「経費で買ったガジェットで批評してる奴は意味ない」テック系ジャーナリストたちが体を張ってポケGO、HoloLens等を分析。その先に待つ未来とは?

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 最新ガジェットから話題のツール・サービスまで、一週間分のテック・ガジェットニュースを配信するポッドキャスト「backspace.fm」。テクノロジー系ブロガードリキン氏とITmedia NEWSチーフキュレーターmazzo氏によるトーク、さらに多彩なゲストによる貴重なお話がたっぷりと聞けてしまうという番組だ。

 この放送の中から、特に電ファミ読者に読んでほしいゲームに関する内容をピックアップ。テック系ジャーナリストたちによる深くて濃ゆいトークを、書き起こして皆さんにお届け!

backspace.fm

 今回は2016年11月11日の放送をお届け。深圳(しんせん)で開催された「WinHEC」にて発表されたWindows 10のSnapdragon対応の話から、HoloLens、Mikulusなどキモズム【※】の階段を昇っていくための情報を、フリージャーナリストの西田宗千佳さんが解説。そのトークを抜粋して紹介しよう。

※キモズム
最新技術を見たときに感じるある種の不気味さは、便利なものとして人々に受け入れられることで急速に消えていく。その「不気味(キモい)」と「便利」の溝(キャズム)を表す言葉がキモズム。提唱したのはGOROman氏。同氏のツイート曰く「キモいと思う人より便利という人が増えた場合にこの溝は埋まる。多くの場合、女子高生が使い始めて爆発的に埋める。」

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番組で取り上げられた記事:
ポケモンGOは終わらない – ポケモン20年×携帯電話20年フルバージョンのWindows 10がSnapdragon動作、対応製品は’17年 – AV Watch狙いは「民主化」米MS、アレックス・キップマン氏に聞くWindows Holographic(前編) -PANORA.tokyoホロレンズとMikulusが見せる未来のコンピューター – 朝日新聞デジタル【PSVR】VRでいつものようにスマホを操作できる『anywhereVR』12/8配信 – Mogura VRグーグルのDeepMind、読唇術で人間の専門家に勝つMagic Leap is actually way behind, like we always suspected it was – The VergeEPSON MOVERIO BT-300腱鞘炎を防ぐ。磁気の力で手首の負担を軽減する「Wristocat」 – ライフハッカー[日本版]西田宗千佳のRandomTracking “Apple独自”だからできた傑作。左右独立型ワイヤレスイヤフォン「AirPods」

『ポケモンGO』はキモズムの向こう側にある?

mazzo氏:
 西田さんの最新の著書のお話を。

西田宗千佳氏(西田氏):
 「宣伝のときにしか出てこない?」って言われちゃいますけど、そうでもないです(笑)。2016年11月に『ポケモンGOは終わらない』という新著を出しています。検索していただければ一発で出てくるんじゃないかなと思います。

西田氏の著書『ポケモンGOは終わらない』
(画像はAmazonより)

 『ポケモンGO』に関する分析の本なんですけど、なんでヒットしたかとか、どのぐらいヒットしたかって、きちんとした分析とかデータにもとづくものって意外とないんですよね。たとえば『ポケモンGO』をどのぐらいの人がやっていて、特に8月、9月ぐらいに他のスマホアプリに比べて、どのぐらいのアクティブユーザーがいたかってご存知ですか?

mazzo氏:
 全然。

西田氏:
 知らないですよね? 具体的な数字は言えないんですけど、アメリカのランキングでいうと、アメリカの売り上げトップ10の中に入っているゲームっていうと、だいたいみんなが知っているゲームなんですけど、そのアクティブユーザー数に比べて、『ポケモンGO』は100倍なんですよ。時に100倍以上。今は落ちていると思いますけど、それでも数十倍は簡単にあるんですね。

mazzo氏:
 そんなレベルであるんですね、いまだに。

西田氏:
 全然違うんですよ。だから、プレイしている人の属性も違えば、お金の使い方も違えば、アプリの受け止められ方も違うんですね、普通のゲームとは。
 その辺を考えていくと「最近オレ『ポケモンGO』をやってなかったのに、周りの人はまだやってるような気がする」とか「なんか珍しいポケモンが出るっていうと騒ぎになってニュースになってる」とか、なんでそうなるんだろうっていうのが、実はそういうことをきちんと見ていくとわかってくるんです。という話から、“結果的に『ポケモンGO』って何が新しかったのか”だとか、“『ポケモンGO』をすでに見ちゃった世界はどんな風に変わっていくか”みたいな話をしています。

