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『ドラクエ』堀井雄二から受け継いだゲームデザイナーの血筋と物語体験 ― 同時に1万人が参加したミステリーARG『Project:;COLD』の舞台裏

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プロジェクトを振り返ってみて

『ドラクエ』堀井雄二から受け継いだゲームデザイナーの血筋と物語体験 ― 同時に1万人が参加したミステリーARG『Project:;COLD』の舞台裏_018

平氏:
 ここからは『Project:;COLD』を実際に終えてみての素直な感想とか振り返りをしていければと思います。

藤澤氏:
 そうですね。むしろそこが今回のインタビューのメインですよね。

平氏:
 まずは、最初はどのくらいの人が見てくれるんだろう、ということすら分からなかったものが、結果的には結構な方が見てくれた中で終われたということが、ひとつありますよね。

藤澤氏:
 そうですね。本当にありがたいです。

 今だから言える話ですけど、当初、今回でいう「都まんじゅう」のメンバーは11人の予定だったんです。それが8人になり、それでも厳しいからと7人になり……。で、プロットもほとんど仕上がり切った段階で、結局6人になってしまった。

平氏:
 (苦笑)。

藤澤氏:
 すべて終わったから言えることですが、最後の一人をシナリオから削除する時はなかなかつらかったですね。

 あと話数も今と全然違っていて。一番最初の企画書には36話って書いていましたからね(笑)。正直、36話っていうのは大げさでしたけど、どんなに短くなっても最低12話は必要だと思っていたんですよ。

『ドラクエ』堀井雄二から受け継いだゲームデザイナーの血筋と物語体験 ― 同時に1万人が参加したミステリーARG『Project:;COLD』の舞台裏_019

 ところが、いろいろな都合で8話分しか作れませんとなって。ミステリーって複雑に絡み合ったロジックでできている世界じゃないですか。その世界を縮小するっていうのはなかなかしんどくて(苦笑)。だから1話減るごとに頭から考え直しで……。

 まあ開発初期にはそういう辛さもあったんですが、結果的に多くの人見てもらえて、反省点も沢山ありますけど、楽しんでもらえてよかったなと思っています。

平氏:
 そうですね。

 あ、反省の話したいですね。

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藤澤氏:
 しましょう。今回ね、本当にこう……「ここがダメだったな」という点が自分の中で結構明確なんですよ。

 今まで僕は、「ドラクエ」最新作を携帯ゲーム機でやるとかオンライン化するとか、常に誰もやったことがない挑戦をしてきた人間なので、“前例のないことを成立させること”が自分の能力だと自負していたんですよ。『予言者育成学園』も相当不思議なゲームでしたが、それも成立させられたわけですし。

 なので、“荒唐無稽な妄想を現実化する”ということについては、一定の自信は持っていたんですね。

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平氏:
 『Project:;COLD』も「荒唐無稽な妄想を現実化する」プロジェクトですよね。

藤澤氏:
 そう。だから今回も絶対にできるはずだという確信を持って始めたんですよ。

 ところが、今回描きたい世界観や物語の中に“適切に謎を仕込んでいく“ということが、上手にできなかったんですね。

 僕には物語を作ることはできても謎を作ることはできないので、謎作りは別の人――きだ(さおり)さんと眞形(隆之)さんにお任せしたいと決めていました。

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『Project:;COLD』で使われた謎解き

 これは完全に僕の落ち度なんですが、二人にうまく依頼ができず、「ここに謎が必要なんで考えてください」とオーダーに答えてもらう形にしてしまった。それ故、物語と謎解きが渾然一体とした作品に仕上げることができなかった。

 今思えば、「この世界観の作品ならこういう謎を入れていくべきだ」と考えられる謎の責任者がチーム内にいて、その人の主導の元に世界観と謎をなじませていく、ということをやるべきだった。そこをうまくリードできなかったことが、今回の大きな反省点です。

平氏:
 うんうん。

藤澤氏:
 もし次回作をやるなら、きださんや眞形さんの才能をもっと引き出せる環境を構築することが肝心だと思っています。

平氏:
 体制も含めて謎解きに関しては反省点が多かったですよね。

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藤澤氏:
 はい。そういう意味でも、期待に応えられなかったという自覚はあって。

