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『FFXIV』麻雀実装で新規・復帰が急増。プロ雀士も参戦し、24時間数秒でマッチングする初のコンテンツへ…実は“住めるゲーム”を目指す新たな挑戦の第一歩だった

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吉田氏が体験した“ゲームに住む”とは

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Tamagoro Chuko(Durandal )さん。

──『FFXIV』の最終目標を“住めるゲーム”と設定したのは、吉田さんご自身がMMORPGに対してそういう魅力や可能性を感じているからだと思うのですが、そういう意味でいうと、やはり『UO』での体験が大きいのでしょうか。

吉田氏:
 僕にとって『UO』はMMORPGのインパクトを初めて体験させてくれた作品であり、開発チーム/コミュニティ/プレイヤーの三者の関係性など、今日のMMORPGに繋がる要素の大部分は『UO』から生まれたと思っていますので、それを強く感じたところはもちろんあります。

 何より『UO』は、唯一無二のサンドボックス【※】型のMMORPGとして大規模に成功したタイトルですので、とりわけ“ゲームの中に住んでいる”と感じた部分は大きいですね。

※サンドボックス
特定の目的が設定されておらず、プレイヤーが自由に動き回れるタイプのオープンワールド型ゲーム。

──具体的にどんなタイミングで“ゲームの中に住んでいる”と感じられたんでしょうか。

吉田氏:
 「今日は帰宅したらあれをやろう」というような、目的がとくになくても、自然とつねにログインしている状態になったタイミングでしょうか。あくまでも感覚なので正しいかどうかはわかりませんが、「ゲームの中にいるのが心地いい」と感じるようになったくらいからですね。

 変な話ではありますが、そうなるとゲーム内で発言したりキャラクターを操作したりしている時間が、リアルよりも長くなるんです。
 誤解を受ける表現かもしれませんが、そうやって自分の生活にとってかけがえのない場所になっているという感覚を得たくらいから、“ゲームの中に住む”と意識するようになったと思います。

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──それはMMORPGというジャンル自体がそう感じさせたのでしょうか。それとも『UO』というゲームだったからなのでしょうか。

吉田氏:
 難しいですね……。MMOというジャンルは、単なるMassively Multiplayer Onlineの略称でしかありません。たぶん、『UO』を作っている人たちの思いや考えかたに、“ゲームの中に住んでいる”というコンセプトがあったのかなという気はします。

 ただし、開発スタッフ/運営チーム/ディレクターの三者が綿密にそれを考えたうえで計画を立て、コンテンツやエリアを作っていかないと絶対にそうはなりません。

 “ゲームの中に住んでいる”感じを出そうと思って作っている人たちと、その世界を好きになってくれる人たちの双方が揃って、初めてそういう感覚が醸成されるようになるのかなと、いろいろなMMORPGを遊んできたうえで、僕はそう思っています。

 ちなみにジャンルに関してですが、ジャンルは分類を示すには便利なものですが、僕たちがそれを声高に叫んでも、あまりおもしろ味はないと思っています。だから『FFXIV』のジャンルは『FFXIV』──ということでいいのではないのかなと。

『UO』でできたことが『FFXIV』で実現不可能な理由とは

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Amo Observer(ZEROMUS)さん。写真屋STUDIOamoとか、落語家とか、ハウジングアイテム美術館とか…。いっぱい楽しんでます♪

──少し話が逸れるのですが、パッチ4.5でハウジングにロフトが設置できるようになりましたが、このタイミングの公開には何か理由があるのですか?

吉田氏:
 開発としては以前から乗り気だったのですが、デバッグの検証コストがけっこう高かったために、このタイミングでの公開になりました。ロフトは、配置の精度が高くないと、さまざまなバグを生んでしまいます。

 我々のロードマップには家具といったレベルのアイテムまで記載しているわけではないので、ロフトに関しては、ハウジングチームのアイデアがもともとあり、最終的に公開まで漕ぎつけた感じです。

──それはプレイヤーの声を反映した結果なのでしょうか。

吉田氏:
 もちろん彼らはフィードバックを参考にしていますが、それだけでなく、皆さんの邸宅やSNSの発信なども日常的に丁寧に見て回っています。
 ロフトは、皆さんのリクエストに応えたいという思いが素直に形として表れた例ではないでしょうか。

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──なぜこんな話をいきなりしたかといいますと、『UO』は自由度の高さゆえにいろいろなことが起きました。その結果、“ゲームの中に住む”感覚が醸成されていったと思うのですが、そういう意味でいえば、『FFXIV』は規制が比較的多めだと思います。この部分が今後どうなっていくのか気になりまして。

