『プロセカ』ユーザー数がこの半年で1.5~2倍に ― TikTokでバズるなどして高校生がこぞってプレイし、彼らがボカロやネット音楽に興味を持つようになる【インタビュー】

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2周年に向けた展開

──ここからは、2周年に向けた今後の展開について伺いたいと思います。

 1周年の時に発表された完全リアルタイムのバーチャルライブ「コネクトライブ」は、2021年12月に最初のリハーサル公演が開催された後、次の公演が4月以降に延期されてしまいましたよね。実際のところ、今後どのように開催されていくという予定はあるのでしょうか?

近藤氏:
 1回目のコネクトライブをリハーサル公演という形でやらせてもらって、それは負荷の検証が目的だったんですけど、やっぱり負荷がちょっと厳しかったんです。でもその改修自体は、じつは1ヵ月ぐらいで終わったんですけど……。

 コネクトライブが大変なのは、キャストさんを含めたさまざまなスタッフを数日間拘束しなきゃいけないところで。じつはそっちのスケジュール確保が一番大変で、それで時間がかかっているというのがあります。

 今は、4月に第2回リハーサル公演をやって、それが終わったら2、3ヵ月後には本番をやりたいなという話をしています。ライブの制作自体はどんどん進んでいて、検証さえ完了すれば、あとはできると思うんですけどね。

──今のお話だと、コネクトライブは開催自体が相当に大変な感じなのでしょうか?

近藤氏:
 大変は大変ですけど、これまでは見通しを立てられなかったというのがあるんです。いったんシステムが確立してしまえば、テクニカルリハーサルをこの日にやって、それが終わった2週間~1ヵ月後に2日間スケジュールを押さえて、1日目は直前リハーサルで2日目に本番、っていう感じで予定が組めるんですけど。今はまだシステムが固まり切っていないので、スケジュールが変わる可能性があるので日程を押さえられないんです。

 なので、次のリハーサル公演で安定したら、以降はシステマチックにスケジュールを組めると思います。開催頻度も上げられると思いますし、今よりは絶対楽になると思います。

──単なる素人考えなんですけど、コネクトライブってやっぱり負荷が大変なんじゃないかな? と思うのですが。実際、1回目をやられてみてどうでしたか?

近藤氏:
 いやぁ、やっぱりキツかったですね(笑)

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 そもそも毎日の同時接続人数が本当に多いので、かなりの対策をして望んだのですが、サーバーインフラというよりは、内部のロジックでなにか引っかかってるとダメ、みたいなことがあったりして。単純にサーバーを増やせばいいっていう話でもなかったりするんですよ。しかもそのロジックの引っ掛かりが、アクティブユーザーが150万人だったら検知できなかったんだけど、200万人になったら検知できる、みたいな感じで大変なんですね。見えない罠がけっこうあるというか。

──でもやっぱり、そこまでスゴイことをやられているんですよね。

近藤氏:
 かなり突き詰めてますね。これをクリアしたら、もう怖いものなんかないんじゃないか、っていうくらいです(笑)。今は乗り越え時というか、がんばらねばという感じですね。

──ボカロ関連の技術ってこの十何年の間、未来の先取りみたいなニュアンスがあったと思うんですけど。コネクトライブもまさに、同じような匂いがするんですよね。

近藤氏:
 そうでしょうか。ただ、想像の7倍くらい大変でした(笑)。

 でもまぁ、ユーザーさんもみんな喜んでくれるだろうしやろうか、みたいな感じですね。ちゃんと動けば本当に良いものになる自信はあるので。

──楽しみにお待ちしております。

ボーカロイド音楽の一歩先に踏み込めるきっかけになるものが、ゲームの外側にも必要だ

──『プロセカ』のWEBラジオとしては今、ニーゴの「25時、ナイトラジオで。」と、クリエイターさんをメインにした「セカイ・ステーション」という2つの番組がありますよね。ちなみに、ニーゴ以外のユニットのWEBラジオ番組が開始される予定はありますか?

近藤氏:
 今のところはないですね。WEBラジオ以外にも、各ユニットの名前を冠した企画がそれぞれにあって。たとえばビビバスだったら「ビビバスアーカイブ」をやっているんですけど。もし仮に、ユニット単位の新しい企画が始まるとしたら、今やっている企画の代わりにやることになると思うんです。

 たとえばモモジャン(MORE MORE JUMP!)は、これまでボイスドラマをずっとやってきたんですけど。でも、SHOWROOM配信の反応がすごく良かったので、今は配信にスイッチし始めているところです。

──配信ですか。それはそれで、本物のアイドルっぽいですね。

近藤氏:
 そんな感じで僕らもいろいろ試行錯誤をしています。一回始めたものをずっとやり続けていくとなると、それが逆に足枷にもなってしまうので。僕らとしてはより良いものが出てきたら、それをやっていくべきだと思っていますし。そのほうがユーザーさんとしても新しいコンテンツを楽しめると思いますから。

──なるほど。では、ユニット単位の企画とは別に、新たなWEBラジオとして「セカイ・ステーション」を始めた狙いは、どんなところにあるのでしょうか?