mazzo氏:
 歴史的な話もあるわけですよね。携帯電話の位置ゲーあたりから。

西田氏:
 そうです。ケータイの位置ゲームが生まれてきたけれども、日本が一番進んでいたのに、なぜ日本では『ポケモンGO』が生まれなくて、他の国で生まれて大きなヒットになったか、とか。そういう話もきちんと分析してますね。

mazzo氏:
 なるほど。それはぜひ読みたいですね。

ドリキン氏:
 単に『ポケモンGO』がどうか、という話よりは、『ポケモンGO』が起こしたムーブメントの背景が実際どういうことだったのかを分析されているってことですよね。

西田氏:
 はい。

ドリキン氏:
 『ポケモンGO』は日本ではどうなんですか? 今は。

西田氏:
 やる人はやってるって感じです。正確に言うと──たぶんですね、ネットでたくさん書き込みをしたりとか、アプリをとっかえひっかえする人よりも、もっと普通の人が使ってるんですよ。

ドリキン氏:
 そっちに根づいているんですよね。

mazzo氏:
 そんな感じがします。

ドリキン氏:
 我々は──ボクとかも飽きっぽいと言われますけど──しょせんボクらの周りの属性の人は、一般の人から見たら総じて“飽きっぽい”んですよ、たぶん(笑)。

西田氏:
 そうだと思います(笑)。

mazzo氏:
 ボクとか他を巻き込まないでよ!(笑)

ドリキン氏:
 いやいや、今それを言いたかった。いつもボクが責められるけど、もっと広い人から見ると、お前らひっくるめて飽きっぽいだろう、と(笑)。

mazzo氏:
 アーリーアダプター【※】にありがちなことですからね、それは。

※アーリーアダプター
新たに現れた革新的商品やサービスなどを比較的早い段階で受け入れ(アダプト)、採用する人々を指す言葉。

西田氏:
 そうそう。キモズムのこっち側(内側)にいるわけじゃないですか、我々は。

ドリキン氏:
 そうそう(笑)。

西田氏:
 それで、『ポケモンGO』はキモズムの向こう側(外側)にあるわけですよ。

 キモズムの内側にいる人には『Ingress』【※】の方が面白いんですよ。間違いない。でも、キモズムの向こう側にいる人には、『ポケモンGO』でなにかあったとニュースで聞こえたときに、思い出して立ち上げてみると、「あ、ほんと」だとか言って、また1週間ぐらいやって、休んで……、みたいなことが正しいんですよ。

※Ingress……スマートフォン向けの拡張現実技術(AR技術)を利用したオンラインゲーム・位置情報ゲーム。最大の特徴は、ゲームフィールドが現実のGoogleマップによる地図そのものだということ。

 だいたいゲームって飽きると消されるんですけど、『ポケモンGO』をやってる普通の人って、毎日やってる場合もあるんですけど、単に消してなくて、何かあったら立ち上げるっていう感じの場合が多いですよね。

 その辺は、たとえば『パズドラ』だとか、ああいうスマホのゲームとも属性が違っているんですよね。すごく特異な位置にあって、本を読んでもらえばわかるんですけど、アプリの統計会社の人曰く「ユーザーの属性は、むしろグーグルマップのアプリに近い」

mazzo氏:
 普通の人ですよね。普通のスマホユーザー。

西田氏:
 スマホを買ったらとりあえず入れる、と。で、毎日何時間も使うなんてことはないんだけど、必要なときには立ち上げるという。あとは、クーポンアプリとか。我々が飽きた、飽きないって言っているレベルとは違っていて、そういう(外側の)属性に入り込めたっていうのは、『ポケモン』という20年やってきたゲームだからなんですよね。そこがだいぶ違うって感じですね。

ドリキン氏:
 そう考えるとNianticがすごいというか、普通に考えたら『ポケモンGO』が普通に成功していたら『Ingress』と食い合うみたいなところがあったはずなんだけど、完全に自分たちの中でカニバらないジャンルの人たちを両方カバーしているという意味ではすごいんですかね。

