2024年は「シャドウの年」。
今年、2024年はSEGAから「シャドウイヤー」として位置づけられている。ソニック・ザ・ヘッジホッグのライバルにして、シリーズ屈指の人気キャラ、究極生命体こと「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」に光を当てるという試みだ。
その一環として、最新作『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』の発売日が10月25日に迫っている。本作は『ソニック ジェネレーションズ』のリマスターとの2本立てで、同作の裏側で起こっていたシャドウの活躍を描く『シャドウ ジェネレーションズ』が収録されている。
加えて、ソニックシリーズを題材にした映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』も12月27日に日本公開が決定している。こちらも同じくタイトルに「シャドウ」の名を冠しており、シャドウの声をキアヌ・リーヴスが当てるということでも話題の作品だ。第1作目の映画『ソニック・ザ・ムービー』からハイペースでの3作目公開ということが、映画シリーズの人気の高さを示してもいるだろう。
9月26日から千葉幕張メッセで行われていた東京ゲームショウ2024の裏で、本誌では同作のプロデューサーである中村俊氏、ディレクターの鴫原克幸氏にインタビューをさせていただいた。
映画のヒットをきっかけに大きな広がりをみせる『ソニック』シリーズの世界を新たなプレイヤーに伝えるために、あるいはこれまで長く遊んできたファンに懐かしさと共に振り返ってもらうために、ゲームで行われてきた工夫や、今年の主人公「シャドウ」というキャラクターについて、おふたりから語っていただいた。
「背負ったものがにじみ出る」ようなシャドウのダークな魅力
──いよいよ『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』発売まであと1ヶ月に迫ってきましたが、現在のご心境はいかがでしょうか?
鴫原克幸氏(以下、鴫原氏):
今回、私の方では、『ソニック ジェネレーションズ』のリマスターと新作の『シャドウ ジェネレーションズ』両方のディレクターをしているんですが、実は私は『ソニック ジェネレーションズ』には、当時レベルデザイナーとして関わってもいたんです。
そういうところもあって、今作は人一倍思い入れを強く持って作ったゲームです。なので、これをようやくお客様にプレイしていただけるというところで、とてもワクワクしているというような状況です。
中村俊氏(以下、中村氏):
私の方はTGSもあって、ちょっとそういう実感があんまりわかないなっていうのが正直なところです(笑)。
TGSの前日とかにもさまざま情報を出させていただいたんですけども、今年はやっぱり「シャドウの年」ということで、我々が作っているゲームもふくめ、周辺のものがいろいろとシャドウに特化して盛り上げを図っています。日本だと感じづらいですけど、やっぱり欧米に行くと「ソニック」というIPが広がりをみせていて、ビジネス面の展開もすごく多くなっているんですよ。
今回、私もソニックにしっかり関わるのは久しぶりではあるんですけれども、ソニックの知名度が広がった状態でタイトルを作って、皆さんにお見せできるっていうのは、すごく嬉しくはありますね。
──ありがとうございます。せっかく映画のお話が出たので、そこに合わせてお聞きしたいのですが、過去2作の映画は大きくヒットしていたと伺っていますが、それによって今回のゲーム制作に関してはなにか影響があったのでしょうか。
中村氏:
そもそも1作目と2作目の時は、映画とゲームっていうのはかなり遠い状態にあったんですよ。映画自体もセガで作ってるわけではありませんでしたしね。
けれど前作【※】の終わりにシャドウが出てきたことで、「次はシャドウが活躍するぞ」っていうのがほぼ確定しました。それなら我々としては、ソニックIP全体を盛り上げるために、シャドウを体験していただけるものをお出ししよう……っていうところが、『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』というプロジェクトを始めたベースにありました。
それが今ようやく形として現れてきて、あとはそれぞれ出していったものがどう連動していくんだろうかというのを、今は楽しみに待ってる感じです。
※『ソニック・ザ・ムービー ソニック vs ナックルズ』
──映画とゲームそれぞれで描こうとする「シャドウ」というキャラクターがずれてしまわないように、すり合わせなどは行っていたのでしょうか?
