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川上量生×GOROmanが語る「VRとAIがもたらす最適化された世界」とは?──仮想現実がディストピアになるほど人類は幸福になる!

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VR空間のバーチャルレアリティ

──さてここからは、今後訪れるであろう「アバター社会」の話をお伺いしていきたいと思います。というのも、ドワンゴがバーチャルキャストを本格的に始動したり、ソーシャルVRVRChat』のユーザー数が300万人を突破するなど、最近はコミュニケーションとしてのVRが注目を集めています。それらが発展していった先に、かつての『セカンドライフ』のような、経済圏を持ったアバター社会が誕生するんじゃないかなと思うんです。

川上氏:
 それで言うと、本来、仮想通貨ってVR空間で使うべきなんですよね。僕はかねてから現金との換金性がないVR空間専用の通貨が生まれて欲しいと思っていて。

GOROman氏:
 そのためには「これはVR世界に一個しかありません」みたいな感じの、価値のレアリティを担保する必要があるんですよね。

──例えば、『ディアブロ』【※】みたいな最初期のオンラインゲームだと、データをちょっといじるだけでレアアイテムが手に入ったりしましたが、あのころって価値の担保ができていませんでしたよね。

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※『ディアブロ』……Blizzard社(現Activision Blizzard社)が1997年にリリースした、MO(マルチプレイヤーオンライン)RPG。同種のオンラインマルチプレイゲームの先駆けとなった。迷宮を探索しつつ、キャラクターの成長とレアアイテムの収集を行う、いわゆるハック&スラッシュタイプのアクション要素が楽しめる。両氏がともに親しんだオンラインゲームでもあり、全世界で300万本以上の売上を記録する。『II』は続編として、初代に改良を加え、2000年にリリースされた。完成度が非常に高く、現在でも古典的なMORPGとしてプレイされているほど高い評価を得ている。
(画像はBlizzard Entertainment:Classic Gamesより)

GOROman氏:
 そうですね。僕『ディアブロ』の廃人だったんですけど、もうコンビニバイト中には延々とユニークアイテムのことしか考えてない程ハマっていたんです。
 ところが廃人をやめられた瞬間があって。それはパッチを当ててアイテムをデュープ(複製)しまくったときなんですよ。アイテムの複製ができたら、もう一瞬にしてクソゲーになっちゃったわけです。

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 あとは、『ウィザードリィ』「ムラマサブレード」。当時1ビットとか書き換えるだけでゲットできちゃいましたが、あの瞬間のクソゲー感ったらなかったですよ。あの何百時間も費やした時間はなんだったんだ、と(笑)。

川上氏:
 あったあった(笑)。やっぱりVR空間でも希少性をどう担保するかって重要な話ですよね。

GOROman氏:
 僕はそれを“バーチャルレアリティ”と呼んでいるんですよ。で、いずれシリアルナンバー入りのアイテムとかが出てくる思うんですよね。
 ただ、今のガチャとかも言ってしまえばバーチャルレアリティのひとつなわけですよ。冷静に考えるとJPEG なんだけど、SSRと言われて価値があるように感じているだけですからね。

アバター格差社会の誕生

──あらゆるアイテムにバーチャルレアリティが取り入れられた場合、VR空間はどうなってしまうと予想されますか?

GOROman氏:
 そのうちVR空間に「アバター格差社会」が生まれるんじゃないですかね。全身金ピカ・ロレックスみたいなやつもいれば無料広告アバターもいて、そっちは虐げられているみたいな。

──昔のハンゲームも、最初はTシャツにパンツ一丁でしたしね。

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ハンゲームのデフォルトアバター(2011年に画像左から右へと変更された)
(画像は無料ゲーム・オンラインゲームのハンゲーム – お知らせより)

川上氏:
 あれ、ほんとただの嫌がらせですよね(笑)。

GOROman氏:
 未来のVR空間では、富裕層はリアルでGeForce20180Tiとか良いGPUを積んで、10兆ポリゴンのアバターとかを使えるんですよ。でVR空間では富裕層同士で固まってて、「2万ポリゴン以下の方、お断り」みたいなクラスタリングがなされているわけですよ。
 ドレスコードならぬポリゴン数コードみたい概念があって「あなたのアバターはダサいのでここには入れません」と言われる……まさに人間社会の縮図です。

──バーチャルにもセレブ地区みたいなものができると。

GOROman氏:
 で、たまにそんな10兆ポリゴンのやつが貧困ワールドまで下りてくると、住人たちが騒ぎ出すわけです。「まずい! フレームレートが落ちるぞ!」って。

一同:
 (爆笑)。

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川上氏:
 イメージとしては「狭いエレベーターに超太った人が入ってきた」みたいな感じですよね。
 結局、アバター社会でも庶民は痩せているし、金持ちはデブなんですよ。しかも「ヤツらはいいものを食っているからポリゴン数が多い」みたいに揶揄するわけです(笑)。

GOROman氏:
 で、庶民はバーチャルコンビニで一生懸命バイトするんですよ。「最低2万ポリゴン以上じゃないと流石にモテねえしなー」とか言いながら(笑)。
 ポリゴン数が多いと魅力的、というか実際キラキラしていきますからね。「あの人マテリアル7つも使えるGPUなんだ、すごい!!!」みたいに羨望を集めていくんじゃないですかね。

アバターを統一したい

川上氏:
 そのレベルでVR空間の生活を始めたら、アバターの共有化は必須になってきますよね。おそらくアセット(資産)を色んなワールドで跨いで持ち運びたいというニーズが生まれるので。

