ビジネスとしてのVRの可能性はどこにあるか
西田氏:
GOROmanさんはスゴイし、GOROmanさんがやっているようなことを考えている人は他にもいるはずなんですよ。で、そういうことを考えていることがきちんと世の中に出て、ビジネスになったり、新しい商品になって、みんなが体験できたり、という風な世の中に変わっていかないといけないんだと思うんですよね。
だから、今ちょうどそれができるようになっているし、Windows Holographicがひとつプラスかなと思っているのが、安いものでできるようになるのは間違いないんですよ。実際に2017年末に普通のKaby Lake搭載のPCでできるようになるとすれば、そこでKaby LakeのPCをゼロから買っても500ドルなわけですよね。もっと言えば、2017年に発売されるPCの大半はKaby Lakeなので、問題ないわけですよ。そうするとHMDを300ドルで買えばいいっていう話になるので、せめてPSVRぐらいの敷居には下がるんですよね。
ドリキン氏:
そういう意味では、このマイクロソフトの活動は偉大ですよね。
西田氏:
偉大ですよ。で、おそらく同じようにテクノロジーフィードバックがあって、Oculusがやっていることとかも、ここから1年とか1年半とかで敷居は下がると思うんですよね。そういう敷居が1年半ぐらいの間に下がっている間に、要はキモズムの相当こっち側で、VRワークスペースの面白いやつを作って、一般化しそうなところに流していくっていう作業をしなきゃいけないんだろうなという気はしますよね。
ドリキン氏:
本当にそうですよね。ある程度ビジネスにしていかないといけない。
Macとかが初代の時代とかって、やっぱり時代が良かったからかなぁ。あの頃はまぁ、あんなにエクセルとかがしょぼくてもビジネスになってたし、スゲー高かったから。ポルシェのような値段でMacが売れてたからよかったけど、今はそこらへんがどんどん下がって、お金を稼ぐのが難しくなっているっていう点はあるのかな。
西田氏:
まぁ、そうですね。
ドリキン氏:
色々多様化していって、お金を稼ぐのは難しいのかもしれないですね。
西田氏:
だと思います。でも、B2B【※】のバーティカル市場と、個人向けのクリエイティビティの市場との間に何かあるので、まずここなんじゃないのかなと。もちろんエンタメもあると思いますよ。隣でミクさんがはぁはぁ言っているだけでいいと思うので、ぶっちゃけね。
そういう意味で言うと、中国から帰ってきて一番最初にやったことはPS4の電源を入れて、PSVRで提供されている『Star Wars バトルフロント』のVRミッション(『Star Wars バトルフロント ローグ・ワン: Xウイング VRミッション』)をダウンロードして遊ぶことだったんですよ。これがスゴイ!
※B2B
Business to Businessの略。企業・事業者が、企業・事業者に向けて商品・サービスを提供すること。
ドリキン氏:
おぉ。
西田氏:
『スターウォーズ』が好きな人だったら、100点満点中10億点あげてもいいぐらい!
ドリキン氏:
おぉ! mazzoさん、買わないと。
mazzo氏:
買いますよ。
西田氏:
本当にスゴイです! 結局、自分がXウイングに乗って戦うだけなんですけど、まさに『スターウォーズ』の中で自分がやりたかったことができているわけですよ。それをやっていると、本当によくできたエンターテイメントは、この5万円なり10万円なりの値段を吹っ飛ばすエネルギーがあるな、と。
仕事の道具ってなかなか、金吹っ飛ばせないんですよね。ビジネスになるかって判断になるので。でも、ものすごいエンターテイメントって、四の五の言わずに「俺はこれに金払いたいんだ!」になるので。そこから入っていて、それを毎日体験して、仕事のツールっていうところに繋がっていくのかなっていう、そういう気はしますね。
ドリキン氏:
ボクも最近は早く家に帰ってヘッドセット被りたいっていう衝動に駆られるぐらいまでは来たからなぁ(笑)。
西田氏:
すごいですね(笑)。
mazzo氏:
もしくは会社に行きたくない、とかね(笑)。
ドリキン氏:
いやぁ、Oculusを会社にもう1台置くかな、みたいな(笑)。そういう意味では──別に隠してはいないけど──PS4Proを買いましたよ。PSVRをよりよく体験するため。まぁ、実は『FFXV』をよりよく体験したいがために買ったんですけど(笑)。まだ届いていないんですけど。
西田氏:
まだね、PS4Proに対応したVRアプリが少ないんですよね。