吉田氏:
 そこはもう、ゲームクライアントの作りかたの問題です。『UO』が自由度の高いゲームであると捉える視点は、いくつかあると思います。

 リチャード・ギャリオットさんが考えた『Ultima』という世界は、ご存知のとおり「徳」という概念が考えの中心にあります。だからこそテーブルトークRPGのような自由度の高さが作りのベースに存在し、そこからの選択次第でアバタール(※この場合は聖者の意味)を目指していけるのが魅力の本質なのだと思います。

 当時は3000人ものキャラクターの座標位置などを一括管理するための技術として、セルが用いられていました。要は、ファミリーコンピュータやスーパーファミコンと同じです。

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(画像はScreenshots – Ultima Onlineより)

 8×8ドットのセルのようなものがフィールド上に敷いてあり、キャラクターがいまどこのセルにいるのかで現在位置を確認していました。

 当時の非力なサーバーマシンで座標処理を行う素晴らしいアイデアだったと思います。物体を縦方向に積み上げられたのも、二次元座標で管理し、それを応用したので実現したのかな、と考えていました。

 つまり“絵はあまり考えない”作りにした結果、あの自由度の高さが生まれたのです。ですがいまの時代、ある程度というグラフィックスのレベルではプレイヤーは満足してくれません。

 当然、映像の美麗さや整合性の高さも重要になってきます。とくに『FFXIV』は『FF』のナンバリングタイトルなので、その部分を捨てることはできません。

──よくわかります。

吉田氏:
 『FFXIV』はこれらの要素を踏まえたうえで設計してあるため、『UO』ほどの自由度を実現することがもともと不可能です。

 そもそも『UO』とは根本のゲームデザインが異なり、サンドボックス型のロールプレイをベースとするゲームを作るのか、あるいはコンテンツを起点とする作品を作るのか……双方には大きな差があります。

 仮に、いまのグラフィックスのクオリティーで『UO』的な自由度を実現させた場合、サーバー内で動いている判定のコードがとてつもなく重くなるため、ストレスなく遊ぶことは相当難度が高いです。

 そうした環境のもとで、たとえばハウジング内の調度品をキレイに積み上げられるようにするには、おそらく“Z座標的な配置エディター”が必要になるはずです。

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Como Pan(Shinryu)さん。パン屋さんを始めて3年目になります。調度品にパンが追加されてから本当のパン屋さんになれました!パン屋さんを通じたフレンドたちとの出会いや思い出は数えきれない程。これからも楽しくパンを作っていきます♪

──なんだか工業的なツールになりそうですね……。

吉田氏:
 「建築業界向けのツールでハウスを作っているわけじゃない」ということですね。これはゲームデザイン上のルールや制約の話ではありません。

 僕たちが持っている、テクノロジーや資金面で投資可能なサーバーの性能、そしてプレイヤーの皆さんにお渡しするツールの精度……これらすべての要素を勘案したうえで、「実現できるのはここまで」という形で線引きを行った結果です。

 今回のハウジング内にピンポイントで家具を設置できる機能は、サーバーのソースコードを少しずつ最適化していった結果、より軽い処理で似たような動作が可能になったことから実現したものです。

 今後も同様の作業を進めていくことで、結果として、たとえばいまから4年後の『FFXIV』の自由度が、いまよりももっと高くなっている可能性はもちろんあります。それは制約やゲームデザインではなく、テクノロジー、コスト、グラフィックスの3つの掛け合わせでいまがあると思っていただければいいのかなと。

 ちなみに、『UO』は床にアイテムを置けましたが、それも所有権の概念がなかったから実現できたことでもありますね。

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Kuroya kuroron(Zeromus)さん。ゼロムスの片隅でカレー屋さんやってますヽ(=´▽`=)ノ

──どうしてそういう作りになったのでしょうか?

