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インサイダー情報を握って株価操作。株式投資を「競りゲーム」にした「経済ボードゲーム」のデジタル版【レビュー:Stockpile Game】

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 インサイダー情報と駆け引きを駆使し、株取引で億万長者を目指す、証券市場をテーマにしたボードゲームのデジタル版が iOS/Android/Steamで登場しています。
 『Stockpile Game』(ストックパイル)です。

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 2015年にアメリカのデザイナーが製作したボードゲーム。
 特に大きな受賞歴はないようですが、カードなどをプレイヤー同士の「競り」でやり取りする「競りゲーム」としては、かなり練り込まれた作品です。
 証券取引のゲーム化というテーマも、興味が湧く方が多いでしょう。

 ただ、このゲームは一般の株取引を再現したゲームではありません。
 株取引のゲームというと「安いときに買って、高いときに売るんだ」と思いがちですが、このゲームはあくまで競りゲーム。
 株の購入はプレイヤー同士の競売で行うので、一般の取引とは違います。

 しかもこのゲームで各プレイヤーが担当するのは「仕手筋」
 一般の投資家が知り得ないインサイダー(内部)情報を握り、あらゆる手で株価操作を行って、グレーな手段でマネーゲームに打ち勝つ投機グループです。

 よって、このゲームで株取引を学ぼう、みたいなことはできないので悪しからず。
 ただ、投資市場が仕手に支配されていて、一般の投資家はその手のひらの上で活動している、みたいなことを学ぶのにはよいかも…?

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 価格は600円。買い切りゲームなので課金や広告などはありません。
 iOS/Android/ Steam版の開発はドイツゲームアプリのメーカー・Digidiced。
 最近の同社のゲームはアスモデ(Asmodee Digital)の販売であることが多かったのですが、今作は Digidicedが直接販売しています。

 今作は日本語化されているので、英語オンリーよりはわかりやすいのですが……相変わらず翻訳が微妙で、チュートリアルが理解困難なため、ルール解説を中心にレビューいたします。
 そこから内容を察していただければと思います。

 プレイヤーは2~5人。
 スマホ版には 簡単・普通・難しい・特殊 の4つの難易度に分かれた5人のAIが用意されています。
 開始前に6つの拡張ルールを追加することもできますが、まずは基本ルールでプレイしましょう。

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 画面の上部には6つの会社の株価ボードがあり、下部には各プレイヤーの所持金や所有証券が表示されています。
 基本ルールだと全員同じ所持金($20K)でスタート。

 ちなみに、このゲームの所持品の表示は「ポートフォリオ」と呼ばれます。

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 ゲームはいくつかのフェイズに分かれています。
 まずは「情報フェイズ」。

 このフェイズでは、特定の会社の株価が上がるか下がるかが表示されます。
 この情報はふたつ提示され、ひとつは全員に通知されます。
 もうひとつは各プレイヤーに、それぞれ違う会社の情報がひとつ知らされます。

 会社は6つあって、2社の情報しかわからないので、残り4つの会社の動向は不明となります。

 なお、基本ルールの場合、株価の変動値は ー3、ー2、+1、+2、+4、$$の6種類と決まっています。
 $$は配当の支給で、株価は変動しませんが、その会社の株を持っている人はボーナスを得られます。

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 続いて「供給フェイズ」。
 場にプレイヤーの数の取引枠が設置され、それぞれにカードが1枚配置されます。
 そして、各プレイヤーには2枚のカードが配られます。

 カードには各会社の株券、支払いカード(手数料)、株価操作カードの3種類があり、各プレイヤーは順番に手持ちの2枚のカードを、1枚は表、もう1枚は裏(?マーク付き)にして、取引枠に配置します。

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手札をタップすることで、どちらを裏向き(?マーク)にするかを選択できます。

