アクションゲームの金字塔『悪魔城ドラキュラ』のシリーズ作にして、ゲームジャンル「メトロイドヴァニア」の語源のひとつ。
1997年にプレイステーションで発売され、以後様々なゲーム機に移植されたダンジョン探索ゴシックホラーの名作がiOS/Androidに登場しました。
『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』です。
『悪魔城ドラキュラ』(キャッスルヴァニア)と言えば、吸血鬼と戦う”ベルモンド一族”の若者がモンスターを鞭打ちしまくる横スクロールのステージクリア型アクションゲームとして知られていますが、今作『月下の夜想曲』は他のシリーズ作とは異なり、主人公はドラキュラ伯爵の息子「アルカード」。
主に剣を使って戦い、ステージクリア型ではなく、広い城内を自由に行き来できるダンジョン探索型のゲームとなっています。
アイテム収集とレベルアップがあり、戦いが辛くても育成で何とかできるので、シリーズの中では難易度は低め。
ただし後半は悪魔城らしく、相応のテクニックが要求されます。
iOS/Android版の問題点はタッチパネルでの操作。
画面に表示される方向キーとボタンで操作しますが、見たまんまの判定範囲で、少しでも指がズレていると反応してくれません。ボタンの位置や大きさの調整もなし。
どうしてもミスが多発する、お世辞にも良いとは言えない操作性ですが、物理コントローラーを使えば対処できます。
今はiPhoneでもiOS13以上なら、PS4やXBOXのゲームパッドを使用可能。
ここでの評価は、それらを使ってのものだと考えて下さい。
一応、タッチパネル操作でも絶望的に遊べないというわけではありません。実際、私も前半戦はタッチパネルでプレイしていました。
ずっと操作性が気になりながらのプレイになりましたが……。
価格はiOS/Android共に370円。
もちろん課金や広告等はありません。
前述したように横視点のダンジョン探索アクション、いわゆる「メトロイドヴァニア」です。
剣を振って敵を蹴散らし、邪魔な段差をジャンプで飛び越えながら、城内をさまよいます。
オートマップがあり、いつでも通った部屋を確認できるので、迷子になることはないでしょう。
序盤は行えるアクションは少ないのですが、ゲームが進めば二段ジャンプやハイジャンプが可能に。
ドラキュラの息子らしく、いずれは魔法弾攻撃や、コウモリに変身しての飛行もできるようになります。
それほど素早い動きはできませんが、アイテムがそろえば多彩な特技を使えるようになります。
城の各所には体力アップや装備が隠されていて、壊せる壁や隠し部屋も豊富。
探索するのが楽しい作りになっており、武器をドロップする敵もいて、装備によっては攻撃方法が変化。
そして細かく描き込まれたゴシック風のグラフィックからは、隆盛を極めた当時のドット絵の真髄を見ることができます。
敵ごとにやられモーションが違うほどのこだわりっぷり。
ステージクリア型ではありませんが、各エリアにボスがいて、その討伐が一区切りとなっています。
ボスの数はかなり多く、多彩な悪魔が行く手を阻みます。
ただ、やっていて気になったのは、説明書がないこと。
実は私は当初、体力を回復する方法をすっかり忘れていて、ピンチに陥ってから「どうすりゃいいんだコレ!」となりました。
城の各所に不気味な多面体のある部屋があり、その真下で方向キーの上を押すことでセーブが行われ、体力も全快するのですが、スマホ版は部屋を移動する時にオートセーブが行われ、やられてもそこから再開できるため、手動セーブしていなかったのです。
セーブを行ってから回復することを思い出したのですが、その時にハッと気付いたことが。
「こんな意味不明な多面体の前で上を押すとか、普通の人はわかるのか? そう言えば、さも当たり前のように”方向キーの上+攻撃”でサブウェポンを使ってたけど、それも経験者だから使えていたのであって、初めてやる人がこの操作に気付くのか……?」
もちろんこれらのことは、オリジナルだと説明書に書いているのですが、アプリ版にマニュアルはない。
紙の説明書があった当時のゲームに、チュートリアルなんてものもない。
とりあえず、このゲームを初めてやる人は、多面体の部屋で”上”を押してセーブ&回復、鍵穴の部屋も”上”でワープ、戦闘時に”上+攻撃”でサブウェポンを使う、ハートはサブウェポンの使用で消費(体力ではない)、というのを憶えておいて下さい。
なお、物理コントローラー使用時は、右スティックを倒すことで地図を表示します。
『月下の夜想曲』は様々なゲーム機に移植され、それぞれ若干の違いがありましたが、スマホ版はPSP/PS4版に近いようです。
本来はクリア後の追加要素であった、別キャラ(リヒター・ベルモンド)でのプレイ、ショップの音楽鑑賞などを最初から利用できます。
一方で、PSP/PS4版ではクリア後でないと使用できなかった「マリア」も最初から使うことができ、完全に同じというわけでもないようです。
リヒターやマリアはダッシュやスライディング攻撃が可能で、最初からハイジャンプ(下上J)も行える高機動キャラ。
アルカードよりもアクロバチックに戦えます。
ただ、防御力が低く、うかつなプレイはすぐに死を招く上級者向け。
いずれにせよ、リヒターやマリアには装備やレベルアップがなく、イベントも省略されるため、初プレイはアルカードで遊ぶのを推奨します。
操作の問題で国内では絶賛というほどの評価ではないのですが、あの懐かしの名作をスマホで再び楽しめるのは嬉しいところ。
改めてリヒターやマリアでプレイしてみるのも良いでしょう。
キャッスルヴァニアが賞賛されていた海外では、やはりゲーマーを中心に高く評価されています。
基本的には経験者向けのアプリだと思いますが、描き込まれたドットグラフィックと良質のバランスに加え、低価格なこともあり、ゲームの歴史の1ページとして、未経験者にも試して欲しい作品です。
悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲
ドラキュラの息子が主人公の名作メトロイドヴァニア
・メトロイドヴァニア(2Dサイドビュー・ダンジョン探索型アクション)
・コナミ(日本)
・370円
文/カムライターオ
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