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『ギ・クロニクル』第一夜(End 12「絶望」)

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第四の分岐

選択肢:ゴニヤ
が選択されました!

退場(b)に分岐します。

『ギ・クロニクル』第一夜(End 12「絶望」)_020

 日が落ちようとしてる。

 その後は特に何事もなく、
 ただ重苦しいだけだった行軍が
 終わろうとしてる。

 ビョルカが足を止めた。
 「お分かりですね」の顔。

 しかめっ面のウルヴルも、
 怯えた表情のゴニヤも、
 異論は挟まない。

 『儀』が始まる。

「……今日は誰も死んでいない。
 『誰も犠としない』の選択を
 増やしてもいいか、と……
 
 思いましたが、
 どうやら不要のようですね。
 
 では、ゆきます」

『ヴァルメイヤ、
  我らを導く死体の乙女よ。
  信心と結束をいま示します。
  ご照覧あれ……』

 
 血と肉と骨にかけて──
 
   みっつ。
 
     ふたつ。
 
       ひとつ──」

 4つの指が静かに動いて、
 それぞれの相手を指し示した。

 ……やっぱりだ。

 ウルヴルは、ビョルカを。
 ビョルカは、ゴニヤを。
 ゴニヤは……ビョルカを。
 それぞれ指さした。

 ゴニヤが私でなくビョルカを
 選んだ理由は、分からない。

 でも、態度から読めた通り。

「ワシがビョルカを選んだのは、」

「聞きたくありません」

「……選んだのは!
 小僧は『狼』ではなかったと、
 思い直したからじゃ。
 
 あやつが『狼』じゃったら、
 死に方なぞ選ばんでもええ。
 
 じゃあ『狼』は誰か。
 気付けばいかにも恐ろしい。
 ワシらを思い通りにするなら、
 巫女を乗っ取るのが
 いちばん確実じゃと!」

「なにしろ、フレイグの小僧は、
 巫女の言には絶対服従。
 ワシらもまずは疑わん!
 
 最初の『儀』で
 ワシを指名したのも!
 
 信仰の道から外れても
 『理』をとったワシが、
 邪魔じゃったからじゃな!
 
 何とか言え、ビョルカ!」

「……ふう……
 
 自分に言い訳を積み重ねて、
 それで納得できましたか?
 
 フレイグを誤って殺し、
 次も誤って殺すかもしれない。
 怯えていますね、ウルヴル。
 
 あなたも本当は
 疑っているのでしょう?
 ゴニヤが怪しいのでは、と」

「……
 むりもないわ。
 ゴニヤだって、あやしいと
 おもってるもの。
 
 でもゴニヤはまちがいなく、
 レイズルをころしたりなんて
 してないし……
 
 わからない、けれど……
 あえてひとりえらぶなら、
 ゴニヤをこわいめでみてくる、
 ビョルカかしら……って……」

「……ヨーズは、どうじゃ。
 
 もう結果は出ておるが、
 思うところは言えばええ」

 確かに、そうだ。

 3人の指さした先。
 私の指さした先。

 全部合わせて、
 結果は……出てしまった。

「……ヨーズよ。
 おまえがゴニヤを
 指さしたのも、
 怪我の一件のせいか」

「他に何かある?
 
 『理』がどうのって言うなら、
 おかしい。
 この『理に反したもの』
 放置するのは。
 
 色々考えてるけど、
 結局はゴニヤかわいさで
 かばってるだけ。
 
 そう言われて反論できる?
 ウルヴル」

「きさま……!」

「傷つけて調べるには、
 『儀』が要る。
 とりあえず、撃たせろ。
 死ななきゃ死なないで考える」

「ヨーズ、こわいわ……」

「待ちなさい!
 ヴァリン・ホルンは未だ
 成っていません!
 ゴニヤを2人、私を2人。
 決選の儀が必要です!
 
 ゴニヤと私を除く2人で
 再び指名を行ってもらいます。
 決選に失敗すれば、
 ヴァルメイヤは誰も、
 『犠』とはしません。
 
 すべきことをしましょう」

 みんな、返事も反応もしない。
 結果が読めたからだ。

 仕方なく、
 受け入れると決めたんだ。

『ヴァルメイヤよ、
  改めて、ご照覧あれ!』

 
   みっつ!
 
     ふたつ!
 
       ひとつ!」

 私が、ゴニヤを。
 ウルヴルが、ビョルカを。

 結果は何一つ変わらないまま、
 今日の『儀』は終わった。

『ギ・クロニクル』第一夜(End 12「絶望」)_021

 【誰も犠とされなかった】

 【2日目の日没を迎えた】

 【生存】
 ヨーズ、ウルヴル、ゴニヤ、ビョルカ

 【死亡】
 フレイグ、レイズル

獣殺し

 朝、誰も死ななかった。
 夜、誰も『犠』にしなかった。

 なのに、気まずい。
 やたらと。

 めんどくさいな。

「……それでは、
 今夜もこれで別れましょう。
 
 皆さんの無事を祈っています」

 そっけなく言って去る。

 なんていうか、すごい。

 殺されそうになって
 さすがのビョルカも、キレた?

 殺されそうになっても
 礼儀正しいビョルカ、やばい?

 無理。私なら、
 ウルヴルけとばして
 ゴニヤ泣かすよ。

「……参ったの。
 何もなく終わったんじゃ。
 『儀』のことは水に流して……
 
 いや、違うな。
 
 これは、ワシのせいじゃ」

「ウルじい……?
 
 どうして?
 あぶないのは、
 ビョルカなのでしょう?
 だったら、
 ビョルカのせいだわ」

「……ゴニヤ。ええか。
 
 『村』の生き方では、
 世のしくみや、
 物事のなりたち、始末──
 
 なぜそうなったか。
 どうすれば、そうならないか。
 
 つまり、『理』
 これをあえて考えずにおく。
 
 『理』は『死体の乙女』
 預け、ただ掟に従い、
 禁忌を避け、生きる」

「そうだった。
 
 でも、もう『村』はないわ。
 
 だからウルじいも、
 やり方をかえて、
 『理』を選んだのでしょう?」

「ああ……じゃがの、ゴニヤ。
 
 『理』とは即ち、
 見たもの、聞いたもの、
 既に決められたこと、
 あらゆるものを疑うこと。
 つまりは『疑』でもある。
 
 『疑』は不仲をよぶ。
 同胞のいさかいをよぶ。
 じゃから『村』では許されん。
 
 ワシらも今、そうなっとる」

「……では、どうするの。
 やめてしまうの。
 『理』を」

「……既に打ち始めた鉄は、
 放り出せば割れるだけじゃ。
 
 『狼』がいなくなるまで、
 徹底的に『理』を尽くす。
 
 その後あらためて、
 謝るべきもんは謝るわい。
 
 ヨーズも、それでええかの」

 まあ。別に何でも。

 とか適当に答えて、
 バラけていく2人を見送った。

 ありがたい建前とかに、
 興味ない。
 知りたいのは、真意。

 ホントは何が言いたい?

 昨日いろいろ話したし、
 ウルヴルに聞く意味は、
 もうないと思う。

 と、いうことは……

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