西田氏:
 そうですね。

ドリキン氏:
 どのぐらい意図してやったかが不思議だけど。

西田氏:
 そこは非常に微妙なところだとボクも思っています。ありとあらゆる人が、『ポケモンGO』に関しては、意図せずに結果分析してみたらこうだった、という話になっているんじゃないのかなと。Nianticがここからアップデートしたり運営していくなかで、意図っていうのができあがって、その意図によってもっとガツっと減っちゃうかもしれないし、同じようにずーっと続くかもしれないし。そこが変わってくるのかな、というのが、ひとつのポイントですね。

ドリキン氏:
 まぁ、コントロールできてたら神様になっちゃいますよね(笑)。ただ、Nianticが持っているものがすごく合って、位置情報とかインフラもそうですけど。それがバンバンと当たっているから、それに対して、走りながらでもいい方向に持って行けているのはすごいことなんですかね。

西田氏:
 と、思いますね。

ドリキン氏:
 恐るべしだな。

位置ゲーはスマホの登場で流れが変わった

mazzo氏:
 ケータイの位置ゲーと、Nianticが持っていたところの違いっていうのは、技術的なモノなんですかね。インフラ的なところの違いで『ポケモン』を生かせなかったんですかね。

西田氏:
 スマホになったところで、一回断絶があるんですよね。たとえば電波を受け取って位置の情報を把握するためのテクノロジーも違えば、アプリケーションの作り方も違うし。あと、大きいのは課金の仕方。位置ゲーって、全部NTTドコモのiモードだとか、GREEとかDeNAがやってたプラットフォームだとか、そういう課金プラットフォームに紐づいてできていたんですよ。

 ところが、スマホに切り替わるときに、課金プラットフォームがApp StoreとGoogle Playに切り替わっちゃった。そうすると、まずはゲーム自体をそっちに乗せないと利益が入ってこないわけですよ。さらには2012年から2013年ぐらいっていうのは、スマホの位置把握の能力もそこまで高くなかったので、日本の位置ゲーをそのまんまスマホに移植すると、動きは遅いしバッテリーは食うしで、ゲームにならなかったんです。
 で、その間に断絶があって。でも、位置ゲーで食っていた会社は、きちんとスマホゲーで食わなきゃいけないので、まずは普通の携帯用ゲームから、スマホゲーに移行してビジネスをやらないといけない、ということになったんですよね。

mazzo氏:
 そこで別の課金になったわけですね。

西田氏:
 別の課金で、別のゲームをやるようになったんです。コロプラさんがその典型ですよね。元々は『コロニーな生活』【※】っていう、位置ゲーの大ヒット商品を作っていた会社が、『コロニーな生活』をそのまんまスマホ上でできたかといえば、できなかったわけですよ、最初は。今はやってるんですけど。
 その間にきちんと食わないといけなかったので、要は『白猫』とか『黒猫』っていうクイズゲームだとかRPGを作って、今はスマホゲームの大きな会社になっている。彼らにとって位置ゲーっていうのは、もう一部になっちゃったわけですね。

※コロニーな生活……2003年にリリース。株式会社コロプラが提供している携帯端末向けの位置情報ブラウザゲーム。GPSではなく、各キャリアのアンテナが基準となるため、GPS機能を搭載していない携帯電話でも参加可能。
(画像は『コロニーな生活』の公式サイトより)

mazzo氏:
 確かに会社の紹介に、スマートフォンゲーム&位置ゲーって書かれてますね。そういう会社だったんだ。

西田氏:
 今『ポケモンGO』で言っている「バスツアー組んでいきましょう」とか、そういう話ってケータイの位置ゲーのときにあったんですよ。でもそれは、まだ規模も小さかったし、そのビジネスを拡大して、スマホにうまく展開するとかっていうのも、残念ながらうまくできなかったんですよね。
 その間に何があったかというと、“Google マップがあそこまで大きくなった”というのが、大きなゲームチェンジとしてあったので、その上で要はジョン・ハンケ【※】がゲームを作ろうって話になったわけじゃないですか。

※ジョン・ハンケ
1967年生まれ。アメリカの起業家。『Ingress』や『Pokémon GO』などのモバイル機器を用いた位置情報アプリや位置情報ゲームを製作している会社Niantic, Inc.を運営する。

 なので、ストーリーとしてはつながっているんですけど、残念ながらテクノロジーをやっている会社とか、テクノロジーのビジネスっていう意味では繋がっていない。

mazzo氏:
 そうかぁ。やっぱりジョン・ハンケがその時点で決意しなければ生まれなかったプラットフォームなのかもしれないですね。

西田氏:
 そうですね。

『ポケモンGO』とVR、MRはつながっている?