ドリキン氏:
なんか、『FFXV』がかなり……。
西田氏:
けっこう違いますね。
ドリキン氏:
はい。違うっていうのがあったんで。いやぁ、VRについて、今日でどのくらいリスナーの皆さんに通じてるのかな。
西田氏:
でも、1984年のMacだって言うと、「あぁ!」って思う人はいるかもしれないですよね。
ドリキン氏:
今まさにTwitterでも「VRの説明でパロアルト研究所【※】を見学したのと、Mac発売で知ったとのたとえはわかりやすかった。VRは一度も体験していないので、指をくわえて聞いている」っていう。
※パロアルト研究所
複写機大手の米ゼロックス (XEROX) 社が1970年に開設した研究開発企業。マウス、Smalltalk、イーサネット、レーザープリンターなどの発明したり、半導体レーザー、電子ペーパーなど研究をしたりしている。コンピューターサイエンス方面に大きな影響を与えた。
西田氏:
まさにボクも、田舎の中学生が、パソコン雑誌を読みながら、「へぇ、こんな風に操作するんだ!」って、Macの画面を見てたわけですから。
ドリキン氏:
いや、ホントに、2016年ギリでここに気づけた俺、よかった(笑)。まだみんなより何周か先に行っているかもしれない。
mazzo氏:
2016年1月に、Oculus Rift CV1の予約があったわけじゃないですか。そこで我々は買った。そのときに「Touchのオプションがあるよ」ってことで、一応応募はしたわけですよね。で、その時点で一応見てはいたわけで。いらないということではなくて、予約券を行使したわけですよ。
ドリキン氏:
だから、直感までは来ていたってわけですよね。そういう意味ではmazzoさんをボクは改めて尊敬しましたよ。mazzoさんはやっぱり、このbackspaceの中では一番最初にここに気づいてコミットしていたわけですから。
mazzo氏:
キモズムには目ざといんで(笑)。
ドリキン氏:
ホントに。ただのミク好きのおっさんかと思っていたら(笑)。
mazzo氏:
いやいやいや(笑)。
西田氏:
なにを仰いますやら(笑)。
ドリキン氏:
ほんとに改めてすごいなと思いましたよ。2017年からは襟を正してmazzoさんと話すようにします(笑)。(ポッドキャストは2016年12月に公開)
mazzo氏:
今年は正さないんだなという(笑)。
西田氏:
即座に正すんじゃないんだ(笑)。
ドリキン氏:
2016年は準備中(笑)。
mazzo氏:
でもね、これは1人でやってたら、なかなか思い切りが付かないと思う。ボクらが相互作用で、競い合うようにキモズムの谷を越えようとしているという。
ドリキン氏:
それはありますよね。何かがあるんじゃないかな? と。片方がそのネタを言わなくなっちゃったら消滅しちゃうので。
あとは、さっきも言ったんですけど、外出先でスマホを使うのがすごく嫌だから、何がいいだろうかと思って、mazzoさんのVufineを(笑)。だからボク聞きましたよね?
西田氏:
そういえばVufineは新しいやつがもうすぐ出ますよ。Vufine plusっていう。
mazzo氏:
クラウドファンディングでちゃんと成立したので。
ドリキン氏:
ただVufineは、しょせんスマホをあそこに出しているだけと思うと、なんかなぁと思って。なんかないかなぁと思っているんですよね。
mazzo氏:
まぁ、あれはHUD【※】の現実解なんですよね。Telepathyとか、Google Glassとかあの辺がなし得なかった、「なぜダメだったか」ってことを研究して作ったのが、すごくシンプルなアレだったという。
ドリキン氏:
だから、早くHoloLensの2世代目で、SIM載っけて、もうちょっとバッテリーが持つっていうのが出てくれたら、早々にそっちに乗り換えたい。
mazzo氏:
HoloLensも被って外に出るくらいのことは。
西田氏:
大丈夫、大丈夫ですよ。サンフランシスコはどうか知らないですけど、東京は大丈夫ですよ。
ドリキン氏:
どういうことですか(笑)。
西田氏:
HMDをずっと被って生活している知り合いにですね、MIROさん【※】って方がいてですね。知る人は知っている人なんですけど。
※MIRO……筋金入りのガジェットオタク。携帯動画変換君の作者かつ、超会議などで社内の無茶ぶりを技術的に実行するひと。ニコファーレや超歌舞伎、ニコニコ系ライブのVR化などその仕事は多岐に渡る。ドワンゴVR部員でもある。
mazzo氏:
モバイルハッカーズの?
