魅せプレイこそが名人の仕事
──当時、ゲームの巧さで稼ごうと思ったら、メーカーに勤めるくらいしか方法がありませんからね。
高橋名人:
そうだね。1990年くらいの話だけど、「名人より上手いから雇ってくれ」って履歴書を送ってくる人もいたし。
でも会社としては上手いヤツが欲しいんじゃなくてさ……。
──上手いだけじゃダメだぞと。
ブンブン丸氏:
そこで「名人よりも上手くゲームを宣伝できます」だったら面白がられるのにね。
高橋名人:
そう。僕らの仕事はゲームを面白く見せることだったんだよ。
たとえばシューティングゲームで巧いプレイをすると、敵が画面に現れた瞬間に倒しちゃうから、画面からは敵がいなくなっちゃう。そうすると写真を撮るにも店頭で見せるにも、敵がいなくて自機が中央で弾を撃ってるだけのゲームになっちゃうんだよ。それでは宣伝にならない。だから敵をある程度画面に残して、自機のまわりを周回する敵だったら、半周ぐらいはさせてあげたりね。そういう勘どころが必要になるわけ。
メーカーで名人仕事をするなら、点数を取る以上にそういうことができないと厳しい。魅せるプレイができて、なおかつ失敗せず、たまには巧いプレイもするって人じゃないと宣伝マンは務まらないんだよ。
──そしてブンブン丸さんの時代のころには、メーカーに勤める以外にも、攻略ライターというような道も現れていますよね。
ブンブン丸氏:
そうですね。僕の場合は少し特殊で、初代『バーチャファイター』のときに新宿ジャッキー【※】がファミ通で記事を書いていたのを読んで、実際にゲーセンまで闘いに行って、そのうち仲良くなってファミ通に編集者として入ることになりました。
そんな感じで、僕らの時代の選択肢としては、ゲームを仕事にするならメーカーに入るかライターになるかが多かった。まだプロという発想はなかったですね。
※新宿ジャッキー
ブンブン丸氏と同様、「鉄人」のひとり。元ファミ通編集者の羽田隆之氏。
──ただ、ブンブン丸さんたち「鉄人」は、テレビにまで出ていましたよね。
ブンブン丸氏:
セガさんから全国イベントの出演依頼が来たり、テレビ局に呼ばれたりしていましたね。
そういう意味では名人はメーカー発の人ですけど、僕らはメーカー以外の人として、メーカーのイベントに出るといったことをやり始めた世代だと思います。
──そのようなポジションにあって、気を付けたことなどありましたか。
ブンブン丸氏:
名人の話にも通じますが、個人としてゲームを楽しみつつ、一般の人にも分かりやすく面白そうに見えるように心掛けていました。というのも、僕は「バーチャ」シリーズが好き過ぎて、「どうやったらこのゲームのプレイヤー数が増えるか」ということをよく考えていたんですよ。
面白くてもプレイヤー数が少なくて楽しみ切れないゲームもあったりしますから、とにかく多くのプレイヤーが増えればいいなと。ファミ通で記事作ってる時もそんな感じでした。
プレイスタイルも、もちろん勝つのはマストなんですが、より見映えのする派手な技を使おうだとか、対戦相手に自分の考えていることが伝わるように意識していましたね。その甲斐あってか、いまだに対戦の内容を覚えてくれている人もいて、ときおりそういう話を聞くと、とても嬉しいんですよ。
──「職業としてゲームで食べていく」と意識したのはいつごろなんでしょうか。
ブンブン丸氏:
当時は、自分がプレイヤーとして有名になっていっても、「それで食べていく」という発想はなかったですね。ただファミ通の編集者として働くことは好きで、働きながら「やっぱり自分はゲームが好きなんだな」と改めて思う時があって、転機というよりはその積み重ねで「このままでいいんだな」と思うようになりましたね。
ほら、ファミ通って編集スタッフも濃い人が多かったじゃないですか。
そもそも「ほかのことをやってもきっと長続きしないし、ダメになるな」という感覚があるので、「かじり付いてでもゲームで仕事するぞ」って。
──なるほど。その一方で、好きなゲームを仕事にするストレスもあったと思うんですが。
ブンブン丸氏:
ファミ通の仕事の比率が高くなるほど、『バーチャ』が下手になっていって、「どうしようかな」とすごく戸惑っていた時期はありましたね。対戦しないと鈍っていっちゃうものなので。そのための時間が取れなくて。
いまはそうでもないんですけど、やはり当時は強くありたいというか……巧くありたかったんですよ。モチベーションのベクトルをどこに持っていくかという話ですが、僕の場合は最高の状態を維持して内容のいい試合ができれば、勝ち負けはそれほど重要ではなかった。だから腕が鈍って思うように動けないときは凄くストレスを感じていました。
ウメハラ氏:
自分が考える最高の状態でなら、たとえ負けても納得はしますよね。ことプロに関して言うと、「それじゃあダメだ」という人もいるかもしれませんけど、年に何十という大会がありますので、そればっかりだと続かないと思いますね。
ブンブン丸氏:
そうそう。プロになっていても、どうしても勝てない時期ってあると思うんだけど、負けることに対してはプレッシャーやストレスを感じないの?
