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『シンカリオン』×『スパロボ』鼎談!改めて考えるロボットアニメの面白さと『シンカリオン』の重要性

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改めて考えるロボットの面白さ

──ここからはロボットの面白さについて掘り下げていこうと思います。大畑さん自身は、今回『シンカリオン』のアクション演出に関わって、ロボットの面白さを改めて感じたことはありますか?

大畑氏:
 私の世代の人たちは、高度成長期の真っ只中に生まれて、物心ついたらロボットがいて特撮ヒーローがいて、という環境に育ってきました。その頃は、そういう賑やかな時代でしたね。

 なので私の年齢的にいうと、ロボットアクション、ヒーローアクションについては50年くらいの経験値があるわけですよ(笑)。そうやって触れてきた作品の中には『マジンガーZ』『ガンダム』『ゴジラ』『ウルトラマン』といった作品もあって、子ども時代は、そういう作品に触発されていたからこそ、想像の世界で楽しむことができました。

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『機動戦士ガンダム』
(画像はWORLD|機動戦士ガンダム公式Webより)

 『シンカリオン』に参加するにあたっては、今放送を観ている子どもたちに、自分が体験したような「楽しみ」をちゃんとサービスしてあげられたら、という気持ちで取り組みました。

 だから、自分にとってロボットアニメの魅力ということを考えると、「子どもたちのヒーローへのあこがれや正義に対しての思いを受け止める存在であること」というのが、まずあります。
 そしてその上で、バトルや操縦の快楽という部分を満たしてあげるために、ロボットがあるのではないかと思います。

──では、寺田さんが考えるロボットの魅力とはなんでしょうか。

寺田氏:
 日本人って、大仏とかデカいものが好きですよね。だからまず、“大きな人型”に対しての憧れがあって、それがロボットの魅力の根源なんでしょうね。1分の1のガンダムを見たときにはやっぱり、「おお」と思いますからね。もっとも、アニメから想像していた感じからすると、周辺の建築物と比べて意外に小さいなと思いましたけれど。

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等身大ガンダム
(画像はGREEN TOKYO ガンダムプロジェクト – Wikipediaより,  創通・サンライズ 写真の著作者: Vantey – Photographed by Vantey, 日本著作権法46条/米国フェアユース, Link

一同:
 (笑)。

寺田氏:
 僕が子どもの頃と比べると、ビルとクリーチャーやロボットのサイズ感は大きく変わっています。それでも巨大な人型への憧れはまだちゃんと残っていますよね。逆にいうと、だからこそゴジラはビルに負けないように巨大化して『シン・ゴジラ』は118.5メートルと、初代『ゴジラ』に比べて倍以上の大きさになっている。

 自分自身のロボット体験も、大畑さんとだいたい同じような感じで、『マジンガーZ』から入って、その後『ガンダム』『マクロス』など、いろいろ観てきました。

 さらに『ウルトラマン』などの巨大ヒーローも見ていたわけですが、いずれの作品も「正義」なりなんなり、いろいろ大事なテーマを扱ってはいますが、やはりその魅力の一番は「大きな人型」にあって、それがかっこいいということに尽きると思います。

 これは根源的な感覚というか、未だにスーパー戦隊シリーズのロボットが子どもにとって好まれて、定番作品になっているということと深く関係があると思います。

 そういう意味で『シンカリオン』は、子どものストレートな憧れの存在をロボットに直結させているのがすごいコンテンツだな、と。まあ、僕の年齢からすると、新幹線といえばまず「0系」なので、「『0系』出てこないなぁ」と思いながら観ていますが(笑)。

山野井氏:
 (笑)。

──寺田さんは、『マジンガーZ』のどのあたりに魅力的を感じましたか?

寺田氏:
 マジンガーZが硬いところですね。素材である「超合金Z」が、とにかく強いと。

 あとは、“人が乗らないと動かない”というところも大きかったです。巨大ロボットアニメの先駆者である『鉄人28号』はリモコンによる遠隔操作だったのに対して、『マジンガーZ』は兜 甲児がホバーパイルダーに乗り込んで、ドッキングして操縦する。

 人の心がパイルダーオンすることで、神にも悪魔にもなれる──これは漫画版の話ではありますが──というところが大きかったです。

 しかも序盤で、「兜 甲児をどうにかしてしまえば、マジンガーZは無力化できる」みたいな話をやっていて、そこもすごかったですね。

──大畑さんにとって「原点」となったロボットは何でしたか?

