第五の分岐
Twitter人狼ADV #ギ・クロニクル
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) July 29, 2022
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第五の分岐:夜話
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今日はだれも『犠』にならず、残り4人。
それでも疑念は、いつになく高まってる。
思いを抱えてそうな2人のうち、どちらかに話を聞きに行くくらいの時間はありそうだ。
ここはどっちと話すべきだろう。
選択肢:ビョルカ
が選択されました!獣殺し(b)に分岐します。
「……ヨーズ、ですか?
驚いた。
もう休んだものかと。
いえ、あなたのことですから、
夜じゅうずっと、
気を張ってくれていたかも
しれませんが」
声の感じに、険はない。
今日の流れで、
たぶんビョルカは、
私を味方と思ってくれてる。
『ゴニヤが狼派』の仲間って。
ビョルカは『狼』じゃない。
私はそう思って、『儀』で
ビョルカを助けたわけだから、
ビョルカの認識で、
だいたい問題ない。
けど、半分誤解なんだよな。
「大丈夫ですか?
ずいぶんと、
思い詰めた顔に見えます。
あなたは寡黙だけれど、
人一倍、皆さんのことを
考えてくれているから……」
「……だからぁ。
それは、あんただろ」
「え。
私……は、ええ、
ヴァルメイヤの巫女ですから、
『村』の皆さんを思い、
助けるよう、
心を配るのが役目だと
思っていますが」
「……もう、
『村』はなくなったのに?」
「なくなっていませんよ。
ヴァルメイヤを信じ、
共に歩んでくれる皆さんが
いる限り、
『村』は滅びません。
それにほら、
巫女も一応、いますしね!」
「あー。
じゃあビョルカ、
子供いっぱい産む気なんだ」
『村』の巫女って、
そういう役目でもある。
みんなの母親。
これからそうなる娘。
だからみんな、必死で守るし、
本来は『儀』にも出ない。
ビョルカが『儀』で
自分の首をかけてるのは、
底抜けにマジメだから。
「ええ。
相手は少し、悩みますが。
ウルヴルはもう歳ですし。
外から何人か、
お婿を迎えるのがいい、かな。
あ、もちろん、
境界騎士団を目指す以上、
そこの流儀に合わせますよ?
多少形を変えるなり、
隠すなり、ね」
……
無口のふりで、黙った。
優しいビョルカ。
当然、「人」を選ぶ。
そう思ってた。
でも……思ったより、
ビョルカの中では
『村』が、強い。
というか、
もしかして、
私たちが『村』だから、
ビョルカは親身なのかな。
もし、私たちが
『村』じゃなくなったら?
ビョルカは、
私に優しい言葉を
くれたビョルカは、
……それは、聞けない。
「明日、何もなければ、いいね」
「……ええ、本当に。
あなたの言う通り、
もう『狼』などおらず、
誰も欠けず、
この雪原を抜けられたなら、
どんなにいいか。
……そうですね。
いつしか私も疑心に染まり、
信じることの素晴らしさを
忘れていたかもしれません。
希望を信じ、眠りましょう!」
そうじゃない。
違うんだよ、ビョルカ。
私はただ、
何があっても、
どっちかが死んだとしても。
あんたと私は、
今のままの関係だって、
そんなこと、
言い合えたらって、
あー
めんどくさい
やめやめ。
お休み。
生きてね、ビョルカ。
それで、
嵐の夜、
凍りつく夜明け前を経て、
何も代わり映えのしない、
夜明けが訪れた。
私は、
皆を探して、
何もかも、嫌になった。
【ゴニヤ死亡】
【3日目の夜明けを迎えた】
【生存】
ヨーズ、ウルヴル、ビョルカ
【死亡】
フレイグ、ゴニヤ、レイズル
ウルヴルは、
抜け殻だった。
それを見つめるビョルカに、
言葉はなかった。
だから私が、
ゴニヤを集めて、葬った。
2人とも、止めなかった。
同胞を不幸にしないため、
しかばねを『死体の乙女』へ
返すのは、正しい行いだから。
結局ここは『村』で、
私らは正しいことしか
できない。
私だって、そうだ。
ゴニヤが死んだって
どうってことない。
そう思ってたのに、
悲しくて、
悔しくて、仕方ない。
子供は希望だから。
それが、正しいから。
「……行こうよ。
みんな死んじゃうだろ」
最後の『儀』なんて、
切り出せなかったから、
代わりにそう言った。
それでようやく2人とも
のろのろ動き出した。
老いぼれがよろけてるので、
ビョルカが肩を貸して。
正しいようで、
何もかも間違ってる。
そんな感じが、した。
迷わないように、
もう心に決めとく。
ビョルカは指ささないよ。
何が何でも、ね。
それでもう、
結果はどうでもいいから、
終わりにしよう。
私らは歩いた。
警戒はしたけど、
何も起きなかった。
何も?
