近頃、YouTubeでいわゆる「案件動画」をよく目にするようになった。企業が広告案件としてYouTuberやVTuberといったクリエイターに自社のゲームや商品を動画で紹介してもらう、というものだ。
ネットでの広告宣伝は時代とともに変化してきたが、最近ではこうした「インフルエンサーマーケティング」と呼ばれる形式がもはや主流となってきている。
ところで、こうした「案件」のなかには「面白いものもあれば、つまらないものもある」というのは動かしがたい事実だろう。
「ついに案件来たね!おめでとう!」とファンからもクリエイターからも喜ばれるパターンもあれば、ファンから見向きもされないどころか、クリエイター自身も苦しそうに紹介しているパターンもある。
どうして同じ広告案件なのに、「面白いもの」と「つまらないもの」の差がここまで出てしまうのだろうか。
「良い案件」と「良くない案件」の違いは何なのだろう?
あるいは、「効果がある案件動画」と「効果がない案件動画」の違いはどうして生まれるのだろう?
この問いは、こうした案件動画を視聴している読者のみならず、広告を発注する企業側としてもぜひ抑えておきたいポイントだろう。
そこで、今回電ファミでは「VTuberを起用したインフルエンサーマーケティング」に特化したマーケッター、The Swampman株式会社の横田雄士氏にお話を伺ってみた。
横田氏は、最近では大手VTuberグループ「にじさんじ」とのコラボ企画を実施することで、自身も制作に関わるスマホゲーム『ポーカーチェイス』を大逆転復活させた実績を持つ人物だ。
リリースからわずか2ヶ月でサービス終了寸前の状況まで追い込まれたゲームにもかかわらず、コラボ効果により一時はAppStoreの売上ランキング8位まで浮上し、その後も月間ユーザー数は継続的に推移しているというのだから驚きである。
ただ、もちろんこれは「いま人気のにじさんじを起用したから成功した」──という単純な理由で終わる話ではない。
先に述べたように、世の中には「面白くて広告効果がある案件」がある一方で、「つまらなくて広告効果もない案件」もある。そしておそらく、「いま人気のVTuberを使えば注目が集まるだろう」というような、言ってしまえば“雑”な使い方で効果が見込めるほど、ユーザーは甘くないはずだ。
では、なぜ横田氏が仕掛けた「にじさんじ」コラボは成功を収めることができたのだろうか。
そこには、YouTuberやVTuberといった「インフルエンサー」──まったく新しい特性をもつクリエイターたちとともに取り組む、現代のネットならではの工夫や考え方があった。
YouTuberの再生数は企画に左右されるが、VTuberの動画はファンが必ず見てくれる
──インフルエンサーマーケティングって、たとえばゲームをプレイしてもらう、みたいなものに関しても、そこに共感性があるかどうかで、自分もやってみようと思えるかどうかが、だいぶ変わってくると思うんですよ。
昔のマスマーケティング──たとえば「芸能人が商品を紹介する」みたいな形式って「100万人が見て0.1パーセントが買うかもね」という低確率性でやっていたわけじゃないですか。
でもインフルエンサーマーケティングの場合は、ヒカキンさんがスゴイから再生数や登録数みたいなわかりやすい母数が取りざたされがちだけど、じつは母数よりもコンバージョン【※】を強くする方向のほうが、たぶん幸せだろうなと感じていて。
※コンバージョン
「変換」「転換」を意味する英単語だが、Webマーケティングではサイトの来訪者が顧客に変わること、つまり広告の「成果」をどのぐらい達成したかを表す指標を意味する。
横田氏:
そうですね。今日お話ししたかった主題がまさにそこなんです。インフルエンサーマーケティングって、たぶん今の主流はYouTubeを使ったものがメインストリームで、他にもTikTokやInstagramなんかも含めていろいろあると思うんですけど、ことゲームに関してはYouTubeを使ったものが絶対的に多いと思うんですよね。
その中で、いわゆるYouTuberと呼ばれる人たちとVTuberって、じつは大きく違うんですよ。似て非なるもので。そこからまずお話ししますね。
──YouTuberとVTuberの違い、ですか。