西田氏:
ええ、モバイルハッカーズの。今ドワンゴで、ニコファーレとかあの辺の面倒を見ている人がいて。
彼曰く、1年半以上、ずっとHMDを付けて東京の駅の中で行き帰りしてたけど、変だと言われたことは1回しかないと。それも、酔っぱらった女性に、ケラケラ笑われて、「スカウターだ、スカウターだ! あんたナッパ?」って、言われたっていう(笑)。
mazzo氏:
それは笑った、本当に(笑)。
西田氏:
「それしかなかったので大丈夫です」っていうのがあるんですけど(笑)。だから、ベイエリアで毎日HMDをつけている奴として有名になるぐらいでもいいじゃないですか。
ドリキン氏:
本当にね、HoloLens買ってやろうかっていうのは思ったんですけど、ちょっと今の段階で買うのはなって思って。
AIを前提としないUIが減っていく?
西田氏:
まじめな話をすると、確かに今のテクノロジーベースではちょっと厳しいですね。
ドリキン氏:
ですよね。
西田氏:
まず、第一にディスプレイの視野角が狭すぎるので。第二に、パフォーマンスが低いので、結局描画できるもののクオリティが低いっていうことがありますよね。で、3つ目はバッテリーが持たない。
ドリキン氏:
バッテリーがね……。
西田氏:
ただ、ポジショントラッキングは完全にオーパーツ【※】ですよね。
※オーパーツ
Out-Of-Place ARTifactSの略。発見された場所や時代とが全くそぐわず、なぜ存在するのかが謎とされている物の総称。
ドリキン氏:
今、それはTwitterでは、「外出先にはラジオですよ」っていうツイートをいただいてたんですよ。それもボク思ったんです。音声だけのデバイスっていうのはすごくあり得て。Twitterのタイムラインとかを全部音声で読み上げてくれるとかしてくれたら、わざわざ電車の中で必死にタイムラインを追わなくて済むので。
西田氏:
まぁ、そういう感じのものは出始めてはいますよね。要は完全ワイヤレスのヘッドセットとかにスマートフォンのアプリケーションを組み合わせて読み上げる。っていうのは増えてきているので。
この間もソニーが、Xperia Earっていうものを出して、それがそのコンセプトなんですよね。ただ、残念ながらそういうものって、OSメーカー以外が作ると、対応アプリケーションが決めうちになっちゃうので、できることの幅が狭いんですよ。
ドリキン氏:
そこでAIだと思うんですけどね。
西田氏:
そうだと思いますね。だから、たぶんGoogleだとか、Appleだとかが目指しているのって、そこだと思うんですよ。
彼らが持っている音声エージェントを上手く進化させて、今スマートウォッチとか、スマートフォン自体に出ている通知とか、もしくは自分が知りたい内容とかを簡単なインタラクションで、声で返すみたいな。
ドリキン氏:
そうそうそう。Siriがスマホのまんまでもいいけど、賢くなって、ノーティフィケーション(通知)なり、中にあるコンテンツを全部キュレーションしてくれて、いい感じに読み上げてくれれば、面白いと思うんですけど。ただそこに対してフィードバックする手段がね……。音声だと厳しいんで。
西田氏:
そうなんですよね。自分の声が周りの人には聞こえずに、きちんと機械には伝わるという仕組みがほしいなと思うときがあるんですよね。
ドリキン氏:
それは良いですよねぇ。
mazzo氏:
ぼそぼそつぶやくだけでちゃんと認識してくれるようなものとか。
ドリキン氏:
読唇術してくれれば良いんじゃないですか(笑)。
西田氏:
一応、そういうマイクの仕組みもあるんだそうですよ。
ドリキン氏:
骨伝導の逆みたいな。
西田氏:
いや、もっとすごいやつがあるらしくて、その研究の情報もフォロワーの人からもらったんですよね。そういうものを使うと、喉と口をちょっと動かすぐらいで、周りには声は聞こえずに音声でインタラクションするってこともできるみたいですね。
これからVRになっていって、スマホもそうですけど、タッチとかキーボードから離れるために音声が増えていくんだとすれば、いかにほかの人の邪魔にならないように声を使うかっていうのが。
mazzo氏:
そういう意味では、ZDNetに出てた記事で「グーグルのDeepMindが、読唇術で人間の専門家に勝つ」っていうのがあって。やっぱりGoogleはやっているわけですよね。すでに。
