サルバドール・ダリの絵画のようなシュールで奇妙な風景と、手描きのような味のある彩色で「精神の世界」を表現した、印象的な謎解きアクションアドベンチャーがiOSに移植されています。
『Figment』です。
2017年にSteamで公開され、多くのゲーム賞の美術部門にノミネートされた作品。
2019年の春にPS4やNintendo Switchにも移植されています。
剣を振って敵を攻撃する見下ろし型のアクションゲームですが、戦闘よりも探索が中心。
そして探索する世界自体に、得も言えぬ魅力があります。
鉛筆の並んだ橋、ラッパのような草、巻き貝のような家……、それらの妙な造形物が細密に描かれており、まさにゲームで楽しむシュールレアリスム。
ストーリーもシュールレアリスムらしい、人間の恐怖やトラウマをビジュアル化した潜在意識をテーマにしたもの。
ただ、ゲーム自体は万人が楽しめる適度な難易度のアクションゲームで、難しく考えなくても遊べます。
中盤以降、パズル的なシーンが増えてくるため、子供だとそこで詰まるかもしれませんが。
iOS版のアプリは本体無料ですが、そのままでは体験版で、序章しかプレイできません。
フルバージョンにするには610円の課金が必要です。
Steam版は1980円、PS4とNintendo Switch版は2200円です。Android版は現時点(2019/12)ではありません。
Steam版のレビューには翻訳についての苦言が見られますが、現バージョンでは改善されています。
むしろ英語のジョークが日本のものにアレンジされているなど、かなり良い翻訳です。
iOS版は画面左側をスライドして移動、右側にあるボタンで剣攻撃や回避、調査などを行います。
操作性はタッチパネルでも問題なく、iOS13以降で対応したPS4やXbox Oneのワイヤレスコントローラーにも対応しています。
フィールドには様々なしかけがあり、その謎を解きながら進めていかなければなりませんが、そんなに難しいものはありません。
どこかにあるバッテリーを見つけてソケットにセットする、ハンドルを回して風車の方向を変え、じゃまな煙を吹き飛ばす、など。
同じバッテリーを使い回したり、行きたい方向に合わせて風車の向きを何度も変えるといった、ちょっと頭をひねる場面もありますが、行き詰まるほどではないでしょう。
ただ、創造を司る「右側」を探索するうちは簡単なのですが、論理を司る「左側」を探索する段階になると難易度が上がります。
箱を押して所定の場所に運んだり、一筆書きが必要なパネルがあったり、明確にパズルと言えるシーンが出てくるため、少し悩むかもしれません。
フィールド移動中、たまに「敵」が現れて戦闘になります。
その正体は精神に潜むトラウマや恐怖。
転がって回避するボタンを使い、避けてから攻撃にいかないとダメージを受けるケースが多いです。
ただ、そこまで難しくはなく、回復アイテムが各所にあり、もしやられても直前から再開可能。
戦闘自体もそれほど多くなく、倒した敵は復活しないため、戦闘はメインではなく、ゲームのアクセントといった形ですね。
「悪夢」と呼ばれる3体のボスがいて、その打倒が冒険の目的。
ボスは高らかに「歌い」ます。まるでミュージカル状態。
ボスにダメージを与えるのにもちょっとした謎解きが必要で、単に殴りにいっても勝てません。
クリアまでは5~6時間ほど。スマホのゲームとしては適度なボリュームだと思います。
今年スマホで登場した2Dゼルダ型の謎解きアクションとしては、『Hyper Light Drifter』に並ぶ秀作という印象です。
その『Hyper Light Drifter』は先日、Appleが「ベストiPadゲーム」に選出しましたが、こちらももう少し早く発売されていれば候補になったのではないかと思います。
特徴的な見た目に加え、とても模範的な、お勧めできる作品です。
Figment
奇妙で芸術的な風景の2D謎解きアクション
・謎解きアクションアドベンチャー
・Bedtime Digital Games(デンマーク)
・iOS版610円(序章は無料)、Steam版1980円、PS4/Nintendo Switch版2200円
文/カムライターオ
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