ウメハラ氏:
感じませんね。大会のルールや構造上、毎回勝者が同じになることはあまりないので、気にしてはいられないというのが正直なところですね。
それよりは試合ごとに戦略を立て、取り組みの試行回数を重ねないと成長できないと考えているので。ですから勝つことに固執したことで生まれるプレッシャーというのはないですね。
──ウメハラさんはライターになろうとは思わなかったんでしょうか。
ウメハラ氏:
お誘いはありましたけど、僕はプレイヤーとして認めてもらいたかったんです。
仮にライターとして注目されても、それは違う形の注目だろうと思っていた。「プレイヤーとして認められたい」という欲求だけがあって、「そうじゃないならやらない」と決めていました。
──プレッシャーやストレスという意味では、名人は相当だったんじゃないでしょうか。
高橋名人:
そりゃストレスとかはあったけど、まだハドソンのゲームだけやってればよかったから何とかなったんだよね。
よく「なんでハドソン辞めなかったの? 辞めたらもっと稼げただろうに」と言われるんだけど、たぶんゲームタレントになってたら死んでたと思うんだ。
だって1986~87年って恐ろしいほどのゲームが発売されていたからね。ハドソンだけだったら年間に20~30本だけやってればいいのが、年間100本や1000本になったら……もう無理だよ(笑)。
ブンブン丸氏:
当時だったら、どのメーカーからも声がかかったでしょうしね。
高橋名人:
名人として俺がひと言「面白い」と言ったら100万本売れちゃったからね……。それが3作品も続いちゃってさ。だから他のメーカーからも名人が登場したんだよね。
第一回キャラバンはスポンサー探しから始まっていた
──高橋名人は80年代から活動されていますが、当時からプレイヤーにスポットが当たる時代が来ると思っていましたか?
高橋名人:
1990年代ぐらいに、「巧いヤツが飯を食える時代になればいいな」とは思っていたんだよ。ただ日本の環境だとまだまだ厳しいだろうなとも思っていた。
一番の問題は法律だよね。やっぱり高額賞金が出せないと食べられないじゃない。たとえば「EVO」だと勝てばウン百万。500万円手に入れられれば、1年はなんとか暮らせるよね。
でも日本は法律の問題でそんなに賞金が出せないし、それに賞金500万を出せる法律があったとしても、メーカー一社でそれを持つのはなかなか厳しい。でもほかのメーカーから協賛を得ようとすると、「ウチのメリットは何?」と言われちゃう。だから同じ業界でスポンサーを取り付けるのはいまも昔も難しいんだよ。
──賞金の問題なんかはいままさに話題になっていますが、じつはかなり前から問題として挙がっていたものなんですね。
高橋名人:
ぶっちゃけちゃうけど、第一回キャラバン【※】なんてスポンサーを探すところから始まったからね。ハドソンだけだと厳しいからいろいろ当たって、TDKさんに3年分スポンサーをしてもらったんだよ。「子どもたちにTDKという名前を刷り込めますよ」という提案が受けたんだよね。あとは大塚製薬さんにも入っていただいて、オロナミンCを配ったり。
※第一回キャラバン
ハドソンが1985年から開催していたゲーム大会「ハドソン全国キャラバン」のこと。
ブンブン丸氏:
ゲーム大会って昔からゲーム業界外のスポンサーが多いんですよね。それこそ今のレッドブルとかですよね。
高橋名人:
