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レベルファイブ日野晃博×グラスホッパー須田剛一・設立25周年記念対談。「クリエイターとしての引退は一切考えていないし、考えない。死ぬまで作り続けたい」

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「オンラインで世界中の人たちが遊べる尖った作品」を作りたい。あとは血がものすごく吹き出るゲーム

日野氏:
須田さんに聞きたいことなんですが……今はいろいろなクリエイターが独立して会社を立ち上げ、作品を作っているじゃないですか。それを踏まえて、今後大きなタイトルを作るパブリッシャーになるとか、あるいはマニアック路線をひたすら突き進むのか、須田さんは最終的にはどういった方向を目指していらっしゃるんですか?

須田氏:
うーん……いろいろ考えてはいるんですけど、まだ定まっていないというのが正直なところです。追わなきゃいけない部分もありますけど、僕はまだちょっと盲目的になりたいと思っていまして、業界のトレンドを追うつもりはないんです。もっと、まだ世の中に存在しないゲームを作っていくことを常日頃から模索しています。

日野氏:
よかった。僕としては、本当にそっちをやり続けてほしいんです。会社からの要求で「こういうのを作るべきだ!」とならないかを心配していて……。

須田氏:
うちの本社は、そういったことは言わないので安心してください(笑)。

たとえば僕らのスタジオはスタンドアローンのタイトルを作るのが得意ですが、ンラインで世界中の人たちが遊べる尖ったものを考えたいと思っています。オンライン技術に関しては本社にメチャクチャすごい人たちがいるので、その力を借りられるというアドバンテージもありますから。

あとは血がものすごく吹き出るゲーム。文字通りの殺戮系も出したいとか、漠然とそんなことを考えています。「リミッターを外した殺戮系をちゃんと作ろう」というと、言葉としては変ですけども「そのぐらいのことをやらないと面白くないかな」と思いながら、いま企画を温めています。

レベルファイブ日野晃博×グラスホッパー須田剛一・設立25周年記念対談。「クリエイターとしての引退は一切考えていない」_028
(画像はSteam『killer7』より)

日野氏:
中途半端にするよりは、振り切ったほうがいいですよね。

須田氏:
そうなんですよ。中途半端はもうやめようと思っています。

浜村氏:
え!? 須田さんはずっと振り切っていましたよね?

須田氏:
それが……自分の中では「あまり振り切れていない」と思うときがあるんですよ。

浜村氏:
そんなことないですよ!? 振り切っていますよね。

──浜村さん、秒で否定されましたね(笑)。

一同:
(爆笑)。

浜村氏:
その新作はいつごろに出したいと考えているんですか?

須田氏:
今、僕らが作っている新作が終わった後になりますから、2028年後半ぐらいです。

日野氏:
うちの『レイトン教授』の新作(『レイトン教授と蒸気の新世界』)も、2025年の発売ですからね。

須田氏:
いいものを作ろうとすると、発売時期って延びちゃいますからね……(笑)。

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「世界に追いつくこと」「日本でも大ヒットする作品を作ること」浜村氏からの両氏への宿題

浜村氏:
言い方を気にせずにうかがうと、須田さんは万人に受ける作品を作ったことがないじゃないですか。尖っているゲームですから初見で「無理」と思う人もいる。だからこそ、須田さんタイトルは、キャラクター的に放っておけないというか、なんとかしてあげたくなる気持ちがあるんですよ。

日野氏:
万人に受ける可能性もあるかもしれませんが、万人にウケない分「ハマる人にはものすごくハマる」というパターンもあるんだろうなと思いますね。

日野氏:
でも、そういうのも世間でポチっとスイッチが入った瞬間、一気にメジャーになったりしますからね。

須田氏:
カウンターカルチャーがいつかメインストリームに出てくるような、ゲームチェンジのイメージをずっと持っていますし、常にそう思いながら作っています。

浜村氏:
もともと熱狂的なファンが多いですよね。特に欧州にはそういった方々がたくさんいらっしゃる。

須田氏:
そうですね。世界中にファンの皆さんが居てくれるのがありがたいですし、励みになっています。

──須田さんのX(旧Twitter)アカウントの反響を見ていると、英語でのコメントがすごく多いですよね。

日野氏:
うらやましいです!

