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令和の時代にあるまじき「正統派のクソゲー」だった『ファイナルソード』レビュー。SNSで話題になった本作を10時間プレイして解説

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 7月6日の朝。何気なくTwitterを見ていた私は、あるゲームの動画に目を止めた。
 『ファイナルソード』というゲームらしい。
 見た感じ、3DのアクションRPGのようだが……

 こ、これは…… 令和の時代にあるまじき「正当派のクソゲー」
 最近はまともに動かないとか、ロクに進めない、中身がなさ過ぎるといったクソゲーの方が目立つが、これはちゃんと遊べて、でもツッ込みどころしかない、そんなクソゲーの雰囲気がある。
 クオリティは激しく低そうだが、平成初期のようなグラフィックに加え、かっこ悪いフォント、ふざけたサウンド、そのすべてが私の興味を引かずにはいられない。

 朝から爆笑した私は、さっそくこのゲームについての調査を始めた。
 半年ほど前にiOS/Androidで初公開された作品で、開発元はHUP Gamesなる謎のメーカー。どうやら韓国発のようだ。
 話題になっているのはNintendo Switch版で、3日前に発売されたばかりらしい。価格は1890円

 なるほど、信頼と実績の任天堂ハードで約2000円のソフトがこれなら話題になるのも必然だろう。
 下火になっているKOTY(クソゲー・オブ・ザ・イヤー)もプロミネンスのように噴き上がるに違いない。

 午後には早くも『ファイナルソード』の名はTwitterのトレンドへと躍り出た。
 スマホ版もあるのなら、スマホゲームのレビューを書く者として、そしてクソゲーも愛する者として、試さないわけにはいかない。
 幸いiOS版は860円。千円いかない値段でこのクラスのクソゲーを楽しめるのなら悪くはない。
 ちなみにAndroid版は800円だ。

 さあ、いざ逝かん、めくるめくクソゲーの旅へ。

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 自称「コンソール型 オープンワールド アクションRPG」。
 母の病を治すため、村の周辺で奮戦する主人公に目をとめた長老が、彼に王都での仕官を勧める物語。
 3Dのフィールドを移動し、ボタンで攻撃・回避・防御を行う剣劇アクションだ。

 10時間かけてプレイしてみたが、ザコ戦でも気を緩めるとすぐに死ぬ、かなり高難度のゲームであることがわかった。しかしボリュームは十分にある。
 プレイヤーのテクニックがモノを言う「ダークソウル系」や「ソウルライク」と言われ始めているジャンルであり、その意味では最近の流行りである。

 だが、クソゲーと評判になるだけのクソ要素を満載している。
 以下では、それを項目別に紹介していこう。

クソゲーポイント1・ダサい

 まずは何と言ってもこれであろう。
 ダサい。すごくダサい。
 キャラクターがダサい、フォントがダサい、演出がダサい、サウンドがダサい。

 ゲーム開始直後に出てくる主人公の姿からして、ヤバい雰囲気に充ち満ちている。
 まるでプレステ1の初期時代のようであり、明らかにクオリティとセーターの糸が足りていない。

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 そしてフォント。丸っこい、明るい色の、かわいいフォントで地名が表示される。
 どんなに恐怖に満ちたダンジョンでも、この文字のせいで瞬時に”ゆるふわ”な雰囲気と化す。ボス名もこのフォント。
 どうしてこれを選んだのか小一時間問い詰めたい。

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丸ポップなフォント、簡素な景色、黒タイツ風の主人公。これがファイナルソード。

 そしてレベルアップ。
 RPGでもっとも嬉しい瞬間であるが、角ゴシックの文字を中央にデカデカと表示し、それでなくてもチープな雰囲気に追い打ちをかけてくる。

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 とにかくあらゆる絵、文字、演出がダサいのである。
 さらにNintendo Switch版はミスしたときのサウンドが「ほわほわほわ~ん」という、もはや笑うしかない、繰り返し聞いていると神経を逆撫でされそうな音になっている。
 だが、スマホ版はそんなヘンな音ではないのだ。つまり後発のSwitch版で、わざわざこの音に変えているのだ。

 それはひょっとしてギャグのつもりなのか?
 もしかするとこの作品は、すべてが計画通りなのだろうか?