あとコントローラーなど周辺機器メーカーもスポンサードしやすいね。
──ブンブン丸さんのころは、企業が個人をスポンサードするなどはあったんでしょうか。
ブンブン丸氏:
企業が個人というのはなかったですね。アパレルの提供を受ける話もあったんですけど、結局流れた。あのころのセガさんとの最初の契約も凄くざっくりしていて、最初はノーギャラでしたからね。でも「ノーギャラはどうなの?」ってなって5000円になった。でも「それもどうなの?」って話なんですが(笑)。
いま考えると格安だけど、そういう時代だったと言うか、僕らの中でも「地方の都市に遠征して同じゲームが好きなゲーマーと対戦できる」というだけでハッピーだったし、主催者側もそれでいいだろうと思っていたんですよ。でもイベントのクオリティーを考えるともっと双方で頑張らないといけない部分があったから、そういうことを経てお互いに勉強していったと思います。
高橋名人:
俺は個人のスポンサードがあったな。
ブンブン丸氏:
え、本当ですか!?
高橋名人:
覚えているのでも、学習机とか靴とか。あとはチョコレート、ふりかけ、それから銀行のキャラクターとかね(笑)。
でもあるイベントで名人グッズをたくさん持っているという人が見せてくれたんだけど、俺の知らないグッズが山ほどあったね(笑)。
一同:
(笑)。
プロライセンス発行を3人はどう見るか
──さて、ここからは現在と未来の話をしていければと思います。ここ最近の話題としては……やはりプロライセンス発行について。皆さんは率直にどう思われていますか?
●プロゲーマーの定義
「プロゲーマーとは」
– プロフェッショナルとしての自覚を持つこと。
– スポーツマンシップに則り、プレイすること。
– プレイ技術の向上に日々精進努力すること。
– 国内eスポーツの発展に寄与すること。
●ライセンス発行対象者
以下、全てを満たす者を対象にライセンスを発行します。– 前述のプロゲーマーの定義に誓約していること。
– 当連合公認大会において公認タイトルの競技で優秀な成績を収めること。
– 当連合の指定する講習を受けること。
高橋名人:
俺はあのライセンスについて、もう少しちゃんと説明してほしいんだよね。
──高橋名人にもあまり話は行っていないんですね。
高橋名人:
来てないね。説明さえしてくれれば、俺どんどんスピーカーになるんだけどね。
根本的には日本でプロゲーマーが育ってほしいし、日本で賞金がウン百万の大会がどんどん開かれて、プロゲーマーが生活できる環境を早く整えてあげたいと思ってるからさ。そのためだったら、どんな手伝いだってするよ。
個人としては、もう反射神経は追いつかないし、なんだったら老眼も入ってるから、いまさら俺自身がプロゲーマーになる気なんてないんだけど、30年間ゲームにお世話になってる身だから、日本国内で胸張って賞金1000万円や1億円の大会が開けるようになるまでゲームに尽くすのが、俺の名人としての役割かなと思っているんだよね。
だからいまの理事たちにはもう少し説明してほしいんだよ。
ブンブン丸氏:
「やろうとしてることは凄いと思うけど、やろうとしている人たちの考えが伝わってこない」ってことですよね。
高橋名人:
まぁ扉の中で決まってるなって感じしかしないよね。
ウメハラ氏:
ライセンスが発行されることになったのは、それで高額賞金が払えるようになるからなんですよね?
