に起きると神社の入り口から、人がボソボソと話す気配がみっしりと満ちているんです。それも、「うぉぉぉぉ」とか「押すな、押すな」みたいな感じで声を上げては、自分の家の道の前を曲がって消えていく。これは何だろうと思っていたのですが、後に水木しげる先生の本を読んだら「あっ!」となりました。
 「百鬼夜行」について描かれていたんです。もう、小学生の僕は「きっとこれだ!」と思いました。

一同:
 (笑)

――あれ? でも「百鬼夜行」って妖怪じゃなかったでしたっけ?

柴田氏:
 いや、まさにそうなんですけど、気配がたくさん来るから、そう思うわけです。まあ当時は、その百鬼夜行を見るとまずいと思ったので、窓から見たことはなかったんです。だから、どんな見た目かわからなかったですからね。
 いずれにせよ、そういう霊たちの気配を「エモーションエンジン」なるテクノロジーで再現できるのなら、そりゃ素晴らしいのではないかと……まあ幽霊という存在そのものが、死者の感情の塊でもあるわけですし(笑)。

――世界中探しても、「エモーションエンジン」にそんな可能性を見いだした開発者は、柴田さんだけな気がします(笑)。ちなみに、自分は一度も心霊体験はないのですが、霊の気配って、どんな感じなんですか。

柴田氏:
 幽霊の方向から音がするんです。霊ごとに固有なことはわかるけど、その音は何が何だかよくわからない。
 ただ、こういう言い方になるのは、私の霊感が弱いせいもあると思うんです……。私にわかるのはせいぜい、そこで何かをボソボソ言ってるということ程度。もっと霊感がある人には、聞こえ方が違うのだろうなと思うんですけどね……。

 その音を再現するために、このゲームには人間の可聴領域の外にある低周波帯や高周波帯の音をあえて入れています。あと、ゲームの中に「無音」という音があって、そこでは人間に聞こえない周波帯の音を爆音で流しています。

一同:
 ええ!?

――「零」をプレイしていると、ゲーム機から人間に聞こえない周波数帯で爆音が流れているんですか?

柴田氏:
 もうね、メーターを振り切るレベルで流してます。でも、その音圧こそが、私の知っている霊の気配に近いわけですよ。だから、たまに「零」をプレイしていると、ペットの犬が吠えたり、近所の鳥が叫び始めたりするという話があるんですが、彼らからすればいきなり爆音が流れてきて、ビビってるんだと思いますね(笑)。

――近所の動物たちがうるさくて悲鳴を上げている(笑)。

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柴田氏:
 もちろん、他にも色々な音量の音を入れてるんですよ。この霊の音は、一作目はかなり再現できていると思います。見た目も含めて。実際、ある雑誌の編集者から「これですよ」と言われました。「ただ、本物の霊はもう少し動きが遅い」と言われたので、そうかなと思って二作目ではゆっくりにしたんですね。
 悲しいかな私には、結局のところ音圧とか霊の気配の音のようなものが分かるだけなんです。もっと霊感が強い人にはきっとクリアに霊の音が聞こえていると思うんですけどね。

外山氏:
 サウンドの人は、どうやって音楽を作ってるんですか(笑)?

柴田氏:
 いやあ、みんな全く分からないので、色々と迷惑をかけてますよ。一応、担当者には「君の人生で一番悲しかったときを思い出して、音を作れ」とか「この世界全体を恨め」とか指示を出してるんですけども……。

――ディレクターからの指示が、「世界全体を恨め」(笑)。

柴田氏:
 もうね、「人生の中で一番悲しかったのは、飼ってた犬が死んだときです」「そうだ、それだ! その気持ちだよ!」みたいなやり取りをしてますね……ってこれ書くんですか(笑)?