吉田氏:
 所有権を保持したままアイテムを床に置くと、サーバー上で莫大なデータ処理が必要になってくるからです。その場合、すべてのアイテムの所有権を常に保持しなければならなくなります。

 整合性を取りづらくなるのも理由のひとつでしょう。「『FFXIV』も床にアイテムを置けるようにしてほしい」という要望があるかもしれませんが、置いたアイテムの所有権が失われても良いのなら実現は可能ですが、『FFXIV』に求められる機能とは違うかなと思うのです。

──その場合「一時的にアイテムを置きたいだけだから、一定時間が経過するまで所有権を保持したままにしてほしい」という声が高まりそうですね。

吉田氏:
 はい、そう予測できますが、無理ですね(笑)。それが不可能なので、アイテムを地面に置けるようにしていないのです。

 僕がリスペクトする『World of Warcraft』【※】には、敵が落としたアイテムを拾う“ルート”という行為がありますが、『FFXIV』にそれを入れることはせず、オートルートにしたのは、「誰のものでもない」という状態を作らないことで、サーバーの負荷を下げられると考えたからです。

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『World of Warcraft』
(画像はBattle for Azeroth – Home – WoWより)

※『World of Warcraft』
米ブリザード社によって発売されたリアルタイム・ストラテジー型のMMORPG。ファンタジーの世界観のもと、人間やドワーフといったさまざまな種族が魔法を駆使して戦う。同型のシリーズとしてはこれまで3作が発表され、世界中で空前絶後の大ヒットとなった。「登録者数最多のMMORPG」としてギネスブックに記録されており、その数は1000万人を超える。

 また、戦闘のたびに「アイテムを拾う」という行為を、今の世代のプレイヤーはしないだろう、と。わずらわしさの方が気になってしまう。実際、『FFXIV』のサーバーの根本部分を開発していた当時、「床にアイテムを置くことはないので、そのあたりを気にせず作ってほしい」と担当者に伝えました。

 パブリックサーバーに捨てたアイテムが自動的に消滅する理由は、初期の段階でそういう設計になっているからです。

──宝箱から取り出したアイテムの所有者が自動的に決まるのも、そういうことなのですか?

吉田氏:
 はい。そう決めた理由も同じで、敵が落とした宝箱を毎回開ける作業はいまの時代に合わないからです。でもだからこそ、「雲海探索 ディアデム諸島」【※】であえてそれをやってみたという側面はあります。

 なぜかといえば、特定のエリア限定であれば、ルールに反することをやっても許されるからです。

※雲海探索 ディアデム諸島
パッチ3.1で公開され、パッチ3.55bで大幅なリニューアルを遂げた探索型コンテンツ。隔絶された箱庭型のフィールドに複数のパーティが同時に突入し、内部を冒険する。ほかのコンテンツとは異なり、モンスターを倒すとその場で宝箱がドロップするのが特徴で、『UO』に代表される第一世代のMMORPGにも似たアイテム収集が楽しめる。

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──あえてルールに反する。だからこそ生まれる面白さがあると。

吉田氏:
 そういう意味では本当に『UO』と出会えてよかったと思いますし、あの当時から開発者でいて幸運だったと感じています。『UO』以外のオンラインゲームも遊ばせていただいて、ものすごく勉強になりました。

青魔道士は『FFXIV』におけるブレイクスルーの集合体

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青魔道士

──生活系コンテンツからは離れますが、少しだけ青魔道士【※】の話もさせてください。青魔道士のスキルの多くは、敵がいなくてもほとんどのフィールドで発動することができます。この仕様にはある種、エモート的な意味合いもあるのかなと思っていまして。たとえばハウジングの中で自爆【※】して戦闘不能になることもできます。

 私の場合、この青魔道士によりフレンドとのコミュニケーションの幅が広がり、そういうところにも“ゲームの中に住む”魅力を感じたりするのですが、ここまでお話いただいた変化が、バトル寄りの要素にも反映されているのでしょうか。

※青魔道士
パッチ4.5のリリースから1週間後となる2019年1月15日に公開。コンテンツファインダーによる自動マッチングが利用できないなど、いくつかの制限を設けることで実現した、『FFXIV』初のリミテッドジョブ。モンスターの技をラーニング(見て、覚える)し、それを青魔法として発動することで、戦闘を有利に進められる。既存のジョブとは異なり、青魔法の収集と、マスクカーニバルという独自コンテンツの攻略に楽しみの軸足が置かれたユニークなジョブ。

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自爆

※自爆
ボム系のモンスターからラーニングできる青魔法。攻撃を発動後、自身が戦闘不能に陥る。なお、これまで戦闘不能はバトル中にのみ起こるものであったが、青魔道士の公開により、基本的にはいつでもどこでも戦闘不能になれるようになった。

吉田氏:
 まず青魔道士は、ドマ式麻雀同様に、ほかのコンテンツが削れないよう、キチンと計画を定めたうえで、大きなものをリリースする──という方針で1年くらい掛けて開発を進めてきました。
 仕様の策定をジワジワと進めつつ、繁忙期に入ると作業を止め、パッチが公開されたら再開する、みたいな流れの繰り返しですね。