中村氏:
映画についてはパラマウントさんが作られているんですが、シリーズのIPプロデューサーである飯塚【※】はそこに関与して、ソニックやシャドウが彼らのキャラクターの枠を超えないように管理していますね。
設定も含めて、映画とゲームではソニックっていうキャラも違うものではあるんですが、その中でも、お客さんから見た時にそのふたつがまったく違うものだと思われたりしないように気を使って作っています。
シャドウについても、ゲームのシャドウと、映画で見た時のシャドウの印象っていうのが大きく異ならないようには作っています。とはいえ、やっぱり住んでる世界線が違うので、それぞれのところで、それぞれのシャドウを見せるっていう点は意識してやってもらっている感じだと思います。
※セガの飯塚隆氏
──シャドウというキャラクターについて言うと、ぜひおふたりにお聞きしてみたいのですが、おふたりが見せたかったシャドウというのは、ソニックと比べてどのようなキャラクター像だったのでしょうか?
鴫原氏:
ソニックとシャドウは同じぐらいのスピードを持ってるキャラクターなんですけど、シャドウはソニックと違って「カオスコントロール」とか「カオススピア」といった能力も持っていて、今作では新たに「ドゥームパワー」という能力も加わりました。
そういった様々な能力を使えるというのが大きな違いで、ゲームでもその能力を存分に活かせるようなステージを用意したりしています。いろんな分岐がステージの中にあって、シャドウ独自の能力を生かすことで、そういうところに行けるようになるとか。
中村氏:
元々シャドウって一般的にはすごくかっこよく見えるというか、シャドウもソニックもどちらもかっこよくはあるんですが、ソニックは本当にいわゆるヒーローなんですよね。すごくクールではあるんだけど、やっぱり優等生な部分がソニックにもある。
それに比べると、シャドウは「目的に対して手段を選ばず挑んでいく」っていうダークな面があります。そういう意味では、ソニックでは描きづらい部分も描きうるキャラクターなので、今作においては特にふたつのタイトルを1本にするからこそ、両者の違いが見えるようにしようということで、先ほど鴫原が言ったドゥームパワーのような能力だったり、見た目の変化などを意識して作ってきました。
──ドゥームパワーについてですが、この能力が追加されたゲーム的な目的としては、ソニック側との差別化というのが1番にあったのでしょうか?
中村氏:
そうですね。他社さんのタイトルとかでも、シリーズものだと「今回は〇〇だ!」みたいなアクションの新しさっていうところが求められるかなと思います。
ソニックと同じように走るだけのゲームを作ってもしょうがないので、アクションとしての進化や変化っていうのが反映されたのが今作においてのドゥームパワーです。そのアクションに対して世界観を混ぜていくことで、シャドウらしいアクションにすることをチームとして取り組んできました。
──ソニックとシャドウの物語には、どのような違いがあるのでしょうか。
中村氏:
やっぱりソニックはヒーローだから、「悪がいるから戦う」っていうのが行動のベースになっているので、ソニック自身の心の葛藤みたいなものってそんなに描かれないんですよね。
だけどシャドウはそもそも背負っているものがあり、過去の色々な葛藤というか、バックボーンみたいなものがある。それがにじみ出てるところがカッコいい、っていうところもあるんですよね。今回、「タイムイーター」という敵が出てくることで、また過去をほじくり返されるようなことが起こってしまうんですが、背景を知っている人からするとすごく熱い展開になっています。
このタイトルの手前に、アニメを3本出させていただくんですけど、そこでもシャドウがどういうキャラかというのが分かっていただけると思います。シャドウのかっこよさだったり、背負っているバックボーンみたいなところも見せていくので、それらを3本見た後にゲームをプレイしていただくと、グッとくるんじゃないかなという風には思っています。