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話を聞けば聞くほど「いまゲーム開発者がいっしょにやる相手を選ぶなら集英社ゲームズで間違いないのでは?」と感じる、ゲーム企画コンテスト「GAME BBQ」開催の意図。開発資金の出資に上限設定なしって本当?

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企画のいちばん尖った面白い部分を「そのままでいい」と最後まで言えるパブリッシャーでありたい

──続いて、GAME BBQ vol.2のお話を伺いたいと思います。vol.1との違いであったり、運営側として「vol.2ではこういった方に応募してほしい」というところを、改めて教えてください。

堀切氏:
  「ゲーム企画 BOOT CAMP!!」の第1回目で挙げているポイントが5つありまして。まずは先ほど小島が言っていた、ユニコーンの「角」みたいな部分。作家性とか独創性とか、そういった部分ですね。要は自分がすごく好きなものを、誰にも負けないぐらい突き詰めていて、「自分しか作れないぜ」というゲームなのかどうか。そこがまず大事かなと思っています。

 次に、「思わず手に取ってしまう魅力」が挙げられます。ゲームって、プレイして面白いのがいちばん大事ではあるんですけども、一方で遊ぶ前から「面白そう」って思われないと、お客さんは手に取ってくれません。ビジュアルであったり、タイトルであったり、センスのいいキャッチコピーだったりといった、「遊ぶ前から惹きつける魅力」がほしいですね。

 3点目としては、「ゲームでなければ実現できない体験があるか」というところです。「ゲームじゃないとこれはできない」とか、あるいは「ゲームにすることで100倍面白くなりました」など、ゲームならではの部分を求めています。

 あとは支援によって磨きがかかる可能性。金額的な支援だったり、技術的な支援だったりで、スケールアップできるかというのもあります。もうひとつ重要なところとしては、アドバイスを受けたりして改善していきたいという意志があるのかどうか。クリエイターさんって、人によっては「俺が思う最強のゲームに手出しは不要」という考えの方もいらっしゃるので(笑)。

 もちろん皆さんは、ご自身の能力と責任により制作をされていますから、そういった姿勢もひとつ立派なやり方だと思っています。ただ我々としては、一緒に作っていって、世界に届けられるぐらいスケールアップして、商業化していきたいという意志があります。それをちゃんと受け入れてくださるか、というところですね。

 最後は、クリエイターさん自身が心から作りたいと思っているかどうか。ゲームって、2年、3年かけて作る場合も多いですし、その作業は楽しいことばかりではなく、地道で根気のいる作業も山ほどあるわけです。それをやり遂げられるのは、やっぱり心から作りたいものじゃないと無理だと思うんですね。ですので、そういうところは大事にしています。

 基本的にこの5点は守っていただきたいなと。これを守っていただくことが最終的に、クリエイターさんのためにもなるポイントだと思っていますね。

──ありがとうございます。今回、企画書だけでも応募が可能ということですが、せっかくなので堀切さんに「こういう企画書が来てくれるといいな」という例があれば、ぜひ伺いたいのですが。

堀切氏:
 ゲームの内容ではなくて「企画書として」という話でいうと、まず「どんな体験を与えたいのか」を説明してほしいですね。企画書としてけっこうありがちなのが、ゲームシステムとか世界観とかの説明はすごく詳細に書いてくれてるんですけど、「結局これで何を実現したいの」というのがなかったりするんですね。

 プレイヤーにどういう気持ちになってほしいのか、どういう体験を与えたいのか、っていうことがすっぽり抜けている企画書は、じつはけっこうあって。最初に目的や売りを説明せずに進められるプレゼンのようなもので、意図を汲み取りづらいんです。

 ですので、まず「どんな体験を与えたいのか」を真っ先に言語化してほしい、というのはお願いしたいポイントですね。逆に言うとそれさえあれば、ゲームシステムの説明とか世界観の説明が多少不足していても、こっちで想像ができるんですよ。

 細かな部分を考えられていなかったとしても、そこは我々のほうでサポートできるんです。でも「どんな体験を与えたいのか」が明確になってないとサポートは難しい。そういった意味では、いちばん大事なポイントはそこだと思っています。