 そして質問への回答ですが、そうではないです。人間は根本的に複雑にできているため、ベースに流れているルールや計算式は、できるだけシンプルなほうがよかったりします。

 そうすることで、人々の応用による複雑化を促せるようになります。『FFXIV』にはそう考えるゲームデザイナーが多く、このような考えに基づき、『FFXIV』の計算式の大半はシンプルに作られているので、ベースにあるルールはものすごく強固だったりします。

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 そんななか、“世界中のより多くの人々に遊んでもらうために挑戦しよう”という新たなテーマをあらためて置き直したときに、既存ルールの外にあるものを作る、という答えに至りました。

 それが目に見える形で現れたのが、「禁断の地 エウレカ」や「青魔道士」です。ですので、生活や世界に住むというテーマとは、出発点が大きく異なります。

──先ほどの「雲海探索 ディアデム諸島」の話にも通じる話ですね。

吉田氏:
 だからこそ、たとえば青魔道士で言えば、ベースのルールとは交わらないリミテッドジョブという扱いにしてあるのです。そうすることで、過去のコンテンツに挑んだ際にバランスブレイクが起きたとしても、コンテンツファインダーによるマッチングが行えないため、深刻な悪影響は生じません。

 “いままで行ってこなかったことをやる”という方針が、青魔道士というジョブのデザインと合致した結果実現した。そんなイメージです。

 ドマ式麻雀の公開により、“世界中に存在する遊びを『FFXIV』の中に取り込んだとしても何も悪いことはない”というひとつのブレイクスルーを起こすことができました。

 これと同じように、“リミテッドジョブという枠組みを新たに作り出した”ことで、現世代のMMORPGには不向きとされてきたジョブも入れられるようになったわけです。これもまた、もうひとつのブレイクスルーと言えるはずです。

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Iroha Turkey(Bahamut)

 これらのブレイクスルーは、世界の中で生活するとか暮らすとかいうことではなく、『FFXIV』の殻を壊しながら、全体のルールを守りつつゲームを拡大させていくための“軸”です。

 そういう意味でドマ式麻雀は、制作手法のチャレンジとゲームデザインのチャレンジ、双方の最初の“軸”となっているとも言えます。

──せっかくなので青魔道士の話を続けようと思います。このジョブの公開で、パブリックフィールドの狩りがこんなに熱いのかと、あらためて認識させられました。

 『FFXIV』は基本的にパーティごとに潜入するダンジョンを始めとしたコンテンツで経験値を稼いだり、装備を整えたりするので、いい意味で10年ぐらい前のMMORPGで味わった楽しさをいま改めて体験できたといいますか。

吉田氏:
 それは、ラーニングというレベリング以外の楽しみがあったからです。だからこそ「ラーニングが存在しない青魔道士では意味がない。リミテッドジョブにしてでもそれを作るべきだ」とこだわりました。ですが、じつのところ実際に遊んでもらうまでは、プレイヤーの方々から戻ってくる賛否は半々かなと思っていました。

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青魔道士のラーニング

 僕がテストプレイした際にすごく楽しめたので、大丈夫だろうとは感じていましたが、やはりガチガチに決められた既存ルールに馴染む形で、新しいものを作るのは難しいため不安もありました。

 今も青魔道士のリミテッド解除を望む声は拝見していますが、それよりもリミテッドであるからこそできることを伸ばしていきたいなと考えています。

 これで『FFXIV』はMMORPGでありながら、ひとりでジョブを遊ぶという突き詰めかたもできるゲームへの可能性が生まれました。これが青魔道士を公開したいちばん大きいところではないでしょうか。

誰もが納得する“アップデート間隔”を求めて

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Uris Belial(Bahamut)さん。アウラをきっかけに仲良くなるフレンドがいっぱい出来ました(๑´ω`๑) 本当にありがとうございます。

──ここまでのお話から“いかにして『FFXIV』の世界を広げるか”ということに対する熱意が凄く伝わってきました。さて、ここからはまとめの方向に入って行こうと思います。

 吉田さんは『FFXIV』を新生させる際に「『FF』という名前のテーマパークを目指す」というコンセプトを掲げていましたよね。ドマ式麻雀の実装は、その“『FF』の巨大テーマパーク”というコンセプトとは異なる、新たな施設を作る意味合いがあるのでしょうか?