大畑氏:
 漫画のほうになりますが、『ゲッターロボ』という漫画が(笑)。石川 賢さんが描いた『少年サンデー』連載の漫画版ですが、あれに勝るロボットものはないというか。

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漫画『ゲッターロボ』
(画像は【完結済み】ゲッターロボ 1巻 | 原作:永井豪 作画:石川賢 | 無料まんが・試し読みが豊富!eBookJapan|まんが(漫画)・電子書籍をお得に買うなら、無料で読むならeBookJapanより)

 もちろん、こういうことを言うと、文句をいう人がいっぱいいると思うんですけど(笑)。子どもの頃に最初に何を見たか、刷り込みですよね。一番やばいの見ちゃったなと(笑)。

寺田氏:
 『ゲッターロボ』と『デビルマン』はアニメと漫画が違い過ぎるほど違いますからね(笑)。

大畑氏:
 石川 賢版の『ゲッターロボ』が描いているのは、「巨大ロボットというのは、死ぬ気で乗らなければいけないもの」だということなんです(笑)。

 死ぬ気で戦って、例え死んだとしても動かして敵を倒さなければいけない……そんなテンションの漫画でした。もっとも、後半になるにつれてだんだん子ども向けになっていきましたが、最初はホントにすごかったですね。

 アニメの『ゲッターロボ』もチラチラ観ていましたけど、やっぱり漫画のほうにどうしても惹かれていましたね。

 そういえば『マジンガーZ』も、僕はやはり漫画から入っているんです。それで、アニメが始まったときにリアルタイムで観たのですが、「漫画と違うなあ」という印象があって。
 子どもですから、そういうところは融通が利かないというか(笑)。そこは子どもの頃からオタクっぽかったんですね。

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 ただ、今のようにスマホもないしネットもなくて、遊びが少なかった時代ですよね。

 1週間に1回TVが放映されて、漫画誌で追いかけるという時代でしたから、その一週間の間が本当に退屈で退屈で。
 それで、その間に何をしたかというと、自分なりにいろいろ考えたり妄想したりして、今でいう二次創作じゃないですけれども、漫画を描くんです。

 『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』とか、他の会社のロボットも含めて版権を無視して自分で勝手に漫画を描いて遊んでいました(笑)。

 結局、子ども時代の自分の脳内には『ゴジラ』も『ウルトラマン』も『マジンガーZ』も同じ世界のものとして存在していたんです。

──大畑さんは『マジンガーZ』についてはどう思いましたか。

大畑氏:
 巨大ロボットというと、『鉄人28号』まで遡らなくても、実写特撮でやはり遠隔操作型の『ジャイアントロボ』もありました。

 ただそれと比べても、思った通りに動かせるだけでなく、乗り込んで触って一体化するという感覚がある『マジンガーZ』は魅力がありました。

 その一体化の感覚は、コクピット操縦型のロボットものの一番の魅力の部分だと思います。ドラマを創る上では、メリット・デメリットがあると思いますが、最初に物心ついたときから、そういうものが好きで、それは今も続いている気がします。

寺田氏:
 魅力というとカッコよさだけでなくって、バカバカしさというか、首をかしげるようなシチュエーションも魅力のひとつになるんですよね。

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 『ゲッターロボ』のゲッター1をみると、TVアニメ版の「ゲッターウィング」というまっすぐ鉄板状の翼が背中から伸びるのですが、漫画版はヒラヒラとしていて完全にマントとして描かれていて。子ども心に、「このゲッターウィングは何でできているんだ……」と頭をひねったことを覚えています(笑)。

大畑氏:
 ロボットに乗り込んだら、鼻血吹いたり、ゲロ吐いたりすることも、カッコよさかというとちょっと違いますね(笑)。ただ、それによって“ロボットは死ぬ気で乗らないといけない”という、刷り込みがされたわけで。

山野井氏:
 それは“乗り物酔いするくらい、激しい乗り物”ということですか? 僕は全然世代ではないので……すみません。

寺田氏:
 漫画版の話ですけど、ゲッターロボはパイロットにかかる負荷が凄いので強靭な肉体と精神力を持っているヤツじゃないと乗れないんです。パイロットを見つけるまで300人以上が脱落しているという。