 難易度に関しても、どこまで難しくするのか、どこまで見つけやすくするのかの調整も非常に難しかった。気付かれやすくしてしまえば瞬時に解かれてしまうし、エンディングに仕込んだ謎のように、難易度がある一線を越えてしまうと完全に誰にも気付かれなくなってしまう。

平氏:
 そうですね。僕的には100個中90個くらいはすぐに解かれて、残りの10個はなかなか解けないというバランスが良かったのかなと思っています。

藤澤氏:
 そう思います。そのためにももっと沢山謎を仕込んでおくべきでした。ただ、いまでこそそう思いますけど、作っている最中は数も難易度も手探りだったので、これ本当に解けるのかなあとか不安になったりして(笑)。

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参考資料。多くの謎が凄い勢いで解かれていった

平氏:
 少なくとも最初の1ヶ月間(2020年11月)は相当賭けでしたよね。ようは、誰も謎解きだと認識してない中で、モールス信号という謎が仕込まれていて、それ解いてもらわないといけない。でもプロモーションは使えませんという……凄い縛りプレイでしたから。よくやったなと思います。

藤澤氏:
 しかもあのころは、当然キャラクターデザインや映像の素晴らしさもあったけど、他のコンテンツの差別化という意味では、モールス信号があることしか売りがなかったわけですからね。

【補足裏話】

 詳しくは後述するのだが、大々的にプロモーションできない事情により、事件が始まるまでは、キャラクターデザインを担当した望月けい氏と、映像監督を担当した川サキケンジ氏以外の参加クリエイターは伏せておこうという方針だった。

 そのため佐久間ヒカリたちを宣伝する方法は、望月氏と川サキ氏にTwitterで紹介してもらうことしかなく、両名のクリエイティブと拡散力に完全に頼ることになっていた。

 自らどういうコンテンツであるかを説明できない状況で、一定の反響を得られたのは、両名のクリエイターが尽力してくれたおかげである。

 そんな状況の中、話題性や差別化という意味で唯一仕込めたのが、モールス信号を用いたノイズであった。

運営スタッフ

平氏:
 まあそんなモールス信号も最初はなかったんですけど……。

藤澤氏:
 モールス信号も自己紹介動画も「みやまんラジオ」も最初は作る予定なかったですね。

一同:
 (笑)。

藤澤氏:
 もう本当に最初の頃はギリギリ成立していた感じですよね(苦笑)。

平氏:
 ほんとギリギリ。ギリギリなんとか足りたって感じで、どれか1個足りなくてもガス欠で止まっていた気がしますね。

介入性の難しさと反省

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藤澤氏:
 その他の反省点としては、自分がディレクターをやっていると、やっぱり自分の得意な方に作品を引っ張ってしまうんですよ。そうすると、自分は物語だったら書けるので、どんどん物語の方に強くリードしてしまって、結果的に参加者の介入性が損なわれてしまったのかなと。

平氏:
 では介入性についても振り返ってみましょうか。ただ、『Project:;COLD』の話に行く前に、まずは体験性を伴う物語みたいなことの話をちょっとしたくて。

 「ドラクエ」でいうと、どっちを選んでも同じ結論になるんだけど、選択肢が出てくるシチュエーションとかあるじゃないですか。そういうストーリー的には一本道のものであっても、選択肢が出てきて、ユーザーに問いかけてくるということが、どういう意味をもたらすのかとか、あるいはどういう手応えなのか、みたいな話から『Project:;COLD』の介入性についてつなげていきたいなと思います。

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藤澤氏:
 「ドラクエ」に限らず、昔からよくある手法ですよね。例えば、どっちを選んでも変わらないギャグみたいな選択肢を入れて、プレイヤーをちょっとクスッとさせる、みたいな。ただ、これの意味としては、自分がこの物語に自分の手で触れた、という手応えを与えるためだと思っています。