高橋名人:
俺もまだ詳しくはわからないけども、今回の動きは、日本オリンピック委員会(JOC)に登録するのに、いくつかあった団体を日本唯一の団体にしましょうというのが始まりだね。eスポーツがオリンピックの競技になったとき、世界に日本の選手を送り出すためには、ひとつの団体でなければいけないからね。
もちろん賞金の件も理由のひとつで。
いまの日本のゲーム大会は、そのゲームのメーカー以外の寄付金で賞金を出さなくちゃいけない。アメリカの大会みたいに、入場チケットの一部を賞金として出すってのが手っ取り早いんだけど、日本でそれをやると賭博法に引っ掛かるんだよ。
ブンブン丸氏:
プロライセンス制にしないと本当に賞金が出せないのかという議論はあると思うんですけど、今回の一件で日本の法律まわりの問題がより公になったから、今後どんどんブラッシュアップされていくんじゃないかという期待はあるんですよね。
高橋名人:
ただ消費者庁が、パッケージ物は元商品の取引価額の20倍の金額、もしくは当該金額が10万円を超える場合には10万円が上限価格と言っているから、別の方法を探さなきゃとなっちゃったんだよ。
ブンブン丸氏:
それがここ2、3年の話ですよね。
高橋名人:
そうそうそう。でもどうせひとつの団体にまとまるんだったら、国内の大会で賞金を出せるシステムも根本から考えて、プロゲーマーを育てるということを示す必要もあったと思うんだ。
だから、いま必要なのは法律に詳しい人や政治的に立ちまわれる人が必要だと思っててね。そういう人を中心に持って行って、そこら辺が上手くまわって、実際に大会で賞金が出せるようになってから、本当にゲームが好きな現場に近い人が入って動かして行けばいいと思う。
ブンブン丸氏:
僕もそういう人は必要だと思いますね。
ただゲーマー目線で話をすると、仮に今回の件がポジティブな感じでライセンスが必要だと解っていたとしても、ゲーマーに対して話が見えなさすぎるというのがあって、不安視されていると思うんですよ。
そこは「もう少し上手いやりかたはなかったんですか?」と思いますね。
ウメハラ氏:
確かにちょっと雑かなと思うところはありますね。
高橋名人:
2022年の「アジア競技大会」に選手を派遣するためには、いまから動かないといけなかったみたいだからね。
ブンブン丸氏:
だからこそ、そういう話を早くオープンにしてほしいですよね。僕はいま前線にはいないので最前線のプレイヤーとの価値観のズレはあるかもしれませんが、プレイヤーたちが活躍できる機会が増えること自体はいいことなんじゃないかなと思っていて。
ライセンスに価値があるかどうかを判断するのは結局プレイヤーで、価値がないと判断されたなら、仕組みが淘汰されるだけなので。
たぶんそれがあってもなくてもゲームは普通に遊ぶし、「EVOに出るな」とか無茶苦茶なことを言われない限り、そんなに気にしなくてもいいのかなと思います。
──ウメハラさんは当事者ですが、いかがですか?
ウメハラ氏:
じつは2010年にプロ宣言したときから、いまの流れになるのは時間の問題だろうなと思ってはいました。盛り上がれば企業が「儲かるだろう」と思って入ってくるし、「そう思われないようではダメだろうな」と思っていたので。
でもこれもさっきの話と一緒なんですけど、いざそうなってしまうと何か張り合いがないと感じちゃうんですよ。ずっと「認めてよ」と思っていましたけど、自分の中で「ゲームはそんな褒められるものじゃない」という思いも植えつけられているので、いまの状況は逆に張り合いがないなと考えたり。
いまみたいな流れはあってもいいと思うんですけど、個人的に「気持ち悪い」と思っているのが、対抗勢力というか、「ゲームばっかりやってどうするんだ」と言い出す人たちの姿があまり見えないんですよ。
ファミコンブームのときは皆で熱中していましたけど、その一方で「ファミコンばっかりやってどうするんだ?」という勢力があったから、僕らはよりムキになって遊んでいたわけじゃないですか。
──それは反対勢力が欲しいというとこでしょうか。
ウメハラ氏:
長い目で見ればいたほうがいいと思っています。ゲームは凄く好きだし、今後も人気のあるものであってほしいですけど、ゲームを作ることって凄く大変じゃないですか。
作っている方々がそういう苦労をしてようやく報酬を貰ってる一方で、「人が作ったものをのんきに遊んでお金を稼ぐのはどうなんだろうか」という感覚がじつはあるんですよ。「これそんなに認められていいんだろうか?」って。
だからそう言う人たちはいないのかなって思っているんです。もちろんそういう方々と出くわしたら戦うんですけど、みんなが「OK、OK」といういまの雰囲気は気持ち悪いので、おかしな部分はぜひ突っ込んでほしいですね。