――素晴らしい話なので、ぜひ書かせてください(笑)。あと、一つ気になったんですが……そういう話って、予算の稟議とかにはどう書いてるんですか。

柴田氏:
 「幽霊が発する気配の音」とかですよ。

――なにも間違ってないですね(笑)。そして、「零」のゲームデザインと言えば、やはりカメラを撮影することによる戦闘です。……って、これも心霊体験からきたものだったりするのでしょうか。

柴田氏:
 もちろん、そこはゲームとしてのアイディアを出す中で検討して、最終的に決定したものです(笑)。

 ただ、背景に心霊体験はありました。子供の頃に体験した百鬼夜行は一度も直接見たことはなかったものの、それを見たら直感的に「連れて行かれる」と思っていたんですが、ある日、親父からもらった壊れたカメラをもらった時に、これを通してみれば幽霊を「見たことになってない」気がしたんですよ。いま思えば、完全に子供ならではの独自ルールなんですが(笑)。

――小学生の「この横断歩道の白線の上を歩いていれば、下に落ちない」みたいなノリでしょうか(笑)。

柴田氏:
 しかも、もしあの百鬼夜行から一人でもこっちに来たときに、カメラで写しさえすれば――フラッシュで追い払えるのか、はたまたフィルムに吸い込めるのかわからないけど――とにかく大丈夫な気がして、不思議な安心感を覚えたんです。この辺は、やはり「零」の設定に影響を与えてはいます。もちろん、ゲーム的な観点でも、カメラは非常に良かったですけどね。

――ただ、「零」のカメラってよく言われるように「霊を覗き込まねばならない」という点ではホラー演出にプラスだと思うのですが、まさに今のお話でもあったように「カメラがあれば大丈夫だ」という意識で覗くので、「霊」という恐怖の対象に安心感を与えてしまっていませんか。毎度「零」をプレイして気になる点でもあるのですが……。

柴田氏:
 確かに、そういう面はあります。そもそも、ホラーゲームで戦闘は、本当は入れてはいけないんです。恐怖の対象を倒してしまっては、台無しですからね。

――三上真司さんのインタビューでも同じようなことを仰っているのを見ました。ここもホラーとゲームのジレンマですよね。ホラー映画やホラー小説なら恐怖の対象から逃げ回ればいいけど、ゲームは恐怖と向き合って倒さないといけない……。

柴田氏:
 そうなんです。ゲームであるからには「解決している」感もほしいんです。そのときに、私としては「カメラで撮影することで幽霊を写真に収める」という辺りでどうか……と考えたのはあるんですね。

 実際、他の案と検討しても、カメラはよく出来ていました。特に、カメラを覗くと視界が狭まるのがいいんですよ。ヒュッと霊がいなくなると、慌てて探し回らないといけない。上を見たら、いきなり降ってきてもいいですしね。そこは単純にバトルとしても、ホラーとしても面白くできるんですよ。

――戦闘そのものがホラー演出になる、と。

柴田氏:
 ただ、みんなから最初は反対されましたけどね。結局、実際にモックを作って、「要は一発しか撃てない弾があるシューティングゲームなんですよ」と販売に説明したら「なるほど、そういう武器を持った”バイオ”か」と言っていました。僕の方も、「ゾンビよりも霊の方が怖いですよ。しかも霊だから何度でも蘇って襲ってくるんです。オバケは死なない、病気も何もないんです!」とか言って(笑)。

一同:
 (笑)

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恐怖の想像力を生み出す歩行スピード

――ホラーゲームの難しさという点で、もう一つお伺いしたいのですが……ホラーゲームって一種の“不便さ”が重要だったりしませんか。例えば、先ほどのカメラの「視界が見づらい」というのは、むしろ通常のゲームでは問題点になる部分だと思うんです。あと、「歩く速度がもっさりしていて遅い」ようなホラーゲームも多いですよね。「ゲームの企画書」でインタビューしていると、多くのクリエイターが「操作の快楽」を大事にしているのですが、むしろホラーゲームでは「操作の不快さ」こそが重要に思えるんです。

柴田氏:
 ああ、そうでしょうね。
 通常のゲームのようにサクサクとスピーディに動くホラーゲームも探せばあると思いますが、特に「零」のような雰囲気モノで想像力に訴えかけるホラーアドベンチャーは移動を快適にすると「負け」ですね(笑)。
 「ホラー」に欠かせない、“想像力が働く余地”を生み出すスピードを計算していくと、ベストのキャラの歩行速度は、ゆったりした不快な速度になっていくんですよ。

――想像力が働くような歩行スピード……ですか?

