『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下『プロセカ』)は、2022年3月末で、サービス開始から1.5周年を迎えた。
2020年9月30日のサービス開始以来、『プロセカ』のユーザー数は500万人(2021年7月時点)を突破しており、月間アクティブユーザー数は300万人を超えるなど、非常に高い人気を誇っている。なかでも10代から20代の若いファンが特に多くなっている点が、大きな特徴となっている。
LINEリサーチによる「高校生がハマっているスマホゲーム」の調査では、男子・女子の1位がそれぞれ異なるなかで、2位は男女ともに『プロセカ』が占めており、性別を超えた人気の高さが確認できる。
電ファミニコゲーマーでは、『プロセカ』のサービス開始前からその動向を追っているが、このように、10代から圧倒的な支持を受けている『プロセカ』が、これから2周年に向けてどのような方向に進んでいくのか、プロデューサー陣にお話を伺った。
ゲームの開発・運営を担当しているColorful Palette代表取締役社長であり、本作のプロデューサーである近藤裕一郎氏と、セガのプロデューサーである小菅慎吾氏に加えて、今回はクリプトン・フューチャー・メディアのプロデューサーであり「初音ミク」の責任者として知られる佐々木渉氏にも参加していただいた。
『プロセカ』では1周年を機に、ファンからも待望されていた有観客のリアルライブが開催されたほか、各種企業とのコラボ企画が実現するなど、ゲームの外側での話題も非常に活発なものとなっている。今回の取材では、そうした面も含めて詳しくお話を聞いている。
その一方でこれから2周年に向けては、ゲームやその展開にまつわる新たな課題も少しずつ出てきているようだ。ボカロカルチャーが日本の音楽シーンに大きな影響を与えている現在、その一翼を担う存在となった『プロセカ』の現在とこれからが、このインタビューから見えてくるはずだ。
取材/伊藤誠之介、ジスマロック
文/伊藤誠之介
編集/クリモトコウダイ
撮影/増田雄介
※取材に際し、写真撮影時以外はマスク着用、換気とパーテーションの設置等、感染症対策を徹底したうえで実施しています。
高校生が今、遊んでいるゲームとしての「責任」みたいなものを感じる
──まずは1.5周年おめでとうございます。1周年からここまでの半年間を振り返ってみて、いかがですか?
近藤氏:
1周年をきっかけにして、ユーザーさんがかなり増えたんです。ホントに1.5~2倍ぐらいになっていて。しかもそれが元に戻るのではなく、ずっとそのまま続いてきている。今まで遊んでくれていたお客様はそのまま遊び続けてくれている上に、1周年というタイミングで『プロセカ』を知ってくれた新しいお客様が多かったのかな、という印象ですね。
小菅氏:
お客様が増えたのもあるんですけど、1周年までずっとダッシュでやってきて、僕らの中でもがんばってやってきたぶん、これから2年、3年とさらに成長し続けていくにはどうするか、もう一回ちゃんと話し始めた時期でもありますね、この半年間は。
佐々木氏:
1周年の時に近藤さん、小菅さんと話していたのは、「ようやくここまで来て、わりと安定していきそうだね」っていうことで。そのタイミングでは「やれやれ」という感じが強かったんですよね。最初の立ちあげの時はボカロ好きの人であったり、ネットの音楽が好きな人たちに受け入れられて、喜んでもらえて、それで広げていければいいなと思っていたんです。
でも1周年から先になると、わりと若い方々が『プロセカ』きっかけで、ボカロとかネットの音楽とかに興味を持ってくださって。それで「やってみて、面白い!」というふうに実感していただけて、すごく広がったんだと思うんです。
そのぶん、自分たちが対象とするお客さんが、すごく幅が出てしまって。今までボカロをすごく楽しんできて大事にしてくれた人たちと、新しく「これはいい!」って入って来てくれた人たちの両方を見て、満足度を上げていかなきゃ、技術を上げていかなきゃっていう意味で、難易度は上がったなぁと思っていて。それで近藤さんと会うたびに「いやぁ、大変ですよね」って言ってるんです(笑)。
