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『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』を悪評も気にせず“9年間”にわたりプレイし続けてきた紳士と話してみた。「面白いから」と煮詰めた本作の現環境と新作への思いを語る

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9年にわたり続いてきた現在の『ジョジョASB』と「紳士協定」

──発売されたのが2013年ということで、もうそろそろ9年経つわけですが、その歴史の中で技術革新のようなものはあったのでしょうか?

なまこさん
 そこまで大仰なものはないですが、「挑発コンボ」とかはそれにあたるかもしれません。会相手のダウン中に飛び道具を重ねながら挑発をすることによって、挑発の演出後にその飛び道具が当たってコンボが続く。発売から数か月で発見されて、見栄え的にも『ジョジョ』っぽくていいですよね。

※挑発演出からのコンボが確認できるなまこさんによるコンボ動画。

なまこさん
 もうひとつは「軸バグ」というのがあって、イージービートの際に軸移動ボタンで特殊な入力をすることで、通常は繋がらない攻撃が繋がるようになるんです。たとえば必殺技のあとに強攻撃が出せたりとか。

 これはちょっと強力すぎて、しかも強キャラと呼ばれるキャラクターへの恩恵が強すぎるので、日本での使用はわりと下火になっています。アメリカとかでは、わりと使われてはいますね。

──聞きかじりで申し訳ないのですが、発売直後にはいわゆる「コキガ」【※】が印象強かったような気がしますね。

※コキガ:
 本作には、タイミングよく方向キーを入力すると相手の攻撃を「ジョジョ立ち」にて回避するシステム「スタイリッシュムーブ」が存在する。「コキガ」とはそのキー入力を特定方向に繰り返すことで攻撃をすべてガードする行為のこと。格闘ゲームとしてバッタゲーとコキガは一部プレイヤーたちによって議論の的となり、のちにアップデートで調整が加えられた。

なまこさん
 そうですね。でもいまはどうだろう? やってる人は一部いるのかもしれないですけど、私が対戦する人たちはもう使わないですね

──なるほど。それはもう対策されて実戦で使えなくなったということでしょうか?

なまこさん
 そういう側面もありますね。コキガしようとするとレバー操作に集中してしまうので、仕込みの行動ができないですから。ただ、あともうひとつの側面として、「使うと嫌がられる」というのもあります。

──嫌がられる。

なまこさん
 プレイ人口が少ないゲームなので、嫌われるとゲームができないんですよ。

──紳士協定ですね。

なまこさん
 コキガをすると打撃が一切通じなくなるんで、対策はあるにせよ、やっている方も楽しくはないですよね。

強キャラ四天王は「システムを支配する」

──ちなみに、現状もうキャラランクが固まってるのではと思うのですが、現在はどうなってるんでしょうか?

なまこさん
 そうですね。現役勢の方と以前考えたことがあるんですが、トップが「一部ディオ」、「ディアボロ」、「ホルホース」、「ミスタ」……このあたりがティアトップですね。

──それぞれどういった部分が強いのでしょうか?

なまこさん
 それぞれシステムに対して対抗手段を持っているんですね。「一部ディオ」発生2フレームのハイジャンプを持っています。

 スタイリッシュムーブを取られたら、すぐにハイジャンプが出るように仕込みをしておくと、どんなに相手が最速で発生3フレームの小パンを置いていても、それを空中食らいにしてその後の攻撃を受けなくなるというテクニックが強力です。スタイリッシュムーブという最強のシステムに対する回答を持っています。

──聞いてるだけで、もう強そうです。

※一部ディオ。スタイリッシュムーブに対する食らい逃げが確認できる映像

なまこさん
 「ディアボロ」はノーゲージで300ダメージくらい出せるキャラで、コンボにゲージを回す必要がない。あとバーストを持っているんですけど、特定のタイミングでバーストすると反確が取れるんですね。

 それに加えてエピタフという技があります。移動しているだけでスタイリッシュムーブができ、相手がスタイリッシュムーブできないというすごい技なんです。最後の詰めの場面で相手に攻撃させてスタイリッシュムーブ後に攻撃したり、相手がスタイリッシュムーブができないことを利用してジャンプ攻撃を重ねまくって崩したりできるのが強い。

※ディアボロのバーストから反確映像

なまこさん
 次に「ホルホース」なんですけど、空中で飛び道具が出せることに加えて、フワッと浮くので着地を狩られにくい。しかもノーゲージでの火力が高い。その上コンボの〆が強制ダウンなので、そこにJガイルの旦那を出せる水たまりをまいて待ち気味に戦う、「籠城ホル」という戦い方が強いですね。

──「籠城ホル」。

なまこさん
 水たまりの近くで相手が攻撃しようものなら、うしろから攻撃されます。それに加えて全キャラで最長の投げ間合い。相手の打撃の間合いの外からでも投げられるという投げキャラレベルの間合い。それが強みですね。