──小島さんのほうで、何か補足などがあれば。

小島氏:
 ゲームを開発していくうえでは、途中でいろんな人の意見を受けることで、だんだんと自信がなくなって、最初にクリエイターがやりたかった「尖り」の部分であったり、その人が表現したい作家性の部分とかが、だんだん削がれていくことが多いと思っているんですよ。

 もともと尖っていたはずの角が、人の意見を聞きすぎて丸くなっていったり、ロジックで説得されたら「その通りだな」と落ち込んでしまって、もともとのやりたかったことを変えてしまったり。そういうのはすごくもったいないと思うんです。

 自分自身、過去にそうやって曲げちゃってすごく後悔していることもあるし、逆に曲げさせちゃったこともあるなと思っていて。ですので集英社ゲームズでは、開発基準であったり、開発段階でのレビュー的なものは、そのクリエイターがもともと持っている尖りや思想を「尖らせたまま世に出す」のが、いちばんだと考えています。

 もちろん開発の途中では「これはクオリティが足りていない」とか「これじゃ売り物にならない」みたいなところも、そんな厳しい言い方はしないですけども、指摘をすることはあります。でもいちばん大事なのは「そのクリエイターのやりたいことが変わっていないか」「最初の企画時点のいちばん面白かった部分が削れていないか」というところなんです。そこはむしろ、クリエイターさんが自分から丸めようとか引っ込めようとしたときに、「そんなことはしなくていい。君はそのままでいいんだ」と言えるようなパブリッシャーだったり、プロデューサーでありたいなと思っています。

 ですので審査をする際には、パートナーというか協業者として、そういったところを重視して見させていただいていますね。

──ちなみに、GAME BBQ vol.1に応募済みのもので、指摘された意見やアドバイスを受け入れてブラッシュアップしたものを今回のvol.2に応募するのもアリですか?

小島氏:
 もちろんOKです。リベンジして良くなる企画もたくさんあると思うので、ぜひリベンジしていただければと思います。

──あとはGAME BBQの特徴として「アナログゲームもOK」とされているじゃないですか。これも非常に珍しいなと思ったんですけれども。

小島氏:
 実際にvol.1では、アナログゲームの応募もけっこう来ましたね。

──そうなんですね。

小島氏:
 はい。最終的な支援タイトルにはならなかったのですが、2次面接まではけっこう残っていましたね。

森氏:
 アナログゲームは最終的に「僕たちの支援はいらないですよね?」というものが多かったんですよ。要するに「これはもう、個人なりチームなりで出せますよね」と。アナログゲームって良くも悪くも、ゲームマーケットとかで自分たちでも出せる規模感のものが多かったりするので。

──たしかにそうですね。

森氏:
 壮大なものを作りたいとか、いろんな支援を通してブラッシュアップできるとか、新しい発明なんだけどチャレンジングだからなかなか伝わらなくて、支援を受けられれば大きな企画につながっていく……といったところがアナログゲームでもあるといいな、とは思うんですけど。

 デジタルのほうが必然的に規模感が大きくなってしまうんです。そうなるとあくまで相対的に見たときに、「この人たちよりもこっちを支援したほうがいろいろ変わるよね」という判断が去年は多かったなと。面白い企画はたくさんあったんですけどね。

──なるほど。「アナログ」という言葉だけで捉えると、いわゆるボードゲーム的なものをイメージしてしまうかもしれませんが、いまの森さんのお話を伺うと、たとえば仕組みとかシステムといったの応募でもOKということですよね?

森氏:
 はい。

──いまは人狼や脱出ゲームのように商業的にも成功しているアナログゲームの仕組みがありますが、そういった新たな発想がもしあれば……?

森氏:
 ぜんぜんウェルカムです。審査基準はけっこう細かく要項に書いてあるので、それに合っている「ゲーム」であれば基本、受け入れていますね。

インディーゲーム業界に参入したいのではなく、才能ある少人数クリエイターに投資をしたい

小島氏:
 GAME BBQのコンテストの特徴で、強調しておいたほうがいいと思うことがひとつありまして。「著作権が応募者に帰属する」と記述があるんです。これはけっこう大きなポイントだと思っています。