吉田氏:
 逆です。『FF』のテーマパークにこだわっているのはいまでもそうですし、これからもおそらく変わりませんが、『FF』のテーマパークという定義はギリギリまで広げたいと考えています。だから『FF』の定義の中にドマ式麻雀があっても別に悪くないと思っているだけです。

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──なるほど。また、手当たり次第に何でも追加すればいいわけではないと思いますが、その線引きといいますか、コンセプトはどのあたりにあるのでしょうか。

吉田氏:
 そこはもう感覚としか言いようがないですね……僕も人間ですし、この歳ですが微妙に成長もしています(笑)。

 現実世界に既にある遊びを実装しようと考えたとき、前回実装したものから何ヵ月くらい間隔を空ければ、皆さんに抵抗なく受け入れていただけるか。こういった判断も重要になってきます。

 ある程度間隔を空けないとどうしても色がついてしまう。ひとつの方向に傾倒しすぎるのは良いことではありません。

──プレイヤーがコンテンツに馴染むまでの間隔を確保する必要があると。

吉田氏:
 いまは拡張パッケージの発売を控えているので正しい例えではありませんが、もし仮につぎのメジャーアップデートでポーカーを入れた場合、「既存のゲームを持ち込むことに腐心してしまっている」と感じる方が出てくるはずです。

 加えて、ドマ式麻雀がすでに公開されているなかで早々にポーカーを実装すると、マッチングが成立するまでの時間にブレが生じかねません。

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Chirol Choco(Kujata)さん。エオルゼアでは、いろんな人に会える事遊べる事 相談や悩み事などフレと出来る事 エオルゼアがキッカケでいろんな事が増えましたとても素晴らしい場所だと思います!吉Pにも会えるしねw

 また、仮にドマ式麻雀にアップデートを加えることがあるとするなら、それをプレイしない人たちにとっても納得感が得られる期間や時間の確保が絶対に必要になります。

 その基準を導き出す根拠は、何らかの理論に基づいているわけではなく、僕の中にある感覚でしかありません。いろんな方たちのプレイスタイルを日々チェックしているからこそ、そうした部分を考えていけるのだと思っています。

──ゲームクリエイターとして、そしていちプレイヤーとしての感覚に準ずると。

吉田氏:
 一概に「これが答えです」とは言いづらいですが、つねにそういうことを考えながら、僕が定めた向こう数年間の計画を勘案したうえ、“これはここで”といった感覚に基づいて配置しているイメージです。

 ドマ式麻雀や青魔道士は突然姿を現したようにも見えますが、やはり年単位で計画を進めてきた要素です。これらのほかにも、皆さんにまだ発表していないものが当然ありますので、また驚きと共にお知らせできたらなと思っています。

“変えてはいけない”ことへのこだわり

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──『FFXIV』の世界は今後さらに広がりを見せていくと思うのですが、吉田さんの中で、変えるべきところと、変えてはいけない部分の線引きはどこにあるのでしょうか。

吉田氏:
 変えない部分は……とくに強烈に意識はしていません。根幹のデザインは大切にしつつ、ゲーム性は時代と共に変わるべきだとも思っています。

 ただひとつあるとすれば、メインストーリー【※】をこだわって作り、よりおもしろくしていきたい……それくらいです。僕や開発チームのメンバーが思い描く『FF』にしたいという思いはありますが、じつはあまりこだわりがなかったりします。

 実際にいままで、「絶対にここだけは変えないで!」みたいな指示をしたこともなかったと思います。

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※メインストーリー
メインクエストを通じて繰り広げられる、ゲームの中核を成すストーリー。いわゆるメジャーアップデートが公開されるたびに、最新のシナリオが順次追加されていく。多くの出会いと別れを経験しながら、前に進み続ける光の戦士(プレイヤー)とその仲間たち。彼らの過酷な運命が、舞台である惑星ハイデリンの命運をも左右する激動の世界情勢とともに語られる。

 逆に変えるべき思想や必要性があるなら、変えたほうがいいだろうとは思っています。実際にロットイン(コンテンツで手に入ったアイテムを誰が取得するか決めるシステム)のルールを根本から変えたりなど、いろいろやっていますよね。

──バトルシステムも拡張パッケージでがらっと変わりますしね。

吉田氏:
 バトルシステムでいえば、つぎの拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』でTP【※】がなくなります。『紅蓮のリベレーター』を開発していたころから「いらないよね」という話が出ていましたが、当時はプログラム的に危険すぎるという理由だけでなく、TPの表示をなくすためのコストも割けない状態でした。

 そうしたことから、パッチ3.5~4.Xシリーズの間は、ある程度TPの形骸化は仕方ない、とスタッフと話していました。スプリントがTPを消費しなくなったりしていったのも、その割り切りがベースにあります。