山野井氏:
 なるほど、それはすごい設定だ……。

大畑氏:
 だから、漫画はパイロットを探すところから始めるんですよ。天才科学者と言われた早乙女博士が、主人公の流 竜馬がパイロットに向いているかどうかを確かめるために殺し屋を差し向けるという。

 石川 賢先生のファンはみんな分かっていますが、どの作品もヤクザ・テイスト、『仁義なき戦い』みたいなテイストで作られていますから。そういうものを小学生のときに読んでしまったら、影響を受けざるを得ない。

寺田氏:
 3人いるゲッターチームのうちのひとり・神 隼人も、クールでニヒルなキャラクターとして知られていますが、漫画版での初登場時は全然違いますからね。

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大畑氏:
 違いますね(笑)。

寺田氏:
 もう表情というか、目からしてキレキレですからね。

大畑氏:
 永井先生が描かれている『激マン! マジンガーZ編』という回想録漫画がありますが、それを読むと、『マジンガーZ』のエピソードの中に並行して『ゲッターロボ』の企画も進んでいる風景が描かれているんですよ。

 『ゲッターロボ』の漫画は、企画のアイデアは永井 豪先生だけれど、実際に漫画を描くのは石川先生に決まる。ところが石川先生がなかなか描けずに苦労している、と。

 それはなぜかというと、漫画の作中では、石川先生が「流 竜馬がサッカー部のキャプテンでは健全すぎて描けない」と悩んでいるからで(笑)。

そうしたら永井先生が、「変えてもいいよ」と。「俺も『デビルマン』で変えちゃったから、いいんじゃない」(笑)。

 それで石川先生のほうから、流 竜馬は空手の達人というアイデアが出てくるんです。

 これが本当なのか、漫画用の創作なのかはわかりませんが、これを読んだとき、何十年目かにして、すごく納得がいったんです(笑)。確かに石川先生からしたら、サッカーは健全過ぎただろうなと (笑)。

──山野井さんのロボットアニメ体験はどんな感じでしょうか?

山野井氏:
 いやー、正直僕自身はアニメをあまり観ない人なのですが……。記憶に残っている限りで言うと、一番古いのは『機甲戦記ドラグナー』ですね。プラモデルも買いました。そこから次は『機動警察パトレイバー』。TVアニメの後に映画を観て、その後にOVAを観る、という順番でした。

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『機動警察パトレイバー』
(画像は機動警察パトレイバー アーリーデイズ(初期OVAシリーズ)|PATWEB|バンダイビジュアル PATLABOR OFFICIAL WEB SITEより)

 あとは『機動戦士ガンダム』ですね。私は本放送オンエアの世代じゃないので、朝の時間帯で再放送していたときに、断片的に観て。
 そこで触れつつ、情報として知っているという感じですね。

『スパロボ』が紡いだキャラクターの命脈と変化

──今、「本放送世代ではないけれど、再放送でその作品に触れた」というお話がありました。再放送がほとんどない現在、ロボットに関しては『スーパーロボット大戦』のシリーズがキャラクターの命脈を繋いだ側面もあると思うのですが。

寺田氏:
 とはいえゲームですからね。

 放送と違って、そもそもゲームに興味がないとやっていただけないという壁があります。

 僕としては『スパロボ』はロボットアニメのカタログという側面を持っていると思っています。色々なロボットが登場するので、ユーザーさんがご存じない作品に触れていただくきっかけになると。

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シリーズ最新作『スーパーロボット大戦T』

 ただ、ゲームに登場させられる量には一定の限界がありますし、世代の幅が広がっていくという難しさもあるんです。

 たとえば『機動戦士ガンダムSEED』から入った人にとっての『ゲッターロボ』って、TVアニメ版や漫画版ではなく、OVAの『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』のほうだったりするんですよ。

 だから漫画版の『ゲッターロボ』で有名な、武蔵が死ぬときのゲッター1の胸から、ゲッター炉を手で掴み出すシーン。『トップをねらえ!』では、あそこを踏まえてオマージュをやっているわけですが、元ネタをご存じない方がいらっしゃるわけで。
 ガンバスターの武器はだいたい元ネタがあるんですが、それを教えると驚く若い方も多いです。

──大畑さんは『トップをねらえ!』にも参加されていますよね?