──たしかにそうですね。

小島氏:
 パブリッシャーが支援するとなると、権利表記がパブリッシャーの名前になり、クリエイターに権利がなかったりすることが多いと思うんです。でも集英社ゲームズ、集英社ゲームクリエイターズCAMPの支援は、クリエイターありきなんですね。漫画家さんと出版社の関係がもとになっているので、権利表記がクリエイターさんの名前だったり、開発会社さんの名前がまず先に表記されて、その後にパブリッシャーとして集英社ゲームズが入る形になります。

 作る方のクリエティブに対して、こちらはすごくリスペクトしていますし、クリエイターの方にとってもすごく良い座組みというか、仕組みになっていると思います。

──小島さんはSIEに在籍されていたときも、インディーゲームに対する開発支援をいろいろとやられていましたよね。でも、いまの権利についてのお話もそうですが、その頃と比べての違いをどう感じていますか? ひと昔前と比較して、個人や小規模クリエイターの可能性がかなり広がっているように思うのですが?

小島氏:
 「PlayStation C.A.M.P!」をやっているときは、そもそも「インディー」という括りを意識していませんでした。

 ファーストパーティが仕掛けていたものですから、「プレイステーションを目立たせる」というのが主目的だったんです。AAAタイトルを取り扱っているかたわらで、ダウンロードタイトルとかでもいいので、賞をとったりしてプラットフォーム自体を目立たせるような、すごく尖ったコンテンツを作りましょうと。そういった基準で選んでいましたので、いまのインディークリエイターのスカウトに近いことをやっていたかなと思うんですけど。

 でも当時の「PlayStation C.A.M.P!」とか「ゲームやろうぜ!」はどちらかというと、いまやっていることは辞めてこっちに来てくださいというものでした。生活保障も含めて全部こちらがお金を出すので、2年、3年かけてプレイステーションのゲームを作ってください、というものだったんですね。覚悟という意味ではそのときのほうが、応募者にとっては重かったかもしれません。そのぶん覚悟を決めている人が多かった印象があります。

 そういう意味では企画のオーディションではなくて、人のオーディションだったんですね。クリエイターとしてのオーディションといいますか。応募のときに企画を見たり、動いている映像を見たりはするんですけど、それ自体に賭けるわけではなくて「このクリエイターと一緒に、新しく何を作りましょうか」っていうところで、本当に人を選ぶ審査だったと思います。

──そうだったんですね。

小島氏:
 ですので、いまのGAME BBQのほうが幅がすごく広くなったなと思います。ジャンルもそうですし、応募してくださる方の思想も、記念受験的な方もいれば、就職するための何かの武器にしたいっていう人もいて。かと思うと「本当に命を削ってこれを作っているんで」「もう会社は辞めたので」という人もいらっしゃって。さまざまな方が応募してくださって、そのぶん企画の幅もすごく広がって。

──記念受験的な人もいるのですね(笑)。

森氏:
 前回のBBQでは、大学4年生で「もう就職しちゃうんで、今後はゲーム作れないです!」と言って選考辞退したチームもいました(笑)。面白かったんですけどね、あの企画。

小島氏:
 もったいなかったですよね。

──そういった記念応募にも、ちゃんと向き合っているのがスゴイと思います。

小島氏:
 でも、そういうノリが甘いとか軽いってわけではなくて、その人たちはやっぱりゲームが作りたくて、自分たちが応募してどう評価されるかってことを知りたかったんだと思うんです。そこから何かが生まれることもあるじゃないですか。

 そのときは記念応募だったかもしれないけど、どこかの会社に就職して経験を積んでから「やっぱり自分たちのゲームを作ろうぜ」って、その仲間がもう一度集まったりするかもしれないわけですし。たとえば、入社先でうまくいかずに独立するとなったときに、我々のことを思い出してくれて「もう一回集英社ゲームクリエイターズCAMPに応募してみよう」とか「集英社ゲームズに企画を持ち込んでみよう」ってなるかもしれないですし。そこからヒット作が生まれる可能性もありますからね。

 才能あるクリエイターと長く付き合うという意味でも、真摯に向き合いたいなとは思っています。

──わかりました。ちょうど「インディーゲーム」という言葉が出たので、お聞きしたいことがあります。森さんが先日、「インディーゲーム」についてTwitterに投稿されていた内容が興味深いなと。
 森さんとしては決してインディーゲームにこだわっているわけでも、インディーゲームを定義づけしているわけでも、インディーゲームを募集しているわけでもないということを述べていらっしゃっていて。これはどういう考えからつぶやかれたのですか?