※TP
Tactical Pointsの略。プレイヤーの分身である光の戦士が武器による技を繰り出すたびに、この数値が減少していく。よほどのことがない限りゼロにならないため、かねてよりその存在理由が問われていた。

 TPをなくすことで新規のお客様にも理解しやすくなりますし、ベテランプレイヤーの方もバトルにより集中できるようになるはずです。皆さんの利益になるのであれば、なくしてしまっていい。

 そういう意味でも、変えてはいけないことに対するこだわりはあまりないのです。

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Beta Wisteria(Belias)さん。

──何事も理詰めで考えていられるんですね。

吉田氏:
 僕も含めて開発チームの主力メンバーは、感覚で決めることはせず、理論立てて物事を考える傾向があります。

 僕がそういう性格だからかもしれませんが、スタッフが相談を持ち掛けてくるときも、たいてい理論武装済みです(笑)。必ず“なぜそれをしなければならないか”を丁寧に説明してくれます。

より多くの人に『FFXIV』を遊んでもらうために

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Felicite Felite(Unicorn)さん。

──最後に、今後『FFXIV』はどういうゲームになっていくのか、ということをお伺いできればと思います。「世界中のいろんなオンラインゲームを取り込んでいく」というお話がありましたが……。

吉田氏:
 少なくとも、遊びかたの面では何も決めていません。ここまでお話してきたとおり、いろいろな価値観を持った方が集まって、いろいろな遊びかたをしていただければいいと思っています。僕のほうから、こう遊んでほしいみたいなことを押し付けるつもりはありません。

 ですが『FF』シリーズである以上、たびたび申していますが、メインストーリーは必ず中心軸として存在します。いろいろな要素を遊びたいのであれば、それらを開放するために、まずはメインストーリーをプレイして世界を救ってください。

 そうお願いするからこそ、話としてのおもしろさをできる限り詰め込んでいるつもりです。現世代の『FF』である以上、ストーリーを楽しんでいただくことに、これからも腐心するつもりです。

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Terre Tierra(Alxander)さん。アレキでやってた色んなユーザーイベントとか

──メインストーリー以外は、すべて自由に遊んでくださいと。

吉田氏:
 ひたすら釣りをして過ごしていただいてもいいですし、スクリーンショットの撮影に時間を費やしていただいてもかまいません。ドマ式麻雀に明け暮れる日々を送った末に、一度も課金しないまま5年が経ってしまっても別にいいと思います(笑)。

 以前からずっと変わらず考えているのは、開発・運営・宣伝など、各チームに所属する大勢のスタッフが情熱を注いで作り上げている『FFXIV』というゲームを、ひとりでも多くの方に遊んでもらうことです。

 これは『FFXIV』が新生した当時から言ってきたことではありますが、それを明確に、より強く打ち出していくことが、いまの僕の仕事なのかなという気がしています。

 ただ、規模が大きくなりすぎたために、全仕様の把握と全コンテンツのチェックが本当にキツくて……(苦笑)。

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──これだけコンテンツが膨大になり、さらにプロデューサーとディレクターを兼任されていますもんね。

吉田氏:
 そろそろ人間の限界を超えている気がします(苦笑)。いずれにしても、今日は深い部分までお話しましたが、MMORPGをうまく作って上手に運用することは、皆さんが思っている以上に難度が高いとは思います。
 ただし、だからこその面白さもありますので、挑戦したい方の参画をお待ちしております。

──本日お話をお伺いして、確かにそう感じました。

吉田氏:
 多種多様な価値観が存在するうえに、みんな忙しく動き回っているせいで、どうしても取捨選択を強いられる……いまがそんな時代でなければ、『FFXIV』はもっと化けていたのかもしれないな、と思うこともあります。

 ですが、現実は現実。それを織り込んだうえで、どうやってブレイクスルーを作り出すのかが重要になってきます。そのあたりに気を配れば、今回のドマ式麻雀のように、数万人のプレイヤーを新たに迎え入れることだってできると思うのです。

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──考えかた次第という感じですね。

吉田氏:
 だからこそ、いろいろな価値観を持つ方たちが全員楽しめるように、必要な要素を全部入れてしまうのもひとつの作戦になるわけです。

──吉田さんと『FFXIV』のそこがすごいところですよ。

吉田氏:
 そういうバカなことを思いつくのは、FFXIVだけかなと(苦笑)。でも、いろいろな方がドマ式麻雀を褒めてくださっているので、テンションはちょっと上がりました。

──『FFXIV』が新生して以降、多くの人々の“MMORPG観”が変わったと思います。吉田さんご自身も、そうしたプレイヤーの考えかたの変化みたいなところを感じているのですか?