近藤氏:
そうですね。大変度は増しましたね。
佐々木氏:
10年前の「カゲロウプロジェクト」の時もそうでしたし、さらに遡って「悪ノ娘」の時なども、若い子たちがガーッと入ってきて。それで、今までいた人たちが「ちょっとついていけないな」とか「なんだろう、これは」って感じになったタイミングって、ボカロには何回かあったと思うんですけど。ただ今回は、なんというんですかね、規模がちょっと違うというか。
今、高校生の男女がいちばんハマっているゲームのひとつが、どうやら『プロセカ』らしくて……。僅差で、『LINE:ディズニー ツムツム』が上のようですが、競り合ってるらしいです。
近藤氏:
恐れ多いです。
佐々木氏:
だから今、日本の高校生にいちばんエモいものを刺しているのが、近藤さんなんですよ(笑)。
近藤氏:
いやいやいや(笑)。
──じつは、今回の取材にあたってセガの広報さんに教えていただいたんですが、今、TikTokの「踊ってみた」で、『プロセカ』のオリジナル曲がバズったりもしているそうですね。
近藤氏:
「トンデモワンダーズ」ですね。たしかに、TikTokであの曲を聴いて『プロセカ』に来る人も、今は珍しくないと思います。
小菅氏:
最近は「にっこり^^調査隊のテーマ」も多く使っていただいているようですね。
──それはつまり、『プロセカ』の曲が本当に、ティーンカルチャーの真ん中に来ちゃってるということですよね。
近藤氏:
そういうことになっているという実感は、僕らにはあまりないですけど……。
佐々木氏:
今の中高校生にとって、音楽もイラストもとてもキャッチーなんでしょうね。歌詞だとか音楽の感じだとかキャラクターとかに触れて「なんかしっくりくる」みたいな共感が広がったところで、大きくなっているがゆえの悩みとか苦しみとかがあるよなぁ、と思うんです。
近藤氏:
もともと『プロセカ』を立ち上げた時の目的としては、若い方にまたボカロ曲とかを楽しんでもらいたい、というのがあって。それがこの1、2年で、実際に盛り上がりが見られるようになってきたじゃないですか。それは『プロセカ』がというよりは、本当にいろいろなことが重なったと思うんですけれど。
ともあれ結果として、若い人たちにまたボカロ曲を聴いてもらいたい、みたいなところは正直もう、達成されたと思ってはいるんですが。でも一方で、それだけではなくなってしまった責任みたいなところも、正直あるなと思っていて。
──責任というと?
近藤氏:
聴いてもらえるようになったね、で終わりではなくて、いかにここから先へとつなげていくか。聴く人だけじゃなくて何かを作ってくれる人も増えないと、結局持たないよね、とも思うので。
そこで次の一手をどう打っていったらいいんだろうと。今、新しいクリエイターの方が曲を作るっていうのは、楽曲コンテストの「プロセカNEXT」くらいしかやれていないので。ここで終わっちゃいけないな、ということをなんとなく考えています。
もっとやれることはたくさんあるなと思ってはいるんですけど、その前にゲームとして、サービスとしての下準備みたいなところで、まだやらなきゃいけないことがある感じですね。
ゲームとしてもアップデートしていかなきゃいけないですし、ゲームを支える土台みたいなものも、もっと強固にしなきゃいけないですし。それから、広がっていったユーザーさんたちに対するガイドラインといいますか、同じ作品を好きなユーザーとしてこういうことは守っていこうね、みたいな啓蒙もしなきゃいけないと思っています。とにかく、まず土台を固めなきゃというのが、最近考えていることですね。
リアルライブ「セカライ」で披露したダンスのモーションは、すべて新規のものです
──1周年からの半年間で、みなさんの中でいちばん大きな出来事だと感じたのは、どれでしょうか?