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この異様な色彩。妖精の里らしいが、ファンタジーを取り違えている。
ちなみに妖精は直立姿勢のまま飛ぶ。

クソゲーポイント2・安っぽい

 ダサさにも通じるのだが、とにかくチープ。安っぽいのである。
 特にグラフィック。最初に出てくる家の外観からしてコレである。

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 最新オープンワールドと聞いてプレイヤーが思い浮かべる世界を、開幕ですり潰してくれる。
 明らかにUnityのアセットストアで買った建物(3D素材)をのっぺりとしたフィールドにポンと置いただけだ。
 自然や調和といったものは清々しいほどに感じない。

 モンスターや装備もアセットストアのものをそのまま使っているようで、そのため見た目は良いのだが、風景のグラフィックがそれに見合っていないため、やはり浮いている。

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 とにかくフィールドに何もなさ過ぎる。
 さすがに気になったのか、Nintendo Switch版には草や霧が追加されており、上記の画像より幾分かマシである。
 それでも「何時代のゲームだよ」と見る者すべてが思うこと必定であろう。

 会話もチープさとアヤシサを倍増させている。
 日本語化されているが、話が噛み合っていない。誤訳とかそういう問題ではない。
 例えば、序盤にこんな会話がある。

 クリム:「俺がどこに住んでいるか知っているか?」
 主人公:「2階の家クリムおじさん、わからないんですか?」
 クリム:「そう、俺はおおらかなんで門を閉めてそとに出ない」

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思考障害を起こしそうだと評判のクリムおじさんとの会話。

 話がまるで繋がっていない……
 これは特別ひどい例だが、微妙におかしなメッセージや口調がやたら目に付き、それでこの見た目。
 1890円で買ったプレイヤーの心情を察して余りある。

クソゲーポイント3・わかり辛い

 オーソドックスなアクションRPGなのでシステムに難しい点はない。
 ただ、細かいところで配慮が足りない。

 例えば、最初の村には宿屋がない。自宅はあるが泊まれない。
 ではHPの回復はどうするのか? 教会でお祈りをすることで全快できる。
 だが、その説明は一切ない。

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この建物が回復できる村の教会。
教会の建物だけ壁のテクスチャがひどいが、良いものが見つからなかったのだろうか?

 さらにショップの売り物リストは上下にスクロールでき、最初に表示されているもの以外も買うことができる。
 だが、リストをドラッグしても動かない。
 リストの右側の空白部をドラッグしないとスクロールさせられないが、スクロールバーなんてなく、パッと見ではわからない。

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画像の黄色い部分をスライドすることで、ひとつ上位の武器と防具を買える。
よく見ると”木の盾”の下に、次の商品の枠がチラッと見えている。

 このふたつは序盤の重要事項だが、気付かずにプレイして地獄を見た者は数え切れぬほどいるだろう。

 また、攻撃を受ける瞬間にガードすることで、盾で相手を殴って気絶させられる「ジャストガード」のシステムがあるのだが、やはり説明はない。
 他にも戦闘にはわかり辛い点が多いが…… これについては後述する。

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ジャストガードからのシールドバッシュで敵がピヨッているシーン。タイミングはそれほどシビアではない。
盾ガードが有効な敵と、回避からの反撃が有効な敵がいるので、双方を使い分けよう。
実はジャストガードの説明をしてくれるNPCもいるのだが、出てくるのは「今さらかよ!」と叫びたくなるほど後。

クソゲーポイント4・やり辛い

 まず、剣劇アクションなのに敵をロックできない時点でおかしい。
 多くの3Dアクションゲームは狙った敵を常に正面に捉える、ロック状態で戦うことができる。
 だが、このゲームにロックはない。そのため常に手動で敵の方を向かなければならない。

 おまけに敵が頻繁に画面の外に出てしまう。
 特に敵が突進してきて、そのまま主人公の後方、画面の手間側に消えてしまうケースが多い。
 もはや敵はカメラの視界を利用して戦っているかの如くである。

 主人公が向いている方に画面を向かせるボタンもあるのだが、どういうわけか主人公が動けない時は、このボタンが効かない。
 つまりダウン中や攻撃モーション中は、ボタンで振り向けない。
 そのため結局、手で画面をスライドして動かすか、見にくいまま戦うことになる。

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プレイヤーに襲いかかっているかのようなオオカミ男のジャンプアタック!
このまま画面の手前に消える。 振り向かないといけないが、振り向き操作がよろしくない。
って言うか面倒なので、わざわざ振り向かない。 感覚で戦え!