森氏:
 なぜ「インディー」という言葉を使っていないかというと、世に基準が明確にないからなんです。べつに僕らは基準づけしたいとは思っていないですし、僕らが注力したいのはインディーゲーム業界に参入することじゃなくて、才能あるクリエイターに投資をするゲーム事業だと思っているので。

 たとえば大手のゲーム会社から独立されて、ご自身のスタジオを作られるようなディレクターさんとかプロデューサーさんなんかも、僕らから投資させていただきたいと思っていますし、是非お声がけしていただきたいと思っています。そう考えていくと、いまのモヤッっとした感じの「インディー」の捉えられ方と、僕らがやろうとしてる事業には認識の乖離があるのかなと。かといって、そういったものも含めた大きな括りで僕らが「インディー活動です」って言うと、おそらく反発を覚える方もいるだろうし。そこがズレていくだろうな、って感覚がずっとあったんですよね。

 僕らとしては「インディー」って言葉を取り組みのたとえとして使うことはありますけど、プロモーションや活動上ではあえて使わないようにしているんです。あくまでも「ゲームクリエイターの開発支援です」というところで一貫してお伝えしています。BitSummitなど、インディー系のイベントに出展させていただいているのも、親和性が高いと思っているから出ているんです。

 チームメンバーにも明確に「僕らはインディー支援じゃないですよ」と、ずっと言い続けています。そういう意味だと、今回GAME BBQの募集要項をちょっと見直していて。じつは今年から、法人の応募をOKにしているんです。

──その記載、気になっていました。

森氏:
 去年で意外に多かったのが、企業に勤められていて会社に内緒でやっている方。ほかにも、「会社勤めなんですけどあとで会社を説得するので応募していいですか」という問い合わせを受けたり、企業のデベロッパーさんやパブリッシャーさんから「ウチの新人に応募させていいですか」という連絡があったりして。去年の規定ですと、そういうのはどれもダメだったんですよ。

 そういう問い合わせを受けて今回は変えたわけですが、そういう応募も対象にしていくと、やっぱり世にイメージを受けているいわゆる「インディー」じゃないですよね。そこを全部含めて「僕らは僕らの活動です」というスタンスでやっていきたいと思っています。

 また、集英社ゲームズ自体も大きなプロジェクトをやっているのですが、そこはCAMPとは切り離して動いています。そういう意味では集英社ゲームズという会社自体も、べつにインディーパブリッシャーではありません。、既に大きな実績がある超有名なゲームクリエイターの方が持ち込んできてくださっても、僕らは大歓迎なんですよ。

 有名無名、新人ベテランに関わらず、サラッと応募してもらえるというのが、この業界の面白いところだと思っているんですね。漫画も一緒だと思うんですよ。ベテラン漫画家だから漫画賞に応募したらダメってことはないですから。

 むしろそこをかき回すような活動が生まれると業界が活性化するな、と思っています。『ペルソナ』シリーズの音楽を手がけた目黒将司さんがゲーム作家デビューされるというのもニュースになっていましたし。ああいうことが起きてくる流れが面白いな、と本気で思っています。

──たしかに、いろんな座組みがもっと自由にあっていいと思います。

森氏:
 ゲームってどんどん大規模になって、「新しいものは作れない」「予算が通らない」っていう話を、僕は色々な方からずーっと聞いていたので。山本正美さんも「100億で1本じゃなくて、1億で100本のほうが面白いんじゃないか。昔はそうだった」って、よく言っていますし。

 そんなにゲーム業界は簡単じゃないよとわかってはいますが、本当にそういう世界が僕らの活動で実現できればと思います。それが収益につながると僕は信じていますし、それによって日本のクリエイティビティが活性化できるといいなと思っています。

個人クリエイター同士の仲間探しにも、ゲームクリエイターズCAMPを活用してほしい

──これまで話を伺って思ったのですが、集英社ゲームズさんって、めちゃくちゃ忙しくないですか? 自社で動かれているプロジェクトがある中で、支援タイトルがこれだけあって、本格的なコンテストも開催して、4ケタぐらいの応募数の中から先ほどの審査基準で選定を行っていて……。

森氏:
  めちゃくちゃ忙しいですね。ですので、人材も絶賛募集中です。

 とはいえ、じゃあ誰でもいいのかっていうと、人材採用にも明確に基準がありまして。応募はたくさんいただいてるんですけど、僕らと同じマインドでやってくれそうだな、というのは、なかなか難しいんですよね。申し訳ないですけど、いまはお断りすることのほうが圧倒的に多いです。

──それだけしっかりと人材を選ばれていると、今後組織として大きくなっていったとしても、同じ考え同じ思想の方々が集まるのでブレることがないわけですよね?