大畑氏:
 はい。ただ、企画自体にはノータッチですけれど。

 ガンバスターのデザイン自体が『ゲッターロボ』へのオマージュなんですよね。

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『トップをねらえ!』
(画像はInternet Archiveによる2009年8月21日の 「GAINAX NET|Works|Animation & Films|トップをねらえ! 」ページアーカイブより)

 庵野監督自身も、漫画版『ゲッターロボ』の直撃世代ですから、きっと「アニメ業界のデザイナー関係で、ダイナミックプロ系の雰囲気でロボットを描けるヤツは誰だ」ということで発注が来たんじゃないかなぁと思っています(笑)。

 『新世紀エヴァンゲリオン』のエヴァンゲリオンも最初はやっぱり、『ゲッター』のイメージがあったそうですし。

 だから『トップをねらえ!』は、「自分が影響を受けたおもしろいものをいっぱい集めて、新しいものを作る」というのがあの作品のコンセプトだったと思います。

 ガンバスターの場合、全6話の作品のうち出ているのは3本だけなのに、今だに覚えていてくださる方が多いんです。人気もあって商品にもなったりしていて、そこはキャラクターとして非常にすごいことだと思いますね。

山野井氏:
 弊社は僕らの世代がメインなので、いわゆる昔のロボットアニメを知っている人はすごく少ないんですよ。

 もちろん『ガンダム』や『エヴァ』、あるいは『勇者』シリーズなどを知っている人間はいますけれど、根っこの部分から知っているわけではなくて。

 そういう時代に、ロボットアニメのよさを改めて知ってもらう作品をやろうと思ったときには、大畑さんみたいな人がうちの会社的に不可欠だと思っていますね。僕らだけじゃできない作品だと。

大畑氏:
 確かに自分の役割はそこなのかな、とは思いますけれど、何の気なしに出したロボットの例が通じなくて困ったりはしますね(笑)。

──『スパロボ』についてもう少し聞かせてください。四半世紀以上も続くタイトルですから、ファンの求めるものであるとか、年齢層の変化もあったのではないかと思うのですが。

寺田氏:
 『スパロボ』は基本的にロボットアニメのお祭りだと思っています。そこは最初から変わっていない部分ですね。本来ならば融合させるのが難しい世界観を、共通点を見つけてなんとかするという形で、「オールスターもの」として仕上げているわけです。

 こういうオールスターものは、もう前からあって、『ウルトラ』シリーズにおける「ウルトラ兄弟大集合」とか、『仮面ライダー』シリーズにおける「ライダー大集合」といったエピソードがそうだったわけです。
 『スパロボ』は「東映まんがまつり」における『マジンガーZ対デビルマン』から始まる劇場版マジンガーシリーズにヒントを得て、それをゲームでやってみた作品なんです。

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 その上で、年齢層の広がりや変化がファンの求めるものを変えている、というか“多様化させている”ところはあると思います。シリーズ当初は基本的に懐かしのロボットアニメを登場させていましたが、途中から放送が終わって間もない作品を出すようになりました。

 ただ、新しめの作品は知っているけれど、古い作品は知らないとか、その逆も起こってくるわけです。その全部に応えられるのが理想でしょうけれど、逆に、もっと各世代に向けていろいろな──たとえば『マジンガー』や『ゲッター』が好きな世代にだけ向けた対象年齢40歳以上の『スパロボ』といったものが、あってもいいのかもしれないとは考えるところです。

 「昭和のスーパーロボットだけを集めました」みたいな(笑)。

大畑氏:
 『スパロボ』にもオリジナルロボット出ていますよね。それでアニメも作られましたが、なぜ子ども向けにしなかったんですか?

寺田氏:
 『スパロボ』のオリジナルロボットを支持して下さるコアユーザー層の平均年齢が高かったからですね。

 あと、『スパロボ』はシミュレーションRPGなので、低年齢層のユーザー向けではなかったということもあります。僕個人としては、低年齢層にも受け入れてもらえるロボットコンテンツを作ってみたいなあと思っていますが。

大畑氏:
 そういう理由だったんですね。たとえば映画『アベンジャーズ』が幅広い世代に観られていますけれど、そこからさらに子ども向けのアニメを作っているんですよね。そういうトータルコーディネートみたいなものができるんじゃないかなぁと期待をしているのですが。

寺田氏:
 おっしゃる通り、ある時期からプリスクール向けでロボットが登場するスーパー戦隊シリーズと、ハイターゲット向けのロボット物の間を埋める作品が少なくなったんですよね。

 以前はそこに『勇者シリーズ』や『エルドランシリーズ』『魔神英雄伝ワタル』のような作品がありました。また、『銀河漂流バイファム』みたいにハードなSF物でありながら、ストーリーは子供達がメインとなっていて大人も楽しめる作品もありました。