※「ホル籠城」と水たまりからのJガイル攻撃

なまこさん
 最後に「ミスタ」。これは人間性能が良くないと強くないんですけど、ホルホースみたいに空中で弾を撃てるキャラで、タイミングよくポンポンと撃っていると相手がガードせざるを得ない状況になります。着地際にガードさせれば、まだ相手側の硬直が続いているので、そこに投げなり打撃なりを置いておける。

 あと遠距離攻撃も、たとえば画面の奥とかにピストルズを置いておくと2Dの画面だけではなくて3Dの奥軸も使って戦えるんですね。油断していると画面の奥から飛び道具が飛んでくるという面白い戦い方ができます。

※ピストルズを上手く使ったミスタの動き

──トップ層が魔境すぎる。聞いているだけではありますが。

なまこさん
 そのキャラ固有の戦い方ができて、システムの面でもハマっているキャラクターが強いですね。

──システムを味方につけているんですね。ちなみに、なまこさんの持ちキャラである「ジョナサン」はどうなんでしょう?

なまこさん
 真ん中からちょい上くらいですね。火力は全キャラ中トップクラスなんですけど、画面端じゃないと高火力と言えるほどのダメージを出しにくかったり、立ち回りが弱いのでそれくらい。

──まだジョナサンのポテンシャルを引き出せてないみたいなこと仰ってましたけど、すごい発言ですよね。もうプレイして何年も経っているのに。

なまこさん
 他の人からはもう充分引き出せてるって言われることもあるんですけど、トレモとかやってると「まだ発掘が足りてないな」と。

──ちなみに『ジョジョASB』のキャラランクは下から見るとどうなったんでしょうか。

なまこさん
 『ジョジョASB』の最下層キャラはダントツで「イギー」ですね。

『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』9年間もプレイし続けたプレイヤーへのインタビュー_006
(画像は『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』公式サイトより)

──イギーなんですね。

なまこさん
 タンドオフ状態だとガードしても、普通にダメージを食らうのと同じくらい体力を削られるんですね。イギーだけ。

──通常攻撃で。イギーだけ。

なまこさん
 コンボ火力も低くて体力も低くてリーチも短い。意図的な調整じゃないかと思われるほど弱い。ちなみに先日の「EVO」での試遊バージョンを見てみると、『ジョジョASBR』でも大きな調整は入ってないように見えました……。

──製品版で大きく調整が加えられている可能性はあるのでなんとも言えませんが、『ジョジョASB』のイギーに関しては製作者が犬嫌いなのかと思いたくなるようなステータスですね。原作の『ジョジョ』はたしかにダニーとか猫とかひどい目にあいますけど。

8時間の議論を要した「現在の『ジョジョASB』キャラランク」

──しかしこのティア表すごい細かいですね。

なまこさん
 これ8時間くらいかけて作りましたね……。

──8時間。

なまこさん
 どうしてもCだけに留めてしまうと明らかにちょっと強弱に違和感があって、だからといってDに下げると微妙なキャラクターがいて、その間を設けていったりするうちに……。

──Sに関しては満場一致なんですか?

なまこさん
 現役勢的には概ね満場一致で、強いて「頂点」を決めるなら「一部ディオ」かな。最強システムのスタイリッシュムーブにもっとも明確な回答を持ってるので。

──なるほど。

なまこさん
 一番紛糾したのは下の方にいるフーゴと花京院ですね。フーゴは条件付きで火力が高いんですけど、それ以外の場面では火力が低かったり、そもそも立ち回りが弱かったりするんですね。

 花京院はリーチはあるんですけどコンボ火力が低いんです。立ち回りや相手への触りやすさとか、一点突破の火力とか、花京院を使っている側でも何をされるとキツイかという点とかで議論して、結局は私が折れてこの並びになりましたね。

──なんて真面目なんだ。

なまこさん
 その議論が一番白熱したと思います、その2キャラのどちらを左に置くかだけで、8時間のうち1時間くらいかかりました。ティア表、本当は1日で作ろうと思っていたんですけど、議論を持ち越して2日がかりでした。大変でした。

『ジョジョASBR』で「初心者も来て」。体験版は現役勢からも好評

──ちなみに今はどれくらい『ジョジョASB』をプレイされてるんですか?

なまこさん
 『ジョジョASBR』発表までは、月に4日くらいかな……いまは配信しているので、毎週定期配信ですね。

──『ジョジョASBR』発表はまさかの出来事でしたね。

なまこさん
 嘘だろ?って思いましたね。平日仕事の合間にその発表を見て時が止まりました

──いろいろ情報を見ていると、『ジョジョASB』よりもゲーム性が相当変わりそうですよね。

なまこさん
 最初は『ジョジョASB』の延長線上かなと思っていたんですけど、システム面から変わっていますね。

──体験版もすでに配信されていますよね。具体的にはどのあたりが変わりましたか?