平氏:
 『Project:;COLD』でもそういう場面というか、手法としての演出はいくつかありましたよね。例えば、キャラクターのツイートをRTやいいねをすること自体は、必ずしもすべてが物語に直接影響を及ばす行為ではないんだけど、無意味でもないというか。

藤澤氏:
 そうですね。

平氏:
 やっぱりそこには手応えや感情移入を伴っていたはずで。いいねを返してもらうだけでも、物語に触れた、キャラクターに触れた感じって出ると思うんですよね。

藤澤氏:
 はい。今回の反省点の一つとして、もっと介入性や任意性を持たせたり、その方法を分かりやすくすべきだったと思います。

 もともとそういう欲求は強いだろうと予測はしていたんですが、実際にやってみて、ああ、これほど参加者の欲求は強いのかと。なので、もしも次回作の機会があれば、もっと参加した甲斐があったと思える立て付けにしたいと思っています。

平氏:
 自分たちの行動によって物語がゴロっと動いたよね、という感覚を味合わせられなかったのは、ひとつの反省点でしたね。

 一方で、物語に触れる感覚は表現できていましたよね。3カ月の出来事を3カ月丸々一緒に体験する、事件を追っていう。

藤澤氏:
 そうかもしれないですね。

平氏:
 それって自分の手で触れていたわけじゃないですか。そこは凄くよかったなと思っていて。だって、どんな感動的な映画だろうが漫画だろうが、物語に自分の手で触れることはできない。そこは“ゲーム的な手法”だからこそなわけですよね。

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藤澤氏:
 いわゆる第四の壁の向こうにあるから、アニメや映画では手で触れることはできないけど、今回は自分の手で触れる物語。第四の壁がない物語っていうことが、うまく機能した部分なのかもしれないですね。

平氏:
 それこそが、キャラクターのツイートをRT・いいねしたり、リプライする意味というか、何気なくそういう行動をしてしまう理由だと思うんですよ。

藤澤氏:
 そういう意味では、多くの方がこの物語を自分事化してくれましたよね。それ故に、どんどん少女たちが事件に巻き込まれていき、「結局救えないじゃん」というストレスとなった反省点にも繋がるわけですが。

平氏:
 分岐に関していうと、バッドエンドを設けるのかどうかという議論もしましたよね。今回、ダイジェストされていない物語を3カ月というスパンの長さで展開するにあたって、誰かが助からないというバッドエンドがあってもいいのかという。

藤澤氏:
 バットエンドはダメというのは、自分が強く主張した部分ですね。ただ、グッドエンドの形がいつくかあって、どのエンドになるかはユーザーの介入によって変わっていく、という見せ方ならできたのかなとは思っていますが。

平氏:
 ちょっと語弊があるかもしれませんが、藤澤さんはバッドエンドを嫌うクリエイターですよね。

藤澤氏:
 うーん……。まあ、特に今回の『Project:;COLD』については、“ちゃんとした物語として終わらせる”ということが、最初から決めていた目標でもあったので、特にこだわっていた部分だったとは思います。

 もちろん、不条理な結末の物語も世の中にはたくさんありますが、今回の企画は構造上、“多くの人が長時間付き合ってくれる”というかたちになるので、それを、全滅しちゃって「はい残念」みたいな嫌な終わり方にしたくなかったという感覚が強いですね。

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平氏:
 難しい話ですね。僕からすると、そこはある程度の流派があるかなと思っていて。

藤澤氏:
 わかりますよ。不条理を売りにしている作品もありますからね。

平氏:
 そうそう。クリエイティブなものを作る人の目的のひとつって、やっぱ“感情を動かすこと”じゃないですか。そう考えると、不条理な物語も手法としては間違っていなくて。

藤澤氏:
 そうですね。

平氏:
 まあそれもバーゲンセールになると驚きもへったくれもなくなってしまうんですが。

藤澤氏:
 「不条理もの」っていうジャンルがあるくらいですからね。

Twitterで会話劇を展開するとは

平氏:
 振り返りでいうと、Twitterの会話劇も紆余曲折がありましたよね。僕自身、そこに関しては藤澤さんと特にやり取りをした印象があります。藤澤さんは、もっと軽いものを想定されていましたよね。

