1987年に発売された、RPGの要素を取り入れた横スクロールのアーケードアクションゲーム『ワンダーボーイ モンスターランド』。
キャラクターを『ビックリマン』に差し替えた『ビックリマンワールド』が「PCエンジン」でヒットしたので、そちらでご存じの方も多いでしょう。
そのモンスターランドの続編が約30年の時を経て、iOS/Androidに登場しました。
『Wonder Boy: The Dragon’s Trap』(ワンダーボーイ ドラゴンの罠)です。
このゲームは1989年に海外の「セガ・マスターシステム」で発売されていた作品のリメイクですが、原作は当時、日本では売られていませんでした。
なぜなら1989年は、日本ではすでに「メガドライブ」が登場していて、翌年には「スーパーファミコン」も出てくる時期。
すでにマスターシステムは虫の息だったからです。
ただ、「ファミコン」がそこまで強くなかった欧米や南米では、まだマスターシステムは主力機でした。
一応、日本でも1991年に最初のリメイク版が『アドベンチャーアイランド』という名前でPCエンジンで発売されており、1992年にはセガの携帯ゲーム機「ゲームギア」にも移植されています。
しかし、その頃はすでにスーパーファミコンとゲームボーイの時代。当時のこの作品を知る人は少ないでしょう。
そんなゲームを2017年、フランスのメーカーが手描きイラストとオーケストラサウンドで豪華にリメイクし、Steam(PC)とPS4/XBOX One/Nintendo Switchで発売。
そして先日、スマホ/タブレットにも移植されました。
価格はiOS版は960円、Android版は1140円。買い切りゲームなので課金や広告はありません。
Steam版は1980円、PS4やSwitch版は2200円です。
なお、レビュー作成時点(2019/6/7)のiOS版には、Game Centerを利用していると2回目以降の起動時にゲームがフリーズしてしまうバグがあります。
いずれアップデートで修正されると思いますが、もし同様の症状が出ている人は、「設定」アプリで「Game Center」をOFFにすれば解消されるので覚えておいてください。
横スクロールの2Dアクションゲームです。
ボタンでジャンプと攻撃を行え、盾を構えていれば前方からの敵弾を防ぐことができます。
攻撃方法はゲームの進行に応じて、火炎弾や剣に変わります。
『ワンダーボーイ モンスターランド』の続編ですが、前作と違ってステージクリア制にはなっていません。
町を中心に、ダンジョンのように広がっているマップを自由に探索できる内容で、今でいう「メトロイドヴァニア」に近いものです。
といっても、地形はそこまで複雑ではなく、攻略ルートもほぼ決まっています。
スマホ/タブレットでの操作性は、お世辞にも“良い”とはいえません。
ボタンの配置やサイズはオプションで調整できますが、元々『ワンダーボーイ』は主人公の動きにクセがあり、動きはじめが遅く、止まるときには滑ります。
それがパッドの微妙な動かしづらさと相まって、どうにも遊びにくく感じます……。
私の場合、パッドサイズを大きくして、指をスライドするのではなく、パッドの外周をタップして動かすように心がけることで、まともに遊べるようになりましたが…… そうした慣れや工夫が必要になる操作性ですね。
難易度にも注意。子ども向けとされる「やさしい」と、普通の難しさの「ノーマル」、歴戦の強者用とされる「ハード」が用意されていて、多くの人はノーマルにすると思いますが、しかしこれは平成元年のゲーム。
ここでいう“普通”は「ファミコン時代の普通」であり、令和元年の視点ではなかなかハードです。
タッチパネルだと操作性にハンデを抱えているし、各エリアにチェックポイントがなく、死ぬと町まで戻されてしまうため、ゲーマーでも経験者でないなら「やさしい」にしたほうが良いかもしれません。
ただ、「やさしい」はホントに「やさしい」んですよね…… こう、ミディアムレア的な選択はないものか……。
ともあれ、このゲームの難易度は当時のアーケードゲーム基準だと考えておいたほうが良いでしょう。
ゲームをスタートすると、まずはプロローグのステージがはじまります。そこは前作のラストシーン。