森氏:
  ブレさせたくはないですけど……、組織として規模感的に100人ぐらいいないと回らないってなると、ちょっとずつ緩めていかなければいけない部分もあると思っていて。

 でも去年と今年、BitSummitの参加2年目で大きく思ったのが、去年は集英社の新規事業の一環としてブースを出して、「インディー領域でのなんか新しい座組みができたんだね」という、半分期待と半分冷ややかさが混じった視線をすごく感じたんです。でも今年は、いろんなプラットフォームさんやパブリッシャーさんから「今いちばん期待しているパブリッシャーさんです」とか、「今の日本のゲーム業界のいろいろなものを突き破っていく期待があります」といった褒めコメントをかなりたくさんいただいて。

 去年は異物感だったのが、今年はまだ異物ではあるんだけども歓迎されている雰囲気や手応えをリアルに感じられたんですよね。そういった意味では、組織として成長できていることを実感しています。まだまだ虚勢と見栄を張っている部分がいっぱいありますけども(笑)。

小島氏:
 6月にコナミさんの「Indie Games Connect 2022」(以下、IGC)に参加させていただいて、5タイトルぐらいクリエイターと面談し、いろいろとアドバイスさせていただいたり、相談に乗ったんですね。その中のタイトルのひとつが、2ヶ月後に開催されたBitSummitにも出展されていて。

 当然気になるのでご挨拶とプレイにうかがったら、IGCのときと比べて、ゲームとしてすごく面白くなっていたんです。クリエイターの方からも「IGCでアドバイスをいただいたことがすごく参考になって、それを活かしてゲームがおもしろくなりました」とお礼をいただいて。我々がやっているのはすごく意義があることなんだな、と強く実感できましたね。

森氏:
 コナミさんと言えば、別のエピソードもありまして。僕らはコナミさんに「ゲームクリエイターズCAMPというものをやります。よければ参加しませんか」と声をかけていたんです。それは僕らとしては「ご挨拶」という気持ちだったんですけど、いま振り返るとコナミさんの立場としては、ちょっとした「圧」だったんじゃないかと思っていて。集英社との関係性もあるので「集英社からこんなことを頼まれちゃったよ」っていう(笑)。

──大人の世界の話ですね(笑)。

森氏:
 そういう意味ではコナミさんとしては、半ば巻き込まれで協賛をしていただいたと思うのですが、いったん「やろう」となったら、コナミさんはやっぱり素晴らしくて。それがこのあいだのIGCにもつながったりだとか、CAMPでのコナミさんのコンテストで応募された企画もすごく良かったようでして。BitSummitにもかなり偉い立場の方まで自ら来られて見学されていましたので、コナミさんでも新しい流れが生まれているようです。

 結果として、大手の企業さんが同じような活動に踏み込んでいくっていうのは、僕らとしてはライバルとかではなく、むしろ歓迎すべき状況だと捉えています。「来年のBitSummitは、隣りで一緒にブースを出しましょうよ」という話をしていたぐらいなので(笑)。

 だから僕らもゲームクリエイターズCAMPっていう活動を、よりオープンに、業界横断的に使っていただけるような仕組みにしていきたいなと、コナミさんの事例を通して改めて思いました。

──取り組みの詳細がいろいろわかりました。最後に、「面白いゲームを作ってやる」と野望を抱いている、この記事を読んでいるクリエイターの方々に伝えておきたいことがあれば、ぜひお願いします。

小島氏:
 ここまでの話で、集英社ゲームズ、ゲームクリエイターズCAMP、GAME BBQの思想はお伝えできたと思います。GAME BBQのようなコンテストに応募していただく企画でもいいですし、ふだんご自分が作られているゲームでもいいんですけど、クリエイターのみなさんには、ゲームクリエイターズCAMPのコミュニティであったり、募集機能をぜひ活用していただきたいなと思います。