柴田氏:
 ええ、例えば歩きながら、「なんかこの机が気になるから、調べてみよう」とか「さっきから同じ花瓶が並んでいるのは、なぜだ」みたいに、通り過ぎていくものに自然に興味を持てる速度があるんですね。これ、かなりもっさりした動きである必要があって、あまりに快適に動き回れる歩行スピードだと、全く気にならなくなってしまって成立しないんです。

 あと、ゲームならではのホラー演出で非常に重要な手法として、似たようなモノをズラしていくというのもあるんです。例えば、さっきと同じ廊下に戻ったら、「開いてなかったはずの窓が開いてるぞ」みたいなものです。「零」の舞台となる日本家屋なんて、その気になれば10分もあれば走破できるわけで、この反復をいかに上手に使うかが大事なんですが、これも快適にびゅんびゅん走り回られてしまうと、気づかれなくなりますし、「頭の中で怖くなってしまった」という間がないですよね。

――確かに。しかも仮に気づいたとしても、スピーディにサクサク謎を解いてしまわれでもしたら、次々に幽霊が出てきてしまって怖くもなんともないですね。

柴田氏:
 ただ、こういう部分は新しく誰かと組むたびに毎度毎度、喧嘩になります。

――昔、漫画で三上真司さんが初代「バイオ」を出すときに、上司から「何やこのどんクサイキャラの動きは!?」と怒られたという話を読んだ【※】のですが、そういう軋轢はしょっちゅう起きそうですよね。

※『ゲームクリエイター列伝 1』平沢たかゆき(1998・講談社)に収録されているエピソード。ちなみにこの上司の人物は、現在は「モンスト」の開発者として知られている岡本吉起。

柴田氏:
 なにせ、テストプレイをさせると、必ず2倍の速度だとかにされてしまうんです。そりゃ皆さん、操作について聞かれたら「速いほうが気持ちいい」と答えますよ。でも、それではホラーゲームの一番大事なものが崩壊してしまうんです。特に和風ホラーでは、非常にマズい。
 もうね、仕方ないから1日ごとに少しずつ少しずつ、気づかれないように歩行速度を下げていったこともあります。まあ、バレましたけど……。

一同:
 (爆笑)

柴田氏:
 でも、そこを譲ってはいけないので、最終的に速度を0.01上げるかどうかで3時間くらい喧嘩したこともありました。結局、最後には色々な人の前で、「数値を決めました。もういじらないでください」と言ったこともあったかな。

外山氏:
 でも、僕は『SIREN』の場合なんかは、かなり実際の身体の動きに寄せるように頑張ったんですよ。まあ、敵と出会ったときにすぐ逃げられる必要があるゲームだったからなんですけど。

ホラゲにゲームデザインの常識は通用しない!? Jホラーゲームの第一人者『零』×『SIREN』開発者が語り合うホラーの摩訶不思議(柴田誠×外山圭一郎)【ゲームの企画書第八回】_021

柴田氏:
 確かに『SIREN』は旋回速度が速いんですよ。ただ、あの作品はルールが明確で、「鬼ごっこ」と「かくれんぼ」でしょ。これだったら、アリだとは思うんです。
 でも、「零」の場合はアドベンチャーですからね。机や花瓶の配置も、初期に想定した歩行速度で気づけるように考えてあるし、それを途中でホイホイ変更されてしまうとアドベンチャーそのものが成立しなくなっていくという問題が……。

外山氏:
 なるほどなあ。僕の場合は、こういう速度の辺りは「読み込み速度の問題でこれ!」みたいに、自分と関係のないところで決まっていっちゃうから、そこまで考えないかも(笑)。

――なるほど(笑)。でも、Wii U版の最新作『零 ~濡鴉ノ巫女~』って、ホラーゲームとしてはだいぶ「不快さ」が後退してしまいましたが……実はWii Uのゲームとしては、あのコントローラーの特性を活かした「操作の快楽」にあふれた「傑作」ですよね。

柴田氏:
 実際、これまでプレイしてこなかったWii Uのユーザーが沢山触れてくれて、あのちょっと快適な移動速度でも「怖い」と言ってくれた方もいました。そこはとても良かったと思っています。

――ううむ……そう聞くと、ホラーって「不快さ」のあんばいも難しいですね。商業としてのホラーのジレンマとして、怖すぎると商品にならないという問題があると思うんです。

柴田氏:
 そりゃもう、大変ですよ。怖すぎて後半までプレイせずに感想を言われることも多いし、ライターにROMを渡したら「夜中に『零』を入れた棚だけが揺れていた」と言われて、ROMを返されて記事を書いてもらえなかったこともあるし……(笑)。