 ガードボタンも動けないときは受け付けられない。
 攻撃後にガードするなら、攻撃モーションが終わってから行わなければならず、これを知らないとガードミスが多発する。
 もちろん説明はない。
 薬草などのアイテムも動けない時は使えない謎仕様。ダウン中は回復できない。

 さらにガードは「画面が向いている方向」にしか行えない。主人公が向いている方向ではない。
 敵が側面にいて、主人公がそちらを向きガードボタンを押しても、主人公は画面の前方、敵から見て横向きにガードするため、そのまま殴られてしまう。
 この仕様を把握していないと、ガードは本当に使い辛い。

※このガード方向の問題ですが、オプションで変更できるという情報を頂きました。
オプションの「Shield Direction」の「Camera」を「Player」に切り替えることで、キャラクターが向いている方向に盾を構え、表示もそちらに旋回します。

 ちなみに、攻撃魔法も画面が向いている方向に発射される。(こちらは逃げながら撃てるので便利ではある)

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砂漠に出没する戦士風の敵は、横に回り込んで斬りかかってくる。
しかし横を向いてガードしても、こんな風に画面の前方に盾を構えてしまう。
こういう回り込む相手は、ガードより回避中心で戦った方がいい。

 操作や仕様が色々とおかしく、他のゲームを参考にできていない。
 知識や経験が不十分なのではないかとさえ思ってしまう。

クソゲーポイント5・容赦ない

 カメラワークが良くないのもあって、後方や側面にいる、画面外の敵にいきなり殴られるケースが多い。
 敵の位置を察知できるミニレーダーはあるが、不意に出てこられると対処できない。
 敵がいる方向の警告表示なども当然ない。

 おまけに敵が連続で出てきて袋叩きになることが多い。
 ザコでも手強いこのゲーム、1対1なら何とかなる場面でも、急に敵が現れて走って来たりする。
 そして複数の敵がいる状況でダウンするとそのまま取り囲まれ、いわゆる”起き攻め”でフルボッコにされる。

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 敵がどのタイミングで出るかはわからないため、普通に戦えるエリアでも、急に修羅場と化すことがある。
 そのため小まめなセーブは必須、常に死の緊張感があり、それはそれでゲーム性と言えるかもしれないが、とにかく容赦がない。

 画面外からは殴らない、会話中は待ってあげる、あまり大勢で襲わないといった、一般的なお約束をこの世界の敵は知らない。たぶん作者も知らない。
 既存のRPGは”やさしい世界”であり、モンスターはみんなTPOをわきまえているが、このゲームの敵は空気を読まない。

クソゲーポイント6・雑

 ゲーム中、常に気になるのは当たり判定の曖昧さである。
 攻撃がどう見ても当たっているのに当たらない。
 敵を狙いづらいゲームではあるが、図体のでかいボスに密着して剣を振っても当たる場合と当たらない場合があるため、これはもう当たらないことがあるのは仕様である。
 もはや判定の雑さが攻撃のミスや回避という、システムの一部に昇華しているかの如くである。

 冒頭で紹介した「動く床に乗ると、床だけ動いて主人公が落ちる」というのも、作りの雑さによるところだ。
 他にも不可解な落下、ハマりまくるボスなど、ツッ込みどころが満載である。

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やったー! オアシスだー!
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ドボーン。GAME OVER。
なんで絶壁みたいに深いんだよ……
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※2番目のボス「スパイダークイーン」は長射程を活かすため、主人公が接近すると後ろに下がろうとする。
しかし、後ろが壁になっていると下がれないので…… ハマる。