そういう勢力があるからといって、eスポーツがなくなったり盛り上がりの火が消えることはないと思いますからね。
ひとりでどんどん盛り上がるのと、反対勢力と戦いながら盛り上がっていくというのは全然同じでないと思います。だったら反発しながら盛り上がっていくことのほうが意味があるんじゃないかと思います。
──それを乗り越えて認められたいということですね。
ウメハラ氏がプロライセンスを受けた意図とは
──そんななか、ウメハラさんは『ストリートファイターV』でプロライセンスを取得されましたね。
ウメハラ氏:
貰いましたね。
ブンブン丸氏:
僕は闘会議の大会単位の運営にも携わっているので、ある程度事前に情報は貰っていたんですけど、ぶっちゃけ何人かは反発して断るなと思っていました。
そんな感じでウメハラくんを筆頭に皆が受け取るかどうかはとても注目されていたと思うんだけど、思ったよりもみんな断らなくて。
ウメハラ氏:
正直言うと、迷ったというか考えたんですよ。
よく言われていますけど、「絶対この人たちゲームが好きじゃないでしょ」っていうのは明確で、もちろん何人かはそうじゃない人もいるとは思いますけど、そういう人たちに「プロライセンスを発行します」って言われても、当然みんな違和感を覚えるわけですよ。自分もそうです。
それから、今のプロゲーマーたちにとって本場はアメリカなので日本国内のことはいまはそう重視していないんです。だから日本でこういう動きがあっても、「ありがたいけど大した影響はないからどっちでもいいか」という話になっているんですよ。
ただ日本は若手が他の国に比べて育っていないということはよく言われています。その原因のひとつは見返りがないからだと。そういう状況で、若い、それこそ十代のゲーマーたちにとって、「大会で優勝したら100万円」ってすごく夢のあることじゃないですか。
今回のプロライセンスが若い世代が活躍するための原動力になるんだったら、僕が水を差さない方がいいのかなって。だから僕自身が貰って大事にするっていう事じゃなくて、断ることでケチがつくと思ったんですよ。団体の思惑がどうであれ、喜んでる若者がいるはずですので。
ただ……それらを踏まえて受け取ったものの、今でもどうしようかなあと思ってますね。
ブンブン丸氏:
いまそう思うのは当然だと思うよ。今後大会が開かれていって、プロとなった方々がそれぞれ判断を下していくと思うんで、いまはそれでいいと思いますね。
高橋名人:
でも思うんだけど、ウメハラくんにはトップを走ってほしいね。日本人ってさ、誰か世界に手が届きそうな人が出てくると、その業界に注目するじゃない。
それと同じでゲーマーにも世界で活躍してる人がいるんだぞっていうのをもっと広める必要があって、ウメハラくんはそのポジションにいると思うんだよ。
ブンブン丸氏:
こと格ゲーでいえば、日本人は凄いですよね。
高橋名人:
でもそこの告知が全然足りてないんだよね。「EVO」で優勝してもYahoo!ニュースの1位や2位には入ったりしないじゃん。まだ世の中を騒がすほどじゃないんだよね。
テニスだと騒がすじゃない? やっぱりゲームがそこまで行かないとね。ウメハラくんにはそうなるまでトップに君臨してもらってだね(笑)。それが先駆者の役割だよ。
ウメハラ氏:
そうですよね……。本当にいい時代はこの後に来ると思いますし。
高橋名人:
ゲーマーが稼げるのはこの後の時代だよ。いまゲームをやって儲けているのはYouTuberだからね。
ブンブン丸氏:
ストリーマーとプロゲーマーは違いますからね。
高橋名人:
違う違う。でも一般の人からすれば今は同じじゃない。
ブンブン丸氏:
そうですね。それは違うと理解されるべきだとは思いますね。
もちろんストリーマーを下に見ているとかじゃないですし、プロゲーマーがマネタイズしようとすると、ストリーマーみたいな流れになっていくのもしかたないと思います。逆にストリーマーとして稼げる道があるだけいいですから。
高橋名人:
なんだったら俺なんかはストリーマーだったわけだよ。ゲームをやって賞金を稼ぐんじゃなくて、ゲームをやってみんなが楽しんでくれればいいんだから。
ウメハラ氏:
そう考えると元祖ストリーマーかもしれませんね。
ブンブン丸氏:
いまヒカキンさんがやっていることを当時名人はやっていたと思うんですよ。
──ある程度のアップはあったと思いますが、集客数に比例して給料が上がらないのが残念でしたね(笑)。
オリンピックでeスポーツが採用された時、名人は応援団長に!?