 昨今だとそこの隙間にはロボットアニメ以外の人気コンテンツが入っていて、ハイターゲット向けのロボット物へなかなかつながりにくいような気がするんですよね。

 でも、そんな時に『シンカリオン』が出て来て、「接点きた!」と思いました。これで子供達が巨大ロボットへの興味を持続させてくれれば嬉しいなと。

山野井氏:
 僕自身は少し前に『ダンボール戦機』に関わらせてもらったこともあり、「小学生が観るロボットアニメは難しい」という話はよく聞きました。でも僕としては、ちゃんと仕掛けていけばまだまだ全然いける余地はあるのでは、と思っています。

 ただ一方で、プログラミングが可能なロボットが身近で使われるようになっていることを考えると、単純に「乗り込み操縦型」みたいな表現が通じない時代に差し掛かってきているのではないかという感覚もあります。

 今や家庭の中でも、siriとかAlexaに喋って指示を出している時代ですから。

大畑氏:
 昔のロボットで「乗り込み操縦型」のコンセプトがよかったのは、その当時、子どもにとって“自動車が憧れの対象”だったからですよね。

 「自動車を運転したい」という憧れを背景に、自動車をキャラクター化したのがロボットだったわけですから。

 でも、これからAIが普及したら、操縦という概念がなくなって魅力的に見えなくなるかもしれないし、もしかすると、助手席に乗っているアシスタントがロボットだというほうがリアリティを感じられるようになるかもしれない。

山野井氏:
 そうすると、これはまた時代が一周して、乗り込まないほうがリアリティを感じられてウケるときが近づいているのかもしれない。「いけ、鉄人!」と命令するほうがピンとくる人も多いかも。それって『ポケモン』的な考え方で、今やそういう感覚のほうが普通になっているかもですね。

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寺田氏:
 個人的には、逆に世間がそっちに進むのならば、「乗り込み操縦型」にこだわってみたいとも思いますね。乗れないメカに対して、憧れを感じることはできたとしても、それが果たして愛着にまでいくかどうかは、疑問だなと。乗り込むという動作を通じて、視聴者はリアリティを感じることができるのでは、と思います。

山野井氏:
 そのリアリティは確かに必要で、『シンカリオン』はそれが新幹線である、というところにかなり負っているんですよ。

 1/1の手に届く感じがあることで、視聴者にアピールした部分はあると思います。ただ、かといってそれがロボットへの憧れに直結しているかというと、そうも言い切れないかなと。

 でも、ロボットがいなければいいかというと、絶対にそんなことはない。そのあたりの中で、ロボットをどう扱っていくかは難しいテーマではありますね。

大畑氏:
 僕が昨今のメカものを観ていて思うのは、メカが多いなということです。

 確かにビジネス的な理由があるのかもしれないけれど、やはり自分の憧れの対象であるロボットは、まず強い個性を持った1体があることが大事で、むしろ多くの人がそこに執着してくれるような魅せ方、作り方が大事なのだと思っています。

 あと、当たり前のことではあるんですが、ちゃんとドラマにロマンがほしいですね。作品はロボットだけで成立するわけではないので。

山野井氏:
 そうですね。ちゃんとしたドラマでないと結局面白くないわけで、そこをちゃんと作り込まないものは定着しませんからね。

大畑氏:
 狙ったのか偶然かどうか分からないですけど、僕の観点からすると『シンカリオン』はロボットが出てくるホームドラマという趣向の作品なんです。

 親子や友だちの絆を描くという物語の中に、自然にロボットが入っているというあたりが観やすいというか、視聴者が作品に乗りやすいところだという気がします。

 シリーズ前半は、仲間たちとシンカリオンのバリエーションがどんどん増えていく展開ですが、あそこでシンカリオンもキャラクターもしっかりと区別がついていたのは、運転士の少年たちの魅力がそれぞれのシンカリオンのキャラクターになっていたからですね。

 そのあたりがホームドラマ的なロボットアニメという印象につながっています。

寺田氏:
 『シンカリオン』は、そういう地に足がついたところが本当によくて。たとえばロボットアニメって、乗り込むときに天井が開いて、シートが上からガッと降りてきたりしますよね。