 全員が配置を終えたら、今度は「需要フェイズ」。
 ここではカードが配置された取引枠に、各プレイヤーが入札を行います。

 取引枠はひとりにつき、ひとつしか購入できません。
 入札は$0でも可能ですが、他の人がそれより高い金額を提示した場合、取引枠の購入権はその人に移ります。
 購入権を奪われた人は、さらに高い金額を提示するか、他の取引枠に移ることになります。
 もちろん高額を提示するには手持ち金が必要です。

 全員がひとつずつ取引枠を取ったら、そこに置かれたカードを取得します。
 その中に手数料カードがあった場合、その場で金額を支払わなければなりません。

 もし株価操作カードがあった場合は、それをすぐに使用します。
 操作カードには暴騰と下落があり、任意の株価を+2かー2できます。
 ゲーム中、株価操作カードを使う手順を「アクションフェイズ」と呼んでいますが、アクションフェイズは(基本ルールでは)操作カードを取った人にしかありません。

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 続いて「売却フェイズ」。
 所有している株券を、市場価格で売ることができます。

 このフェイズは株価が変動する前に行われます。
 よって情報フェイズで株価が下がることが解っている株券は売った方がよいですし、上がるのであれば売らずに持っておくのがよいですね。

 前述したように変動が解るのは2社までなので、他の4社の動向はわかりません。
 しかし各プレイヤーはひとつずつ、その人しか知り得ない変動情報を持っています。
 よって他のプレイヤーの売却は、そのヒントになります。
 ある人が手持ちの株をまとめて売ったなら、その株は暴落する可能性があるので、自分も売った方がよいかもしれません。

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ふたつある売り場の下側は、分割された株を半分だけ売るもの。分割株がない場合は表示されません。

 全員が売却を終えたら「変動フェイズ」になります。
 各会社の株価動向がオープンされ、値動きが生じます。

 このとき、株価がゼロになってしまった会社は「倒産」となり、その会社の株はすべて破棄されてしまいます。
 ただ、ゲームからその会社が取り除かれることはなく、同名の会社がまたすぐ設立されて、株価5で復活します。

 そして株価が10に達した場合、その会社の株は「株式分割」されます。
 株価は6に下がりますが、分割された株は2つぶんの価値を持っている扱いとなります。
 分割された株は売却時に「ひとつぶんだけ売る」ということが可能です。

 また、分割された株を持っている会社の株価がまた10になると、さらに分割されることはありませんが、ひとつあたり$10Kの高額ボーナスをもらえます。

 変動が$$の会社は株価は動きませんが、株券を持っている人にひとつあたり$2Kのボーナス(配当)が与えられます。
 分割された株は、配当もふたつぶんです。

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ボトムライン銀行が株式分割を実施。株価が10を超えて上がる場合、余剰分は分割後に加算されます。

 変動フェイズが終わったら、1ラウンドが終了。
 ゲームは5ラウンドまでで、最後に一番資産の多い人が勝利です。

 5ラウンド終了時、すべての株はその時点の株価で売却されます。
 また、各会社の株を一番持っている人には、1社あたり$10Kのボーナスが与えられます(引き分けだと$5Kずつ)。
 このボーナスを狙うなら、株は多少価値が下がっても持っておいた方がよいことになります。 倒産したらダメですが。

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最終集計画面。筆頭株主ボーナスの有無と総資産、各ターンのプレイヤーの行動が表示されています。

 基本ルールは以上。
 証券取引という難しそうな題材ですが、ゲームはそれほど複雑ではありません。
 遊びやすい反面、ヘビー級のゲームの方が好みの人だと、物足りなく感じるかも。

 しかし、以下の6つの拡張ルールを加えることで、考慮しなければならない要素が一気に増え、難易度も戦略性も大幅にアップします。

 拡張ルールは以下の6つ。

 ・拡張ゲームボード
 ・予測ダイス
 ・積券
 ・商品と税金
 ・投資家と、投資家の入札

 通常の株価ボードは全社が0~10の平均的な株価を持つのですが、拡張ルールの株価ボードは会社によって変動量が異なります。
 ハイリスクハイリターンな会社もあれば、変動が緩やかな会社、株価は少ないけど頻繁に配当が出る会社もあります。
 どれを狙うか、変動予測だけでなく、会社の特徴も加味しなければなりません。