近藤氏:
 今日の冒頭で言ったように、「ボカロ曲を聴いてもらう入口になるだけでなく、その先にもう一歩進むことができるような企画が必要だ」と思ったからです。

 『プロセカ』というゲームを好きになってもらったけど、でも案外ボカロってよく知らないよねとか、クリエイターさんってよく知らないよね、成り立ちも含めて知らないよね、っていう人たちがけっこういるんです。そういった人たちがクリエイターさんに興味を持ったり、『プロセカ』に収録されてない楽曲も聴いてみたいとか、そうやって広がっていけばいいなと思って、立ち上がった企画ですね。

 なので、パーソナリティの清水藍さんも、ボカロのことについて聞かれればなんでも答えられるぐらいの方がいいなということで、僕のほうで決めさせてもらいました。

──DECO*27さんやsasakure.UKさんといったクリエイターさんが出演されているのも、そうした意図からですか?

近藤氏:
 そうですね。でもクリエイターさんを必ず毎回出したいわけでもなくて。ボーカロイドシーン、ボーカロイド音楽を包括的に触れられる番組になればいいと思うので。ずっと隠れた名曲を流し続けるみたいになってもいいと思いますし。何か入口になればというプランの中の一個という感じですね。

──『プロセカ』と目的は同じなんだけど、よりボカロ文化全体にフォーカスした番組というわけですか。

近藤氏:
 どちらかというと知識とかのほうに寄ってますかね。『プロセカ』だけを遊んでいても、ボーカロイド界隈の一歩深いところには、自分で行こうと思わないと行けないので。

 『プロジェクトセカイ』の楽曲を作ってくれた方々の紹介だったり、原曲の絵を描いてくれたイラストレーターさんはこういう方で、動画師さんはこういう方で、みたいな話も含めて、それがボーカロイドシーンだと思っているので。そういうものをゲームの外にも置く必要があるかな、と思ったんです。

 「セカイ・ステーション」のラジオだけでは足りないと思ってはいますが、まずできる手段の一個として始めたもので、今後もやり続ける必要があるとは思っています。

佐々木氏:
 ちょっとだけ補足というか、昔話をさせてもらうと、過去にもクリエイターさんを紹介していくとかの動きが、メディアさんも含めていろいろあったんですけど。自分の記憶の範囲だと、クリエイターさんが主人公って形で取り上げるにしても、ミクが歌っているって形で取り上げるにしても、「そういう冠で括られてしまうのはどうかと思う」という議論が、今までずーっとあって。僕らもそれが、いい意味でずっと問題提起としてあったんです。

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 今、『プロセカ』に関して意見をいただいている方々にあえて回答させていただくとしたら、ミクが主役なのか、他のいろんなキャラクターのピックアップのされ方がどうだということは、人それぞれ感じ取られるとは思うんです。けれども『プロセカ』の中で、いろんな方がいろんな形で楽しんでらっしゃる状況がある中で、我々としてはいろんなものを紹介していく。いろんなものが素晴らしくて、まだまだいろんな曲があって。1選ぶ中で999取りこぼしてるくらいの感覚のなかで、自分たちはコツコツやり続けることが、いちばん重要だと思っています

 コツコツやり続けるから、また思いがけない誰かが、ボカロ曲とかクリエイターさんとか何か音楽の側面にハマってくれたり、キャラクターを好きになったりということが続くわけで。やっぱりそこを見ていくしかないんです。

 近藤さんもいろんな側面から考えてくださって、バランスとかっておっしゃってくださっているんですけど。僕らとしても何が進むべき方向なのか、なんとなくはわかってるつもりなので。それを今後も続けていきますし、「セカイ・ステーション」も発展していくんだろうなと思っています。

これから2周年に向けて、ゲームとして「次」に進むための土台を強化する時期にしていきたい

──そろそろ時間が迫ってきましたので、最後に『プロセカ』のゲーム自体が今後。2周年に向けてどういう方向に向かっていくのかについて、お聞きしたいのですが。

近藤氏:
 まず、『プロセカ』におけるリズムゲームを、長い目で楽しんでいけるようにすることが必要だと思っています。

 1.5周年で追加されたのが「ランクマッチ」ですね。それが遊びとしてはひとつ、大きな変化としてあって。

 あとは今後2、3ヵ月ぐらいをかけて、けっこう細かい改善をしていくと思います。2月のアップデートを「マイナーアップデート」と呼んでいたんですけど、そうした細かい改善を1.5周年の後は少しやろうと思っています。ゲームとして「あったらいいね」的な改善を、これまで時間をかけてはできていなかったので。