吉田氏:
 新生『FFXIV』が動き始めたころに、コンテンツの攻略が思うように進まずに、プレイヤーのあいだで初めてギスギスした雰囲気が醸成された時期がありました。

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 その状況を見て、「あれ、思った以上に初めてオンラインゲームを遊ぶ人が多い?」と思ったのをよく覚えています。逆説的ではありますが、そのとき、いままで誰も提供してこなかった遊びを提案できたのだなと感じました。

──確かに当時は、ゲーム内でギスギスした雰囲気を体験したことがなかったので、そうならないように努力していました。ですが最近はギスギスした状況にすっかり慣れてしまっているので、そうなってもほとんど気になりません。

吉田氏:
 当時多くのプレイヤーは、真剣にコンテンツクリアを目指しているからこそ、「ゲーム内で緊張感ある雰囲気に身を置く」という価値観に触れること自体が初めての体験だったのだと感じました。

 加えて、コンソールゲームに慣れ親しんできた多くの国内プレイヤーの方は、すべての要素をコンプリートするつもりで遊んでいらっしゃいました。
 「すべて遊び尽くしたい」という意識が強いがゆえに、ご自身のプレイスタイルに合わない高難度のバトルコンテンツにまで無理やり挑んでおられて……「真タイタン討滅戦」【※】のことですが……。

 当時は今と比較にならないほどコンテンツも少なかったですし、もう少し僕らにやりようはなかったかと、今でもそう感じることはありますね。

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真タイタン戦

※真タイタン討滅戦
新生『FFXIV』がローンチした当時、多くのプレイヤーを悩ませた高難度バトルコンテンツ。初回の挑戦でタイタンを討滅することはまず不可能なので、数多くの人々が練習目的のパーティに参加してトレーニングを積んだ。特定のメンバーの技量が不足しているなどの理由で攻略が思うように進まなかったりすると、ギスギスした雰囲気がパーティ全体を包み込み、場合によってはそこで解散になることもあった。この状況は最近の高難度バトルコンテンツでも見られるが、パーティメンバー全員が穏当な口ぶりを心掛けるため、それがもとでトラブルが起こることはほとんどない。

──やはり(笑)。

吉田氏:
 ですが、あれによって、パーティメンバー全員が一糸乱れずに行動するおもしろさも見つけていただけました。

 「真タイタン討滅戦」に心を折られてしまった方には本当に申し訳ありませんが、それによって新しい価値みたいなところが提供できたのかなと。

 いまはうまく立ち回れないプレイヤーがいたとしても、当時ほど不満を募らせるような方はほとんどいません。むしろ心優しい方のほうが圧倒的に多いです。

──あの当時、攻略の鍵となる“タイタンの心核”が壊せないだけでパーティが解散になることに衝撃を受けた記憶があります。

吉田氏:
 あのころは、アクションのローテーションを繰り返すことにさえ苦しむ方も多かったですしね。そうした方が多いと、“タイタンの心核”を壊すのはなかなか難しいかなと(苦笑)。僕たちとしても、当時の日本に存在しないゲームとして新生『FFXIV』をデザインしていたので、強烈に作った面も確かにあります。

 ただそういったことを踏まえても、この5年のあいだでプレイヤーの方々の価値観が変わったとは思いません。また時代という意味では、遊ぶ時間のない生活を送るいまのゲーマー世代と、MMORPGを知らない若い方たちに向けて、みんなでゲームを楽しむ体験を高品質にお届けできている自負はあります。

『FFXIV』麻雀実装で新規・復帰が急増。プロ雀士も参戦し、24時間数秒でマッチングする初のコンテンツへ…実は“住めるゲーム”を目指す新たな挑戦の第一歩だった_092
Seria iskandar(Shinryu)

──私自身、ほかのゲームにも触れなければとは思うのですが、『FFXIV』であまりにもいろいろな遊びができてしまうので、気が付くとゲームの世界に降り立っています。加えて最近は、信じられないほど大ボリュームのコンテンツがパッチによって積み上げられているので……。

吉田氏:
 「ほかのゲームを遊んできていいよ」と言いながら、プレイヤーを離さない努力も続けているという(笑)。

──『FFXIV』をプレイして不思議なのは、年々『FFXIV』という沼に沈み込んでいっているような気がしていることなんですよ(笑)。普通は逆じゃないですか。

吉田氏:
 ずっと『FFXIV』で遊んでくれていることは、僕たちにとって金銭面以上に重要なことです。確かにコンテンツが増えすぎると、最先端まで追い付けなくなったり、食傷気味になってしまったりすることもあるので、うまくバランスを取らなければとは思っています。