ドリキン氏:
 『ポケモンGO』はなぁ、確かに息が長い気がする。

リリース後は、街のいたるところでスマホの画面をスワイプさせて、ポケモンを捕まえようとする人が続出。特定のポケモンが出やすい公園に多くの人が押し寄せるなど、現実の風景を一変させた『ポケモンGO』。
(画像は『Pokémon GO』の公式サイトより)

mazzo氏:
 昨日バンドメンバーと、『ポケモンGO』の話になったんですよ。メンバーのひとりが元Googleで、川島さん【※】とも知り合いで、「昔Doodleやってたよね」っていう話とかもしたんですけど。彼は今『ポケモンGO』はやってないんだけど、もうちょい若いボーカリストの子が『ポケモンGO』をやっていて、レベル25だとか──ボクは24になったばっかりで、そういう話もできる。ほかのスマートフォンのアプリだと、そういう話もできないんですけど、『ポケモンGO』だったらできるんですよね。そのぐらい浸透はしている。

※川島さん
川島優志。1976年生まれ。Googleに勤めたのち、Niantic, Inc.にて『Ingress』や『Pokémon GO』の開発に携わる。

西田氏:
 説明しなくてすむ『ポケモン』っていうキャラクターという特性もあるんですよね。20年やってきて、実は女の子から男の子まで全部やってるゲームって、あれぐらいしかないんですよ。あとは『どうぶつの森』ぐらいかな? そういう部分もあったりして、普通に考えるとモンスターを集めて、それを進化させて、進化させたら戦って、というものすごく複雑な要素なのに「『ポケモン』です」って言った瞬間に終わりじゃないですか。

ドリキン氏:
 そうですよね、『ポケモン』って難しいですよね、けっこう。

西田氏:
 本当はそこのところをきちんと説明すると難しくて、ゼロの状態からやろうと思うと『ポケモンGO』もけっこう難しいゲームなんですけど。でも、アニメで見ていて何となくこういうものだとわかっていて、ゲームをやったことのない大人でも「『ポケモン』って、こういうものだよね」っていうイメージを持っている。で、その中に0円でできて、手元のスマホでできて、「なんか新しい」っていうのが入ってくると、それはヒットするよねっていうのは、まぁ事実だと思います。

ドリキン氏:
 あとは、さっき言ってた話じゃないですけど、Nianticがどこに舵をきって、持っていけるかが興味深いですね。伸び代は相当ある気がするけど。

西田氏:
 本の中でも書いてるんですけど、結局成功するためには何が必要かというと、『ポケモンGO』をやる人と、『ポケモンGO』をやってない人とのコンセンサスなんですよね。
 たとえば、ポケモンが出すぎて困る場所があるとか、よく聞くじゃないですか。これって、要は「アニメの聖地巡礼で、わけのわからないやつらがたくさん来て困る」っていうのと、本質は変わらないんですよ。
 でも、アニメの聖地巡礼で成功しているところって、どういうところかというと、別にそこの人たちが全員アニメを見ているわけじゃないんだけど、何のために彼らが来ていて、彼らが何を望んでいて、何に価値を求めているかっていうことを何となく理解している土地なんですよね。大洗なんかは完全にそうなんですよ。

 『ポケモンGO』に関してもそうで、『ポケモンGO』を何をやっている価値かを理解していなくて、さらには相手とコミュニケーションが取れない──要は、「来ている人が土地のことを理解しようとも思ってない」もしくは「土地にいる人々が『ポケモンGO』の人が何を求めているかも理解できない」状態だと、位置ゲームってやっぱり危ないんですよ。
 その相互作用がきちんと取れるかどうかで、実はその場所で成功できるかが決まっちゃうんですね。すなわち、スマホの中で『ポケモンGO』をやっている人が見ている世界と、『ポケモンGO』をやってない人が見ているリアルワールドって、同じものを見ているのに、実は違うものを見ているんですよね。ほら、VRっぽいじゃないですか(笑)。

 話は実はつながってるんですよね。VR、MR(Mixed Reality=複合現実。CGなどで作られた人工的な仮想世界に現実世界の情報を取り込み、現実世界と仮想世界を融合させた世界をつくる技術)と、『ポケモンGO』って。一番最後の章はそういう話なんですよ。

mazzo氏:
 おー。見事に繋がってますね。

西田氏:
 見事に落ちてるでしょ? 実はこれはね、『シン・ゴジラ』を見ながら思いついた構成で(笑)。

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