須田氏:
でも、日本語でツイートしてもあまり見てくれません。普段は英語でつぶやいているんですけど、たまに日本語でつぶやいてもスルーされてる事が多くて(笑)。

じつはこれは浜村さんからいただいた宿題でもあるんです。グラスホッパーが10周年を迎えたときに浜村さんが記念パーティーに来てくださって、壇上でコメントをいただいたときに「いつか日本で成功してください」、「大ヒット作を作ってください」と言っていただいたことがあったんです。まだ全然実現できていないんですけど、生きている内にはなんとか……(笑)。

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浜村氏:
須田さんのゲームって海外での評価がものすごく高いのに、日本の評価とのギャップが大きくて、もったいないと思っているんです。その点で言えば、レベルファイブさんもワールドワイドに展開していってほしいですよね。

日野氏:
それについては、今後の5タイトルは世界同時に出すことにしています。でも、それがけっこう大変なんですよね。大きなメーカーさんはすでにそういうことができる仕組みが出来上がっているんでしょうけど、僕らはやっと同じようなアクションができるレベルになれたばかりなんです。

『レイトン教授』も今までは余裕がなくて、日本語版発売から約1年半後に海外版を出していました。日本語版を作るのでいっぱいいっぱいでしたし、そもそも世界で売れるかどうかもわからないのでそのような意識も持っていなかったんです。

そうした状況の中、ある日任天堂さんに「世界で出さないと」と言われて「ではいつまでに作りましょうか」と、世界同時発売が現実的になってきたんです。

浜村氏:
おふたりとも真逆なんですが、世界とのギャップがあるんですよね。須田さんは世界が先で日本が遅れているのに対して、日野さんは日本が先で、世界が追いついていない。

日野氏:
そこはこれから克服していきたいですね。

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──そろそろお時間になりますので、最後になりますが……これまで応援し続けてくれたファンの方々に25周年を迎えてのメッセージをいただければと思います。

日野氏:
25周年という区切りで、僕らもいろいろな発表会などを実施してきました。そんな中で会社としても個人としても「初心に帰ろう」と思っています。

うちのスタッフにも言っているんですが、25周年は「新しいスタートライン」。もう一度、真面目にゲーム作りに取り組んで、お客さんに恥ずかしくないものを作るという姿勢に立ち返っていきます。

今は期間内に利益を上げるものを作るという商業的な動きをすることが多くなってきました。だからこそ、「自分たちとお客様の両方が満足できるものを出す」という覚悟でやっています。25周年以降のレベルファイブ作品は、かなりいいものばかりになるんではと思っていますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

須田氏:
日野さんが仰ったことと近いんですが……、しっかり作品と向き合って開発していくというのが、これまでもこれからもグラスホッパーの姿勢だと思っています。

僕は今、作り手として現場がとにかく楽しいんです。30周年、35周年を迎えるときにも現場のみんなとしっかり時間を共有して、いいものを1本1本作っていくという姿勢を続けていきたいですね。

それから、若手にも作品を作らせていきたいですし、新しいスタイルのゲームも同時にやりたいと思っています。まだ発表は先ですが、ぜひ期待してください。

──両社でコラボレーションする展開にも期待したいです。

須田氏:
本当ですね。また日野さんとご一緒できれば!

日野氏:
こちらも楽しみにしています!(了)

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本当は黒いところにいきたい、という思いを募らせている日野氏。そして、スタッフの人生と生活を背負っているという強い責任感のもとで社長を務めている須田氏。

まさに「ギャップが激しすぎる!」としか言いようがなく、実際に対談の最中で浜村氏がツッコミを入れてしまうほど、両氏の驚きの素顔が明らかにされる対談となった。須田氏の手がけた『シルバー事件』を始めとする尖った作品を知っていて、遊んだことのあるプレイヤーやファンも、今回飛び出した責任感の強い社長としての姿が語られたエピソードには思わず二度聞きしてしまうような心持ちになったのではないだろうか。

また、日野氏も「黒い方向に行きたい」という思いを募らせており、それがアニメ版『メガトン級ムサシ』における件のストーリー展開の一端に現れていたというのも興味深いエピソードだ。実際にアニメ版『メガトン級ムサシ』は深夜帯の放送ということもあり、それまでのレベルファイブ作品とはテイストが異なる一面もあった。日野氏の内側に込められた「異常な世界」が、この先さらに尖った形で作品として表現されるかもしれないと考えると、ワクワクしてしまう。

そして、スタジオの設立と現在の立場になってから25年を迎えた今でも、両氏はこれからもクリエイターとして現役であり続けるという強い意志があることも語られた。一方で、それぞれ形は異なれど、会社に所属する若手のクリエイターに活躍の場を与えることも考えられているとのことで、双方から今後どのような新しい動きが出てくるのかにも注目したいところだ。

設立25年を迎えた両社では、次なる新作も動き出している。レベルファイブからはNintendo Switch/PlayStation®5/PlayStation®4/Steam用ソフト『メガトン級ムサシW(ワイアード)』が4月25日(木)に発売、Nintendo Switch用ソフト『ファンタジーライフi グルグルの竜と時をぬすむ少女』が10月10日に発売予定となっており、2025年には対談中にも話題にあがった『レイトン教授と蒸気の新世界』が発売を予定している。グラスホッパーに関してはまだ作品の全容は不明ながら、新たなタイトルの開発を進めていることが発表されている。

両社のタイトル動向はもちろんだが、日野氏と須田氏は再びタッグを組みたいとの展望を語っていたことから、『ギルドゼロワン』のような意欲的かつ、先進的なタイトルが登場してくることにも期待が膨らむところだ。

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電ファミニコゲーマー副編集長。

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