横田氏:
見てくれの話ではなくて、「コンテンツの消費のされ方」が最も大きく異なると思っているんです。彼らが生み出す1本の動画や配信がどのように視聴されるか、そしてそれを見る視聴者側の態度もそもそも違うんですね。
まずYouTuberの場合は、ヒカキンさんなら「ヒカキンさんが動画を上げたら毎回見る」というファンがもちろんいます。でもYouTuberのバズったり伸びたりした動画の再生数って、そういうふうに「固定ファンが見てくれる再生数」によるものじゃないんですよ。
なぜそうなるかというと、YouTuberの動画が話題になる場合って「検索だとか関連動画のところでたまたま出てきたものを適当に眺めていて、何か気になるからクリックして動画を見た」という形がほとんどだからなんです。
だから同じYouTuberが動画をアップしていても、こっちの動画は100万再生、こっちは50万再生、こっちは15万再生、みたいなグラデーションが存在している。そこに何の差があるのかというと、「誰々とコラボした」みたいな企画の差だったり。そういったものって見られやすいじゃないですか。
なので、ファンが作っている数字はベースとしてはありつつも、でもやっぱりYouTuberの動画ですごく価値があるとされているものって、すごくバズったり、関連動画でめっちゃ出てくるようになったりしたものになっているんです。
──その視聴のされ方は、なんとなく分かります。
横田氏:
一方でVTuberの場合は、ほとんどの数字をファンが作るんですよ。つまりその人が発信するものであれば、数字のブレがあまりないんです。
VTuberって生配信が主体なので、いわゆる同時接続数の多寡によって、その後のアーカイブの視聴数も変わってくるんです。たくさん同接(同時接続数)の集まった企画をやればアーカイブの再生数も伸びる、みたいなこともあるんですけど。でも基本にあるのは、ファンが作っている数字なんです。
たとえば同接を2000人集められるVTuberさんがいたとして、アーカイブの再生数って常に、だいたい3万から4万ぐらいなんですよ。ここからほぼブレない。
あるいは何かすごい企画をやって、2万人同接がきましたと。そうしたらアーカイブは、だいたい……っていってもちょっと幅があるんですけど、20万〜40万再生ぐらいになるんですよ。
要は、「配信のアーカイブは同接の10倍から20倍伸びる」という基本構造があって。
逆に言うとVTuberは、よほど同接を集められる企画をやらない限り、数字が変わらない。
つまり、YouTuberとVTuberというのは、数字の作られ方が似て非なるものなんです。
となると、YouTuberに向けた広告の企画というのは、ただ「ゲームをやってください」というのではなくて、その人自身が持っている趣味嗜好とか文脈みたいなものに、YouTubeの動画としての企画がちゃんと掛け算されていないと、そもそも見られないという構造になっているんです。
──つまりYouTuberの場合は「どんなに人気のある人でも、動画として面白い企画になっていないと見られない」ということですね。
横田氏:
そうですね。一方でVTuberにお願いする場合は、ある程度ファンが見てくれるんです。……でもここにある種、罠があって。いくらファンでも、興味のないものは見ないんですよ。
よくあるケースで、ふだんの配信ではコンスタントに5000人来てくれます。アーカイブの再生数だとだいたい5万〜10万のVTuberさんがいたとして。その人がぜんぜん興味のない、文脈も何もないゲームを、ただ「紹介してください。実況してください」とお願いしたとします。
すると何が起きるかというと、ふだんは5000人ある同時接続数が、1000人を切ったりするんですよ。その結果、アーカイブの再生数は2万いったら良いほう、みたいな。
──うわぁ。
横田氏:
これって誰もハッピーにならないじゃないですか。
ファンからしたら興味のないものを見せられて……というか、そもそも見に行かない。やってる本人も「調子悪いな、今日は」みたいになるし。クライアントとしても意味ないし、みたいな。
──その場合って、ファンのみなさんが“案件臭”みたいなものを感じ取っているから見ないんでしょうかね?
