『パワポケ』という野球ゲーム界の異端児はどのように作られてきたのか? アプリ版『実況パワフルプロ野球』のイベントとして復活する同作について開発メンバーに話を伺ってみた

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『パワポケ8』以降はメジャー路線も盛り込むが…

──『パワポケ8』あたりからは、普通にシナリオを進めるだけだとそこまでダークな展開にならず、彼女候補キャラのシナリオを進めると、急に過去作同様になる構成になったと感じました。これは意識した変化でしょうか。

西川氏:
 たしかに意識はしていた気がしますね。普通にプレイする限りは、ややこしい要素を出さないようにしようと。世界観と歴史は『1』から『14』までつながっているけれど、「前作を知らないとわけがわからない」という意見もあったので、彼女ルートなどで深いところまでいかない限りは、前作とのつながりを見せないつくりにしたと思います。

三浦氏:
 たしかに、そんな感じで作っていたと思います。

──逆に深い部分でのバッドエンドのダークさはアップしましたよね。

西川氏:
 どうでしょうね。僕は、昔のほうが強烈なバッドエンドが多かった記憶があるんですけど。ニンテンドーDSになってからは、そんなひどいシナリオは書いた覚えがないですね。あ、メロンパン【※】は置いときますけど(笑)。

※メロンパン
『パワポケ12』に登場する彼女候補のキャラクター、パカーディ・ハイネのルートのバッドエンドの通称。政敵に捕獲され、脳髄のみを培養液の中で管理され、永久に苦痛を味合わう生き地獄というトラウマ展開が繰り広げられる。脳みそが培養液に浮かぶイラストが、『トリビアの泉』(フジテレビ系)の投稿特典である脳を模したメロンパンに似ていたことが、命名の由来とされている。

──『パワポケ8』からはハードがニンテンドーDSになりましたが、その点でなにか変えたことはありましたか?

西川氏:
 やっぱりニンテンドーDSになったタイミングで、メジャーになって売上を増やしたい気持ちがありました。そしたらちょっとは行儀よくしようかと思うじゃないですか。でも内面からにじみ出るものはごまかせないから、どうしてもダークな要素はあったかもしれませんけど。

萩原氏:
 世の中全般というか、エンタメ業界の空気感もかなり変わってきてたこともありますよね。

──ユーザー側からみればそこまで大きく変わっていなかった気もするので、抑える意識で作っていたことに驚きです(笑)。

西川氏:
 いきなり変えるのは無理なんでしょうね(笑)。昨日までホラー映画を撮っていたのに、今日から急に勧善懲悪モノを撮れっていわれても難しいですから。

──それが作家性なんだと思います。

「タノシイナ♪」が生まれた背景

──反響が大きかったシナリオや思い入れが強い作品などを教えてください。

三浦氏:
 反響の大きいバッドエンドでいえば、「タノシイナ♪」【※】かな。

西川氏三浦氏萩原氏
 やきゅうができてたのしいな。

──ハモリましたね(笑)。

※タノシイナ♪:
『パワポケ7』のバッドエンドのひとつ。主人公たちは花丸高校へ入ってきた助っ人の「ヒーローズ」が悪の秘密結社「ワルクロ団」と組んでいることを知り打破しようとするが、野球の試合に負け失敗。洗脳され、野球を楽しむことしか考えられないようになってしまう。子どもが描いたような野球を楽しむ主人公たちの最後の1枚絵と「しあわせ」という歪んだ文字がプレイヤーたちの心にトラウマを刻んだ。

西川氏:
 なんでああなったんだっけ。「ヒーローだから殺すことはしないだろう」、「それなら記憶を飛ばす?」、「でも記憶を飛ばしたら辻褄が合わない」、「じゃあアホになるんちゃう?」みたいな話だったような。

萩原氏:
 それで洗脳されてしまいました、と。

──シナリオとイラストのインパクトも相まって、シリーズ屈指のトラウマ展開となりましたね。

一同:
 (笑)。

萩原氏:
 よくわからないうちに、みんなの心にトラウマを植え付けてしまったみたいですね。

──作っている段階では、そこまでの反響を予測していなかったと。

萩原氏:
 一切予想してなかったですね。

西川氏:
 いや、ちょっとは思ってましたよ。これはウケるやろうなと。

三浦氏:
 でも、あそこまでの反響とは思ってなかったですよね。

西川氏:
 バッドエンドのひとつの形態だと思っていたくらいで。

木村氏:
 当時のユーザーの僕からすると、ヒーロー戦が難しすぎて全然勝てなかった記憶があります(笑)。野球も強いし、最後のミニゲームもめちゃくちゃ難しい。

西川氏:
 紅白戦はまだ勝てるけど、最後のロボットがきついんよな。

三浦氏:
 最後のミニゲームは練習ができないので、慣れるまでに時間がかかるぶん難しいですかね。

開発チームに宿る「ユーザーを驚かせるイタズラ心」

──『パワポケ』シリーズはサクセスが2種類あることに加え、ミニゲームの種類も豊富で1作につき3〜4本入っていることもあり、制作陣にとってはカロリーが高い仕事だったのではとも思いますが、そのあたりはいかがでしたか?