でも『シンカリオン』は、運転席の横にある扉から普通に乗り込みますから(笑)。搭乗方法は違いますが、『無敵ロボ トライダーG7』に似た感じがありますね。

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トライダーG7
(画像は無敵ロボ トライダーG7より)

 小学生の主人公がなんでも屋の社長をやっていて、お仕事で出撃することになる。しかも、トライダーは公園の下にある格納庫にしまわれていて、頭部は露出している。付近の住民にとっては身近な存在で、劇中ではリアリティがある感じですね。

大畑氏:
 そして、その上で、本当に送り手側がやらなければいけないは、受け手側が「まさか」と思うものを実現させることだと思います。

 『シンカリオン』も本当に、一本一本いろんな制約がある中で作業をしていますが、毎回「このシーンは子どもの心に残ってほしい」とか「来週の放送までこのインパクトで関心を保たせたい」とか、そういう気持ちでやっています。

山野井氏:
 いま振り返ってみて、『シンカリオン』が地に足着いたロボアニメになったのは、手の届くところにある“実在の新幹線を題材にできたこと”が強く影響したのだと思います。その流れで、いろいろな提案もやりやすい状況があって、『エヴァンゲリオン』にしても『初音ミク』の登場にしても可能になりました。そういう楽しい感じを、しっかりと今後も保っていけたらと思います。

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──本日はありがとうございました。(了)


 ロボットアニメは、視聴者の身近なところにあるテクノロジーと深い関係を持っている。

 具体的にいうと、ロボットは、“擬人化された重機であり自家用車である”という側面がある。そういう意味では、新幹線がシンカリオンとしてキャラクター化されるのも、極めて自然な流れといえる。

 だが一方で、ロボット工学の急激な発達やAIの広がりは、従来の車や列車の類縁としての「ロボット像」を大きく変えることをロボットアニメに迫っている。また、そうした変革の時期にあって、小学生に「ロボットアニメ」が身近な存在ではなくなっているという事実もある。

 このような状況を踏まえると、『シンカリオン』は、「オーソドックスなロボットアニメ」だからこそ「ユニーク」な存在になってしまったというパラドックスが見えてくる。

 しかし、このパラドックスを考えることなしに、ロボットアニメの未来は見えてこない。そしてそのヒントは、本鼎談のあちこちに潜んでいるはずだ。

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS 

シリーズ最新作『スーパーロボット大戦T』2019年3月20日より好評発売中。

対応ハード

・PS4 / Nintendo Switch

 

スーパーロボット大戦T 参戦作品

・無敵ロボ トライダーG7
・聖戦士ダンバイン
・聖戦士ダンバイン New Story of AURA BATTLER Dunbine
・機動戦士Ζガンダム
・機動戦士ガンダムΖΖ
・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン(機体のみ)
・機動戦士クロスボーン・ガンダム
・機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート(機体のみ)
・機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人(機体のみ)
・機動武闘伝Gガンダム
・装甲騎兵ボトムズ
・装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー(機体のみ)
・装甲騎兵ボトムズ ボトムズ ビッグバトル
・勇者特急マイトガイン
・勇者王ガオガイガー
・トップをねらえ!
・機動戦艦 ナデシコ The prince of darkness
・真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日
・劇場版 マジンガーZ / INFINITY
・ガン×ソード
・カウボーイビバップ
・わが青春のアルカディア 無限軌道SSX
・魔法騎士レイアース
・楽園追放 -Expelled form Paradise-

 

©CLAMP・ST/講談社・TMS
©サンライズ
©ジーベック/1998 NADESICO製作委員会
©創通・サンライズ
© 東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ
©永井豪・石川賢/ダイナミック企画
©永井豪/ダイナミック企画・MZ製作委員会
©BANDAIVISUAL・FlyingDog・GAINAX
©松本零士・東急エージェンシー
©1998 永井豪・石川賢/ダイナミック企画・「真ゲッターロボ」製作委員会
© 2005 AIC・チームダンチェスター/ガンソードパートナーズ

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著者
 
アニメ評論家。1968年生まれ。2000年よりフリー。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆中。近著に『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道(仮)』(河出書房新社)がある。そのほかの著書は『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)など。毎月第一金曜日に『アニメの門チャンネル』を配信、毎月第三土曜には朝日カルチャーセンター新宿教室で講座「アニメを読む」を開講している。
編集
『シンカリオン』×『スパロボ』鼎談!改めて考えるロボットアニメの面白さと『シンカリオン』の重要性_044
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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