ソウルライク。日本のゲーム会社フロム・ソフトウェアが開発したアクションゲーム『デモンズソウル』や『ダークソウル』シリーズを祖とするこのゲームジャンルは、いまや世界規模でファンやフォロワーを生み出し続けている一大ジャンルと化した。
ハードな世界観や高難度のゲーム性を有していることが多く、いわゆる「死にゲー」とまとめられることもあるこのゲームジャンルの新作として9月16日に発売されたのが、『Enotria: The Last Song』(以下、『Enotria』)である。
本作の特徴は、なんといってもその“明るさ”であろう。燦燦と降り注ぐ陽光が大地を照らし、海を青々と輝かせる。多くのソウルライクゲームが闇や暗がりを描くなかで、この明るく、美しい自然の光景は異色と言ってもよいほどだ。
くわえて、PVのなかでも印象的に扱われる“仮面”の存在も見逃せない。本作は近世のイタリアで生まれた即興演劇「コンメディア・デッラルテ」をテーマとしており、ゲーム中は主人公の被る仮面を切り替えることで、その役を演じるかの如く能力や戦闘スタイルを変化させて戦う。
弊誌では、そんな『Enotria』の開発者へメールインタビューをする機会を得た。本作の特徴である“明るさ”の革新性と、“仮面”のもととなった伝統的なテーマ性を両立する中で、もっとも意識した部分はどこなのか。開発者であるEdoardo Basile(エドアルド・バジーレ 愛称:エディ)氏の答えは「光に満ちた美しい世界で、絶え間ない危機を描く」というものだった。
ほかにも、質疑応答のなかでは日本語版の声優として起用された杉田智和氏に関する話題や、日本コミュニティーに寄せる期待などが語られているため、ぜひ最後までお読みいただければ幸いである。
取材・文/うきゅう
〇インタビュイープロフィール
=============================Edoardo Basile(エドアルド・バジーレ)氏……Jyamma Gamesにてビジネス開発マネージャーおよびプロデューサーを務める。過去にはスマートフォン向けタイトル『Cowzuuka』や『Go Down』の開発に携わった。
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「光に満ちた美しい世界で、絶え間ない危機を描く」。ソウルライクとしての新たな地平に挑んだ『Enotria』の成功のカギは“明確なビジョンと堅実な実行力”
──本作はイタリアの即興演劇「コンメディア・デッラルテ」から着想を得たとのことですが、なぜこのテーマを選んだのか教えてください。
エドアルド・バジーレ氏(以下、エディ氏):
コンメディア・デッラルテは、本作のテーマやコンセプトを伝えるのに最適な題材でした。コミカルで明るい場面もあれば、ダークな側面も持ち合わせているという素敵なコントラストもあり、物語を読み解くにあたって異なるカギを与えてくれます。
同時に、イタリアの演劇文化の大部分を占めていながら、こういったメディアで使われたことがなかったので、本作でユニークな解釈をお届けできると考えました。
──本作のフィールドでは解放感のある海辺や不気味さの漂う洞窟、荘厳な建造物など多彩なシチュエーションが登場していますが、これらのフィールドは『デモンズソウル』のようにそれぞれが独立したステージなのでしょうか。それともオープンワールドジャンルのゲームのように連続して存在しているのでしょうか。
エディ氏:
ゲームは一本道ではなく、プレイヤーの自由な選択が可能です。しかし、エリアを飛ばすと、レベルが追いつかずに困難に直面するでしょう。メインストーリーに沿って、各エリアの異なる景色を楽しみながら攻略していくことをオススメします。
──本作は光や自然物の表現が非常に印象的です。美しい光や濃い影の表現をゲーム内で実現するにあたって取り組んだ手法や苦労した部分などがあれば教えてください。
エディ氏:
ビデオゲーム開発とは非常に反復的なプロセスなので、何年も試行錯誤を繰り返しました。当初から方向性を確立するため、開発前の段階からリサーチやリファレンス収集に時間をかけて取り組みました。
最も難関だったのは、光に満ちた美しい世界観の中で、絶え間ない危機感をどのように表現するかという点でした。明確なビジョンと堅実な実行力が、最終的に成功へのカギとなったのです。
──本作には複数の仮面を使い分けることで状況に応じてビルドを変化させたり、「エレメント」と呼ばれるメリットとデメリットの併存する効果があったり、戦闘を楽しむための特殊なシステムがいくつも盛り込まれている印象です。制作陣のなかでもとくに評判のよい戦闘システムがあれば、理由とともに教えてください。
エディ氏:
仮面システムのコンセプトの魅力は、プレイヤーが自分好みの戦闘スタイルを自由に選択できる点にあります。開発チーム内でも、皆それぞれがお気に入りのスタイルを持つほど選択肢が豊富です。
特定の敵に対しては、元素システムなどのルールに従うことでより快適に戦闘を楽しめるようになっていますが、どんな場面でもゲーム内のツールを自分好みのスタイルと組み合わせて柔軟に対応できるようにすることを重要なビジョンとしています。
私のお気に入りのマスクは「プルチネッラ」ですね。持ち前の素晴らしい演技と、ゲームの筋書きを通してキャラクターの成長が見られるところが気に入っています。
──本作のプレイ人数は1人と発表されていますが、複数のプレイヤーが協力する要素や、プレイヤー同士の戦いを楽しむ要素など、今後なんらかのマルチプレイ要素を実装する予定はありますか?
エディ氏:
現時点でその予定はありません。このゲームはシングルプレイヤー体験として構想されているうえ、私たちの限られたリソースでのマルチプレイヤーシステムの実装はかなり困難です。それでも、先の未来では、双方のコミュニティーが一緒にプレイできるように検討したいと思っています!
杉田智和氏をはじめとした日本人声優起用の理由は、日本のゲームコミュニティーの“情熱的なファン”へのラブコール
──2023年に公開された日本語版トレーラーでは、声優の杉田智和さんがナレーションをあて話題を呼びました。杉田さんはゲームにおいて吟遊詩人「プルチネッラ」の声を担当するとのことですが、現時点で公開できるそのほかのキャスト情報などがあれば教えてください。
エディ氏:
日本語音声の導入は非常に重要なポイントでした。日本のゲームコミュニティーは規模が大きく情熱的なファンが多いため、私たちはそれに賭けることにしたのです。日本の声優業界で名高い杉田さんを筆頭に、圧倒的な実力を誇る声優陣の皆さんが作品の魅力をさらに高みへと導いてくれました。
──最後に、読者へ本作のアピールをお願いします。(締めの一言)
エディ氏:
皆さん、こんにちは!今回は、この『エノトリア』でぜひ太陽を心ゆくまで満喫してもらえることを願っています。ただ、油断は禁物ですよ!このゲームには危険もいっぱいですからね。(了)
闇を描く印象の多いソウルライクとしては珍しく、太陽をはじめとした明るい光にフォーカスした本作だが、光が強くなれば闇もまた強くなるもの。本作には、そのジャンルにふさわしいダークなテイストを盛り込むための様々な工夫が施されている。
イタリアの古典的な即興演劇「コンメディア・デッラルテ」をテーマとして、様々な仮面を巡る物語が描かれる『Enotria: The Last Song』はPC(Steam)、PS5向けに配信中。なお、Steamストアでは11月28日(木)から12月5日(木)までの期間限定で25%オフの税込3375円にて購入可能なスペシャルプロモーションをおこなっているので、興味のある方はチェックしてみてほしい。
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