藤澤氏:
 そうそう。

平氏:
 でも、こここそがお客さんが物語&キャラクターに触れる箇所なんだから、ここがちゃんとしてないと駄目なのでは?と突っ込んだんですよね。その結果、作業量がガーンと増えたと思うんですけど(苦笑)。

藤澤氏:
 うん。物量はそうですね。ただ、Twitterを使うことは最初から決めていたんですけど、あそこまでしっかりやるつもりはなかったんですよ。

 Twitterでキャラクターとやり取りするというのはあくまでもUX・UIの話であって、そこでファンが増やしていくとか交流してもらうという意識は本当になかったですね。

平氏:
 一応、このプロジェクトにおける僕のスタンスとしては、僕がやりたいことを作品に盛り込むことは基本していなくて、まずは藤澤さんのやりたいことを聞いて、それがユーザーさんに届くか届かないかみたいな視点でずっと見ていたんですよね。

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藤澤氏:
 はい。足りないところを補完してくれたのは、ありがたかったですよ。

 だけど、最終話の配信が終わって、その翌日のツイートに対してみんなが予想以上に喜んでくれてるのを見て、ああ、SNSミステリーって言っていたけれども、これはちゃんと“キャラクターをファンが応援している”構図のコンテンツになっているんだ、というのを昨日(最終話が配信された3日後)とても実感したんですよ。

 それってたぶん、僕が当初“やろうとしてたこと”ではないんですね。でもこれは悪い意味ではなくて、むしろ自分の発想になかったものを、周りの人が考えて埋めてくれて『Project:;COLD』という作品になったんだと思っています。

平氏:
 最初、藤澤さんは、事件前のキャラへの感情移入はいらないと言っていましたもんね。でも僕からしたら、事件が起こる前にキャラクターに感情移入させないと、彼女たちを救いたいとは思わないだろうと。

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藤澤氏: なんで僕がそう言っていたのかというと、探偵は被害者に感情移入しないじゃないですか。あくまでも、起こった事件という単位で見て、考察をしているだけであって。

 だからプレイヤーは探偵の視点になると思っていて、「こういう事件が起こったけどみんなどうする?」という問いかけのつもりだったんですよ。
 だから、殊更キャラを強調する必要はないと考えていた。

平氏:
 SCRAPさんのリアル脱出ゲームやマーダーミステリーはそういう感じですよね。これは謎解きです、殺人事件です、だから解いてくださいと。最初のお題設定がちゃんとした上で、ドーンって始まれば、おっしゃるとおりかなとは思います。

藤澤氏:
 今回、そのお題設定をすることが難しかったので、結果的に今の形になって、効果的だったと思う一方で、事件前のエピソードはなくても成立しただろうというのは今でも思っています。

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平氏:
 やっぱりお題設定は難しい課題でしたよね。

藤澤氏:
 先ほどの分岐の話もそうですけど、「これ、結局どういうコンテンツなの?」「どう楽しむの?」「どこまで物語に介入できて、どこまで変えられるの?」といったことを説明することが極端に難しい取組だったじゃないですか。

 もちろん一番親切で分かりやすいのは「こういうものですよ」と説明してしまうことなんですが、それをするとシラけてしまう。

 だから、そのどこを取るべきだったのかっていうことは、いまもって正解は分かっていないんです。

平氏:
 そうですね。

【補足裏話】


 『Project:;COLD』をどうプロモーションしていくのか、という議論は佐久間ヒカリが活動を開始する直前まで続いた。これが普通のゲームやアニメならば、事件が始まる前に公式サイトやPVを公開し、プレスリリースをメディアに配布し、参加クリエイターにSNSで告知を依頼する。

 しかし、佐久間ヒカリの活動開始と同時に「これは未解決事件を解決するコンテンツで、登場キャラクターは次々に死んでいきます!ぜひ助けてあげてください!」と打ち出してしまうと、興ざめもいいところだ。