 僕も最初の『零』を作ったときに、「次は倍くらい怖くしてやるぞ!」と思ったんですが、「売れなくなっちゃうよ」って言われました。アレで十分だし、もっと怖くなくていいんだから、と。たぶんホラーゲームは「激辛カレー」の店に似ていて、看板に「激辛カレー」って掲げてるのに、予想以上に辛いとすぐ「辛すぎる!」と言いだすんですね。でも、だったらこのお店の特徴は一体なんなんだ、という気もしてくるんですが……。

外山氏:
 昔から「激辛マニア」と「ホラーマニア」って似てるんですよ。追求しすぎると、しまいには料理でも何でもないものになっていく、みたいなね。まあ、その点、三上さんなんかは上手いですよね。最後はロケットランチャーでドーンでしょう。戦っちゃうんだーって(笑)。

柴田氏:
 我々も、それができればきっと、何百万本も……。

一同:
 (笑)

――確かに、パイオニアというのも大きいのでしょうが、「バイオ」ばかりがあれだけ世界各国で売れているという謎はありますね。良い具合に中辛ってことなのか、あるいは上に豚カツが乗ってるからなのか……(笑)。その点、『SIREN』なんかは、やはり頑固に激辛カレーを提供してきた伝説の店というか。

外山氏:
 いや、あれは怖くないんですよ。

――へ……そうなんですか?

外山氏:
 そりゃ怖いところもあるけど、それがテーマではなくて小野不由美さん【※】の『屍鬼』やキングの小説みたいに、その世界に浸る感じがメインですもん。あくまでも、その緊迫感の中でホラーが入ってくるイメージですね。僕の中では、そういうところの焦燥感が大事なのであって、廃屋脱出なんかはその象徴ですよ。いやあ、あれは爆笑しながら作っていたなあ。

※小野不由美
1960年生まれ。小説家。ホラー的な要素を強めた本格ミステリ大作『屍鬼』がベストセラーとなり、世に名前を知られるようになる。その他、「悪霊シリーズ」などのホラー小説を手掛ける他、現在は異世界ファンタジーものの「十二国記シリーズ」を執筆継続中。

柴田氏:
 いいですよね、あのシーンは楽しかったなあ。

――でも、あのシーンって、「ホラーゲーム史上、最も怖いシーン」と言われたりしているような気がするんですが……。

外山氏:
 いやいや! あそこは「面白い」でしょう(笑)。あんなの、押入で寝てたら笑っちゃいますって。

一同:
 (笑)

――うーん(苦笑)。

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女の子への拘り

――そういう意味では、「零」ってキャラクター要素の部分が、カレーに乗せた豚カツのような役割を果たしている気がします。実際、女の子への拘り方は、大変にすごいというか(笑)。

柴田氏:
 あれは最初からそんなつもりは……いや、やっぱりあったかな(笑)。

 まあ、「主人公をどうしよう」という話で、初代「バイオ」は警官、『サイレントヒル』はおっさんなんで、こっちは美少女でいこう、と(笑)。で、ホラー映画でもケバくない女の子って最後まで生き残るんで、主人公は清楚な女の子にするしかないだろう、みたいな。

――ホラーファンには分かるメッセージ(笑)。でも、「零」に限らず、ホラーコンテンツは女性ファンも多いですしね。

柴田氏:
 もちろん、ホラーの体験としては、主人公よりは「自分」が入った方がいいんで、主観視点の方がいいとは思います。ただ、古い和風建築の写真なんかの資料を見ると、横に着物を着た女の子が入っているだけで、不思議と風景が際立っていることに気づいたんです。スケール感が出るというか。その感じはゲームの画面設計にも活かせる気がしました。

 ただ、じゃあなんで可愛い女の子なのかという話になるんですが、そこは「みんな怖くて背景の方を見ているだろうから、女の子はあまり注目されないなら僕の好みでいいよね」と好みを押し通しただけです(笑)。そこは会社の方針というより、単に私だけの拘りですよ。

――なるほど。でも、最近のだともはや霊より女の子のほうに目がいく作りになってませんか(笑)? やわらかエンジンですか? めっちゃ揺れまくってますよ。

一同:
 (笑)。

柴田氏:
 そこはだんだんシフトしていきまして……コーエーテクモゲームスの一つの特色のようなものです(笑)。

――編集部でホラーゲーム会をやったときに、深夜にみんなおっぱいをガン見してましたからね(笑)。

『零 ~濡鴉ノ巫女~』  (画像は任天堂ホームページより)
『零 ~濡鴉ノ巫女~』
(画像は任天堂ホームページより)

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