横田氏:
じつは、そこがけっこう重要なポイントなんです。VTuberのファン層って「案件だからイヤだ」じゃないんですよ。逆に、「案件だから嬉しい」もあるんです。
要は自分の推しているVTuberが、常日頃からコレが好きだ、アレが好きだって言っていて、「そのお仕事が来ました」となったら、案件はむしろ良いことなんですよ。
ファンからすれば「ついに案件が取れたね!おめでとう!」となるんです。
──なるほど、「公式に認められた」という構図ですね。
横田氏:
そうなんです。だから仕事をお願いする側もそれをちゃんと理解した上で、リスペクトを持って企画を立てて「こういうことをやってください」とお願いしなきゃいけないと思うし。
そうなると本人たちもやる気が出て、すごく良い配信をしてくれるんです。それで結果的にファンも喜んでくれるし、数字もつくし、みたいな。これが一個の理想型なんですね。
そうじゃない話は、逆に案件臭がデメリットになるんです。「なんでこのゲームやるんだろう? ……あぁ案件か、じゃあ見ねぇわ」みたいな。
そのVTuberさんが絶対に好きにならないようなゲームなら、むしろやらないほうがいい
横田氏:
僕は「VTuberを使って何かやりたい」というご相談をよくいただくんですけど、けっこうな割合でお断りすることが多くて。
いちばん多い理由としては、「あなたたちのゲームを、その子は絶対に好きにならないから、やめましょう」というパターンですね。なぜなら、それが先ほども申し上げたように誰もハッピーにならないパターンだからです。
──そのVTuberさんがそもそも好きなジャンルだとか、好きになりそうなゲームじゃないといけないわけですか?
横田氏:
そうです。「そうじゃないと、むしろやらないほうが良い」とまで言っていいと思います。
だから僕は、VTuberに限らずインフルエンサーにゲームの宣伝とかをお願いする場合、第一優先に置いているのは「その人が題材を好きになってくれそうかどうか」ということだけなんですよ。まずそこがクリアできていないと、お仕事をお願いする意味もないと思っているし、本人もやりにくいだろうし、というのがあるので。
まず好きになってもらえそうな要素があるかどうか。その要素があれば、好きになってもらえるような企画とか宣伝の仕方を組み立てるんですね。
それで結果的に「このゲーム、お仕事でやってみたけど、めっちゃ面白いわ。個人でもやろう」となってくれるかどうかがいちばん大事だと思うんです。そこってあんまり表面的に出てくる部分ではないんですけど、そこを重視していくとなんていうか、配信のノリが違うんですよ。質が違うというか。
──今言われたような選別作業を、VTuberの事務所がするのは非常によく分かるんです。だけど横田さんは、広告代理店の立場でそれをやっているんですよね? 企画をそのVTuberに持ち込む段階で、あらかじめ絞り込んだ状態で提案すると?
横田氏:
そのとおりです。でもこれって事務所さんとかじゃなくて、むしろ僕みたいな向き合い方の人間じゃないと無理だと思っていて。というのも、題材となるコンテンツの内容を知らないと、適切な判断ができないじゃないですか。
僕の場合、扱うゲームアプリはベータテストの段階から遊ばせてもらって、それこそ10時間、20時間と遊んで「なるほど、こういうゲームなのか」と理解した上で、企画を立ててお願いしているんです。だから逆に言うと、自分が理解できないものは基本的にお願いはしないですね。
──なるほど。でも「お金を払ってまで、何か施策をやってほしい」とお願いが来るのって、面白さが伝わりづらいとか、何か理由がある場合じゃないですか。ゲームメディアでもそこは同じで、「面白いゲームほど勝手に売れていくし、プロモーションなんかいらない」というケースが多いんですよ。
そういうものって、横田さんはどうしているんですか?