──それではそろそろ締めの話題に移りたいと思います。ゲームプレイを仕事とする皆さんはこの先、それぞれどうありたいと思っているのかを教えていただきたいんです。
ウメハラ氏:
僕はこのままプロゲーマーとして活動していければいいなと思っています。競技としての歴史がないので、僕が「どこまで行けるか」ということの指標というか、「プロゲーマーってこれぐらいの歳までいけるらしいぞ?」という基準になれればうれしいですね。
そこをなるべく高めに設定しておきたいので、「それがいつまでできるかな?」と自分でも想像がつかないまま見ている感じです。
ブンブン丸氏:
僕はもともと「大人になってもゲームをすることが許される環境になればいいな」という思いが漠然とした目標としてあったので、自分がおじいちゃんになったときに、囲碁や将棋を見る感じで、人々がゲームを観戦することが当たり前になっていればいいなと思いますね。
その中で自分は、何かしら関係できれていればいいなと思います。
高橋名人:
俺、来年還暦なんだけど、いまのまま“名人”でいいかな。ゲームに関わった当初から「ゲームを遊びのひとつとして認めさせたい」という目標があったんだけど、ある程度はそれができたと思っていてね。
あとはそれを極めたゲーマーたちがお金を稼いでもいいんだと思えるようになればいいなと。
──ゲームを次のレベルに進めるわけですね。
高橋名人:
棒振りがプロ野球になっていったのと同じだよね。そうなるまで生きてるか判らないけどね(笑)。
ブンブン丸氏:
でもこれから10年とか掛かる話じゃないと思いますよ。マイナースポーツがメジャースポーツになる過程を追っているみたいなもんですから。そんな中で先陣を切ってる人たちは大変だと思いますけどね。
高橋名人:
今回ライセンスが発行されて、それで五輪のアジア大会に人を派遣できて、それが格闘ゲームだったら日本人が活躍するわけじゃん。それだけで人気や見かたが凄い変わると思うんだよね。「俺もプロになりたい」と思う人たちが増えてさ。それができるとしたら、この数年だよね。
俺はそのとき、観客席で日本の旗を振れればいいな。
ブンブン丸氏:
応援団長とか似合いそうですね。
高橋名人:
お、いいねぇ!
──それは凄くいいですね。そんな日が来ることを願うばかりです。本日はありがとうございました(了)。
一見あまり接点のないように思えた皆さんだったが、今回の座談会では高橋名人の存在が当時まだ子どもだったブンブン丸氏とウメハラ氏に影響を与え、両名がそれぞれ活躍することとなった経緯が明らかになった。
また後半ではプロライセンスについてそれぞれの意見を伺ったが、ゲームプレイヤーとして歯がゆかった部分を代弁している内容だったのではないだろうか。
JeSUとプロライセンスが日本のeスポーツシーンにどのように寄与していくかこれからが注視される状況だが、それゆえに「国内で胸張って賞金1000万円とか1億円の大会が開けるようになるまでが、俺の名人としての役割かなって思ってるんだよね」という高橋名人の発言や、プロゲーマーのロールモデルになりたいというウメハラ氏の発言はただただ頼もしく、ブンブン丸氏のゲームを啓蒙するような活動を含め、皆さんの今後の活動に期待を寄せるばかりだ。
【告知:ウメハラ氏プロデュースイベント「獣道」】
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