近藤氏:
僕はあんまりないですね。「これがあったから」というよりは、本当にいろんな幸運だったり、『プロセカ』を好きでいてくれる方たちが周りの人にお薦めしてくれたり、そういうことがあって今に至っていると思うんです。この間、CMをすごく大々的に打ったりしたわけでもないですから。
小菅氏:
僕はやっぱり、2022年1月にリアルライブ「プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 1st – Link -」(「セカライ」)を開催できたことですね。本当に良かったです。
──たしかに僕ら受け手の側としても、リアルライブはひとつの節目になった気がします。
小菅氏:
まだ『プロセカ』のゲームができていない頃から、近藤さんと「ライブはやりたいよね」と言って、いろいろ準備してきたので。ここまで来るには社会情勢など、本当にいろんなことがありましたけど。
でも、いざ開催できたらやっぱり良いものになったし。なによりお客さんの喜んでいる顔が見られたのが良かったです。アプリだと直接お客さんの顔を見られないので。けっこう感動しましたね。
近藤氏:
今の世の中ってそういった周辺のものも含めて、事業として成立していないとなかなか実行できないことも多いと思うんです。でも『プロセカ』は「全体のどこかで大きくプラスが出ていれば、どこかでチャレンジしてマイナスが出ても、結果的にプラスの収支だったらそれでいいよね」という話をしているので。ユーザーさんが本当に喜んでくれるものは、積極的にやっていこうと。
なので、リアルライブもクオリティ重視でやれたと思うんです。
──それは心強いですね。当日のユーザーさんの反応は、いかがでしたか?
近藤氏:
思っていた以上に良かったですね。僕らとしてできるクオリティの最大限を出したつもりではいたんですけど、それでも初めてでしたし、情勢も情勢でしたし、どうなるのかは本当にわからなかったので。「本当に良かった」という反応だったので、やって良かったですね。
小菅氏:
お客さんの層が全体的に若いので、3Dキャラクターが目の前に登場するライブというのを、もしかしたら初めて見るお客さんもいたと思うんですよ。クリプトンさんはずっと前からやっていたと思うんですけど。
近藤氏:
マジカルミライとかはかなり以前からやっていますし。他にも『あんさんぶるスターズ!』とかでもやっていますし、最近でいうとVTuberとかもあるので。この形式ってわりともう一般的なものかなと思っていたんですけど。
小菅氏:
でも後ろで見ていたら、若い人で「本当に司が動いてる!」って喜んでいたり、「エモい……」って言いながら崩れ落ちる子とかがいましたから。
そういう様子を見ていると、これまで磨いてこられた技術がまずあって、それが『プロセカ』になってっていう、この座組じゃないと実現できなかったと思うんです。この3社でできて良かったなと思いますね。
近藤氏:
クリプトンさんがいないと絶対にできないクオリティでしたから。
佐々木氏:
でもこの技術のキッカケは、元を正せばセガさんですから(笑)。
近藤氏:
そうですね、元の元を辿っていくと。
佐々木氏:
それこそ10年以上前に、セガさんと一緒にミクのライブを始めた時には、IT方面のメディアの記者の方がいちばん喜んでいるというか(笑)。SF的だったり、いわゆるおじさんの夢、みたいなところの切り口で語られたりすることが多かったんですけど。
でも今回は『プロセカ』ということで、技術的な話というよりは、キャラクター同士がちょっとこう仲の良い雰囲気を醸し出したりするところが、お客さんとしてはいちばん感じ取りたいところだったと思うんです。若い子がCGにそういうものを求めてくれる時代になったのかなあって、ちょっと感慨深かったですね。
小菅氏:
ライブの振り付けは、MVとちょっと変えたりもしていて。こはねちゃんとか寧々ちゃんとかは、MVではそんなにうまく踊れない感じで撮っているんですけど、今回のライブではわりと振り切って、成長も少し感じ取れるような感じで踊っているんです。
──ということは、リアルライブのモーションは、ゲームの流用ではなく新規のものだったのですか?
小菅氏:
そうですね。振り付けチームががんばってくれて、全部ライブ用に収録しました。
──ゲーム内に3DMVが実装されていない「テレキャスタービーボーイ」や「ベノム」をキャラクターが踊っていたのは、そういうことだったんですね。
では、リアルライブのダンスがゲーム内の3DMVに反映される可能性はあるんですか?