横田氏:
その点でいうと、基本的に断るものは断っているんですけど、なかには「ダメなのは分かっているんだけど、とにかく爪痕を残さなければいけないんです!」みたいなケースもたしかにありますね。
そういうのって、マーケ担当として与えられている目標とか、会社としての論理がある中で、その仕事をやらなきゃいけないって時でもあるので、僕としてはそっちに寄り添うんですよね。「なるほど、なんとかしなきゃいけないんですね」と。
そういう時はどうするかというと、「やる代わりに、全部僕に任せてくれ」と言うんです。どういう企画を出すのか、やることなすこと一切文句を出さないでくれ、と。
あなたたちが何をしたいかじゃなくて、あなたたちがどういうものを目指したいか、どういう結果を作りたいかというところに対する方法論は僕が全部考えるから、何も口を出すな。予算だけ出してくれ。そうじゃなかったらやらないと。そのケースって実際に、けっこうあるんですよ。
──それはスゴイですね。
横田氏:
とにかく爪痕だけは残す。VTuber本人も楽しめる企画にして、視聴者も楽しめる企画にしてという、案件なんだけど一個のコンテンツとして成立するものを作って、結果的にゲームにも流し込むというのは、実際にやってますね。
ただし、これは最後の手段なのでこれが通らないのであればお断りするしかないですね……。「ムリです」と(笑)。
──YouTuberとVTuberの違いの話を聞いていて、その手前の動画と生放送の違いの話をしておいたほうがいいのかなと思いました。僕は以前ドワンゴにいたので、ニコニコですごく実感したのが、動画と生放送の違いなんですよ。簡単に言うと、100万再生ある動画ってスゴイんだけど、その一方で同接が1万ある生放送も、その熱量には別の価値があると思っていて。
たとえばその動画が100万再生を1年かけて達成したとしたら、熱量はそんなに高くない。かたや1時間の生放送で同接1万、アーカイブで2万ぐらいで、再生数としては3万だけど、オンタイムで1万人を集めるだけの熱量がある。この違いって、数字だけ見ると掴みづらいんですけど、かなり重要だと思っていて。
横田氏:
動画と生放送って、そもそも視聴のされ方が違うんですよね。
生放送は、視聴者のある時間帯を支配するわけじゃないですか。それに対して動画は好きな時間にながらで見る。そこの大きな違いって、リアルタイムにコメントを打って、それに対して反応があったりなかったり、みたいな。もちろんスパチャもそうなんですけど、そういうのがあるかないかがすごく大きいと思っていて。
VTuberの配信企画をやると、やっぱり放送中から反応がめっちゃあるんですよ。なんなら放送前からあります。「○月○日に放送します」と言った瞬間から、明らかにインストール数が伸びていったりする。で、放送でキャンペーンとかを掛け算すると、さらにワーッと伸びていく。
そういうのが如実に出るんですよね。やっぱりそこって、リアルタイムにやって反応があってというところから、「今オススメされているから、今ダウンロードしなきゃいけない」みたいな心理が働くんです。
たとえば番組の最後のほうで「じゃあみなさん、ダウンロードしてくださいね」とか言うと、「もうダウンロードしたよ〜」みたいなコメントが出るわけですよ。あるいは「前からやってたよ〜」とか。そういうふうに、コメントするきっかけにもなるんです。
宣伝されたものに興味がなかったら、ほとんどの人はスルーしますよ。だけど、それが自分も興味を持てて、自分の応援している人も楽しそうにやっていたりした場合は、「じゃあ自分もやってみよう」となるのが普通の感情だと、僕は思うんです。だったら「後でダウンロードしよう」じゃなくて、その場でダウンロードして「もうダウンロードしたよ〜」とコメントしたいじゃないですか。
──なるほど。「自分も興味を持って、そのゲームをDLしたことを配信者に伝えたい」という意識が働くんですね。
横田氏:
そうなんです。あなたの配信を見た結果、自分も興味を持てたから「今やったよ」と推しに伝えたいじゃないですか。実際、僕自身も自分の推しVTuberの配信を見た時はナチュラルに同じ気持ちになりますし(笑)。
だけど動画って、後からコメントをつけても本人が見たりするケースはあまりなかったりするじゃないですか。そうなってくるとやっぱり、「今やらなきゃいけない」「今ダウンロードしなきゃいけない」みたいなところに対しては、相対的に弱くなっちゃいますよね。あくまで自分の主観ですけど、自分はそう感じます。
「今この瞬間を見逃したくない」という生配信なら、同時接続者数が集まる
──先ほど、YouTuberとVTuberの動画の見られ方の違いという話があったじゃないですか。今のYouTubeの動画の見られ方って、レコメンドされてくるものを上からつまんでいくとか、つまんだ動画のさらにレコメンドをつまんでという、どちらかというとアルゴリズムであったり、システムによって生み出される機械的なトラフィックってイメージがあるんです。だから手応えが薄いというのは、数値がそういうもので作られているからなのかなと。