ドリキン氏:
素晴らしい。今話していて思ったけど、歯に1本ずつキーボードみたいにキータッチを用意して、歯ぎしりの仕方で入力できないかなって(笑)。
mazzo氏:
Bluetoothキーボードですね(笑)。
ドリキン氏:
そうそう(笑)。
西田氏:
まさにBluetoothキーボードですね(笑)。
ドリキン氏:
奥歯から1本ずつQWERTYを並べていったら、歯でもけっこうなキーが(笑)。
西田氏:
カチカチうるさそうじゃないですか。
mazzo氏:
奥歯には……。
西田氏:
奥歯には加速装置がないといけないから(笑)。
ドリキン氏:
電車の中で「隣のおっさん、歯ぎしりうっせぇなと思ってたら、すごい勢いでタイプしてた」みたいな(笑)。それは怒られるかな。でもなんか、そういうイメージが湧いてきているってことは、そういうことを考えている人は、我々より先にいっぱいいて、きっとそういうデバイスなり、新たな進化が出てくる前兆だと思うので。
西田氏:
でしょうね。AIを前提としないUIが減っていくんだと思うんですよ。そのちょうど境目にいるのかなって気はしますよね。
ドリキン氏:
そうですよね。あくまでもまずは人間の、さっき言われていたような、同じところがタッチできないとか、そういうのを補完するっていう意味では、AIの持っているポテンシャルは相当ありますからね。
西田氏:
人間が毎日やっていることの中で、機械は自分がやっていることを、空気を読んでくれないので、人間が繰り返しやっていることってすごく多いじゃないですか。たとえばファイルを探すとか、ウィンドウの位置を並べ替えるだとか、同じ人に了解しましたってメールを送るとか。
そういうものは、本来は横にアシスタントがいれば、これお願いねってガンガン割り振れるわけですよね。で、今の、AIアシスタントが狙っているのはそこで、BOTチャットでもいいし、音声チャットでもいいんですけど、それがだいたいできるようになる時代がまぁそんなに遠くなく来るんだろうなと思うんですよね。
そうすると、たとえば自分が歳を取って、体が動かなくなっても、頭がはっきりしていればコンピューティングはきちっとできることになるし。それこそ障がい者の人にも使えるだろうし。
ドリキン氏:
確かに。
西田氏:
要は、四肢を100%使わないと仕事ができないという状態からは離れていく可能性は高いかなと。
ドリキン氏:
それは良い未来ですよね。正しい未来というか。今Twitterでも、まさに「障がい者の方でも使えるのでは」という。いやぁ、今年最後ですが、新たなコンピューターの未来が見えた気がして、来年以降がめっちゃ楽しみになったっていう。
西田氏:
まぁでも、ここからどれだけ石積んで階段を作らなきゃいけないかっていうのは大変ですよね。
ドリキン氏:
確かにね。
西田氏:
この階段の話をするのが、ボクの飯のタネですし、階段を昇っていくのが楽しいわけじゃないですか、我々は。
ドリキン氏:
それは本当にそうで、Macが最初に出た頃は、本当にそれ以外のものが不便すぎたんですよね。だから、まだまだ未熟でも1歩ずつ便利になっていった世界が、本当に20年間ただコンピューターが便利になり続けた状態があったんです。けど、今のスマホとかで我々がある意味甘んじているのは、そんなにこれ以上便利にならなくても、けっこう快適だっていうことなんですよ。
mazzo氏:
もう十分便利だからね。
ドリキン氏:
そうなっちゃっている状態で、さらにそこを階段状に上げていくっていうのは、トレーニング的ですからね、ストイックに。別に、横に便利な世界があるのに、自分でストイックな世界に入って、その階段を昇っていくのと、ただその階段しかないから昇っていくのでは、全然メンタルの難しさが違うと思うので。ちょっと油断すると楽な方へ行きたくなっちゃいますからね。
西田氏:
それはそうですね。
ドリキン氏:
そこをみんながどれくらい超えられるかですよね。そこがまぁ、キモにはなる気がしますけどね。まぁでも確実に来るでしょう。
※ここからはMagic Leapが作っていた映像の話題へとシフトしていった。続きを知りたい人はぜひ番組をチェックしてほしい。
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