 じつは僕らのほうでも支援タイトルのサポートメンバーをCAMPの機能を使って募集していて。

──そうなんですか。

小島氏:
 CAMPにはかなり実力のある、すごい才能を持った方がたくさん登録されている印象があるので、仲間探しをされる際には、ぜひ活用していただければと思います。

──個人クリエイターどうしのマッチングみたいなところも、CAMPの機能としてあるわけですね。

堀切氏:
 たとえば個人クリエイターのハードルのひとつとして、「テストプレイをしてもらえる人がなかなかいない」というのがあるかなと思っていて。僕なんかはそもそもゲームをやっている友達や知り合いもそんなにいなかったりするので(笑)。

 そういった、開発にガッツリ携わってもらうまでではないんだけど、何か意見をもらうことが気軽にできるプラットフォームがほしいよね、というのが僕自身の要望としてありまして(笑)。それを今年中にリリースできるように進めているところです。

 ゲーマーの方々にやってもらうプラットフォームでしたら他にもあるかなと思うのですが、CAMPの場合はクリエイターにやってもらえるというところがキーポイントだと思っています。UIのアドバイスがほしければ、UIをやっているクリエイターの方から意見がもらえるというのが、CAMPでやる意義なのかなと。

──なるほど。では最後に、GAME BBQに応募される方々に対して、アドバイスなどがあればお聞かせください。

小島氏:
 GAME BBQ vol.1での反省点やノウハウを活かして、vol.2の要項や審査内容をまとめさせていただいています。応募してくださるクリエイターの方にとって、すごく応募しがいのあるコンテストになっていますので、少しでも興味がありましたら、遠慮せずどんどん応募してください。

堀切氏:
 ゲーム作りに興味があるんだけど、ちょっと踏み出せないという方は、これだけツールなどが揃っている時代になっても、まだまだいらっしゃると思っています。GAME BBQは企画書だけでも応募できるというハードルの低さもありますし、「ゲーム企画 BOOT CAMP!!」で企画書のノウハウも提供していますので。ゲームを作ったことがない人も、最初の一歩を踏み出すきっかけをGAME BBQが担えたらと思っていますので、ぜひ応募してみてください。

森氏:
 集英社ゲームズはゲームクリエイターズCAMPから生まれているゲーム会社ですし、集英社のゲーム事業もクリエイターさんと向き合うところから一緒に成長してきたこの3年間でした。引き続きそこをしっかりやっていきたいなと思っていますし、大きなチャレンジもしていきます。GAME BBQはもちろん、クリエイターさんも募集していますし、我々と一緒に働いていただける人材も募集しています。ゲーム業界を一緒に盛り上げていけるようにがんばっていきますので、興味をもっていただいた方は遠慮なく弊社にアクションをいただけますとありがたいです!

──ありがとうございました。(了)


 人気のマンガ作品を数多く抱えている集英社が、なぜ自らゲーム事業に乗り出したのか。そしてなぜ独自のコンテストを開催して、ゲーム企画を広く募集するのか。今回のインタビューでは、その背景にある考え方を詳しく聞くことができた。

 新人漫画家の持ち込み原稿を見るように新たなゲーム企画と向き合い、漫画家と編集者の関係のように、ゲームクリエイターとパブリッシャーが一緒になってその企画をゲームに作り上げて、広く世の中に送り届ける。これはまさに集英社だからこそできる、ゲームへのアプローチだろう。

 ゲーム企画を審査する際には、他にはない作家の「尖った」個性を重視し、ゲームを開発していく過程でクリエイターが自信を失って、その尖りを丸めようとしたら「そのままでいい」と押しとどめる役割を果たしたい。集英社や集英社ゲームズがゲームクリエイターの個性を大事にしている姿勢は、何よりもこの言葉によく表れている。

 ゲーム制作の経験や技術がないという人でも、「GAME BBQ vol.2」は企画のアイデアさえあれば応募可能だ。個性的なゲームを自ら生み出したいという人は、ぜひ応募してみてほしい。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
過去には『電撃王』『電撃姫』『電撃オンライン』などで、クリエイターインタビューや業界分析記事を担当。また、アニメに関する著作も。現在は電ファミニコゲーマーで企画記事を執筆中。
Twitter:@ito_seinosuke

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