一方でなんで今、VTuberにこんなにパワーがあるのかというと、まさに能動性であったり、オンタイムで1万人いるという、その瞬間を作れている強さだという気がするんですよね。最近だとホロライブの6期生が、まだ動画が1本も上がっていないのにチャンネル登録者数が10万を超えたりとかしているじゃないですか。
でも、これまで話に出たような動画と生放送の消費スタイルの違いもあるなかで、それをコンテンツとしてより最適化したものが、VTuberとかゲーム実況者としてオンタイムで動員する術を持った存在なんだなと。
横田氏:
動画と生配信、YouTuberとVTuberの差は明確にあって。実際にVTuberを使って大きな施策をやった時に、普通に考えてこれは好きな人しか見ていない、というのを証明できる事例もいくつかあります。
たとえば自分が直近で大きく関わった『ポーカーチェイス』の大会「NNOP 2022」では同接6万人強、アーカイブでは146万回再生ぐらいでした。でも、この大会の放送時間って、7時間以上あるんですよ。
──それはスゴイ(笑)。
横田氏:
7時間の動画が関連動画として出てきた時に、普通に考えて「ちょっと見てみるか」とはならないですよね。だって7時間ですよ(笑)。
──しかもアーカイブが分割ではなくて、1本で7時間なんですね。
横田氏:
そうなんです。ということはこの146万回再生って、やっぱり基本的に「好きな人が見に来ている」はずなんですよ。じゃないとこんな7時間もある動画、開きもしないじゃないですか。
一方でこういう見られ方って、VTuberに特有な感触もあって。たとえば「YouTuberが集まって大きい配信をしました」としても、同接もアーカイブ再生数もこれと同じぐらいいくのか? と言われるとなかなか厳しいのでは、と思うんですよ。
──そもそも「7時間の大会が開ける」ということ自体、ホロライブやにじさんじのような「箱」があることも大きいですよね。YouTuber同士のコラボ形式だとなかなか難しそうな気もします。
横田氏:
まさにそうだと思います。まぁ、同接や再生数の多寡だけで言ったら、加藤純一さんがひとりでいけるんじゃないか、みたいな話はあるんですけど(笑)。
──加藤純一さんとVTuberは、何か具体的な違いがあるんですか? 言ってしまえばどちらも「生放送寄りのインフルエンサー」ですよね。
横田氏:
そもそも視聴者層が違うというのはあると思うんです。もちろん重複している部分もありつつですけど。でも、じゃあ実際にアウトプットに差があるかって言われると、ことゲーム実況に関しては、同じことをやっているとは思いますよ。
いわゆる耐久配信とかリアルタイムアタックみたいなものを、加藤純一さんもVTuberもやっているので。そういう意味ではやってることはほぼ一緒、みたいな。
だけど加藤純一さんはやっぱり、トークにしてもゲームにしてもスキルがスゴイですよね。彼があまりにもスペシャルすぎて、同じものとしては語れないところもあると思います。
──その「スキル」で言うと、YouTuberと生放送系の人ではけっこう違うなと感じていて。なんだかんだ生放送が強いのって、YouTuber系の人よりもニコニコの出身者が多いんですよ。
チャンネル登録者数もTwitterのフォロワーも、明らかにヒカキンさんのほうが強いはずなのに、こと生放送の同接になると、加藤純一さんのほうがダブルスコアどころか5倍ぐらいいくわけじゃないですか。これって何なんでしょう?
横田氏:
その差はどこにあるかというと「今この瞬間に見たい」と思わせられているかどうか、なんじゃないかと思います。加藤純一さんで近年、いちばん話題になったのが『ポケモン』のヤツじゃないですか。
──「金ネジキ」の生放送ですね。
運を魂でねじ伏せる男・加藤純一、苦節1年もの挑戦を経て最高難度のポケモン「金ネジキ」を制覇。命を懸けた「りゅうのまい」で49連勝を果たす
横田氏:
あれって「伝説の瞬間をみんなで見たい」と思って見るわけじゃないですか。その物事が起きた瞬間に立ち会いたい。だからこそ、見逃せないんですよね。
加藤純一さんの配信ってそういうのが基本、多いと思うんですよ。リアルタイムアタックするにせよなんにせよ、その瞬間を見逃したくない。その瞬間にみんなで共感して「おめでとう!」と言いたい、という。
ヒカキンさんも、チャンネル登録者数が1000万人を突破する配信があったじゃないですか。あれとかは同じ構造だと思うんですよ。その瞬間に立ち会いたい。
でも「今日は『APEX』やります」「『フォートナイト』やります」と言われても、そういう瞬間が生まれるかと言われると、ヒカキンさんをふだん見ている人が期待しているのは、そこじゃないと思うんです。
「この人は今日、伝説的な瞬間を作ってくれるんだ!」と思っては見ていないじゃないですか。「思って見ていない」と言うと失礼かもしれないですけど、でもそこには差があると思うんですよね。今この瞬間を見ていなけりゃいけないと思わせられるかどうか、みたいな。