近藤氏:
そうできればよいのですが、3DMVで作るにはダンスだけではなく、ステージを作って、カメラを作って……というふうに、ダンス以外のものもいろいろ作らなくてはいけないため、現時点では難しいというのが正直なところになります。
小菅氏:
そもそも、ステージの幅とかもぜんぜん違うので。なのでもし3DMVをやるとなったら、改めてそれ用にまた収録する形です。
近藤氏:
コネクトライブだと事前にモーションを撮るんじゃなくて、本当に当日そのままやっているので、3DMVのない曲が披露されたりもすると思うんですけど、それもやっぱり同じ話で。コネクトライブで披露した楽曲についても同様に、そのまま3DMVに用いることは難しいため、仮に3DMVを制作することになるならば新たに制作を行うことになります。申し訳ないですが正直厳しいですね。
──3DMVの話題をもう少し聞かせてください。ここ最近の3DMVは、たとえば「少女レイ」での最後の踏切のシーンだったり、「にっこり^^調査隊のテーマ」の途中でセリフを書いたプラカードみたいなものが出てきたりっていう、いわゆるダンスのMVとはまた違った形の演出が、随所に見られるようになってきていると思うのですが?
小菅氏:
技術的にはじつは、もともとそういうこともできたんです。ただ、最初はスタンダードかつ王道なダンス系MVでキャラの魅力を最大限引き出すことを意識して制作してきました。1周年を越えて、制作サイドとしてもユーザーの皆さんにキャラの魅力が十分に伝わってきていることを感じたため、これまでの手法に加えて「楽曲の世界観」をより表現するための演出を意識できるようになってきました。
監督とかMVのチームが「ひとつのMVには必ずひとつ以上のチャレンジをしよう」と大胆にやった結果、最近はいろんな構図や展開が増えてきました。それに今、他のタイトルでもスゴイものがたくさんあるじゃないですか。そこは負けてらんないという気持ちもありますね。
カップヌードルコラボでは「後から“徳川”が来るので」と説明して、納得してもらった
──佐々木さんがこの半年間で特に印象的だった出来事は?
佐々木氏:
僕は2021年10月に開催した「セカイシンフォニー 2021」っていうオーケストラコンサートですね。『プロセカ』の楽曲をオーケストラやバンドが演奏するという、リアルライブの「セカライ」とはまた違った形のライブで。
これは、少し尖っているので『プロセカ』のユーザー全員が喜ぶようなものではないと思うんです。でもすごく音楽に親しまれているファンの人たち、たとえば楽器を演奏したことがある子たちにしてみたら、オーケストラと『プロセカ』が一緒になるというのは、生音のすごくゴージャスな体験だったと思うんです。
あとは、ゲームのローンチ前から進めさせてもらっていた、ポカリスエットとのコラボ企画ですね。『プロセカ』ならではの高校生の青春のエモさだとか、ある種キラキラした綺麗な感じが、ポカリスエットさんというブランドとご一緒させていただいたことで、表現できたと思います。
──ちょうどコラボの話題が出てきたのでお聞きしますが、2022年に入ってからの話題と言えば、カップヌードルとのコラボが、非常にインパクトがありましたね。まずなにより、カップヌードルの「味」という切り口で、オリジナル曲が5曲も作られるということにビックリしました(笑)。
佐々木氏:
そうですね。そもそも最初はカップヌードルの「味」が9種類あったので、「9曲にすんの? どうすんの!?」みたいな感じで、2ヵ月ぐらいバタバタしましたから(笑)。
一同:
(笑)。
佐々木氏:
いろいろな意見交換があった上で、結果的には親和性のある「味」をふたつずつまとめて、「このふたつの味をまとめたんですけど」っていう話をクリエイターさんにしていったんですけど(笑)。
そうするとクリエイターさんとしては、最初はやっぱりキョトンとされるんですよ。「無茶ぶり?」みたいになっちゃう。そこから、詳しく話し合っていって、例えばボカロPさんたちのファンが興ざめしないように、あまり宣伝っぽくなりすぎないように引き算するのが一番重要で、各方面の意識合わせと温度感を調整するのがキモでした。クリエイターさん側の自由度を確保できるように、クライアントさんとも意見交換を繰り返すことが多かったです。反面、ちょっと悪ノリも含めて、楽しみながらやっているような感じで作っていかないと、お客さんにも喜んでもらえないのかなと考えながら。
でも曲数も含めて、ここまで一気に曲を作る取り組みは今までなかったものなので、大変でしたね。
近藤氏:
もう本当に大変でした。でも僕よりも、佐々木さんとか現場の人たちがめちゃめちゃ大変だったと思います。
──カップヌードルコラボでは、『プロセカ』の既存のユニットではなくて、ちょっと変わったメンバー構成になっていますよね。東雲姉弟に天馬兄妹、日野森姉妹というきょうだい、姉妹コンビだったり、奏と寧々だったり。
近藤氏:
コラボのキーワードとして、「家族で食べる」とか「家の中で食べる」というのがまず最初にあったんです。そこでプロセカ内の家族関係があるふたりをピックアップしたり、奏と寧々はインドアというところですね。
──「カップヌードルと言えば、やっぱり奏だ!」というのもあったのですか?