なまこさん
 まずコンボルートがかなり違っていて、『ジョジョASB』でこれまで開発されてきたループコンがほぼできなくなっていて、困りましたね。最初は戸惑いました。でも一番の違いは「アシスト」、とくに「バースト」ですね。1ラウンドに3回もできる仕様で驚きました。今作は少ないゲージである程度ダメージを出せるとはいえ、できても2回が良いと思うんですが。

 あと、その場からのジャンプ高度は高くなりましたが、新システムのダッシュジャンプの軌道が鋭角なのでバッタゲーが加速してしまった感もあります。

──なるほど。例のコキガもできなくなっているんですよね?

なまこさん
 スタイリッシュムーブの受けつけ時間が少なくなっていて、できなくなってますね。さらに、下段攻撃はしゃがみガード、上段や中段攻撃は立ちガードでしかスタイリッシュムーブできなくなっているので、コキガを意識した調整にも見受けられます。

──スタミナ制のモードはさすがになくなっていますよね……。

なまこさん
 それはなくなっているみたいですね(笑)。僕もそのモードが残っているかちゃんと確認しました。やっぱり物議をかもしたモードなので。

──発売前の時点の体験版などを通じてというところになりますが、『ジョジョASB』現役勢の評価としてはどうですか。

なまこさん
 個人的には「8.5/10点」です。今回初めて触った人には一部のキャラが強すぎる、バーストの回数が多すぎるといった意見もあるようなんですが、周りの現役勢の評価はおおむね高かったですよ

 それに配信をしていると、初心者らしき人が「これはどうすればいいんですか」と聞いてきたりもしていて、やはり新作発売へ向けて熱はいくらか高まりつつあるのかなと。

※なまこさんよる『ジョジョASBR』体験版のプレイ動画。タイトル名から喜びがわかる。

※なまこさんによる『ジョジョASBR』対戦システム解説動画

──前作の評判をはねのけてほしいです。

なまこさん
 現役勢が一番懸念しているのが、『ジョジョASB』の悪評が尾を引いて売れないのではないかという部分だと思います。またスピードワゴンにならないか心配です。海外では評価されているし、『ジョジョ』の人気も高いので売上的には大丈夫なのかな……?と思ったりはしますが、日本での印象は悪いので……。 『ジョジョ』はとんでもなく間口が広いコンテンツなので、『ジョジョASBR』で初心者に入ってきてほしいですね。

た現役勢にとって、プレイヤー層が広がるまたとないチャンスですよね。ティア表で8時間も議論する熱量が、もっと多くのプレイヤーに広まるとよいのかなと。一度はけっして高くはない評価を受けたことは事実なわけでですが、そこから新生したであろう『ジョジョASBR』が、現役勢も喜ぶほど成功することを願っています。ありがとうございました。(了)

※なまこさんが8月31日にニコニコ生放送にて配信した『ジョジョASB』の番組名は「9年間、ありがとう」


  物理的に販売されていたビデオやDVDがレンタルに、そしてダウンロドード販売からサブスクリプションへ移り変わったように、ゲームにおいても流通方法と所有の概念には加速度的な変化が起きている。ゲームの不具合は発売後にパッチで改善するのが恒常的に行われるようになり、無料、有料DLCによってコンテンツの内容があとから別の性質を有するものに変化していった。そしてもう多くのゲーマーは、ゲームそのものを「物理」ではなく「コンテンツ」そのもの、しかも変化していくコンテンツだと捉えている。

 『ジョジョASB』が当時多くのユーザーにネガティブな印象を与えたのは間違いないし、スタミナを軸としたモードのチャレンジブルな課金システムが今でさえ受け入れられるかと言われれば、それはおそらく違う。ただし、ゲームそのものの内容に関してはパッチによって改善され、されたことによってユーザーは現在まで少数ながら残り、活動を続けてきたわけだ。そのおかげで現役勢がいる。ならば、そこには誰かに届いた面白さが存在するということで、そこを揶揄する資格は誰にもないだろう。

 ただし、ことに消費可能なコンテンツが飽和している現在、ビデオゲームの初動の不具合はおそらくメーカーが考えているよりも、はるかにコンテンツの寿命に影響を与えている。ユーザーの目は神経質なほど厳しくなってきた。その意識の差が埋まらなければ、『ジョジョASB』がリリースされたころ以上に不幸なコンテンツは生まれ続けるだろうし、誰も幸せにならないことは自明だ。その意識の違いは、じつは重いテーマではある。

 ネットミームと化し、いま現在も「悪評」というデジタルタトゥーをはられている“旧”『ジョジョASB』ではある。が、できれば今回の“新”『ジョジョASBR』では、その意識のち外を乗り越えて、メーカーとユーザー間の幸せな関係値を作って欲しい。現役勢の方のお話は、そう思うに足る説得力に満ちていた。

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編集者
ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn

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