GOROman氏:
 各ゲーム間でインベントリを持ち運びできたりすると便利ですよね。アチーブメント(業績)も、トロフィーとかになってバーチャル自宅に持って帰って飾りたいですもんね。

──既に、任天堂のMiiXboxのアバターなどが別々なのは面倒くさいですもんね。

GOROman氏:
 それこそVRM【※】 とかを使って、ゲーム間の行き来ができるいいんですけどね。

 となると、自分のアバターでSF的な『ファンタシースターオンライン』や中世的な『ファイナルファンタジー』の世界を跨いでいけるわけですよ。

 そしたらFacebookとTwitterで人格を使い分けるみたいに、TPO(時と場所と場合)に合わせたキャラのコスプレをしていきますね。

※VRM
プラットフォームに依存しない3Dアバターファイルフォーマットのこと

“中の人”なんてどうでもよくなる

──でもそれこそ「ハンゲーム」や「アメーバピグ」みたいなアバターサービスで起きたことが、これからVR空間でも起きるわけですよね。すると、JKを偽装するおっさんみたいな存在もまた同じように出てきそうですよね。

川上氏:
 いや、事態はもっと深刻で、既におっさんが美少女キャラを演じて、そのおっさん同士で抱きあって寝落ちするみたいな光景があちこちで見られるわけですよ。
 で、やっている本人たちも実は「これでいい」と思っている節があるわけです。

GOROman氏:
 ありますね。ねこます(バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuber)さんとか、可愛いですもん。

川上氏:
 実際、二次元にしか関心を持てないような人たちって、現実世界には理想の女性がいないわけですよね。じゃあどこにいるのかと言ったら、それはどう考えても別のおっさんの頭の中なわけです(笑)。
 そしたらおっさんが演じる美少女キャラの方が理想に近くなるわけで、「中身はおっさんの方がいい」という結論に到達せざるを得ない。

──(笑)。

川上氏:
 もはやおっさんだろうが太っていようがよくて、「目の前のあなたが可愛ければいい」みたいな価値観になってきていると思うんだよね。そこでは、本体となる物理的な肉体がどうだろうが関係ない。

──ある意味性別も体型も関係ない、多様な(?)社会が誕生しますね。

GOROman氏:
 だから有機野菜とかでよくある「私が作りました」みたいな感じで、本体の顔の表示があったら面白いですよね──おっさんばっかで、本当にツラい気持ちになりそうですが(笑)。

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川上氏:
 じゃあもう「設定用の本体」を別で作ればいいんですよ。で、そっちの方は人間と区別ができないようなCGになっているわけですよ。しかも「この人がやっているんだ! 納得!」みたいな感じの美少女やイケメンなんです。

GOROman氏:
 でも現に、キズナアイちゃん『魔法少女サイト』っていう2018年の春アニメで声優デビューしているので、そのメタな世界は始まっていますよ。
 脳がバグってきますよね。「え、(中の人って)もともと声優じゃないの?」って(笑)。

川上氏:
 だから今後「VTuberが演じるVTuber」みたいなのも現れて、どんどんメタ構造になっていくんじゃないですかね。しまいにはもう中の人の存在感なんてなくなって、魂の存在が忘れられていくんですよ。
 中の人の正体は……とか言われても「え、何を言っているの?」みたいな反応をされるようになる(笑)。

※インタビューで「ぶっちゃけ中の人いません?」と聞かれたキズナアイの返しも「あなたはココ(頭)がちょっとアレなんですか?」というものでした。

GOROman氏:
 僕の予想だと、バーチャル文春砲みたいなものが出てくると思うんですよ。「キズナアイ、実は“中の人”がいた!?」とかいうやつ。

川上氏:
 それで「正体はおっさんだった!」みたいなね(笑)。でも実際問題、そういう声優のスキャンダル系の記事って他の芸能人に比べてファンがただ悲しむだけであまり読まれないらしいんですよ。
 だからたぶんVTuberも、中の人にみんなそこまで関心を持ってくれないから、どうでもいい平和な文春砲になっていくんじゃないですかね。

GOROman氏:
 「ミッキーマウスにチャック発見!」みたいなのと同じですからね。「それありきで見ていますけど?」という話で。

川上氏:
 逆に、いずれ中の人が複数いるとかになるのはあり得そうですよね。キズナアイを7人の子がやって「いろんな声が出せます」みたいな。

GOROman氏:
 日替わりで、「はいどうもー! 火曜日のキズナアイです!」みたいになっていく(笑)。

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(画像はインセプション [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [DVD] |Amazonより)

 あるいは多段階層のマトリョーシカみたいになっていって、おっさんの上に4層ぐらいの「VTuberが演じるVTuber」があるとか。そこを『インセプション』みたいに奥深くまで潜っていくと、やっとの思いで正体のおっさんにたどり着く(笑)。

川上氏:
 でもそれも実はフェイクで……。

GOROman氏:
 「よくぞ見破った……!」とかおっさんが言って、その中からまた可愛い子が出てくるわけですね。ああ、脳が混乱してきた(笑)。

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 もういっそ、VTuberも途中から本当にAIにしちゃうのはどうですか? ジャンボジェット機みたいに基本はオートパイロットモードのようにAIにやらせといて、たまにマニュアルに切り替えて人力対応するとか。意外とユーザーは見抜けなさそう(笑)。

──もう何層目が本物で何層目がAIなのかがわからなくなってきますよね。

GOROman氏:
 しまいには「VTuber連続殺人事件」みたいな京極夏彦ばりのミステリー事件が起きて。3層目の中の人が殺されたのに2層目はまだ生きている、ということは……? みたいなことで本物が明らかになるとか。

川上氏:
 もう訳がわからないですね(笑)。

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