西川氏:
 そうなっていったきっかけは、『パワポケ2』で戦争編【※】を入れたことですね。たしか僕のアイデアだったと思うんですけど、当時のディレクターがホワイトボードに日本兵姿の凡田君【※】の絵を描いて全員に大ウケだったから、「決定!」となったんです。

 それが成功して、表サクセスに対する裏サクセスをつくるのが恒例になっていった。野球に収束せざるを得ない表に比べて、裏はいろいろ好きなことができるので、みんなノリノリで作っていた気がしますね。しんどいけど、やりがいはありました。

※戦争編
 『パワポケ2』の裏サクセス。野球の試合も練習もない、野球要素ゼロの裏サクセスの走り。主人公が第二次世界大戦の世界にタイムスリップして、補給部隊員としてさまざまな戦場に送られる。実際の出来事がモチーフになったイベントも多い。
大本営は比較的安全だがたまにゲリラの襲撃をうける「北方戦線」、交戦の確率が高い「西方戦線」、危険な任務が多くマラリアや赤痢など病気にかかる可能性が高い「南方戦線」、ある条件を満たすと登場する「呪い島」の計5箇所を行き来して、生き延びるのが目的。パラメータは「体力」と「ツキ」の2種類で、それぞれ生存確率に影響。任務の種類によって筋力などがアップし、41週以上生存すると大本営での「帰還」が可能になり、選手登録が可能。
西川氏は『パワプロクンポケット1・2公式ガイドコンプリートエディション』にて、「映画か何かを見て腹立ったことがあるんです。取ってつけたように戦争はいけませんよ、というような教訓話で。『戦争はそんなもんちゃうやろ! よし、俺が戦争のツラさを教えちゃる!』」と語っている。

※凡田君
凡田大介(ぼんだ・だいすけ)。『パワポケ2』に初登場。『パワプロ』シリーズおなじみの、メガネ一族。主人公と同期でドリルモグラーズに入団。貧乏生活でお昼ごはん代を削ってでもおもちゃを買うマニアなキャラクター。

三浦氏: 
 タイトルは野球だけど、それ以外のことが何でもできるので、めちゃくちゃ楽しく仕事をしてた記憶があります。個人的には、ミニゲーム『ハコdeグチャッ』【※】が『5』と『13』で2回実装されて、反響があったのが印象に残ってます。アクション、パズル、レース、シューティング、RPG……と自分のアイデアをどんどんゲームに入れられるので。

 毎年3本から4本はミニゲームがあったので、ネタを出すのが大変でした。ぱっと思いつくときはぱっと出て、実装もできたんですが。作ってみて、どうしても面白くならないってときは困ったな。

※『ハコdeグチャッ』
『5』『13』で登場した、落ちものパズルゲーム。主人公を操って、上からオチてくる色付きのブロックを壊したり、動かしたりして3つ並べるとブロックが消える。落下したブロックに潰されるか、ブロックが画面上部まで積み上がると失敗。

──特に困った例は?

三浦氏:
 なんだろう。ぞうきんがけレース(『10』のミニゲーム「ぞぞぞぞうきん」)かな。やってもやっても面白くならなくて、どうしようかなと。結局、面白く仕上げることが出来なくて、「すみません面白くなりません」って当時のディレクターに謝りました(笑)。(笑)。

萩原氏:
 私が印象に残ってるのは、けっこう好きなゴキブリのミニゲーム【※】。ちびっこたちにトラウマを植え付けたみたいで。

※ゴキブリのミニゲーム
 『6』の「ゴキビューン」。縦スクロールのシューティングゲーム。レーザーと通常弾の打ち分けが可能な殺虫剤を使ってゴキブリを倒していくとパワーアップアイテムや点数アイテムが手に入る。ゴキブリのサイズは3種類で、ボスは画面におさまらないほどの大きさ。ゴキブリが苦手な人にとっては、強い嫌悪感もあるゲームで、難易度は高くレベル4では並のシューティングゲームとは比べ物にならない高難易度。

一同:
 (笑)。

西川氏:
 ゴキブリが潰れた絵は芸術的やったな(笑)。

三浦氏:
 僕はゴキブリを見たことがなかったから抵抗なく実装したけど、嫌いな人は嫌だっただろうな(笑)。

萩原氏:
 別に本物のゴキブリが好きなわけじゃないので、実際に遭遇したら最悪ですよ! イラストもイメージで描いてたけど、やっぱり普通な展開だと面白くないので、みんながびっくりするだろうなって思いながらつくってました。

西川氏:
 本編でも、このゲームに行く導入が強引やったからね。プレイしたユーザーがしばらく口をぽかーんとしてほしいなと思って、ああなった。

 『3』でも、「なんじゃこりゃ、サイボーグになってるやんけ!」、魔神を出してみたら「願い事を叶えてくれるんじゃなくて、こっちにやらせるんかい!」と、毎回ユーザーを唖然とさせたいイタズラ心を持ってました。

萩原氏:
 みんなでわいわい言いながらミニゲームをつくるの、楽しかったですよね。

西川氏:
 アホなアイデアを出しまくって、それが採用されるもんね。

萩原氏:
 子どもはこれが好きだろうと考えてつくってたので、バラエティに富んだものがどんどん生まれていったという。汚い話ですけど、『パワポケ6』では肥溜め【※】が……。あれも狂ったミーティングでしたよね。

※肥溜め:
 ミニゲーム「走って走ってうんダバダー!」。縦スクロールのレースゲーム風のシステム。お腹を壊した主人公がダッシュでトイレを探し、制限時間内にトイレに駆け込むゲーム。障害物として鳥のフンや肥溜めなどが登場する。

西川氏:
 ああ、あった、あった。もとはレースゲームで、落とし穴を肥溜めにしたらどうやという発想で。何回も入ってしまううちに、主人公がどうでもよくなって、動きが速くなっていくっていう発想が笑ったな(笑)。

木村氏:
 今回、あれをアプリでも入れたいって人もいましたよ(笑)。

──ミニゲームは単体で発売されても人気が出るのでは……? と思うレベルのゲームもあり、スマホアプリがあればぜひ買いたいと思うものも少なくないです。

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