 それだけではなく、そういったメタな情報は没入感を阻害し、作り物感が出てしまう。チームとしては、佐久間ヒカリたちを「私たちと同じ世界に生き、私たちと同じ時を生きている一人の少女」として描きたかったため、どこまでそういった情報を出すかも慎重に話し合いが行われた。

 そこで決まったのが、メジャー感やエンタメ感はできるだけ出さず、誰かに見つれもらって、話題にしてもらえるようなインディー感のあるコンテンツにしよう、という方針だった。大々的なプロモーションはできないが、誰かに見つけてもらえた時の爆発力に期待したのだ。

 しかし、2020年10月、突如この方針の見直す出来事が発生。その結果、「ある程度はちゃんとプロモーションもしよう」となり、今の形に落ち着いていくこととなる。

運営スタッフ

藤澤氏:
 ひとつ言えることは、もう同じ手は二度と使えないということですね。どういうものなのかが分からない、モキュメンタリーであることを言わない、という始め方って最初の1回しかできないことであって。その意味では、今回のやり方は、初手としては間違っていなかったんじゃないかと思っています。

 次回作をやることができるならば、そのときはある程度「こういう立て付けである」っていう了解がある中でスタートするはずなので、もっとスッと入れて、変なストレスを負わずにできるかなと思っていて。

 なによりそういう立て付けであるならば、介入性というか、物語に変化を与えることに対して、僕ら作り手側がこう……懐が深く作れるというか。もっと大胆なものづくりができるんじゃないかなという気はしています。

Discordの反響は想定外だった

『ドラクエ』堀井雄二から受け継いだゲームデザイナーの血筋と物語体験 ― 同時に1万人が参加したミステリーARG『Project:;COLD』の舞台裏_032

平氏:
 反響のあり方についてもお話できればと思います。今回、プロジェクトとしてのKPIが何かというと、反響がKPIですと。そしてその反響が具体的に何かというと、主にTwitterやYoutubeだったわけじゃないですか。

 ところが、ここ2年くらいでDiscordというものが流行って、その結果、我々が想定していたような反響の形ではなかったというのがありますよね。

藤澤氏:
 少なくとも最初の企画書を書いた2017年には想定していなかったですね。

平氏:
 まだ日本では流行っていなかったですよね。

藤澤氏:
 うーん。あまり詳しくないんですが、今ほどの認知はなかったように思いますね。

平氏:
 なので、Discordがあそこまで盛り上がったのは想定外で、その影響でTwitter上の発言が減っていたという見方もできるんですが、僕的にはむしろDiscordがあったからこそ、強固なコミュニティが出来上がって、熱量が伴ったのかなとも思っています。

SNSミステリー『Project:;COLD』有志による考察Discordの熱量にやられた ― 参加者は1400人を超え、1日に1万件書き込まれる日も

藤澤氏:
 うん。

平氏:
 それは間違いないと思うので。

藤澤氏:
 僕らは『Project:;COLD』を作っているときに、よく『電車男』の話をしていて。たぶん、リアルタイムで電車男のスレッドにいた人の数って、1000人とか2000人とか……いや、もっと少ない人たちだったと思うんですけど、熱が高かったから、のちに伝播して話題になっていったんですね。

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電車男(画像はAmazon | 電車男 DVD-BOX -TVドラマより)

 だから、Discordの熱から伝播して広がった部分というのはあるんだろうなとは思っています。

平氏:
 ただ、問題というか、うまくいかなかったなと思うのは、Discordで行われたこととか、Discordで起きたこと、Discordの熱気っていうものを外に伝える手法が伴わなかったということですね。

 これが『電車男』や『ひぐらしのなく頃に』が流行った頃であれば、まず2chで盛り上がって、それが簡易的な形としてまとめサイトに記事が載り、外に外に伝播していく構造があったんですが、Discordや今のネット空間にはそういうものがなかった。

 ここはユーザーさんが悪いとかではなく、構造として上手くいかなかったなと思っていて、次の取り組みがもしあるのなら、何かそこを繋ぐというか、変換するものを考えたいですね。

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