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※ボス「ヒドラ」は陸で暴れたあと、湖に逃げ込んでそこから火の玉を吐いてくる。
しかし場所が悪かったり、何かが邪魔になって湖に逃げ込めないと…… ハマる。
普通に戦っているだけでこうなりやすいので、もうハマるのがデフォである。
ハマらない人は入口近くまで誘き寄せてみよう。

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※地下神殿には入ると閉じ込められ、敵を倒すまで出られない部屋がある。
しかし入った瞬間に通路に戻ると、閉じ込められずに出ることができる。そして敵が閉じ込められる(笑
あとは鉄格子越しの攻撃で処理可能。 羽の付いた敵は射程が短いので、こちらが一方的に殴れる距離がある。

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※前半の壁「ヘルウォーム」! かなり強敵で、ここで行き詰まる人が多いはず。
実は魔法が攻略のポイント。 相手が待機状態に入ったら、マジックアローで側面のイボを狙ってみよう。

 しかし粗が多く、つつくほどボロが出てくることは、クソゲーの魅力でもある。
 新たなボスのハメ技や、大小様々なバグが、SNSでは次々と報告されている。
 それは噛めば噛むほど味が出る、今作の醍醐味であると言えよう。


 以上、散々「クソゲー」を連発してきたが、ではこのゲームが面白くないのかというと…… 少なくとも私は、割と遊べていたりする。
 かなり厳しい難易度でレベルアップは大変だが、ダークソウル系として考えればこんなものだし、ステータスアップの効果が実感できるほど大きいので、苦労してレベル上げをする甲斐がある。
 テクニカルで高難度の戦闘も、ヌルいゲームよりはゲーマーにとっては楽しいだろう。

 確かにクソなところはクソである。それはここまでに述べた通りであるが、しかしデータが消えるとか、落ちまくって遊べないとか、そういう不具合的なクソさは(少なくともiOS版には)ない。
 初期のスマホ版は不安定だったようだが、幾度ものアップデートで解消されている。

 巷ではNintendo Switch版の2つ目の村のBGMが、『ゼルダの伝説』の曲「ゼルダの子守歌」の無断使用であった点が叩かれているが、スマホ版は別のBGMだ。
 なぜ任天堂のゲームの曲を任天堂のハードで勝手に使ってしまったのか、色々と憶測が飛んでいるが、ともあれここまで話題になったのは、冒頭でも述べたように”Nintendo Switchで”これが出て来たからだろう。

 スマホやSteamだと有象無象のゲームの中に、このぐらいのクソゲーは無尽蔵に存在する。
 私も『Aralon 2』など、似たクオリティのゲームはたくさん見てきた。
 無断使用についても、決して良いとは言わないが、特に中国製のスマホアプリはパクリがどこにどんな形で潜んでいるかわからないので、もはや茶飯事である。

 だが、それがオープンな市場というものだ。
 ある意味、”Nintendo Switch”と”ニンテンドーeショップ”が上から下まで多くの開発者に開かれ、これまでにiTunesやGoogle Play、Steamが辿ってきた道に差しかかったということだろう。
 これからはSwitchでも、魅力的な多くのクソゲーが我々に笑顔と怒声を与えてくれるのかもしれない。

 盗用騒ぎがある以上、「そんな開発者に金を与えるな」と言う人もいるとは思うが、お叱りを受けるのを承知の上で、遊べる正当派のダクソ系クソゲー、ダクソゲーとして、クソゲー好きなら体験しておきたい作品だと、なんだかんだで10時間以上楽しんでいる私としては言わせて頂きたいと思う。

ファイナルソード

3DアクションRPGにして話題の正当派クソゲー

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(画像はファイナルソード – AppStoreより)

・クソゲー、アクションRPG(ソウルライク)
・HUP Games(韓国)
・iOS版860円、Android版800円、Nintendo Switch版1890円


※Nintendo Switch版は7/7に配信停止。開発元はBGM無断使用の問題を解消し、再公開を目指しているとのこと。
公式サイトに日本語で案内が出されている。

文/カムライターオ

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著者
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『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
iPhone 解説サイト『iPhone AC』を経て電ファミニコゲーマーのお世話に。
シューティングとシミュレーションが特に好き。

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