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拡張株価ボードは倒産と分割のペースが早く、ゲーム展開がダイナミックに。色の付いている数字のマスは倒産後、及び分割後の株価です。

 予測ダイスは、情報フェイズの株価の変動がランダムに決定されるものです。
 これにより、各社の株価が大きく上がるラウンドもあれば、値下がりばかりになってしまう場合もあります。

 積券は買ったぶんだけ、ラウンドごとに$1Kの収入を得られます。
 しかもゲーム終了時に購入価格で売却できます。
 よって、買って損はないのですが、相応に高く、無理に買うと手持ち金が減って入札のときに困るかもしれません。

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積券の購入画面。競りに使うお金を残すのを忘れずに。

 商品と税金は、商品先物取引を表現しているようですが、競りゲームによくある「多くの種類を集めていると最終集計時にボーナスがもらえるカード」です。

 家畜・農作物・ガス・金・石油・レアメタルのカードがあり、供給フェイズで通常のカードとは別に1枚ずつ配られ、取引枠に配置します。
 これにより、どの取引枠を競り落とすかの判断要素が増えることになります。
 「税金」のカーは商品とは逆に、最後にお金を払わないといけなくなります。

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商品のボーナスは「集めた種類 x(集めた種類+2x1K」。1種類なら3K、2種類は8K、3種類は15K、4種類なら24K。税金カードも1枚ならー2Kですが、2枚だとー6K、3枚だとー12Kと高騰していきます。

 そして投資家は、言わば主人公の選択です。
 投資家はそれぞれ「持っている株に応じてボーナス」や「手数料をマイナスではなくプラスにする」、「入札金が安くなる」、「アクションフェイズに常に株価をひとつ動かせる」などの特技を持っていて、総勢16人
 ゲーム開始時、各プレイヤーにふたりの投資家が提示され、どちらでプレイするかを選べます。
 初期資金も選んだ投資家によって異なります。

 もし「投資家の入札」のルールを適用している場合は、選んだ投資家が場に出されます。
 他のプレイヤーが選んだ投資家も並べられ、その後に入札して誰でプレイするかを決定します。

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投資家の説明は画面左上にある投資家ボタンを押すか、投資家の顔をタップすると表示されます。

 相応の戦略や駆け引きがあって、楽しめる競りゲームです。
 駆け引きの部分はコンピューター対戦では感じにくいのですが、競りの商品を各プレイヤーが提示し、価値を考えながら値段を付けるのに加えて、他のプレイヤーの動きを見ながら売却を考えるシステムは、なかなか奥深さがありますね。
 コンピューターも、ちゃんと他プレイヤーの行動を参考にして売買を行っているようです。

 基本ルールで基礎を学んで、拡張ルールで本番、というのも段階を踏んでプレイできるのでよいです。
 強さも普通以上のAIなら弱い印象はありません。

 ドイツゲーム系のアプリとしては、ちょっと演出が地味な印象もありますが、ボードゲームフリークにはおすすめしたい作品です。

Stockpile Game

証券取引を題材にした経済ボードゲーム

インサイダー情報を握って株価操作。株式投資を「競りゲーム」にした「経済ボードゲーム」のデジタル版【レビュー:Stockpile Game】_015
(画像はStockpile – Google Play のアプリより)

・ドイツゲーム / ボードゲーム
・原作:Nauvoo Games(アメリカ)
・開発:Digidiced(ドイツ)
・iOS 600 円、Android 499 円、Steam 720 円

文/カムライターオ

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著者
インサイダー情報を握って株価操作。株式投資を「競りゲーム」にした「経済ボードゲーム」のデジタル版【レビュー:Stockpile Game】_016
カムライターオ
『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
 iPhone アプリのレビューサイトを経て電ファミニコゲーマーのお世話に。 
 シューティングとシミュレーションが特に好き。

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