短く簡単にアレンジされていますが、道を間違うと戻されるダンジョンを抜けて、ラスボスだったメカドラゴンとの対決に挑みます。
前作の経験者にとっては、ここのBGMは感涙物です。
町にたどり着いたら、扉に入り、井戸を抜け、各エリアへの旅に出ます。
ビーチ、砂漠、水中、ジャングルなど、様々なエリアを探索して「鍵」のパネルを見つけ出し、封印された扉を開いて、ボスとの対決に挑みます。
とはいえ、なにせ約30年前のゲーム。マップはそこまで広くありません。
グラフィックと音質は驚くほど変わっていますが、ゲーム自体は意外なほど原作に忠実です。
丁寧に手描きされたイラストと、ゴージャスな演奏で、8bit時代のゲームを「そのまま」再現しているというのは、もはや哲学の領域。
そのため、有り余るデータ量でマップが超拡大されているとか、最新技術をフルに活用したギミックが追加されているとか、そういったものはありません。
1980年代のゲームをそのまま楽しむ作品なので、拡張要素は期待しないでください。
手順がわかっていれば、クリアまで2~3時間程度のボリュームです。
といっても、最初はどこに行けばよいのかわからず迷うでしょうし、前述したように難しくて中継ポイントもないので、苦戦するといくらでも時間が過ぎていくゲームですが。
今作の大きな特徴は、主人公が異なる形態にどんどん変化していくこと。
最初は剣と盾を持った人間の勇者ですが、プロローグでメカドラゴンを倒すと「ドラゴンの罠」を受け、「リザードマン」に変えられてしまいます。
リザードマンは火を吐いて遠距離攻撃できるので、弱くはないのですが、盾がないので矢などを防げません。
そして最初のボスを倒すと、今度は別の呪いを受けて「マウスマン」に強制変化。
こちらは体が小さくて狭いすき間を通れ、壁や天井に張り付くこともできますが、攻撃の射程が短くて戦いは苦手です。
さらにゲームが進むと、水中を自由に泳げる「ピラニアマン」、振り下ろし攻撃ができる「ライオンマン」など、新たな姿にどんどん「無理やり」変えられていきます。
そして新しい姿の特性を活かすことで、これまで通れなかった場所を越えられるようになり、探索できる地域が広がっていきます。
映画では元のシナリオを変えず、映像とサウンドだけを綺麗にしたリメイクが作られたりしますが、そんな原作尊重のリメイクをゲームでやっている作品。
「どうせ現代にリメイクするなら、遊びやすくしてくれよ。なにか加えてくれよ」という意見も多いと思いますが、そういう方向性ではありません。
このゲームの評価は、その点の是非で分かれるでしょう。
レビューを見た感じでは、オリジナルを知っている人が多い海外では好評で、『モンスターランド』との違いもあって日本では厳しい評価、という印象です。
私的には、やはり『モンスターランド』をやりたかったなぁ、と思う一方で、遊べなかった『モンスターランド』の続編を体験できたのは、ずっと昔に残してきたものを回収できた気分になれます。
タッチパネルだと操作性が常に気になりますが、オーソドックスなアクションゲームの良さを感じられる作品。
原作シリーズの経験者や、過去の人気作に興味がある人は、やっておきたいゲームでしょう。
Wonder Boy: The Dragon’s Trap
『ワンダーボーイ モンスターランド』の続編を現代に復刻
・アクションゲーム
・原作:ウエストン / セガ(日本)
・開発:Lizardcube(フランス)
・販売:DotEmu(フランス)
・iOS版960円、Android版1140円
文/カムライターオ
【あわせて読みたい】
【田中圭一連載:獣王記/ゴールデンアックス 編】“楽しさ連コイン”の秘密は「難易度のチューニング」にあり──ハリウッド映画を目指して2Dアクションを作り続けた内田 誠が、秘蔵のレシピをここに伝授【若ゲのいたり】『若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜』第18回は、『獣王記』、『ゴールデンアックス』、『エイリアンストーム』といった数々の名作2Dアクションを手がけたセガゲームスのクリエイター・内田 誠さん。