 でも大丈夫です。あと2ヵ月くらい経てば「やることがないぞ、漆黒のヴィランズはまだか!」みたいな話になると思います(苦笑)。

──あはは(笑)。本日はありがとうございました。(了)

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Tony Prearia(Unicorn)

 世界的なオンラインゲームの潮流からすれば、MMORPGは割合古いタイプのゲームに分類されるのかもしれない。しかし『FFXIV』は新生してから勢いを落とすことなく5周年を迎えており、いまなお多くのプレイヤーが日々ログインし、多種多様な人々が冒険を楽しんでいる。

 果たして、この『FFXIV』ならではの面白さとは何なのだろうか――その理由をいちプレイヤーとしてずっと考えていたが、今回のインタビューでは、その理由の片鱗が明らかになったのではないだろうか。以下に挙げてみよう。

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Rocca Freiheit & S’olih Tia(Garuda)さん。楽器演奏というコンテンツが大好きです。これからも夫婦仲良く、この素敵な世界を楽しんでいきたいと思います。

 まず『FFXIV』は“ファイナルファンタジーのナンバリング作品”としてバトルコンテンツの充実が図られた。たとえオンラインゲームであっても、『FF』は『FF』。みずからが参加したバトルによって世界が救われたという達成感や充実感が魅力の根底にあり、そこを外さないブレないゲーム構築がなされているのが魅力である。

 ところがオンラインゲームであって継続的にプレイされ続けるがゆえに、世界が古びてしまいがちな側面を抱えている。それを払拭するために、『FFXIV』は、昔ながらのMMORPGではなく絶えず“今風の設計”を求めている。その姿が現在のプレイヤーにマッチしたのだ。その更新はいまも続けられており、この間にも『蒼天のイシュガルド』、『紅蓮のリベレーター』という2つの拡張パッケージをリリース。来たる7月にも3つ目の拡張パッケージが予定されている。

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Tetoh Adamas(Unicorn)さん。

 その一方で、吉田氏を始めとした開発陣は、長く世界を楽しんでもらうために、ある仕掛けを少しずつ施していた。いわゆる生活系コンテンツの実装である。公開当初はまだまだ小粒ではあったが、その取り組みの甲斐があってか、2017年の『紅蓮のリベレーター』発売からプレイヤーの価値観が変化。『FFXIV』という公園の中でいろいろな遊びかたを発信するようになっていった。開発陣とプレイヤーの想いが交差した瞬間である。

 結果、『FFXIV』という世界は、開発陣とプレイヤーの双方の手によって発展し、さまざまな価値観を持った大勢の人たちが、お互いの考えを否定することなく共存できる環境となった。これもほかでは中々見られない魅力だろう。

 これらの魅力の立役者が吉田直樹というゲームデザイナーであることはこのインタビューから明らかであり、今回の取材では、そんな氏のゲームデザイナーとしての一面を垣間見ることもできた。

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Roco Kai(Hades)さん。

 『FFXIV』では本当に沢山のプレイヤーがそこで生きている。生まれも育ちも考え方もそれぞれ違うため、時には衝突することもあるが、「たくさんの人を受け入れられる場所あるいは価値観を揃える」という方針のもと、弛まずアップデートが重ねられてきた作品。これまでがそうであったように、開発とプレイヤーたちが双方から知見を積み重ね、話し合いを重ねることで、より「生きやすい世界」になることは明らかだ。

 今回のインタビューで語られたのは、そんな『FFXIV』の可能性の話。本作が新生してから早5年。“住めるゲーム”としての下拵えは整い、いよいよMMORPGに特化したゲームデザイナー・吉田直樹ならではの世界が真の姿を見せるのかもしれない。

「#吉Pインタビューに自分のSSを載せよう 」にご応募いただいた皆さんへ

この度は素敵なスクリーンショットをありがとうございました。予想以上に沢山のご応募があり、全てを掲載することはできませんでしたが、1枚1枚編集部の皆で拝見させていただきました。皆さんイイ絵を撮られますね。

感謝の気持ちを込めまして、ツイッターにて「幻想薬」のプレゼント企画もやってますので、よろしければご参加ください。

それでは、エオルゼアでお会いしましょう。

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インタビュアー・ライター
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新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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