 そこから先に関してはまた、新しい遊びの開発と改善をやっていく感じですね。あとは土台を強くするという面で、サーバー負荷を耐えられるようにするとか、そういうこともちゃんとやっていきます。

小菅氏:
 さっきのジャンル分けの話じゃないですけど、『プロセカ』の設計は2018年ぐらいから話をしているので、4年前とかのものなんです。3Dの表現もそうですし、ゲームのデザイン面とか使いやすさとか、そういうところもテコいれしていかなきゃいけないので。これからは、さっき近藤さんが言った細かいアップデートをやりつつ、その先の大きなアップデートを準備する時期になるかなと思っていて。健全な運営ができるように注意しつつ、着々と進めています。

──シナリオについてですが。これまで1年半続いてきて、ビビバス(Vivid BAD SQUAD)のほうでは「RAD WEEKEND」の話が出てきたりして、各ユニットのストーリーがかなり進展してきたように感じます。ユニットごとにそれぞれの目標があると思うのですが、そろそろ目標達成というか、終わりが見えてきたりするのでしょうか?

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(画像はYouTube「『プロジェクトセカイ』Vivid BAD SQUAD ユニットPV」より)

近藤氏:
 ストーリーに関してはリリースの時点から、それぞれの終着点みたいなものは決まっていて。そこに向かうマイルストーンもある程度決まっているので。あとは書きながら、時には寄り道したりということをやっています。

 ただ、今見えているゴールにもうすぐ到達します、みたいな感じでもまだ全然ないですし。それに今見えているゴールをクリアしたらストーリーが終わってしまうかというと、それはまた違う話になるのかなとね。むしろ僕らとしては、書きながら「これはまだまだかかるぞ……」みたいに思っているので(笑)、まだしばらくは終わりは見えないと思いますね。

──今明確にあるゴールに到達するのもある程度時間がかかるし、たとえそこに到達したとしても、さらに新しい目標みたいなものは出てくるかもしれない、ということですか。

近藤氏:
  そうですね。どのユニットもまだまだ物語の先を考えていて。終着点はまだ先の先という感じですね。

──音楽面に関しては、2周年に向けていかがでしょうか?

佐々木氏:
 セガさんからいろんな作家さんに依頼していただいているんですけど、一度オリジナル曲を書いてくださった方でも2回目ってなると、さらにアイデアだとか切り口の部分で、クリエイターさん方のお気持ち的にも盛り上がってくれるところがあるんです。「あの曲よりも攻めてやろう」みたいな部分も含めて。

──そういう意味では、すでに登場しているクリエイターさんでも、また切り口の異なるオリジナル曲で参加されることも期待できそうですね。

佐々木氏:
 冒頭の話と被るんですけど、1周年まではどういうふうに『プロセカ』が受け入れられるのかな、ということを心配していたんです。でも今となっては2周年と言わず、もうちょっと中長期的なところで、どういう体制であるとか、発展的なことをしていくべきか、みたいな話をおふた方とさせていただくことが多くなっています。

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 中期的に見た時に、じゃあ2周年、2.5周年ぐらいには音楽的なところを含めて、ちょっとずつ変化とか驚きみたいなものがなきゃいけないかな、と思っていまして。そのためにも我々は、あまり凝り固まって今のスタイルを保持しすぎてもダメでしょうし、逆に変えすぎてもダメだと思いますね。(了)


 取材の中で何度か話題に出たように、『プロセカ』はバーチャル・シンガーを扱ったリズムゲームというだけでなく、今の若い世代にボーカロイド音楽に触れるための入口となることが意図されている。

 『プロセカ』が1.5周年を迎えた現在、高校生から圧倒的に支持されるゲームとなった一方で、『プロセカ』の登場と並行するようにして、ボカロPや「歌ってみた」出身のアーティストがJ-POPを席巻するようになったことは、ある意味、その当初の目的を果たすことができたと言えるのかもしれない。

 だからこそ、『プロセカ』が「次」にどういった方向へ向かうのかは、非常に気になるところだ。『プロセカ』から生まれたオリジナルのボカロ曲が、TikTokなどを通じて世の中に広く拡散されるようになった現在、今後の『プロセカ』の動きはある意味、ただ単にゲームの中に留まるものではなくなるかもしれない。その意味でも、『プロセカ』の今後の動きには、引き続き注目していきたい。

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ライター
過去には『電撃王』『電撃姫』『電撃オンライン』などで、クリエイターインタビューや業界分析記事を担当。また、アニメに関する著作も。現在は電ファミニコゲーマーで企画記事を執筆中。
Twitter:@ito_seinosuke
ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
編集
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai
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