少し笑える。
最悪の獣は、
私らの中にいるってだけ。
黙って歩いた。
歩いて、
歩いて、
日が傾いた。
「……やろう」
結局どこにも
たどり着けなかった。
『護符』の魔力は切れた。
まだ風はないのに、
凍えそうに寒い。
私らは終わりだ。
でも、せめてマシな終わりを
選ぶことくらいはできる。
ウルヴルは頷いた。
ビョルカも頷いた。
『ヴァリン・ホルン』だ。
「『ヴァルメイヤ、
我らを導く死体の乙女よ。
信心と結束をいま示します。
ご照覧あれ。』
血と肉と骨にかけて──
みっつ。
ふたつ。
ひとつ」
……
なんで。
なんで?
なんで、
ビョルカとウルヴル、
2人とも、
私を指さしてる?
何も考えられない。
何も考えられない。
何も考えられないけれど、
涙は勝手に流れた。
私は、
どうやらビョルカを
信じてたらしいから、
『なんで?』と、
口に出すことも、
できてしまった、らしい。
「……
ごめんなさい、ヨーズ。
でも、
どうしても、
信じられないのです。
ウルヴルがゴニヤを殺すとは。
だから……
間違っていたら、
本当に、申し訳もないけれど、
私が、あなたを殺します」
そうか。
こんなことなら、
昨日の夜、
会わなきゃ良かった。
いいや、違う。
別れる前に、
きちんと言えばよかったんだ。
何があっても、
どっちかが死んだとしても。
あんたと私は、
今のままの関係だって。
してれば、
こんな、
何かが壊れた痛みで、
何も言えなくなることは
なかった。
──ビョルカが、
杖を振り上げる。
狩猟ナイフを渡すことも
思いつかなかった。
導きの象徴を血に染めてでも、
私を手ずから殺すことで、
責任を果たそうとしてる。
これはビョルカだ。
私の知ってるビョルカだ。
そのはずだ。
「……だいじょうぶ。
『館』で、また会いましょう」
……
そう だよね
その一言を言ってくれたので
私はビョルカから
『ともだち』を
さがすことをやめて
いちげきを
うけいれた
【ヨーズ死亡】
【3日目の日没を迎えた】
「……簡単にですが、
弔いは済みましたね。
さあ行きましょう、ウルヴル。
体が動くうちに」
「……そうじゃな。
これで、もう、
何も起きんはずじゃ。
歩けるか?」
「ええ。
もう、甘えてなど
いられませんから……」
「……」
「……あ、れ、
おかしい、ですよね。
急に、寒く……
天気も、おかしくなって」
「……気付いとらんのか。
もう意識を、
ほとんど失っとる。
3時間は経っとるぞ」
「……それは、すみません……
ウルヴル……
なぜ、進まないのです……
私を、置いてでも……」
「……
そんなもの、明白であろう。
進んでも意味などないからだ。
この先には、何もない。
我らには、何の希望もない。
ただ、
在り様に沿っただけの、
つまらん幾通りかの絶望が
あるだけなのだ」
「……
誰、ですか……?」
「我か? フフ。
無論、ウルヴルだ。
そこは間違えてはいかん。
時間が来たので、
『狼』の役目を果たす。
それだけだ。
付け加えるなら、
貴様は自分にこそ問うべきだ。
『誰』とな。
では、さらばだ」
【ウルヴル脱落】
【ビョルカ死亡】
【巡礼者が全滅しました】
「ふん。
此度はまあ、
中々に愉快ではあった。
小娘同士のすれ違いは、
滑稽で、愚かでな。
む……
こやつ、あれをどこに……
……落としたな?
おそらくは、近くに……
あった、あった」
これが無ければ、
伝わるものも伝わらん。
見ているだろう?
異世界にひしめく、
『祈祷者
(プレイヤー)』ども。
いいことを教えてやろう。
この理不尽な『巡礼』で、
本当に試されているのは
貴様らだ。
なに、気負う必要もない。
しょせん分の悪い賭けなのだ。
気楽に。心行くまで。
滅びを貪るがいい。
ハハハ!
おっと、時間のようだ。
巡礼の監視者よ。
回収、毎度ご苦労なことだな。
同情するよ。心から。
せめて祈ってやろう。
良き滅びを。
……まだ見ているのか。
失せろ、アオイトリ。
End 12「絶望」