近藤氏:
それはそうですよね。『プロセカ』をプレイされている皆さんはご存知だと思いますが、奏の好物がカップ麺ということもあって、今回のコラボのお話をいただいたとき、やはり真っ先に浮かんだのは奏でした。
──楽曲を作られたクリエイターさんも豪華な顔ぶれですが、これはどうやって決まったのでしょうか?
佐々木氏:
こういったものに対応していただくのはなかなか難しいので、バランスは考えました。初めましての方にお願いしつつ、難曲については気心の知れた方に頼っちゃいましたね。初対面のボカロPさんに「徳川カップヌードル禁止令」みたいな曲を作ってくださいとは、さすがに言えないので……(笑)。
──ということは佐々木さんとしては、安心して任せられる方々という感じなんですね。
佐々木氏:
いやでもやっぱり、ファミマさんやNewDaysさんの件でご一緒してきた、ピノキオピーさんであっても「カレーはお好きですか?」「そこにモチベーションは持てますか?」みたいな会話から入ったので(笑)。わりと手探りですよね。
また、DECO*27さんやピノキオピーさん、Mitchie Mさんといった、既にプロセカに参画いただいているクリエイターの皆さまのほかにも、Z世代を中心に絶大な支持を受けているKanariaさんやくじらさんにもこの機会にご協力いただきたいと思い、「若い子たちが夜にネットサーフィンしながら、カップヌードルを食べているときに聞きたくなるような楽曲」というテーマで打診させていただきました。みなさん快諾いただいたので、とてもありがたかったですね。
Kanariaさん、くじらさんへの依頼は意外な部分もあったと思いますが、こういう企画だからこそ、おふた方の「クリエイティブの迫力」が伝わる形になったのかなと思います。
近藤氏:
結果的に、反響はとても良かったので。
──「アイデンティティ」や「サラマンダー」のように単体の楽曲としての魅力が強く出ているものもあれば、「徳川カップヌードル禁止令」みたいにニコニコのMAD動画みたいな味わいのものもあったりと、すごくバラエティに富んでいると思うのですが、楽曲の方向性はボカロPさんにお任せだったのですか?
佐々木氏:
完全にお任せというよりは、「ちょっとこの要素を入れていただけませんか」「減らしていただけませんか」とか人によっては「突き抜けた感じで、思い切って頂けませんか?」というのを調節させてもらった形ですね。その作家さんの個性と違ったものになると、ファンの方々はそれを敏感に読み取るので。こういうタイアップで過去に、注目度がガクンと落ちちゃったりしたこともあったので。そこはヒヤヒヤしながらやらせていただきました。
でも逆に日清さんのほうでは、宣伝らしさみたいなものを求めるスタッフさんもいらっしゃったんです。なので「これは宣伝要素があまり感じられないかもしれないですけど、後から“徳川カップヌードル禁止令”っていうスゴイ曲が来るので」と説明して(笑)、なんとか納得していただいたというのがありましたね。